皆さんは所得税の控除項目を全てご存知でしょうか?
「混沌として分かり辛いし、知らなくても後悔しないよ。」とお考えの方、損をしているかもしれませんよ?
控除項目の知識をつけることで、自分が今までどの項目で余計に税金を支払っていたのか、可視化することができます。
そうすることで、今までよりもずっとお得な生活を送ることができるようになります。
それでは、所得税の控除について一緒に確認していきましょう。
所得税の控除とは?
所得税の控除の概要
「控除」とはお金を差し引くことを意味します。
所得税の場合で言えば、働いて得たお給料から、給与所得控除、所得控除、税額控除などを差し引き、そして残った額から所得税を計算します。
以下に、詳細な税額計算方法について図で表現しようと思います。
さて、所得税などの税を負担する際にはどうしても個々の家計状況に応じて負担できる能力が異なってしまいます。
税法上ではこのような状況を考慮して公平に課税するために、個々の収入からやむを得ない支出を差し引いて(控除)、税額を計算します。
これが控除というシステムが存在する理由です。
税務署などは一般に、足りない分の税金は請求しますが、余計に徴収した税金に関してはその都度親切に教えてくれません。
つまり、払いすぎてしまった控除は、自分で申告しないと徴収されたままです。
このような事態を防ぐためにも、控除項目をしっかりと知っておきましょう。
以下ではまず、どのような控除項目があるのかを簡単に表形式で確認してみましょう。
所得税の控除解説
14種の所得控除
まず、所得控除について大まかな内容を確認してみましょう。
所得控除は税率を掛ける前に所得金額から引かれる控除項目のことです。
所得控除は全部で14種類あります。
雑損控除 | 災害や盗難、横領を受けたことで資産に損害が発生した場合に受けることができる控除 |
医療費控除 | 自分やその配偶者、親族等に支払った医療費が一定金額を超えた場合に受けることができる控除 |
社会保険料控除 | 納税者やその配偶者、親族等に社会保険料を支払った場合に受けることができる控除 |
小規模企業共済等掛金控除 | 納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に受けることができる控除 (例えば、企業型/個人型年金加入者掛金などが対象) |
生命保険料控除 | 納税者が生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けることができる控除 |
地震保険料控除 | 納税者が特定の損害保険の地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けることができる控除 |
寄付金控除 | 納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人(例えば学校など)に「特定寄付金」を支出した場合に受けることができる控除。 |
障害者控除 | 納税者自身やその扶養家族が、所得税法上の障害者に該当する場合に受けることができる控除 |
寡婦(寡夫)控除 | 納税者自身が寡婦(寡夫)である場合に受けることができる控除 |
配偶者控除 | 納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けることができる控除 |
配偶者特別控除 | 上記の配偶者控除が受けることができない場合でも、配偶者の所得金額に応じて受けることができる控除 |
扶養控除 | 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けることができる控除 |
基礎控除 | 納税者全員に無条件で適用される控除 |
勤労学生控除 | 納税者自身が勤労学生である場合に受けることができる控除 |
後ほど、所得控除については全項目を詳しく解説いたします。
興味のある項目については併せてそちらも参照していただければと思います。
19種の税額控除
税額控除とは、課税所得金額に税率を掛けた後に引かれる控除項目のことです。
税額控除は全部で19種類存在します。
表形式にして大まかな内容を確認してみましょう。
配当控除 | 株式などの配当があった場合に受けることができる控除 |
外国税額控除 | 本来であれば、日本で課税される所得の中に、外国で得た所得があり、その所得に対して外国で所得税が徴収されている場合に受けることができる控除 |
政府等寄付金特別控除 | 政党や政治資金団体に対して、一定の寄付金を資金支払った場合に 受けることができる控除 |
認定NPO法人等寄附金特別控除 | 認定NPO法人等に対して一定の寄付金を支払った場合に受けることができる控除 ※所得控除の適用を受けている際は対象になりません |
公益社団法人等寄附金特別控除 | 公益社団法人の他、学校法人等に対して一定の寄付金を支払った場合に受けることができる控除 ※所得控除の適用を受けている際は対象になりません |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除 | 住宅ローン等を利用して住宅の新築や増改築をした場合に受けることができる控除 |
住宅耐震改修特別控除 | 1981年5月31日以前に建築された一部の自己の居住の用に供する家屋で、住宅耐震改修をした場合に受けることができる控除 ※自己の所有であるかは問いません |
住宅特定改修特別税額控除 | バリアフリー改修工事など、一定の要件を満たす改修工事を行った場合に受けることができる控除 |
認定住宅新築等特別税額控除 | 例えば、認定長期優良住宅に該当する家屋といった住宅を取得等した場合に受けることができる控除 ※(特定増改築等)住宅借入金等特別控除との選択適用になります |
試験研究を行った場合の所得税額の特別控除 | 青色申告者が試験研究を行った場合に受けることができる控除 |
高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除 | 青色申告者が、新たに高度省エネルギー増進設備等の取得をし、これを事業に活用した場合に受けることができる控除 |
中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除 | 青色申告者である中小事業者が、新たに特定機械装置等の取得等をし、これを事業に活用した場合に受けることができる控除 |
特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除 | 前年と本年で離職者が出なかった青色申告者で、基準雇用者数及び基準雇用者数割合が特定の条件を満たす等した場合に受けることができる控除 |
特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除 | 一定の青色申告者である中小企業者が、経営改善設備の取得等をし、これを事業に活用した場合に受けることができる控除 |
雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除 | 給与等を支給する青色申告者で、その給与等支給額が一定以上増加した場合に受けることができる控除 |
地方活力向上地域等において特定建物を取得した場合の所得税の特別控除 | 青色申告者が、「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」について認定都道府県知事から承認を受けて、2年以内に建物などを建造して且つ事業に活用した場合に受けることができる控除 |
地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の所得税の特別控除 | 一定の条件を満たす青色申告者が、特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をする場合において、それに用いる機会を取得し、事業に活用した場合に受けることができる控除 |
特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税の特別控除 | 青色申告者である一定の中小事業者が、特定経営力向上設備等を取得等し、これを事業に活用した場合に受けることができる控除 |
革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除 | 一定の条件を満たす青色事業者が、一定規模以上の革新的情報産業活用設備を取得等をし、これを事業に活用した場合に受けることができる控除 |
以上、19種類ある税額控除の概要を紹介いたしました。
表の後半の9項目は青色申告者に関係するものであり、サラリーマンなどの一般の方々に関係が深いのは前半の9項目といえるでしょう。
本記事ではさらに、その中でも特に重要である配当控除、外国税額控除、 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除、住宅耐震改修特別控除、住宅特定改修特別税額控除、認定住宅新築等特別税額控除にこの後焦点を当て、掘り下げて説明をして参ります。
もし、他の詳細な税額控除項目に興味がある方は併せて以下のURLを参照頂ければと思います。
国税庁のHP
所得税の控除の具体的な説明
給与所得控除
給与所得控除について
ここではまず、所得控除や税額控除の詳細な説明に入る前に、給与所得控除について説明します。
給与所得控除とは、いわば会社員などの給与所得者にかかる経費のようなものであると考えてください。
会社員が業務をする上で、給料からのやむを得ない支出は付き物です(文房具や職場で使う衣服など)。
こうした事態を考慮して、公平に課税するために予め給与収入からある程度の金額が控除されます。
※給与収入に含まれるものに少しだけ注意を払う必要があります。
それは、支給される給与やボーナスといった他に、一部の現物支給もカウントされるという点です。
給与所得控除の計算方法
ここでは、給与所得控除の計算方法について、簡単に紹介しようと思います。
給与所得控除は、給与収入等の額によって計算式が異なり、控除額が変化します。
しかし、たとえ支出がなくても控除額が存在するという点が特徴で、自営業者などの経費とはこの点で異なってきます。
下図が給与所得控除額を表した表です。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額 × 40% ※65万円に満たない場合の控除額は65万円です |
180万円超え 360万円以下 | 収入金額 × 30% + 18万円 |
360万円超え 660万円以下 | 収入金額 × 20% + 54万円 |
660万円超え 1,000万円以下 | 収入金額 × 10% + 120万円 |
1,000万円超え | 220万円(上限) |
給与等の収入金額が少ないほど、控除額が多くなっている点が特徴と言えます。
また、給与所得控除とは別に特定支出控除というものも認められています。
例えば、職務に必要な資格を取得するために支出した場合などはこの控除が認められる可能性があります。
詳細な条件にご興味がある方は、以下のURLを参照したいただけると幸いです。
給与所得者の特定支出控除(国税庁HP)
各所得控除の具体的説明
ここでは、先ほど取り上げた所得控除をもう少しだけ、要点を掻い摘んでご説明いたします。
各控除項目を対象、計算方法、注意点に分けてそれぞれ説明します。
雑損控除について
・対象
震災、風水害等の自然現象や火災等の人為的な異常、または害虫による災害といったことで被害を被った納税者、およびそれと生計を一にする総所得金額が38万円以下の家族などの人が主に対象となる可能性があります。
・計算方法
雑損控除を計算するにあたって、「差引損失額」がキーワードになります。
まず、差引損失額の導き方を紹介しましょう。
差引損失額 = 損害金額 + 災害等に関連したやむを得ない支出の金額 - 保険金などにより補填される金額
このようにして求めた差引損失額を、以下の計算式⑴または⑵で計算して、金額の大きい方が雑損控除額となります。
⑴ 差引損失額 - 総所得金額等 × 10%
⑵ 差引損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円
・注意点
主な注意点を2点ほど挙げたいと思います。
①生活に必要な資産のみが対象になります。(棚卸資産などの事業用資産は対象外)
②詐欺や恐喝による被害は対象外です。(詐欺などによる被害は自己責任という判断に基づいています。)
医療費控除について
・対象
納税者が自分、もしくは納税者と生計を一にする配偶者や家族などのために、その年の1月1日から12月31日の間に支払った医療費が医療費控除の対象となる可能性があります。
簡単に言うと、支払った医療費が10万円を超えると控除の対象となりえます。
そこで、次に計算方法を確認してみましょう。
・計算方法
基本的に、医療費控除額はいかの計算式から導くことができます。
実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補填される金額 - 10万円
※その年の総所得金額が200万円未満の人はその総所得金額等の5%の金額が控除額になります。
・注意点
医療費控除において問題となるのは、「そもそも医療費とはどこまでがそれに含まれるのか」という点にあります。
ポイントはその支払ったお金が治療目的にあるのかどうか、という点です。
細かい条件はありますが、治療目的で支出したお金は原則、医療費に含まれます。
例えば、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価といったものは、一見すると判断に迷うことがあるかもしれません。
しかし、治療目的ということであれば、これらも医療費としてカウントすることができます。
社会保険料控除について
・対象
納税者が自分、または生計を一にする配偶者や家族などに負担すべき社会保険料を支払った場合に控除の対象となる可能性があります。
また、社会保険控除の対象となる、主な社会保険料は以下のようになります。
⑴健康保険料や、国民年金、厚生年金保険料、および船員保険料
⑵国民健康保険料や国民健康保険税
⑶介護保険料
⑷労働保険料
この他にも、控除の対象となる細かな社会保険がありますので、そちらに関しては以下のURLを参照していただければ幸いです。
社会保険料控除(国税庁のHP)
・計算方法
社会保険料控除額は原則全額となります。
厳密に言うと、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金等から差し引かれた金額の全額です。
・注意点
その年に支払った現金を対象として控除するという点に注意が必要です。
例えば、過去の社会保険料を20××年に一括して払ったり、あるいは来年の社会保険料をこれまた20××年に払ったとしましょう。
この時、こうして払った社会保険料は全て20××年の社会保険料としてカウントすることができます。
※前納する場合はその期間が1年以内に限ります。
小規模企業共済等掛金控除について
・対象
控除できる掛金として、以下の3種類が挙げられます。
⑴小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
⑵確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金
⑶地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金
・計算方法
小規模企業共済等掛金控除額はその年に支払った全額です。
・注意点
対象項目の⑴おいて、旧第二種共済契約の掛金はこの控除ではなく生命保険料控除の対象となります。
生命保険料控除について
生命保険料控除は平成24年 (2012年) 1月1日以降に締結した保険かどうかで仕組みが異なります。
ここでは平成24年1月1日以降に締結した保険という前提で、ご説明いたします。
・対象
生命保険料や介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合は、生命保険料控除の対象となる可能性があります。
条件についてかなり細かく規定されていますので、詳細は以下のURLを参照していただければ幸いです。
生命保険料控除の対象となる保険契約等(国税庁のHP)
・計算方法
生命保険料控除額は生命保険、介護医療保険、個人年金保険、それぞれにおいて最大4万円となっています。
そしてどんなに多くても控除額の最大値は12万円と設定されています。
以下に表形式で計算式をご紹介いたします。
年間の支払保険料等(A) | 控除額 |
2万円以下 | 全額 |
2万円超え 4万円以下 | A × 1/2 + 1万円 |
4万円超え 8万円以下 | A × 1/4 + 2万円 |
8万円超え | 一律4万円 |
※支払保険料等とは、その年に支払った金額からその年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
・注意点
⑴保健期間が5年未満ですと、控除の対象にならない可能性があります。
⑵平成23年12月31日に締結した保険ですと、上記で説明したことに該当しない可能性があります。
その他、以下を参照していただけると幸いです。
生命保険料控除(国税庁のHP)
地震保険料控除について
・対象
納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛金を支払った場合に、控除の対象となる可能性があります。
・計算方法
地震保険料控除の控除額は最大5万円です。
以下の表で計算式を確認してみましょう。
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
5万円以下 | 全額 |
5万円超え | 一律5万円 |
・注意点
地震保険料控除と関連して、平成19年 (2007年) 分から損害保険控除が廃止されてしまいました。
そこで、経過措置として、一定の条件を満たす長期損害保険契約等に係る損害保険料を地震保険料控除の対象とする措置がとられています。
詳細な条件等は以下のURLを参照頂ければ幸いです。
2006年12月31日までに締結された保険等ある方は、一度確かめてみるのが良いかもしれませんね。
地震保険料控除(国税庁のHP)
寄付金控除について
・対象
寄付金控除は国や地方公共団体、特定公益増進法人に対し「特定寄付金」を支出した場合に控除が受けられる控除項目ということでした。
ここでは、特定寄付金の範囲についてもう少しだけ詳細に確認してみましょう。
以下の要件のいずれかを満たすものを特定寄付金といいます。
⑴国や地方公共団体に対する寄付金
⑵公益社団法人や公益財団法人等に対する寄付金
※広く一般に募集され、教育の振興や文化の向上など公益の増進に寄与するもので緊急性が高いものという条件付きです。
⑶独立行政法人、私立学校、社会福祉法人等に対する寄付金
⑷特定公益信託に支出した金銭
※⑶、⑷は公益の増進に寄与するものという条件付きです。
⑸政治活動に関するもののうち一定のもの
⑹認定NPO法人に対するもののうち一定のもの
などが挙げられます。
・計算方法
寄付金控除額は以下のようにして計算することができます。
⑴その年に支出した特定寄附金の額の合計額
⑵その年の総所得金額等の40%相当額
寄付金控除額 = ⑴、⑵のうち金額が低いもの - 2,000円
したがって、2,000円を超える寄付金を行った場合は寄付金控除の対象となる可能性があります。
その場合は確定申告前に一度確認してみると良いでしょう。
・注意点
政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金、公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除の代わりに税額控除を選択することができます。
国税庁HPのURLを挿入しましたので、興味がある方は参照していただければ幸いです。
障害者控除について
・対象
納税者自身やその同一生計配偶者や家族などが所得税法上の障害者に該当する場合に、控除対象の可能性があるものを障害者控除といいました。
※同一生計配偶者とは、納税者の配偶者でその納税者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く。)のうち、合計所得金額が38万円以下である者をいいます。
ところで、所得税法上の障害者とは具体的にどのような人を指すのでしょうか?
簡単な具体例を挙げますと
⑴重度の精神上の障害がある人
⑵医者や児童相談所等に知的障害者と判定された人
⑶精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
⑷身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
などが挙げられます。
より詳細な条件については以下のURLを参照していただければ幸いです。
障害者控除(国税庁のHP)
・計算方法
障害者控除の金額は、区分によって異なります。
以下で確認してみましょう。
区分 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
※特別障害者は、障害者のうち障害の程度が重度である人のことを指します。
※同居特別障害者とは、特別障害者であり、納税者自身や配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方です。
・注意点
障害者控除は、扶養控除の場合には対象外となる16歳未満の家族であっても控除対象となります。
寡婦(寡夫)控除について
・対象
ここでいう寡婦(寡夫)とは、夫(妻)と離婚や死別し、その後婚姻をしていない人であったり、夫(妻)の生死が明らかでない一定の人を指します。
寡婦控除と寡夫控除とでは、控除対象となる条件が少しだけ異なります。
以下の図で確認してみましょう。
ご覧になって分かる通り、寡夫控除の方が条件が少しだけ厳しくなっています。
独身男性と独身女性とでは独身女性の方が生活する上で大変であろう、という考えからこのような設定になっている考えられます。
・計算方法
控除額もやはり、寡婦控除と寡夫控除とでは若干異なっています。
ア)寡婦控除の場合
区分 | 控除額 |
一般の寡婦 | 27万円 |
特定の寡婦 | 35万円 |
イ)寡夫控除の場合
この場合、控除額の幅は無く、27万円となります。
・注意点
近年、婚姻形態の多様化が進んでいますが、婚姻届を出して夫婦関係になっていないと、この控除の対象とはなりません。
配偶者控除について
・対象
配偶者控除は、給与収入が103万円以下、すなわち給与所得金額が38万円以下の配偶者がいる場合に、対象となる可能性がある控除のことです。
・計算方法
配偶者控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額や控除対象の配偶者の年齢により細かく分類されています。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 |
控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 70歳以上の控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超え 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超え 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
・注意点
控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除を受けることができません。
配偶者特別控除について
・対象
配偶者の給与収入額が103万円を超えてしまい、配偶者控除を受けることができなくなってしまった人を対象とした控除項目です。
具体的に言いますと、配偶者の年間の給与収入が201万円までなら配偶者特別控除の対象となる可能性があります。
・計算方法
配偶者特別控除の額は、控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額及び配偶者の合計所得金額によって細かく分類されています。
配偶者の合計所得金額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||
900万円以下 | 900万円超え 950万円以下 |
950万円超え 1,000万円以下 |
|
38万円超え 85万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
85万円超え 90万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
90万円超え 95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
95万円超え 100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
100万円超え 105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
105万円超え 110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
110万円超え 115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
115万円超え 120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
120万円超え 123万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
・注意点
配偶者特別控除も配偶者控除同様に、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えてしまうと控除を受けることができません。
また、配偶者特別控除を夫婦間で受けることもできません。
よく、配偶者控除や配偶者特別控除と絡めて「103万円の壁」、「150万円の壁」といった話が引き合いに出されます。
以下の記事にまとめてありますので、よろしけばご参照ください。
所得税とは?所得税の仕組みについてわかりやすく解説します!
扶養控除について
・対象
納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けることができる控除です。
そもそも、扶養親族とはどのような人を指すのでしょうか?
以下の条件をすべて満たすと、扶養親族となります。
⑴配偶者以外の親族であること。(6親等内の血族及び3親等内の姻族を親族と定義します。)
(6親等以内の血族、3親等以内の姻族の例として各々「はとこ」、「甥や姪」などが挙げられます。)
⑵納税者と生計を一にしていること。(別居でも仕送りなどを受けていれば問題ありません)
⑶年間の合計所得金額が38万円であること。(給与のみの場合は103万円が上限です)
⑷青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。(例えば家族が飲食店を経営していて、そこの従業員として働いていないなど、です)
そして、このような扶養親族のうち控除対象となるのは16歳以上の人となります。
・計算方法
扶養控除額は扶養親族の年齢、同居の有無などで異なります。
表形式にして確認してみましょう。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族(※) | 63万円 | |
老人扶養親族(※) | 同居老親等以外の人 | 48万円 |
同居老親等(※) | 58万円 |
※特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち年齢が19歳以上、23歳未満の人を指します。
※老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち年齢が70歳以上の人を指します。
※同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。
・注意点
上の項目に補足する形で、同居老親等における「同居」とは、仮に治療の為に長期期間入院しているとしても同居扱いとなります。
しかし、老人ホームへの入居は別居扱いとなります。
基礎控除について
基礎控除とは、他の所得控除と異なり一定の条件を満たす必要が無く、納税者全員に一律に適用されます。
その控除額は38万円です。
勤労学生控除について
・対象
納税者自身が勤労学生である時、控除を受けることができるのが勤労学生控除でした。
勤労学生の定義について以下に、簡単に紹介いたします。
⑴給与所得などの勤労による所得があること。
⑵合計所得金額が65万円以下であること。(つまり、給与収入が130万円以下まで対象です)
⑶特定の学校の学生、生徒であること。
・計算方法
勤労学生控除の額は一律に決まっています。
27万円が控除額となります。
・注意点
対象項目にある⑴以外の収入が10万円を超えてしまうと勤労学生控除を受けることができません。
以上、14種類ある所得控除について解説いたしました。
さらに細かい条件に興味がある方などについては以下のURLを参照していただければ幸いです。
所得控除のあらまし(国税庁のHP)
主な税額控除の具体的な説明
ここでは、19種類ある税額控除うち特に重要と思われる6種類の税額控除について具体的にご説明いたします。
所得控除と同様に原則として対象、計算方法、注意点に分けて説明いたします。
配当控除について
・対象
配当控除とは、利益や剰余金の配当などの配当所得がある場合に対象となる控除項目のことでした。
特に、この配当とは日本国内にある法人から受けるものに限ります。
したがって、外国法人から受け取る配当等は対象外となります。
・計算方法
配当控除額は、その年の課税総所得金額等などにより細かく分類されています。
ここでは、一例として課税総所得金額等が1,000万円以下の時の配当控除額の計算方法についてご紹介いたします。
配当控除額 = ⑴ + ⑵
⑴剰余金の配当等に係る配当所得の金額 × 10%
⑵証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額 × 5%
・注意点
配当控除は実に細かく分類されているので、ここでは割愛とさせていただきます。
ここでは配当控除という控除項目の存在を知っていただいて、控除の選択肢を増やしていただければと思います。
さらに詳細な点までご興味がある方は以下のURLを参照していただければ幸いです。
配当所得があるとき(配当控除)(国税庁のHP)
外国税額控除について
・対象
外国税額控除は、日本と外国で重複して所得税の課税がされてしまうことを防ぐために存在する控除項目のことでした。
外国所得税について少しだけ紹介いたします。
外国所得税とは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税のことを言います。
しかし、外国で課税されたものであったとしても、例えば納税後にその金額の還付を請求できる場合などでは、外国所得税として扱われません。
・計算方法
外国税額控除額の計算方法について簡単に説明いたします。
⑴控除対象外国所得税額が所得税の控除限度額に満たない場合
→外国税額控除額は、控除対象外国所得税額になります。
⑵ ⑴を満たさない時
→ア)所得税の控除限度額
イ)控除対象外国所得税額から所得税の控除限度額を差し引いた額
ウ)復興特別所得税の控除限度額
外国税額控除額 = ア) + {イ)、ウ)のうち少ない方}
・注意点
外国税額控除につきましても、実際はさらに細かい規定がなされています。
ご興味がある方は以下のURLでそのことについて参照していただければ幸いです。
居住者に係る外国税額控除
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除について
・対象
住宅ローン等を利用して住宅の新築や取得、増改築をした場合に対象となる控除項目です。
これには新しく家を建てたり、新築に家を買ったりする他、
⑴中古住宅を取得した場合
⑵借入金を利用して省エネ改修工事を行った場合
⑶借入金利用してバリアフリー改修工事を行った場合
なども控除の対象となりえます。
計算方法などにつきましては、上記に挙げた場合に応じてそれぞれ細かく規定されています。
ここまでお読みになられて、詳細が気になった方は以下のURLを参照していただければ幸いです。
マイホームの取得等と所得税の税額控除(国税庁のHP)
住宅耐震改修特別控除について
・対象
住宅耐震改修特別控除とは、平成18年4月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、自己の居住の用に供する家屋について住宅耐震改修をした場合に対象となる控除項目のことです。
※耐震改修は、現行の耐震基準に適合していると確認が取れなければなりません。
・計算方法
住宅耐震改修特別控除額は、耐震改修を行った時期で細かく分類されています。
例えば、平成26年4月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に住宅耐震改修をした場合は、耐震改修工事に係る標準的な費用の10%が控除額になります。(上限は25万円)
・注意点
住宅耐震改修特別控除についても、この他に多数細かい規定がなされています。
詳細な条件について確認したい方は以下のURLを参照していただければ幸いです。
耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)
住宅特定改修特別税額控除について
・対象
住宅特定改修特別税額控除は、
⑴バリアフリー改修工事を行った場合
⑵省エネ改修工事を行った場合
⑶多世帯同居改修工事を行った場合
⑷耐久性向上改修工事を行った場合(住宅耐震改修工事や⑶の工事と併せて行うのが条件です)
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除と異なるのはローンなどの借り入れを行わずとも適用されるという点です。
・計算方法
この場合も各々の改修工事によって控除額の計算方法や条件が異なっています。
例えば、省エネ改修工事の場合、平成26年4月1日から平成33年12月31日までに行った場合は、標準的な改修工事費用の10%と規定されています。
・注意点
より、詳細な点については以下のURLを参照していただければ幸いです。(国税庁のHPです)
⑴のとき、⑵のとき、⑶のとき、⑷のとき
認定住宅新築等特別税額控除について
・対象
認定住宅新築等特別税額控除に該当する、「認定長期優良住宅」並びに「認定低炭素住宅」について簡単にご説明いたします。
認定長期優良住宅とは一般に以下の条件を満たすと、そのように認定される可能性があります。
⑴長期に使用するための構造及び設備を有していること
⑵居住環境等への配慮を行っていること
⑶一定面積以上の住戸面積を有していること
⑷維持保全の期間、方法を定めていること
一方、認定低炭素住宅は以下の条件を満たすとそのように認定される可能性があります。
⑴建築物のエネルギーの使用の効率性やその他の性能が、省エネ法の判断基準を超え、誘導基準に適合するものであること。
⑵都市の低炭素化の促進に関する基本方針に照らして適切なものであること
⑶資金計画が低炭素化のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切なものであること。
このような認定を受けると控除の対象となる可能性があります。
それが、認定住宅新築等特別税額控除です。
・計算方法
認定住宅新築等特別税額控除についても、実際には細かく控除額が設定されています。
しかし、原則としてその控除額は、認定住宅の認定基準に適合するために必要となる標準的なかかり増し費用の10%となっています。
・注意点
認定住宅新築等特別税額控除を受けるには、この他にも細かな条件があります。
ここまで読んでみてこの控除を受ける可能性があると感じられた方は、是非以下のURLを参照して下さい。
認定住宅の新築等をした場合(認定住宅新築等特別税額控除)
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まとめ
以上、所得税の控除の全体像をご説明いたしました。
この記事を読んで、一口に控除といっても実に多種多様な控除項目が存在していることを実感して頂けたでしょうか。
そして、「控除の選択肢が広がって、前よりもお得な生活を送れている」と感じて頂ければ幸いです。