年収1000万の夫婦の年金受給額の目安と老後資金の増やし方とは

自分の老後生活については、誰しも気になるキーワードのひとつですよね。今回は、「世帯年収1,000万円」の夫婦がもらえる年金受給額についてまとめました。

とはいえ年金受給額の試算は細かな要件で変わるためなかなか難しく、実際に受給するときまでご自身の正確な金額を知ることはできません。

そこで、夫の年金加入状況と妻の年金加入状況を3パターンのモデルケースに分けて解説しています。

ぜひご自身の状況と照らし合わせ、より近いケースを参考にしながらご覧ください!

目次

年収1000万の夫婦の年金受給額の目安

国民年金の年金受給額は「加入期間」によって一律支給

国民年金の支給額は、年収などに関係なく「加入期間」の長さによって一律に支給されます

自営業者やフリーランスなど国民年金のみに加入している方にとっては、この一律に支給される基礎年金が老後生活の主たる収入源になるでしょう。

加入期間が最も長いのは20歳から60歳までの40年間で、全期間きちんと納付した人の老齢基礎年金の満額は年78万1,700円(令和2年現在)です。

20歳から会社で継続して厚生年金に加入していた方や、自営業者で20歳から加入して全期納付している方は、こちらの満額を目安にしてください。(結婚して20歳以前から会社員の夫の扶養に入っていた妻も、国民年金に加入して保険料を払っていたとみなされ満額が受け取れます。)

※ちなみに厚労省の概況データによると、平成30年度の65歳以上の年金受給者に支給された平均月額は5万6,058円。その中でも、60歳~64歳から繰上げ受給をしている人の平均月額は4万3,479円、反対に65歳以降で繰下げ受給をした人の平均月額は7万6,274円となっています。

厚生年金に加入している会社員や公務員の方は、この国民年金と併せて厚生年金からも年金が受給できます。

厚生年金の年金受給額は「平均標準報酬月額」×「給付乗率」×「加入期間」

厚生年金の年金額は国民年金より複雑で、加入期間中の給与の平均額である「平均標準報酬月額」「給付乗率」、それまでの「加入期間」によって算出されます。

※「給付乗率」はそのときによって変わるため、現時点での正確な給付額を知ることはできません。

「平均標準報酬月額」とは、加入期間すべての「標準報酬月額」を足して、総加入期間の月数で割った金額です。ここでの「標準報酬月額」には以下の範囲も含まれます。

*基本給、役職手当、勤務地手当、家族手当、通勤交通費、住宅手当、残業手当など
*労働の対償として事業所から支給された現金または現物
*賞与

それでは年収1,000万円の方の厚生年金受給額の目安を大まかに試算してみましょう。

試算の条件
厚生年金の加入期間 2003年3月まで13年(加入月数156月)
2003年4月から27年(加入月数324月)
平均標準報酬月額 59万円
標準賞与額 150万円×年2回
厚生年金受給額の目安
① 59万円×7.125/1000×156月=65万5,785円
② (59万円+25万円)×5.481/1000×324月=149万1,708円
①+② =214万7,493円(年額)

上記を月額にすると、老齢厚生年金の受給額はおよそ月17万円になります。

※あくまでも概算による受給額であり将来もらえる額を保証するものではありません。また、現在の年収が1,000万円の方であっても平均標準報酬額や加入期間が異なる場合、乗率が変わる場合には年金額が変動しますので、ひとつの目安としてご覧ください。

ちなみに、厚生年金の保険料額表は標準報酬月額が1等級から32等級に分かれており、最も高額な32等級の標準報酬月額は【63万5,000円~】です。すなわち平均月収が63万5千円以上の場合は、保険料額が上限に達して一律となります。

年金受給額は納めた保険料額に応じて決まりますので「収入が上がれば際限なく年金も上がる」というわけではない点に注意しましょう。

参照:日本年金機構 厚生年金保険料額表(令和2年9月分~)厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険

加入状況別にみる夫婦の年金受給額の目安

『世帯年収1,000万円』とはいっても、ご家庭の環境によって年金の加入状況はさまざまです。妻が専業主婦、またはフリーランスとして働いているケースもあれば、夫婦そろって会社に勤め厚生年金に加入している共働きのケース、あるいは夫が自営業をしているケースなども考えられます。

そうした年金の加入状況を3パターンの例にして、将来もらえる年金額がどのくらい影響を受けるのかを見ていきましょう。

万が一世帯主が妻の場合や、夫と妻それぞれの収入が当てはまらない場合には、個々の状況と近い試算を参考にして足していただけると、より具体的にイメージがわきます。

※夫婦は同年齢で65歳から受給開始とします。

ケース1、年収1000万円会社員夫×専業主婦

まず初めに、夫は会社員で厚生年金に加入しており、妻は専業主婦でこれまで厚生年金に加入したことがない、というケースで試算します。

夫の年金額
●加入状況

厚生年金の加入期間(40年) 2003年3月まで13年(加入月数156月)
2003年4月から27年(加入月数324月)
平均標準報酬月額 59万円
標準賞与額 150万円×年2回

●老齢基礎年金
78万1,700円(満額の場合)

●老齢厚生年金
①59万円×7.125/1000×156月=65万5,785円
②(59万円+25万円)×5.481/1000×324月=149万1,708円
①+② =214万7,493円(年額)

●受給できる年金月額
78万1,700円+214万7,493円=292万9,193円÷12ヵ月=約24.4万円

妻の年金額
●老齢基礎年金
78万1,700円(満額の場合)

●受給できる年金月額
78万1,700円÷12ヵ月=約6.5万円

二人合わせると、およそ月額30.9万円が受給できることになります。

 

ケース2、年収800万円会社員の夫×年収200万円パート妻

次に、夫も妻も厚生年金に加入しているケースを見てみましょう。

夫の年金額
●加入状況

厚生年金の加入期間(40年) 2003年3月まで13年(加入月数156月)
2003年4月から27年(加入月数324月)
平均標準報酬月額 50万円
標準賞与額 100万円×年2回

●老齢基礎年金
78万1,700円(満額の場合)

●老齢厚生年金
①50万円×7.125/1000×156月=55万5,750円
③ (50万円+17万円)×5.481/1000×324月=118万9,815円
①+② =174万5,565円(年額)

●受給できる年金月額
78万1,700円+174万5,565円=252万7,265円÷12ヵ月=約21万円

妻の年金額
●加入状況

厚生年金の加入期間(40年) 2005年4月から25年(加入月数300月)
平均標準報酬月額 16万円

●老齢基礎年金
78万1,700円(満額の場合)

●老齢厚生年金
16万円×5.481/1000×324月=26万3,088円(年額)

●受給できる年金月額
78万1,700円+26万3,088円=104万4,788円÷12ヵ月=約8.7万円

二人合わせると、およそ月額29.7万円が受給できることになります。

ケース3、年収600万円自営業夫×年収400万円会社員の妻

最後に、夫は自営業者で厚生年金に加入しておらず、妻が会社員で厚生年金に加入しているケースです。

夫の年金額
●老齢基礎年金
78万1,700円(満額の場合)

●受給できる年金月額
78万1,700円÷12ヵ月=約6.5万円

妻の年金額
●加入状況

厚生年金の加入期間(40年) 2003年3月まで13年(加入月数156月)
2003年4月から27年(加入月数324月)
平均標準報酬月額 26万円
標準賞与額 50万円×年2回

●老齢基礎年金
78万1,700円(満額の場合)

●老齢厚生年金
①26万円×7.125/1000×156月=28万8,990円
④ (26万円+8万円)×5.481/1000×324月=60万3,786円
①+② =89万2,776円(年額)

●受給できる年金月額
78万1,700円+89万2,776円=167万4,476円÷12ヵ月=約13.9万円

二人合わせると、およそ月額20.4万円が受給できることになります。

やはり自営業者である夫の厚生年金がないことが受給できる年金額に大きく響いています。

現在では国民年金基金やiDeCo・NISAなど、公的年金以外にも老後の収入をつくる方法は用意されていますので、ご自身に合った商品を利用しつつ無理のない範囲で備えておくと安心かもしれません。

年収1000万円世帯の夫婦に必要な老後資金は?

60歳以上の二人世帯がかかる月平均の支出は約22万円

総務省の家計調査報告によると、60歳以上の夫婦が二人で老後生活を送るのにかかる消費支出の平均22万5,638円です。その主な内訳は以下のようになっています。

世帯主65歳以上 平均支出額

消費支出合計 22万5,638円
食費 6万5,035円
住居費 1万8,187円
水道光熱費 1万7,525円
日用品代 1万859円
衣料品代 6,293円
医療費 1万4,237円
交通・通信費 2万7,090円
教育娯楽費 2万896円
その他消費 4万5,515円

参考:総務省「家計調査報告(家計収支編) 2020年(令和2年)10~12月期平均」

注意してほしいのは、上記の表を見ると『住居費』が約2万円しか割り当てられておらず、“持ち家がある前提での平均的な支出の目安になっている可能性が高いというです。

現時点で賃貸に住んでおり、今後も持ち家に引っ越す予定がないという方は、ご自身の家賃をプラスした上で支出の参考値としてご覧ください。

夫婦二人ゆとりある生活費の目安は約36万円

生命保険文化センターが行った老後の生活費に関する意識調査によると、夫婦二人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費平均月額22.1万円となっています。

その上で、ゆとりある老後生活を送るために上乗せする予算として平均14万円が必要と考えている方が多いようです。

先ほどの最低日常生活費とゆとりのための上乗せ額を合わせると、合計で月36.1万円になります。

なお、上乗せ費用の使途としては1位が「旅行やレジャー」、2位が「趣味や教養」、3位が「日常生活の充実」という意見が多い結果となっています。

「世帯年収1,000万円」3パターン別!老後資金を増やす方法

同じ世帯年収1,000万円でも、家族の状況、子どもの数、趣味や生活環境などによって、お金に対する考え方はそれぞれ違います。

シンプルに老後の年金受給額を増やそうと思えば、夫婦ともにバリバリ働いて厚生年金に加入するのがもっとも単純な解決方法といわれていますが、それぞれの事情もあり一辺倒にいかないのが現実です。では、そうしたご家庭でも増やせる打開策はあるのでしょうか。

先ほど解説した年金加入状況の3パターンを例に、老後資金を増やすにはどのような方法があるのか、それぞれ考察していきます。

年収1000万円会社員夫×専業主婦

このケースで老後資金を増やす手段を考えたとき、これまで専業主婦だった妻が子どもの手が離れたのをきっかけにフルタイムで仕事をして厚生年金に加入して年金額をアップさせる、という方法は非常に有効です。

しかしご家族のサポートや体調面など、さまざまな事情からその方法が難しいと感じるご家庭もあるかもしれません。

さらには、女性が外に出て働きだすことにより細々とした経費がかかるのも事実。単純に「働いて厚生年金に加入すれば貯金も年金も増えて安泰」と一概には言えないのです。

むしろ就いた仕事の環境や得られる収入によっては、これまでは必要のなかった洋服や美容代の経費に加え、総菜や外食などによる食費の増加などが負担になることもあります。

必ずしも「給与の全額が家計のプラスになる」というわけではないからこそ、専業主婦が働きに出ることで変化する収支をしっかりと把握しておかなければなりません

例えばもし働きに出ることが老後の生活資金を確保するためなら、目的を明確にして発想を変える方法もあります。

先ほどの年金受給額の目安を参考にすると、「年収200万円のパート妻」と「専業主婦」のもらえる年金額では、厚生年金からもらえる月2.2万円ほどしか差がありませんでした。

これを65歳から女性の平均寿命である87歳まで年金として受給した場合、以下の金額になります。

2万2,000円×12ヵ月×22年間=580万8,000円

まずはこれだけの老後資金を作ることを目標にする、という考え方もあるのです。

それなら、毎月の家計を節約したり扶養内でのパート勤めをしたりして、毎月2~5万を積み立てていけば十分に確保できそうですよね。それに子どもが社会人になればもう少し積立額を増やせるかもしれません。

まとまった資金を貯蓄するには、どのような形であってもコツコツと継続していくことが不可欠です。

1、ご自身が働いて得られる収入と税金・社会保険料を含めた支出をきちんと試算してみる。

2、節約して積み立てるならどこを削れそうか家計を見直す。

さまざまな方法を念頭におき、ご家庭に合った無理のない手段を見つけてください。

年収800万円会社員の夫×年収200万円パート妻

「すでにフルタイムで働いている」という妻の場合には、以下の2つの方法があります。

1つ目はずばり「正社員になる、あるいは転職による収入アップを目指す」という方法です。

転職となると一見ハードルが高いようにも見えますが、パートで培った経験やスキルを武器にしてステップアップを目指すのであれば、決して無謀なことではないかもしれません。

先ほどの年金受給額の目安を参考にすると、年収200万円のケースに比べて400万円のケースではもらえる年金が月額5万2,000円ほどアップしています。つまり、少しでも収入が増えればその分支払う厚生年金保険料が高くなり、将来もらえる年金の増額に繋がるのです。

もちろん、収入が増えればこれまでよりも貯蓄がしやすくなるため、一石二鳥ではないでしょうか。

2つ目は「節税しながら積立貯蓄をする」という方法です。

職場の確定拠出年金を利用したり、国が推奨しているiDeCoやつみたてNISAなどを活用したりすることで、ふだんお給料から引かれる所得税や住民税を安く抑えながら、自分のための老後資金を形成していくことができます。

これらは投資信託の仕組みを利用して「積立ながら運用してくれる」ので、将来受け取る元本が増える可能性もあり、将来的に物価が高騰するインフレにも対応します。

1、夫婦の老後にかかる生活費はいくら必要か?

2、上乗せする余裕資金はいくら欲しいのか?

3、トータル的にどのくらい貯蓄しておきたいのか?

まずは夫婦でしっかりと話し合い共通認識を持つことで、資産形成という目標を達成しやすくなります!

年収600万円自営業夫×年収400万円会社員の妻

妻がすでに正社員としてフルタイムで勤務しているこのケースでは、「自営業である夫の年金を補填する」という手段を考えましょう。

国民年金第1号被保険者である自営業の方は、私的年金づくりとして利用できる制度がいくつか用意されています。

前述のように、節税対策と積み立てを有効活用できる金融商品を利用する方法がおススメです。

小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度です。掛金はすべて「所得控除」の対象になるので、高い節税効果があります。
月々の掛金は1千円~7万円まで500円単位で自由に設定でき、加入した後も増額・減額が可能です。
iDeCoは確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。ご自分で掛金を拠出し、運用方法を選んで掛金を運用します。 積み立てた掛金とその運用益の合計額を将来年金として受け取ることができます。
節税効果としては、掛金がすべて「小規模企業共済等掛金控除」の対象となることで所得税・住民税が軽減されたり、通常かかる運用益(源泉分離課税20.315%)が非課税扱いとなったりします。
さらには将来受け取る際も「退職所得控除」または「公的年金等控除」の対象です。

個人が安定的に資産を形成できるよう、長期にわたり分散・積立投資ができる制度です。毎年の非課税枠(上限金額は年間40万円)までの投資で得られた利益に対し、最長20年間非課税になります。
運用先は金融庁による一定の基準をクリアした投資信託・ETF(上場投資信託)から選ぶので、初心者でも始めやすい投資信託です。

節税効果のある金融商品は、所得のある現役時代こそメリットが大きい制度です。うまく活用しつつ、厚生年金に代わる二階建て部分を効率よく積み立ててください。

まとめ

大きな老後資金を貯めるには、ただ積み立てるだけでなく運用していくことが一般的になりつつあります。

「投資はリスクがあるから怖い」という方もいるかもしれませんが、インフレというリスクに対応するためにも、今後は必要不可欠になってくるでしょう。

まずは税制優遇がうけられる制度であること、そしてお金を増やすしくみがあること。この2つを意識しながら、金融商品を選んでみてください。

他にも節税対策や資産形成の方法はたくさんあります。気になる方は、まずはきちんとした知識を持つ専門家に相談してみることをおすすめします。

これまでは知らなかったような、自分に適した金融情報を教えてもらえるかもしれませんよ!

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