会社員や自営業者が生命保険で上手に節税する方法と必要な手続きまで

毎月給与から天引きされている税金。かなりの額が引かれていて少し悲しくなりますよね。
できる限り税金を圧縮したいと考えているそこのあなた。「生命保険で節税ができる」って知っていましたか?

生命保険で節税とはどういうことなのか?いくら税金が減るのか?どのような手続きが必要なのか? 今回はこれらの疑問に対し、お答えしていきます。

目次

生命保険で節税ができる理由とは

生命保険料控除という制度

生命保険で節税をすることができるのは、「生命保険料控除」という制度が存在しているためです。

この「生命保険料控除」は所得控除の一つであり、控除額分を所得額から差し引くことができます。「生命保険料控除」を利用すれば、所得額が少なくなり、自ずと課税額も減少するのです。

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対象となる生命保険

以下の保険が生命保険控除の対象になります。

一般生命保険

生命保険会社・旧日本郵政公社(簡易保険)・農業協同組合と契約した保険契約のうち、生存または死亡に起因して保険金の支払いが行われるものが対象となっています。配偶者・親族(6親等以内の血族・3親等以内の姻族)が受取人として設定されている生命保険であっても、所得から控除することが可能です。

介護医療保険

生命保険会社・旧日本郵政公社(簡易保険)・生命共済と契約した保険契約のうち、疾病や身体の障害で医療費が発生したら保険料が支払われるもの、かつ平成24年1月1日以降に契約を締結したものが対象となっています。こちらも生命保険と同様、配偶者・親族(6親等以内の血族・3親等以内の姻族)が受取人として設定されている生命保険であっても、所得から控除することが可能です。

個人年金保険

上記生命保険のうち、年金を給付する保険契約、かつ税制適格特約が付加された保険契約が対象になっています。その他にも、①年金の受取人が本人もしくは配偶者であること、②年金の支払いを受けるまでに10年以上の期間にわたって定期で保険料を支払うもの、③受取人が60歳になってから年金が支払われる10年以上の定期、終身の年金であることが条件になっています。

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支払った保険料が生命保険料控除の対象となっているかどうかは、契約を締結している保険会社などから送られてくる証明書に記載されているので確認してみてください。

対象となる人

生命保険料控除の適用可否に勤労の有無、就業形態の違いによる区別はありません。保険の受取人が支払者本人、もしくは親族と設定されている生命保険に保険料を支払っている人なら誰でも生命保険料控除を受けることができます。

そのため、会社員や自営業の方はもちろん、主婦や学生でも保険料を負担していれば生命保険料控除を受けることができます。ただ、生命保険料控除で節税できるのは所得税と住民税です。100万円以上の所得がなく、もともと所得税と住民税が非課税となっている主婦や学生が生命保険料控除を利用しても節税効果はありません。

生命保険料控除で節税できる税金

生命保険料控除を利用して節税することができる税金は、所得税と個人住民税(所得割)です。これらの税金は課税対象所得額に税率をかけることで税額を決定しています。そのため、生命保険料控除によって課税対象所得を圧縮すれば税額も圧縮されることになります。

なお、本稿では所得税について詳しく見ていきます。(住民税は別記事にて解説致します)

控除することができる金額

計算方法

生命保険料控除で控除される金額は保険を契約したタイミングによって異なります。平成24年1月1日以降に契約した保険契約は「新契約」、平成23年12月31日以前に契約した保険契約は「旧契約」と分類されており、以下のように控除額が設定されています。

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以下で詳しく計算方法を確認しましょう。

 

①新契約(平成24年1月1日以降の保険契約)

新契約の生命保険・介護医療保険・個人年金保険の控除額の計算方法は以下のようになっており、それぞれの控除額の合計が生命保険料控除の控除額になります。

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例えば生命保険に年間5万円、介護医療保険に年間8万円払っている場合の生命保険料控除額は以下となります。

生命保険分 3万2,500円 + 介護医療保険分 4万円 = 7万2,500円

 

②旧契約(平成23年12月31日以前の保険契約)

旧契約の生命保険と個人年金保険の控除額の計算方法は以下のようになっており、それぞれの控除額の合計が生命保険料控除の控除額になります。なお、旧契約では介護医療保険は控除の対象外となっています。

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例えば、生命保険に年間5万円、個人年金保険に年間8万円払っている場合の生命保険料控除額は、以下となります。

生命保険分 3万7,500円 + 個人年金保険分 4万5,000円 = 8万2,500円

所得税節税額の具体例

生命保険料控除以外の所得控除がなされた後の所得税課税対象所得が500万円、年間の支払い保険料が生命保険6万円、介護医療保険4万円、個人年金保険が6万円の場合で具体的な節税額を計算してみましょう。

①新契約の場合

生命保険料控除は合計で10万円となります。

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この場合、所得税課税対象所得に対し生命保険料控除を行うと、控除後の所得税課税対象所得は490万円となります。

課税対象所得が490万円の場合の所得税率は20%、控除金額は42万7,500円なので、所得税額は

490万円×20% - 42万7,500円 = 55万2,500円 です。

一方、控除前の課税対象所得が500万円の場合の所得税率は20%、控除金額は42万7,500円なので、所得税額は

500万円×20% - 42万7,500円 = 57万2,500円 です。

生命保険料控除適用前と後の所得税額を比べると、

57万2,500円 - 55万2,500円 = 2万円

となり、生命保険料控除を適用した後は2万円も所得税が削減されています。

この計算は少し煩雑かもしれません。しかし、生命保険料控除を利用した後の節税額は以下の計算式を使うと簡単に計算できます。

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先ほどの例では、生命保険料控除額が10万円で所得税率が20%でした。この式に当てはめれば、2万円という節税額を素早く算出することができます。(税率が変わるケースもあります)

②旧契約の場合

生命保険料控除は計80,000円となります。

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生命保険料控除を行うことにより、課税対象所得額は492万円になります。
旧制度の生命保険料控除による所得税の節税額を先ほどの式に従って計算すると、

生命保険料控除80,000円 × 所得税率20% = 1万6,000円

となります。

お得な使い方でさらに節税

以下の場合、生命保険料控除をお得に使えばさらなる節税効果が見込めます。
*夫婦共働き・夫婦それぞれが保険料負担・夫婦の控除額合計が上限以下(新契約)

 

夫にかかる所得税率は20%、妻にかかる所得税率は33%なので、節税額は

4万円×0.2  +  (4万円+4万円)×0.33  =  3万4,400円

となります。

生命保険料は性質上、所得税率が高くかかっていればいるほど節税額が大きくなります。この例では妻の方に高い所得税率がかかっているため、妻が全ての保険料を負担すればさらに節税することができます。

妻が全ての保険料を負担した場合の節税額は

(4万円+4万円+4万円) × 0.33  =  3万9,600円

となります。夫婦で別々に保険料を負担する場合と比較すると、5,200円も節税額が増加しています。

このように夫婦が共働き、かつ生命保険料控除の限度額を超えていない場合は、より高い所得税率が適用されている方が全ての保険料を負担することで節税額を増やすことができます。

必要な手続き

申請方法

生命保険料控除を受けるためには、申請をしなければなりません。申請の仕方は就業形態によって異なるので注意が必要です。

①会社員(被雇用者)

会社員の場合は年末調整の際に、勤めている会社に対して生命保険料控除を受ける旨を申告する必要があります。

毎年11月前後の年末調整の時期になると、会社から「保険料控除申告書」が配布されます。

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(出典)国税庁

 

この申告書の赤枠内に、保険会社の名称、保険料等の受取人、新旧区分、支払保険料金額等を記入し、毎年10月前後に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」とともに会社に提出すれば、年末調整の際に会社で生命保険料控除の手続きを行ってくれます。そのため、会社員は確定申告の際に自ら申請をする必要はありません。

しかし、年収が2,000万円以上の人は年末調整の対象外となり、別途確定申告が必要なので気をつけて下さい。

年末調整において生命保険料控除の申請手続きが実施されたか否かは、年末に会社から配布される「源泉徴収票」を見れば確認できます。

<平成27年までの源泉徴収票>

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(出典)国税庁

 

<平成28年以降の源泉徴収票>

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(出典)国税庁

 

上記の源泉徴収票の赤枠で囲まれている部分が生命保険料控除の記入欄です。この欄に金額が記載されていれば、年末調整で生命保険料控除の申請手続きが適切に実行されています。もしこの欄に記載がない場合は、申請手続きができていないことになります。この場合、生命保険料控除を受けるためには確定申告をしなければなりません。

②自営業者・フリーランス

自営業者やフリーランスの方は必ず確定申告を行わなければなりません。この確定申告の際に、生命保険料控除の申請をする必要があります。

確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日となっています。生命保険料控除の申請を行うには、「確定申告書」とともに、生命保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を提出する必要があるので注意が必要です。

また、万が一生命保険料控除の申請をし損ねてしまった場合でも、過去5年間は訂正が可能になっています。しかし、この訂正手続きは非常に煩雑なので、できる限り申告漏れがないようにしましょう。

確定申告書の作成

自営業者、フリーランスや年収2,000万円以上の会社員が生命保険料控除の申請をする際には、確定申告書の第二表に必要事項の記載、添付書類台帳に「生命保険料控除証明書」の貼付を行う必要があります。

①必要事項の記入

下の画像の赤枠の部分にある「新生命保険料の計」「新個人年金保険料の計」「介護医療保険料の計」「旧生命保険料の計」「旧個人年金保険料の計」の欄に、それぞれ支払った年間の保険料を記載しなければなりません。新旧の区別が分からない場合は、「生命保険料控除証明書」の書面に記載されているので確認してみてください。02_001_18

(出典)国税庁

 

②生命保険料控除証明書の貼付

確定申告をする場合には、源泉徴収票など様々な書類を提出する必要があり、生命保険料控除を申請する際には、必ず「生命保険料控除証明書」を添付書類台帳に貼付して提出しなければなりません。万が一「生命保険料控除証明書」を紛失してしまっても、保険会社が再発行してくれますので、問題なく生命保険料控除を申請することができます。

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(出典)第一生命

この確定申告書への必要事項の記入と生命保険料控除証明書の添付をした上で確定申告を行えば、生命保険料控除申請の手続きは完了です。

まとめ

生命保険は所得控除の対象となり、税金を圧縮する効果があります。

手間がかかるから申請しない、というのは非常にもったいないことです。少しの手間で数万円分節税できるのですから、生命保険料控除はかなりお得な制度ですので是非この制度を活用しましょう。

ただし、節税が目的になって、本来不要な生命保険に加入することだけは避けるようにしてください。

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