ナポレオン1世の肖像が描かれた銀貨で、皇帝の象徴となる月桂冠をつけている肖像です。
ナポレオン1世は正式にはナポレオン・ボナパルト、フランス第一帝政の皇帝に即位してナポレオン1世となりました。一般的に「ナポレオン」と言われれば、このナポレオン1世を指しています。皇帝即位前にも同じ額面のコインが発行されていますが、即位前のため月桂冠をつけていないものも存在します。
フランス革命期に頭角をあらわし、1802年、彼は統領政府の終身統領として絶対的な権力を握りました。その時、「パリをより美しくするためには、建てるものより、壊さなければならないものが多い」と言い切ったといわれます。つまり、彼に言わせれば、パリが「ヨーロッパの首都」であるためには、過去も、現在も、そして未来永劫に美しい都市であり続けるようにしなければならないというわけです。 このため、マーケット、食肉処理場、中央市場、公共の水くみ場などの施設を整備し、家屋に番号を付け、街路にガス灯を設置させます。ナポレオンは古典的な伝統を重んじていましたが、同時に啓蒙主義の新しい息吹も身にまとっていたのです。 新しく建てられた建築物、たとえば、凱旋門、カルーゼルの凱旋門、ヴァンドーム広場の円柱はナポレオンの栄光を誇示するものですが、一方、既存の建物には、新しい時代に合わせて市民や宗教施設として用途を変更されたものがあります。ブルボン宮殿は立法議会に、リュクサンブール宮殿は上院となり、パンテオンは教会に戻りました。
ナポレオンには様々な逸話が残されており、ショートスリーパーであったり、早食いであったり、また、コインの収集家であったという説もあります。時の権力者は収集にとどまらず、自らの肖像を刻むことでその権力や支配力を知らしめたともされていますが、このナポレオン1世や甥であるナポレオン3世もその1人で、自身だけではなく、妻や兄弟などの肖像を刻んだコインを発行しています。