ドイツ リューベック 1ダカット金貨 1790 KM191 FR1500 3.5gm 986Gold NGC MS61(AU/UNC)

ダカット金貨は、中世後期から20世紀の後半頃までヨーロッパで使用された硬貨です。表面には王冠と双頭の鷲（市の紋章）と碑文「IMP SEMP AUGUST FRANCISCUS II ROM」が、裏面には正方形のフレーム内に5行の碑文「MON AUR LUBECENS AD LEGEM IMPERII 1793 HDF」とオークの枝と花輪の飾りがあります。

双頭の鷲は古来から存在する紋章で、知られている最古の図像は紀元前3,800年頃のシュメール、ラガシュの都市神ニンギルスに関するもので、一説には「双頭の鷲」と「単頭のライオン頭の鷲」は、同じものを表していると考えられているそうです。ローマ帝国の国章が単頭の鷲であったことから、のちの東ローマ・西ローマにおける後継者の象徴として承継されており、ロシアやヨーロッパの各国がローマ帝国の後継を自負し国章として採用しています。双頭の鷲は皇帝の象徴であるため、それらの国の中の一部では、社会主義国時代にそのデザインが削除されたこともあります。ドイツでも、時代によってはデザインの簡略化や、そもそものモチーフの変更などを経て、現在では金のフィールドに黒い鷲（アドラー）となっています。

そもそもなぜ鷲なのか、という点については、鷲は大型の鳥類として食物連鎖の頂点に立っていることから、ヨーロッパでは古来より勇猛果敢さと力・無敵の象徴とされて多くの権力者に好まれてきた経緯があります。