イタリアのコインは、近世から現代までに絞ってもその種類はバラエティ豊かであり、希少価値の高い金貨・銀貨も多く存在します。
コインの研究家としても名の知れたヴィットリオ・エマヌエレ3世の金貨や、ナポレオン1世が統治していた時代があったので、フランス以外でナポレオン一族のコインが多く発行された国でもあるのです。
この記事ではイタリアのアンティークコインを12種類紹介し、コインの歴史についても詳しく解説します。
イタリア コインの歴史
イタリアの歴史は古代ローマから始まり、統一運動の流れの中で現在のイタリアの前身となるイタリア王国が誕生し、1945年に共和政となったことで現在に至ります。
コインは古代ローマ帝国のものも含めればその種類は膨大になりますが、今回は古代ローマ帝国は含めず歴史とコインを紹介したいと思います。
それでは、下記の流れでイタリアコインの歴史を振り返っていきましょう。
- イタリア コインのはじまり
- イタリア コインの種類
- イタリアとナポレオン一族
イタリア コインのはじまり
イタリア王国のコインの始まりは、1807年に発行されたイタリア王国のコインの中でも旧通貨と呼ばれるイタリア王国リラといえるでしょう。
ナポレオン1世がイタリアを支配した時代、ナポリ王国ではナポリリラが発行されました。
1861年にイタリアが統一された際には、イタリアリラが発行され、欧州通貨統合によりリラが廃止される2002年まで使用されます。
イタリアの代表的な造幣局は、1928年に設立されたイタリア国立造幣局(IPZS)です。
古代ローマ帝国の通貨は異なりますが、基本的にイタリアの通貨はリラ、現代ではユーロとなります。
リラという通貨は、サンマリノ、バチカン、マルタ、キプロスなどでも製造されていましたが、こちらもすべてユーロに移行しました。
現在もリラを使用している国には、2009年に再び貨幣の名称をリラに戻したトルコが代表的です。
イタリア コインの種類
現在のイタリアではリラではなくユーロ/セントが使用されており、セントは単数形ではチェンテージモ(centesimo)複数形ではチェンテージミ(centesimi)と呼ばれます。
リラ(lira)も複数形ではリレ(lire)と呼ばれるので、リラの金貨のことを「100リレ金貨」と呼ぶこともありますが、複数形の呼び方であり別の通貨ではありません。
旧通貨であるイタリアリラの種類と材質は下記の通りです。
- 1リラ(アルミ)
- 2リレ(アルミ)
- 5リレ(アルミ)
- 10リレ(アルミ)
- 20リレ(ニッケル銅貨)
- 50リレ(白銅)
- 100リレ(白銅)
- 200リレ(アルミ青銅)
- 500リレ(バイメタル)
- 1,000リレ(バイメタル)
上記のコインが流通していましたが、当時実際に市場に多く流通していたのは50リレ以上の硬貨であったといわれています。
また、1,000リレコインは硬貨の裏面に欧州地図が描かれていましたが、国境線が誤ったものを発行してしまいエラーコインが一部流通しました。
エラーコインとは正しい形で発行されなかった硬貨のことであり、流通直後にすぐに回収される場合も多く、希少価値の高さからマニア人気が高いコインです。
イタリアとナポレオン一族
ミラノのブレラ絵画館のナポレオン像
ナポレオン1世は短い期間ではありますが、欧州を支配し親族を王にすることで周辺諸国を統治しました。
特にイタリアはナポレオンの影響を強く受けた国であり、イタリア王国を建国したのはナポレオンであり、フランス皇帝でありながらイタリア王国の皇帝にもなっています。
残ったナポリ王国は、兄であるジョゼフと妹婿であったミュラが王となりました。
ナポレオン1世がライプツィヒの戦いで敗北したことにより、イタリアは再び分散し、統一運動へとつながることとなります。
歴史的背景からイタリアにはフランスに次いでナポレオン一族のコインが多くなっています。
ナポレオン一族のコインは、アンティークコインの収集テーマでも有名かつ人気であるため、イタリアからコインを探す際はナポレオン一族から選んでもいいかもしれません。
ナポレオン一族のコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ナポレオン一族の金貨を含めたおすすめアンティークコイン8選!
イタリアコイン ヴィットリオ・エマヌエレ3世の金貨・銀貨
画像引用:https://ww2db.com/person_bio.php?person_id=173
ヴィットリオ・エマヌエレ3世(在位:1900-1946)はイタリア王国最後の君主であり、イタリアコインの中でも人気の高い人物です。
第一次世界大戦、第二次世界大戦をまたいで46年間在位し、特に外交に力を入れた国王でした。
ムッソリーニのファシスト党を後押ししましたが、最終的に連合国に敗れイタリアで王政が廃止されたことでエジプトへ亡命します。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世のコインを5つ紹介します。
- ヴィットリオ・エマヌエレ3世 豊穣の女神 100リレ金貨 1912年
- ヴィットリオ・エマヌエレ3世 在位25周年 100リレ金貨 1925年
- ヴィットリオ・エマヌエレ3世 王国成立50周年 50リレ金貨 1911年
- ヴィットリオ・エマヌエレ3世 20リレ銀貨 1936年
- ヴィットリオ・エマヌエレ3世 5リレ銀貨 1925年
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 豊穣の女神 100リレ金貨 1912年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1912年 |
額面 | 100リレ |
グレード | MS62 |
直径 | 35mm |
重量 | 32g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 4,946枚 |
状態 | AU/UNC |
ヴィットリオ・エマヌエレ3世はコインの研究家であり、アンティークコインを収集するコレクターでもあったことが知られています。
そのため、自身の硬貨に対する情熱も強く、古代ローマ帝国の時代のコインを参考に美麗なデザインのコインを多数発行しました。
こちらの100リレ金貨は発行枚数は5,000枚ほどですが、第一次世界大戦の影響で溶解され現存する枚数が少なくなっていることから希少価値が高まっています。
表面には軍服を着たヴィットリオ・エマヌエレ3世の左向き肖像が描かれており、裏面には豊穣の女神と呼ばれる人気のデザインであり、女神が収穫した麦を抱えることでイタリアの豊作を祈願する目的で作られました。
大型金貨でデザインの見栄えがよく美しいデザインでありながら高い希少価値を持っているため、コレクションにも資産防衛にも優れた金貨です。
豊穣の女神 コイン特集 イタリアを擬人化した人気金貨の魅力とは?
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 在位25周年 100リレ金貨 1925年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1925年 |
額面 | 100リレ |
グレード | PF64Matte |
直径 | 36mm |
重量 | 32g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 5,000枚 |
状態 | Matte Proof UNC |
ヴィットリオ・エマヌエレ3世の100リレ金貨は、統治25周年と第一次世界大戦参戦10周年を記念して製造されておりこちらは第一次世界大戦参戦10周年のコインです。
こちらはマット仕上げがなされているため、傷つきやすく状態のいいものは少ないので、状態によって価値が変動しやすく、上記のコインのように希少価値の高い状態のいい金貨はオークションでも高い価格で取引されます。
表面には58歳当時のヴィットリオ・エマヌエレ3世の左向き肖像画が描かれ、裏面には旗を掲げ、女神像を持った躍動感のある男性がデザインされた力強さを感じられるコインです。
金貨を資産防衛に利用するなら鑑賞性も両立したコインのほうがアンティークコイン投資を楽しめるので、手元に美しいコインを置きながら価値の上昇を期待できる魅力ある金貨になります。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 在位25周年 100リレ金貨の魅力と価値を徹底解説
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 王国成立50周年 50リレ金貨 1911年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1911年 |
額面 | 50リレ |
グレード | MS62 |
直径 | 28mm |
品位 | .900 |
発行枚数 | 20,000枚 |
状態 | AU/UNC |
イタリアの統一と王国建国50周年を記念して発行されたヴィットリオ・エマヌエレ3世の50リレ金貨です。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世の肖像の表面と、裏面にはイタリアを擬人化した女性とローマを擬人化した男性が描かれており、その後ろには巨大な蒸気軍艦が描かれています。
コイン彫刻家のジュゼッペ・ロマニョーリの作品であり、複雑に彫られた美しいデザインです。
他のヴィットリオ・エマヌエレ3世の金貨と同様に芸術性が高く、発行枚数が2万枚と限られていることから希少性を持ちます。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 20リレ銀貨 1936年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1936年 |
額面 | 20リレ |
直径 | 36mm |
品位 | .900 |
発行枚数 | 10,000枚 |
状態 | EF |
ここまで紹介したコインは大変希少価値の高い金貨となりますので、価値は下がりますが金貨よりも入手しやすい銀貨について紹介します。
重厚感の強い銀貨と相性のいい4頭の馬が引く古代ローマ帝国の戦車クァドリガがデザインされた銀貨です。
クアドリガが描かれたタイプの銀貨は複数あり、こちらは馬達が落ち着いた状態で描かれています。
勝利の象徴とされるクァドリガは、ウィクトーリアやペメなど女神が乗っている状態で描かれることが多いです。
クァドリガをデザインしたコインは金貨よりも銀貨のほうが重厚感があり、味のある印象が魅力となっています。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 5リレ銀貨 1925年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1911年 |
額面 | 5リレ |
グレード | - |
直径 | 37mm |
重量 | 25g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
先ほどのクァドリガとは異なり、躍動感のあるデザインが特徴の5リレ銀貨です。
軍服を着用したヴィットリオ・エマヌエレ3世も含めて、デザインの完成度が高くコレクターからの人気も高いコインとなっています。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世のコインを探す
イタリアの希少価値の高い金貨5選
次に、ヴィットリオ・エマヌエレ3世以外の金貨についても紹介します。
- ウンベルト1世 100リレ金貨 1888年
- カルロ・フェリーチェ 80リレ金貨 1828年
- ジェノヴァ 96リレ金貨 1796年
- ヨアヒム・ミュラ 40リレ金貨 1813年
- ヴェネティアの獅子 20リレ金貨 1848年
ウンベルト1世 100リレ金貨
発行国 | イタリア |
発行年 | 1911年 |
額面 | 100リレ |
グレード | MS61 |
直径 | 35mm |
重量 | 32g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 1,169枚 |
状態 | EF(極美品) |
ヴィットリオ2世の子であるウンベルト1世のコインであり、100リレ金貨は1880年、1882年、1883年、1888年、1891年の5年号のみの発行で総発行枚数も6971枚と、とても少ない枚数のコインです。
同じ時期にヴィクトリア女王が統治していたイギリスで近い額面の5ポンド金貨を約8万枚製造していましたので、このコインの少なさがよくわかります。
発行枚数が少ない上に状態の良いコインは少なく、現存する状態のいいコインは非常に希少です。
カルロ・フェリーチェ 80リレ金貨 1828年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1828年 |
額面 | 80リレ |
グレード | EF+ |
直径 | 33mm |
重量 | 26g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 8,961枚 |
状態 | 極美品 |
1828年当時のイタリアはまだ統一運動の最中であり、サルディニアを含む複数の国に分かれていました。
サルディニア王国の王カルロ・フェリーチェが描かれた金貨がこちらになります。
カルロ・フェリーチェはサルディニア王国6代目の国王であり、ヴィットリオ・アマデオ3世の5番目の王子で、国王を継ぐことはないかのように思われていましたが、兄たちに男の子が恵まれず、齢50にして即位したという経緯があります。
ジェノヴァ 96リレ金貨 1796年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1796年 |
額面 | 96リレ |
グレード | EF+ |
直径 | 34mm |
重量 | 25g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | 極美品 |
こちらはナポレオン・ボナパルトによって侵略される前のジェノヴァ共和国で作られた金貨です。
このコインは1793年に発行が開始され、1795~1797年のわずか4年号で幕を閉じます。
特に上記の1796年で状態のいいコインは非常に希少です。
表面には聖母マリアとイエス・キリストが描かれ、裏面にはジェノバの国章が描かれています。
ヨアヒム・ミュラ 40リレ金貨 1813年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1813年 |
額面 | 40リレ |
グレード | - |
直径 | 27mm |
重量 | 12.81g |
品位 | 900% |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
ヨアヒム・ミュラはナポレオン1世の妹カロリーヌ・ボナパルトの夫であり、ナポリ王ジョアッキーノ1世としてナポリ王国を統治した国王です。
ミュラの治世下ではこちらの40リレ金貨と同時期に20リレ金貨のナポリリラが発行されています
ナポレオンの戦争において目覚ましい実績をあげ勝利に導いたミュラは、端正な顔立ちから色男として人気も高い騎兵軍人でした。
ミュラの特徴的な髪型が細かく描かれた左向き肖像は、発行された年数も少ないことから希少な一枚です。
ヨアヒム・ミュラのコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ヨアヒム・ミュラのおすすめコイン3選! 金貨・銀貨・銅貨を紹介
ヴェネティアの獅子 20リレ金貨 1848年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1848年 |
額面 | 20リレ |
グレード | AU/UNC |
直径 | 21mm |
重量 | 6g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | 未使用 |
この時代のヴェネティアはオーストリア支配下でしたが、1848年はウィーン体制崩壊した年です。
ヨーロッパ全体で起きた革命年で、ヴェネティアの民衆も立ち上がりますが、革命は成功しませんでした。
しかし、数年後に支配が終わるので歴史の転換点とも呼べる記念すべき年といえるでしょう。
このような背景のある小型記念コインですが、数も少なく状態のいい金貨は希少です。
ヴェネティアの象徴である翼を持ったライオンのヴェネティアの獅子が描かれています。
イタリアの歴史ある銀貨2選
最後に、イタリアの銀貨を2種類紹介します。
- ナポレオン1世 5リレ銀貨 1812年
- ピウス9世 5リレ銀貨 1870年
ナポレオン1世 5リレ銀貨 1812年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1812年 |
額面 | 5リレ |
グレード | MS65 |
直径 | 37mm |
重量 | 25.0g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | 未使用 |
イタリア王国はナポレオンが皇帝となった際にはナポレオン王国とも呼ばれていました。
表面がナポレオン1世の肖像、裏面がイタリア王国の国章がデザインされており、ミントマークのMはイタリア王国の首都ミラノで鋳造されたことを示しています。
ナポレオン1世のコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ナポレオン1世の金貨・記念コイン・銀貨を紹介! 即位から帝政の終焉
ピウス9世 5リレ銀貨 1870年
発行国 | イタリア |
発行年 | 1870年 |
額面 | 5リレ |
グレード | - |
直径 | 37mm |
重量 | 25g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
イタリアはローマ教皇に支配されていた時代もありましたが、1861年までに大部分の教皇領はイタリア王国に占拠されています。
こちらの銀貨は、イタリア王国における教皇領が完全に廃止される1年前に発行された硬貨で、自らバチカンの囚人であると宣言したピウス9世の肖像が描かれたコインです。
イタリアのアンティークコインに関するよくある質問
イタリアのアンティークコインに関するよくある質問をまとめました。
- イタリアのコインはどこで購入するのがおすすめ?
- イタリアの金貨・銀貨を売却できる場所は?
それぞれ詳しく解説します。
イタリアのコインはどこで購入するのがおすすめ?
イタリアのコインで代表的な収集テーマは、ヴィットリオ・エマヌエレ3世とナポレオン一族のコインとなり、どちらも希少価値が高いコインが多くあり人気があります。
しかし、高い希少価値を持つコインであるからこそ、相場よりも高い価格で売られることや贋作を売りつけられるリスクを避けるようにするべきです。
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」では、カタログやオークションログを基に適切な価格を設定しています。
鑑定にも力を入れていますが、万が一コインが偽物であった場合も永久買戻し保証も付いているので安心して購入できます。
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イタリアの金貨・銀貨を売却できる場所は?
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まとめ
種類豊富なイタリアの金貨・銀貨を12種類、厳選して紹介しましたが、ほとんどのコインが鑑賞性と希少性を両立した美しい上に価値のあるものです。
アンティークコイン投資は、魅力的なコインを手元に置き、時間の経過と共により価値が高まり育っていく過程を楽しむ長期を前提にした資産運用です。
その対象としてイタリアのコインは適した商品が多いので、アンティークコイン初心者の方はイタリアのコインから選ぶのがおすすめになります。