フランツ・ヨーゼフ1世は、名門「ハプスブルク家」に生まれたオーストリアの皇帝です。かの有名なマリー・アントワネットはこのハプルブルク家の皇女でした。彼女がフランス革命で王妃の座を追われたとき、冷淡な態度をとった甥のフランツ2世が、フランツ・ヨーゼフ1世の祖父にあたります。ヨーゼフは厳格な母の期待と陰りを見せていたオーストリア帝国の期待を一身に背負って1848年・若干18歳で皇帝に即位しています。厳格な母の周到な帝王教育により、実際にヨーゼフは軍隊の重要性を理解しドイツ語、フランス語、イタリア語、ハンガリー語を駆使しており、ウィーンの三月革命やハンガリーの反乱の鎮圧などを成し遂げたとされています。母に従順であったヨーゼフが、一度だけ母に反抗したのが、結婚相手であるエリザベートを選んだ時でした。本来のお見合い相手であるバイエルン公国の公女についてきたエリザベートに一目ぼれしたヨーゼフは母の反対を押し切って結婚したようです。結婚後はヨーゼフの激務もあり、なかなか夫婦としてゆっくり語らう時間はなかったとされていますが、深く妻を想っていたヨーゼフはエリザベートが奔放に旅に出かけるときにはいつも十分な金銭を送ったとされています。その後ヨーゼフは跡継ぎである息子の自殺やエリザベートが暗殺されるなど多くの悲劇が降りかかりますが、68年という長い治世を全うし86歳で生涯を閉じました。
コインを集め始めると必ずと言ってよいほど耳にすることの多い、通称「雲上の女神」というこちらのコインは、フランツ・ヨーゼフ1世の肖像とともに、裏面には最愛の妻エリザベートを女神としてデザインしたコインです。表面には「FRANC·IOS·I·D·G·IMP·AVSTR·REX BOH·GAL·ILL·ETC·ET AP·REX HUNG·」(神の恩恵を受けしフランツ・ヨーゼフ1世、オーストリア皇帝にしてボヘミアの王、ガリシア・イリリア他そして選ばれしハンガリー王)、裏面には」1848 1908 100 COR·DVODECIM LVSTRIS GLORIOSE PERACTIS1848 1908 100 COR· DVODECIM LVSTRIS GLORIOSE PERACTIS」(12回の大祓いの後の完全なる栄光)、さらにエッジには「VIRIBVS VNITIS(With United Forces)」(皆で力を合わせて/フランツ・ヨーゼフ1世の金言でありモットーであった言葉)と刻印されています。