フランス シャルル6世(1380-1422) エキュドール金貨 ヴァロア家紋章 Fr-291 NGC MS62

シャルル6世は、フランス・ヴァロア朝の国王で、わずか11歳で即位し、在位中に百年戦争や王権の衰退、そして精神疾患による統治の混乱など、フランス王国の重大な転換期を経験しました。その治世は一時「親愛王」とも称された若き日の希望から一転、精神錯乱によって「狂気王（le Fol）」とも呼ばれ、王権が貴族勢力やブルゴーニュ公らに分断されていく苦難の時代でもありました。このような政治的混乱の中でも、王権の象徴として鋳造され続けたのが、このエキュドール金貨です。表面には、フランス王冠と三つの百合の紋章が堂々と描かれ、周囲にはラテン語で以下のように刻まれています「KAROLVS DEI GRACIA FRANCORVM REX」神の恩寵によるフランス人の王キャロル（シャルル）この文言は、王の正統性と神から授かった支配権を象徴しており、フランス王の威厳を示しています。裏面には、花模様をあしらった十字が描かれています。この十字は、キリスト教信仰と王権の神聖性を象徴し、当時の貨幣に共通する宗教的要素を強く反映しています。中世後期のフランス王権の象徴としてだけでなく、シャルル6世の治世を物語る歴史的資料でもあります。戦乱と王権の動揺、宗教と王家の威厳が融合した、美しくも重厚な金貨です。