ジョージ5世はエドワード7世の第二子として1865年6月3日に生まれました。ジョージ5世在位中の第1次世界大戦期には、前線に何回も訪れ兵士を奨励し、また負傷兵の見舞いにも訪れる人望が厚く評判の良い国王でした。今回のコインは、1910年に父王であるエドワード7世が崩御したことで即位したのちの1911年に、戴冠を記念して5ポンド金貨からマウンディセットまでの12枚を収めたプルーフセットとして制作されました。プルーフセットとして何セット作られたかは不明ですが、5ポンド金貨を2,812枚作られたという記録がありますので、最大でも2,812セットということになります。そして、このセットにはクラウン銀貨が入っておりませんが、それは抜け落ちているわけではなく正式なセットとしてクラウン銀貨がないのです。なぜ無いかということについて記録はございませんが、父王エドワード7世の1902年銘の純度92.5%のクラウン銀貨が発行されてから、次に発行されたのは1927年銘の純度50%のクラウン銀貨でしたので戦時中の貴金属の価値上昇でハーフクラウンで事足りたのではないかと推測します。ちなみによく耳にするマウンディセットとは、毎年キリスト教の儀礼である「洗足儀礼」に際し、国王から貧民に配られた、1ペニー・2ペンス・3ペンス・4ペンスの小型銀貨のセットのことです。イギリスでは17世紀ころから受け継がれている伝統とされています。