第三共和政は1870年から1940年まで続いたフランスの共和政体で、フランス革命時代の第一共和政、二月革命によって樹立された第二共和政に次ぐフランス史上3番目の共和政であったので、この名称が生じました。ちなみに共和「制」と共和「政」の違いについては、日本語では主に政体の場合は「共和政」、制度の場合は「共和制」、国家の場合は「共和国」、思想の場合は「共和主義」とされることが多いようですが、厳密ではないようです。
第三共和政の特色は、典型的な議会制民主主義政治を実現したことであり、議会の意思の圧倒的優位性は共和政全期を通じて変わりませんでした。第三共和政下に、議会の多数派が多くの政党・政派の離合集散によって不安定であったため、内閣の変動は著しく、この共和政の存続70年間に合計108回もの内閣の改造・更迭がありましたが、それはいわば外見的現象にすぎず、数回の政治的危機が起こったものの、むしろ長く続く既存体制の安定が見受けられました。
ルースター(雄鶏)金貨はフランスの人々に特に親しまれたコインの一種であり、今なお人気が高い金貨です。第一次世界大戦、第二次世界大戦に伴うインフレに対抗するため、多くのフランス人がこの金貨を所有し、困難な時代を乗り切ったとされています。戦後も金貯蓄として毎月一枚づつ購入する人がいるほど、大変人気のある金貨でした。また、現在にも通じる高いデザイン性から、今なお貯金の感覚で一枚づつ買い集める収集家もいます。表面にはフランス共和国を擬人化した女神「マリアンヌ」の肖像が表現されています。20世紀初頭の金貨に登場したマリアンヌは、当時流行したアール・ヌーヴォー様式で表現され、シャープな輪郭と柔らかで現代的な顔立ち、凛とした表情が特徴となっています。