ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨は、1935年に発行された在位25周年を祝う「シルバージュビリー」の記念コインです。
ジョージ5世は第一次世界大戦という大きな時代の転換期を乗り越え、イギリス王室の近代化を進めた人物として知られています。
表面には威厳ある肖像、裏面にはモダン風にアレンジされた伝統的なデザインが施されており、当時の英国の価値観や文化を感じ取れる仕上がりとなっています。
ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨のデザインの特徴、歴史や魅力を見ていきましょう。
この記事のポイント
・ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨と関連の深いコインの種類と魅力を解説
ジョージ5世 ジュビリー記念クラウン銀貨の概要


| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イギリス |
| 発行年 | 1935年 |
| 額面 | 1クラウン |
| デザイナー(表面) | エドガー・バートラム・マッケナル(Edgar Bertram MacKennal) |
| デザイナー(裏面) | パーシー・メットカルフ(Percy Metcalfe) |
| 表面 | ジョージ5世の左向き肖像 |
| 刻印(表面) | GEORGIVS V. DG. BRITT: OMN: REX. FD. IND: IMP: |
| 裏面 | 聖ゲオルギオスが竜を退治する様子(ロッキングホースクラウン) |
| 刻印(裏面) | CROWN 1935 |
| 直径 | 38mm |
| 重量 | 28g |
| 発行枚数 | 714,769 枚(プルーフ:2,500枚) |
| 品位 | 500/1000銀(プルーフ:925/1000銀) |
| グレード | PCGS SP62 |
| 状態 | Proof Like/UNC |
1935年に発行されたジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨は、在位25周年を祝うシルバージュビリーを記念して作られた特別なコインです。
従来のクラウン銀貨とは異なるモダンなデザインが大きな特徴です。
表面には無冠の左向き肖像が描かれており、威厳と落ち着きを感じさせる伝統的な王の姿が表現されています。
周囲にはラテン語の銘文が刻まれ、当時の王としての称号が示されています。
一方で、裏面には、聖ジョージが竜を倒す場面がデザインされています。
従来の表現とは異なり、パーシー・メットカルフ(Percy Metcalfe)によってデザインされたアールデコ調のモダンで簡略化されたスタイルが採用されています。
この独特な馬の形状から「ロッキングホースクラウン」とも呼ばれており、個性的なデザインが特徴です。
伝統的な肖像表現と当時としては革新的なデザインをあわせ持つこの銀貨は、イギリスのコインのなかでもデザイン性の高さで評価されている一枚です。
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ジョージ5世の歴史と在位25周年のエピソード
ジョージ5世の歴史と在位25周年のエピソードを以下にまとめました。
- 激動の時代を支えた国王としての歩み
- 国民との距離を縮めた近代的な取り組み
- 在位25周年を祝うシルバージュビリー
それぞれ詳しく見ていきましょう。
激動の時代を支えた国王としての歩み

画像引用:イギリス王室 公式サイト
ジョージ5世は1910年に即位し、その治世はイギリス史のなかでもとくに大きな変化が重なった時代でした。
第一次世界大戦(1914〜1918年)を中心に、社会主義の台頭や帝国の構造変化など、従来の王室のあり方が問われる局面が続きました。
こうしたなかでジョージ5世は、政治の前面に立つのではなく、あくまで立憲君主として「助言する・励ます・警告する」という役割を守りながら、国の安定に関わりました。
戦時中には、政府と国民の間をつなぐ存在として振る舞い、王室が政治的に偏らない姿勢を貫いた点が特徴です。
第一次世界大戦では、単なる象徴にとどまらず、兵士や市民を励ます活動にも積極的に関わりました。
前線視察や負傷兵の見舞いなどを繰り返しおこない、戦争の現実に向き合う姿勢を示しています。
実際に数百回規模で部隊や病院を訪問しており、こうした行動が国民の士気を支える大きな要因となりました。
また、戦時中の反ドイツ感情の高まりを受けて、王室の名称をドイツ由来のものから「ウィンザー家」に変更する決断もおこなっています。
これは王室が国民感情に寄り添う姿勢を明確にした象徴的な出来事であり、王室の信頼回復に大きく寄与しました。
さらに戦後においても、ヨーロッパ各国で王政が崩壊するなか、イギリス王室は存続し続けました。
ジョージ5世は中立と調整役に徹することで政治的対立を和らげ、王室を国民統合の象徴として位置づけることに成功しています。
こうした統治姿勢が、現代に続くイギリス王室の基盤を築いたといえるでしょう。
国民との距離を縮めた近代的な取り組み

画像引用:Discoverbritain
ジョージ5世は、それまでの王室の在り方を見直し、国民との距離を縮めるために近代的な手段を積極的に取り入れた国王として知られています。
とくに象徴的なのが、1932年におこなわれた世界初の「クリスマスメッセージ」のラジオ放送です。
当時、ラジオはまだ新しい技術であり、王室が利用することに慎重な意見もありました。
しかしジョージ5世は時代の変化を受け入れ、クリスマスの日にサンドリンガムから帝国全土に向けて直接語りかける形で放送を実施します。
この放送は約2,000万人が聴いたとされ、遠く離れた地域の人々にも国王の声が届いた画期的な出来事でした。
このメッセージのなかで国王は、「科学の進歩によって帝国のすべての人々に語りかけることができる」と述べており、技術の進歩を国民との結びつきに活用する姿勢を示しています。
さらに、この取り組みは単なる一度きりのイベントではなく、その後の王室の重要な伝統として定着しました。
クリスマスメッセージは現在まで続く王室行事となり、国王や女王が国民に直接思いを伝える手段として活用されています。
また、ジョージ5世は子どもや一般市民にも配慮したメッセージを発信するなど、より身近な存在であることを意識していました。
ラジオという媒体を通じて個人に語りかけるような表現を用いたことで、王室は遠い存在から親しみやすい象徴へと変化していきます。
このように、ジョージ5世の時代は、王室が伝統を守りながらも新しい技術を取り入れ、国民とのつながりを強めていく転換期でした。
ラジオ放送という革新的な試みは、その後の王室のあり方に大きな影響を与えた重要な取り組みといえるでしょう。
在位25周年を祝うシルバージュビリー

1935年5月6日、ジョージ5世は在位25周年を迎え、イギリス史上初となる「シルバージュビリー」が祝われました。
これまで英国王室では50周年のゴールデンジュビリーが中心であったため、25周年を祝うこの行事は新たな節目として注目を集めました。
ロンドンでは、王と王妃が馬車で市内を進み、セントポール大聖堂で感謝礼拝がおこなわれるなど、王室の伝統を感じさせる格式ある行事が実施されました。
その後、バッキンガム宮殿のバルコニーに王室一家が姿を見せ、多くの国民が祝福する光景が広がります。
また、この日は祝日とされ、イギリス全土で祝賀行事が開催されました。
街頭パーティーやパレード、スポーツイベントなどが各地でおこなわれ、都市だけでなく地方でも盛り上がりを見せた点が特徴です。
一方で当時のイギリスは失業問題など経済的に厳しい状況にあり、ジョージ5世自身も過度な祝賀費用を望まなかったとされています。
そのため、豪華さだけでなく「国民とともに祝う」姿勢が重視され、質素さと一体感を兼ね備えた記念行事となりました。
さらに、当日の夜にはラジオを通じて国民へ向けたメッセージが放送され、国王は感謝の言葉を直接伝えています。
こうした取り組みにより、このジュビリーは単なる記念行事にとどまらず、王室と国民の結びつきを象徴する重要な出来事として位置付けられました。
ジョージ5世のクラウン銀貨は、上述したシルバージュビリーを記念して発行された背景があります。
ジョージ5世の歴史とコインはこちらの記事で詳しく紹介しています。
ジョージ5世とは? 昭和天皇にも影響を与えたイギリス国王の生い立ち、人気コインを紹介
ジョージ5世のジュビリー記念銀貨に関連するコインの種類
ジョージ5世のジュビリー記念銀貨に関連するコインを紹介します。
ジョージ5世 5ポンド金貨 1911年


| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イギリス |
| 発行年 | 1911年 |
| 額面 | 5ポンド |
| 直径 | 36mm |
| 重量 | 39g |
| 発行枚数 | 2,812枚 |
| 品位 | 916/1000金 |
| 状態 | Proof AU/UNC |
| グレード | NGC PF62 |
ジョージ5世の5ポンド金貨は、主に記念用や収集用として発行された大型金貨です。
表面には無冠のジョージ5世の左向き肖像が描かれ、裏面にはイギリス金貨の伝統的なデザインである「聖ジョージの竜退治」が採用されています。
この図柄は彫刻家ベネデット・ピストルッチによるもので、1817年から続く英国コインの象徴的なモチーフとして、多くの金貨に共通して用いられてきました。
この聖ジョージと竜のデザインは、馬に乗った騎士が竜を討つ躍動感のある構図で、「善が悪に打ち勝つ」という象徴的な意味を持つ点が特徴です。
写実的で力強い表現は、英国コインの伝統美を体現しており、長い歴史のなかでほぼ変わることなく受け継がれてきました。
一方で、1935年に発行されたジュビリー記念クラウン銀貨は、同じの題材を採用しながらも、デザインの方向性が大きく異なります。
ジュビリークラウンでは、より簡略化された表現が用いられており、馬のフォルムや全体の構図もスタイリッシュで現代的な印象に仕上げられていることが比較してわかるでしょう。
両者を比較すると、同じモチーフでありながらも表現方法が異なり、英国コインにおけるデザインの違いが感じられる点が大きな魅力です。
ジョージ5世 ジュビリー記念クラウン金貨 1935年


| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イギリス |
| 発行年 | 1935年 |
| 額面 | 1クラウン |
| 直径 | 38mm |
| 重量 | 47g |
| 発行枚数 | 30枚 |
| 品位 | 916/1000金 |
| 状態 | CAMEO(Proof FDC) |
1935年に発行されたジョージ5世のジュビリー記念クラウン金貨は、在位25周年を祝うシルバージュビリーにあわせて特別に製造された極めて希少な記念コインです。
通常は銀貨として発行されたジュビリークラウンを特別仕様として金で打刻しており、デザインは銀貨と同様になります。
注目すべき点は、クラウン金打貨としての発行枚数はわずか28枚とされており、そのうち25枚のみが一般向けに販売されました。
販売にあたっては1枚25ポンドで予約が受け付けられましたが、1,329通もの申し込みが集まり、最終的には抽選によって25枚が販売されています。
極端に少ない発行枚数と高い応募倍率から、当時からすでに特別なコレクターズアイテムとして扱われていたことがわかります。
さらに現在では市場に出回る機会も非常に限られており、オークションでは高額で取引されることも珍しくありません。
ジョージ5世 ジュビリー記念クラウン銀貨の価値

ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨(1935年)は、発行枚数が約71万枚と比較的多いです。
現在でも市場に一定数が流通していることから、イギリスのアンティークコインのなかでは比較的入手しやすい部類に入ります。
記念コインですが、極端に希少というわけではありません。
保存状態によって価値が異なりますが、コレクション初心者でも手に取りやすい価格で取引されています。
一方で、同じ1935年のクラウンでもプルーフ仕様は価値が大きく異なります。
プルーフとは、鏡面仕上げで細部まで丁寧に打刻された特別仕様のコインであり、発行数が限られていることからコレクター需要が高くなります。
実際にプルーフ版は数千枚規模の発行にとどまり、通常品よりも希少性が高いため、高額で取引される傾向があります。
さらに、同じジュビリークラウンでも金貨で打刻された特別仕様は、発行枚数が極めて少ないことから別格の存在です。
市場に出回ること自体が少なく、オークションでは非常に高額で落札されることもあり、投資対象としても注目されるレベルの希少性を持っています。
まとめるとジョージ5世 ジュビリー記念クラウン銀貨の価値は以下のとおりになります。
- 通常仕様:発行数が多く比較的入手しやすい
- プルーフ仕様:希少性が高く価格も上昇しやすい
- 金貨仕様:極めて希少で高額取引される
同じデザインでも仕様によって価値が大きく異なるため、価値を見極めたうえでコレクション・保有するようにしましょう。
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ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨に関するよくある質問
ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨に関するよくある質問は以下のとおりです。
- シルバージュビリーとは何ですか?
- デザインを手掛けた人物は誰ですか?
- 将来的に価値は上がる可能性がありますか?
それぞれ詳しく解説します。
シルバージュビリーとは何ですか?
シルバージュビリーとは、君主の在位25周年を祝う記念行事のことを指します。
もともとは結婚記念日の呼び方に由来しており、25年を「シルバー(銀)」、50年を「ゴールデン(金)」といったように区別します。
ジョージ5世の場合、1935年5月6日に在位25年を迎えたことを記念してシルバージュビリーが開催されました。
これはイギリス史上初の25周年記念行事でもあり、歴史的にも重要な出来事です。
デザインを手掛けた人物は誰ですか?
ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨は、表面と裏面で異なる彫刻家がデザインを担当しています。
表面はエドガー・バートラム・マッケナルによるもので、無冠のジョージ5世の肖像が描かれており、伝統的で威厳のある表現が特徴です。
一方で裏面はパーシー・メットカルフが手掛けており、聖ジョージの竜退治という古典的なモチーフを、アールデコ調のモダンなスタイルで表現しています。
将来的に価値は上がる可能性がありますか?
ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨は、通常仕様の発行枚数が約71万枚と多いため、短期的に価値が上がる可能性は限定的と考えられます。
ただし、状態のよいコインであれば長期的に評価される可能性がはあるでしょう。
また、プルーフ仕様や金貨版のように発行枚数が少ないものは希少性が高いため、市場価格は上昇しやすいと考えられます。
まとめ
ジョージ5世のジュビリー記念クラウン銀貨は、在位25周年という歴史的な節目を背景に誕生した記念コインです。
イギリスのアンティークコインでは有名な聖ジョージの竜退治をアレンジしたデザインが魅力になります。
通常仕様は比較的入手しやすく、アンティークコインの入門としても適していますが、プルーフ仕様や金貨版のように希少性の高いものは高い価値を持ちます。
時代背景や王室の歴史を感じられる点も含めて、コレクションとして長く楽しめる一枚といえるでしょう。