この金貨は、バイエルン選帝侯カール・アルブレヒトの治世、1732年にミュンヘンで鋳造された「カロリン」と呼ばれる金貨です。カール・アルブレヒト(カール7世)カール・アルブレヒト(1697-1745年)は、バイエルン選帝侯(1726-1745年)、ボヘミア王(1741-1743年)、そして神聖ローマ皇帝(1742-1745年)を務めた人物です。彼はハプスブルク家の勢力衰退に乗じ、神聖ローマ皇帝の座を強く望みました。この金貨が発行された1732年は、彼がまだバイエルン選帝侯であった時期にあたりますが、後のオーストリア継承戦争(1740-1748年)における彼の中心的役割を予見させる時期でした。彼はハプスブルク家のマリア・テレジアの継承権を否定し、フランスなどの支援を得て1742年に皇帝カール7世として即位しました。18世紀前半のヨーロッパは、絶対王政が確立され、各国君主による覇権争いが激化した時代でした。長らく帝位を独占してきたハプスブルク家の影響力に陰りが見え始め、バイエルンをはじめとする有力な諸侯が台頭しつつありました。コインの由来とデザインこの金貨の名称「カロリン」は、発行君主であるカール・アルブレヒトの名前、ドイツ語の「Karl」に由来します。当時のヨーロッパでは、新しく発行される通貨に君主の名を冠することが一般的であり、これにより貨幣の権威と正統性を示す目的がありました。カロリン金貨のデザインは、当時の典型的な様式を踏襲しています。表面には、発行君主であるカール・アルブレヒトの肖像が描かれ、その周囲には彼の称号や治世に関する銘文が刻まれています。裏面にはバイエルンの紋章、幼子を持つ聖母マリアが描かれています。