個人年金保険とiDeCo(イデコ)の違いは?加入するならどっち?

個人年金保険とiDeCo

個人年金を備えるときに選択肢となるのが個人年金保険とiDeCo(イデコ)の制度です。どちらも同じ老後の資金づくりが目的ですが、しくみや節税効果にはどのような違いがあるのでしょうか?

この記事では、個人年金保険とiDeCo(イデコ)の概要を比較しながら、それぞれのメリットやデメリットを解説しています。

自分はどちらを利用するのが合っているのか、見極める際の参考にしてください。

 

目次

個人年金保険とiDeCo(イデコ)の違いはどこにある?

個人年金保険とiDeCo(イデコ)とは?

個人年金保険は保険会社の貯蓄型商品

個人年金保険とは、生命保険の一種で「保険のしくみを使ってお金を積み立てていき、60歳や65歳など自分が設定した年齢から私的年金として受けとる」ための商品です。

おもな種類には、決められた年数だけ受給する確定年金有期年金と、生存している限りずっと受給できる終身年金の3種類があります。

また運用方法は、将来もらえる年金額が決められた定額保険と、運用実績によって将来の年金額が変わる変額保険から選択できます。

詳しくはこちらをご参照ください。
個人年金保険とは?加入する目的と3つのメリット・デメリット

 

iDeCo(イデコ)は公的な私的年金制度

iDeCo(イデコ)とは、「毎月決まった金額を積み立てていき、投資などの運用を活用しながら老後の資産形成をおこなう」ためのしくみです。

あらかじめ用意された定期預金保険投資信託などの金融商品から好きな方法を自分で選択して貯めていき、60歳を過ぎたらその資金を年金または一括で受け取ることができます。

一般的な積立貯金や投資とは違い、さまざまな税制優遇を受けられることが最大の特長です。

詳しくはこちらをご参照ください。
個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の制度を徹底解説

 

加入条件と積立金額

個人年金保険とiDeCo(イデコ)それぞれの要件を比較してみていきましょう。

個人年金保険 iDeCo
加入できる年齢 18歳~70歳位
(一時払の場合80歳代まで)
20歳~60歳
対象となる職業 誰でも加入可 自営業者・主婦・会社員・公務員・等
積立の上限 特になし(保険商品による) 月1.2万円~6.8万円
(職業により異なる)
受給開始年齢 加入期間に応じて任意設定 原則60歳から
(加入期間により制限あり)
受給できる金額 定額年金は設定した年金額
変額年金は運用成績による
運用成績により変動する
(定期預金は積立額)
中途解約
(既払込保険料より解約返戻金は少なくなることも)
できない

 

一般的に個人年金保険は、60歳を超えても加入できる商品があるなど、対象者が幅広くプランの自由度が高めです。

ただし複数の保険会社から販売されていて、年齢や金額などの詳細は保険商品ごとに異なるため、見比べて自分の条件に合うものを見つける必要があります。

iDeCo(イデコ)は条件が一定ですが、積立金額に上限があったり原則として解約できなかったりと、流動性が低くプランの自由度もやや制限されています

 

節税効果

年金づくりの最大メリットでもある、税制優遇を比べてみましょう。

控除の種類 控除額 対象の税金
個人年金保険 個人年金保険料控除 年間の支払保険料に応じた控除金額 所得税
住民税
iDeCo 小規模企業共済掛金控除 掛金の全額 所得税
住民税
運用益非課税 投資で得た利益や定期預金の利息が非課税 所得税
公的年金控除
退職所得控除
その他の公的年金や確定拠出年金など
年金収入金額の合計額に応じて非課税
所得税

個人年金保険は、毎年払い込んだ保険料に応じて所得控除が受けられます。

それに対しiDeCo(イデコ)は、毎年払い込んだ掛金だけでなく、運用して得た利益にかかる税金も非課税になり、さらには年金を受け取る際にも恩恵を受けられるのです。

すなわち長い目で見ても、iDeCo(イデコ)のほうが税制上のメリットは強くなります。

 

ちなみに、税金面で気をつけなければならないのは『贈与税がかかるケース』です。

保険料を負担する契約者と年金を受け取る被保険者が違う場合、受給開始時に贈与税、2年目以降には運用益に所得税がかかってしまいます。

契約者(保険料負担者):夫
被保険者(受取人):妻

上記のケースは夫から妻への贈与とみなされます

やむを得ずこのようなケースで加入する際には、十分に理解しておかなければなりません。

 

年金の受け取り方

いざ年金を受給できる年齢になったときに、どのような形で受け取れるのかを比較します。

年金の受給方法 万が一死亡したとき
個人年金保険 一括
年金形式(年1回、年2回、年4回、年6回、年12回)※商品による
死亡給付金
(一般的には払込保険料相当額)
iDeCo 一括
年金形式(年1回、年2回、年4回、年6回)
※一時金+分割の併給も可能
死亡一時金
(積立金相当額だが運用成績によって変動する)

 

どちらも、まとめて一括で受け取ったり毎年分割で受け取ったりと、都合の良い方法に設定できます。

ただし注意したいことは、個人年金保険の商品によっては12か月に割って少しずつ受け取りたい人にも対応している商品はありますが、iDeCo(イデコ)は最多でも2か月に1回と隔月の支給までしか選択できません。その際は公的年金に準じた偶数月に支給されます。

「まとまった一時金で住宅ローンに充てたい」
「公的年金と同じペースで受給したい」
「お給料のように毎月受け取りたい」

など、その時のご自身や家族の状況に応じた最適な受け取り方を選びましょう。

 

運用について

個人年金保険とiDeCo(イデコ)のどちらにも、将来もらえる年金額が確定しているプラン変動するプランが用意されています。

定額 変額
個人年金保険 円建て個人年金保険 外貨建て個人年金保険
iDeCo 定期預金
保険商品
投資信託

 

年金額が定額で低リスクの商品は、利息も低いため元本はたいして増えませんが、万が一損失が出て将来の老後資金が減ってしまうリスクは回避できます

反対に、運用成績で年金額が増減する変額の商品は元本割れのリスクを避けられません。しかし、運用しながら積み立てることで元本以上の年金額を用意できる可能性があり、景気変動のインフレに合わせた資産形成が可能です。

ちなみに変動する商品では、このような方法で投資・運用されます。

■国内・外国債券型
■国内・外国株式型
■国内・外国不動産投資信託『REIT』
■複数を組み合わせた『バランス型』

など

定額と変額にはそれぞれ利点がありますので、自身の好みはもちろん他の資産の状況なども考慮して選ぶと良いかもしれません。

 

個人年金保険とiDeCo(イデコ)のメリット

個人年金保険のメリット

・運用は保険会社に任せられるので気楽
・管理手数料等は保険料に含まれている
・もしもの時は中途解約できる

個人年金保険の特長は、毎月引き落とされることで老後の資金を半強制的にしっかりと貯められることです。貯金が苦手な人でも知らないうちに、まとまった資産を作ることができます。

運用についても保険会社に一任でき手数料等の諸経費も保険料に含まれているので、わずらわしい手間がかからないのもメリットです。

また、事情があって保険料を払えなくなった場合には中途解約もできます。あまりおすすめはしませんが、万が一のときの逃げ道となりえるでしょう。

 

iDeCo(イデコ)のメリット

・個人年金保険よりも税制優遇が多い
・自分で運用を行える
・運用方法は投資信託と定期預金のどちらも選べる

iDeCo(イデコ)も半強制的に老後資金を蓄えることが特長ですが、国の制度ということもあって個人年金保険よりも所得控除が優遇されています

また、運用方法を自分で選ぶことができるので、投資に興味がある人や他人任せだと心配な人にとっては利用に適した制度です。分散投資や運用状況に合わせたスイッチング(銘柄の変更)などを行い、みずからの判断で運用効率を上げられます。

さらにiDeCo(イデコ)では、さまざまな投資信託や定期預金から投資配分を好きなように分散できます

・高リスクな投資信託+低リスクな投資信託
・低リスクな投資信託+定期預金など

個人年金保険は加入するときに低リスクな定額商品か、積極的に運用する変額商品かを選ばなければなりません。途中からでもリスクを分散できて良いとこ取りができるのはiDeCo(イデコ)の持つ魅力です。

 

個人年金保険とiDeCo(イデコ)のデメリット

個人年金保険のデメリット

・税制優遇がiDeCo(イデコ)に比べると少ない
・中途解約するとほとんどの場合は損をする
・固定される利率が低いためインフレに対応できない

先ほどの『1-2.節税効果』にもあったように、iDeCo(イデコ)は掛金や運用益、年金の受給時にも課税が優遇されているのに対し、個人年金保険は年間の支払保険料に応じた控除しかありません

また、万が一の場合には中途解約できますが、解約返戻金は自分が払い込んだ保険料の総額よりも少なくなってしまうことがほとんどです。継続が難しくなってしまったときの最終手段ではありますが、なるべく払込期間中の解約は避けましょう。

そして、昔のように大きなリターンのない現代の個人年金保険では、時代の流れとともに起こる物価上昇に対応しきれないのも気になるところです。

現在の100万円が20年後30年後には価値が下がるかもしれないことを想定すると、せっかく貯めた私的年金が老後資金として足りなくなってしまう可能性もデメリットと言えます。

 

iDeCo(イデコ)のデメリット

・iDeCo(イデコ)には別途手数料がかかる
・運用の知識がある程度必要になる
・中途解約できない

iDeCo(イデコ)には、加入時や毎月の口座管理手数料などの費用が別途かかります。金融機関によって手数料が異なるため、申し込む際には手数料を考慮して選ぶようにしましょう。

また運用を自分で行えることはメリットでも挙げましたが、あまり株や投資に興味がない人はむしろハードルが高く感じてしまうかもしれません。せっかく積み立てたお金を無駄にしないためにも、ある程度は自分で調べるなど勉強が必要です。

もちろん運用にはリスクが伴うため、結果次第では元本が目減りする可能性も否めません。

そして最も気を付けてほしいのは、iDeCo(イデコ)は原則途中で解約できないということ。万が一の事態にお金を引き出したいと思っても、60歳までは現金化できません

 

個人年金保険とiDeCo(イデコ)のどちらに加入すべき?

ここまでのメリットとデメリットをもとに、どちらに加入するのが合っているのかを判断するためのを考察していきましょう。

個人年金保険が合っている人

●運用に手間をかけたくない
●元本保証の低リスクで着実に積み立てたい
●「個人年金保険料控除」を有効活用したい

「あまり運用には興味がないけれど、老後の資金はしっかりと貯めたい」と考えている人は、個人年金保険のほうが合っているでしょう。

iDeCo(イデコ)で自分が運用しなければいけなかったり、元本割れで損をしたりすると、大きなストレスを感じてしまうかもしれません。

個人年金保険でも、年末調整や確定申告の際にはちゃんと節税の恩恵も受けられます。

 

iDeCo(イデコ)が合っている人

●株や投資に興味がある
●所得があり税制優遇を最大限に生かしたい
●60歳まで継続する金銭的余裕がある

「投資にも興味があり積極的にお金を増やしたい、所得が多いので税金対策したい」と考えている人は、iDeCo(イデコ)のほうが合っています。

年収が多ければ、60歳まで掛金を払い続けることもそう難しくなく、投資リスクを許容する余裕もあるでしょう。

最大限に控除枠を活用すれば、所得税率を下げる節税効果も期待できます。

 

 

まとめ

今回は個人年金保険とiDeCo(イデコ)についてご紹介しましたが、どちらの性質がご自身に向いていると感じたでしょうか。

お金を貯める方法はいろいろありますが、その中でも老後の資産形成は節税効果があります。どちらか一方を選んでもよいし、余裕があれば両方を併用して最大限の控除を受けても問題ありません。

うまく活用しながら、『人生の三大支出』といわれる老後資金に効率よく備えましょう。

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