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公開日 2024.11.12更新日 2024.11.19

アンティークコインの鑑定について主要な鑑定機関とグレードを解説

アンティークコインを取引するにあたって重要になるのは信頼性であり、本物であることを保証し、コインの状態に対して目安となる基準を付ける鑑定はコインの信頼性を証明するのに必要です。

現在、アンティークコインの主要な鑑定機関は、PCGS(Professional Coin Grading Service)、NGC(Numismatic Guaranty Corporation)であり、多くのコインは2つの機関の鑑定によって真贋とグレードを決定しています。

鑑定したコインのデータを元にアンティークコインの相場は形成され、市場で取引されています。

この記事では、アンティークコインを取引するにあたって必要な鑑定に関する知識について解説し、主要な鑑定機関とグレードを紹介していきます。

この記事のポイント

・真贋の判別・グレードの格付などアンティークコインにおける鑑定の役割について解説
・鑑定によって格付けされるアンティークコインのグレードについて紹介

アンティークコインにおける鑑定の役割

アンティークコインを公平に取引するにあたって必要な鑑定ですが、鑑定の役割について解説していきます。

  • コインの真贋を判別する
  • 状態の基準となるグレードを付ける
  • 総合的にコインの信頼性が高まる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

コインの真贋を判別する

鑑定していないアンティークコインは、発行証明書等が付属している場合を除いて、本物であるか偽物であるかを客観的に証明できないことが多いです。

保有しているアンティークコインについて、このコインは本物であると根拠なく主張しても購入する人はほとんどいないでしょう。

取引相手がコインに対する知識が深く、自身で真贋を見きわめて双方納得した上で取引できるのであれば問題ありませんが、コレクター同士の閉鎖的な取引以外では成立しにくいです。

つまり、未鑑定のアンティークコインには真贋に対する信頼性がありません。

しかし、信頼できる鑑定機関によってアンティークコインを鑑定すれば、コインが本物であるという証明が得られます。

本物である客観的な根拠がないアンティークコインに対して鑑定をすることで真贋を判別し、その結果を保証する役割が鑑定にはあります。

アンティークコインの偽物の見分け方についてはこちらの記事で紹介しています。

アンティークコインの偽物の見分け方は? 購入のリスクと対策方法

状態の基準となるグレードを付ける

鑑定の大事な役割は、アンティークコインの相場や価格を決定するのに重要なグレードを付けることにあります。

アンティークコインにおいてグレードは非常に重要であり、グレードが1ランク上下するだけでも価値が大きく変化します。

現在のアンティークコイン市場ではPCGSとNGCが付けるグレードを参考に価値が決められることが多いです。

詳しいグレードの基準は後ほど解説しますが、アンティークコインの商品ページを見ていると「MS64」「AU58」などのアルファベットと数字の組み合わせを見ることがありますが、この組み合わせがグレードです。

グレードが良いほどアンティークコインの価値は上昇しやすく、反対にグレードが下がる場合はグレードの良いコインと比較して半値以下で取引されることもあるのがアンティークコインにおけるグレードの難しいところです。

グレードを含めたアンティークコインの価値を決めるポイントについてはこちらの記事をチェックしてください。

アンティークコイン投資入門 グレード・希少性・人気などの選び方を解説

総合的にコインの信頼性が高まる

鑑定では、真贋の証明、グレードによる格付がなされることで鑑定されたコインの信頼性が高まります。

さらに、鑑定されたアンティークコインはスラブと呼ばれる密封されたケースで保管されます。

一度鑑定されスラブに入れられたアンティークコインは、鑑定機関によって期限を制限せずに鑑定の結果が保証される仕組みです。

PCGS、NGCのスラブによって保管されたアンティークコインは、鑑定されておらずケースのない状態で保管されたアンティークコインと比較すれば信頼性が高まるといえるでしょう。

スラブそのものがアンティークコインの信頼性を高める上で重要な役割を果たしています。

ただし、近年ではスラブに対してほとんど痕跡を残さずに開封し、中身をすり替える形で販売するケースも発生しており、スラブに入っているアンティークコインが絶対に安全であるとはいえなくなっています。

アンティークコインの鑑定機関

アンティークコイン鑑定において主要な2つの機関を紹介します。

  • PCGS(Professional Coin Grading Service)
  • NGC(Numismatic Guaranty Corporation)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

PCGS(Professional Coin Grading Service)

PCGS(Professional Coin Grading Service)とは、アメリカのカルフォルニア州に拠点を置くコインのグレーディングサービスを専門に行う鑑定機関です。

世界共通のアンティークコインのグレード基準であるシェルドンスケールを規定したのはPCGSです。

世界の100を超える国と地域において鑑定が依頼されており、世界的なアンティークコインの鑑定機関として認められています。

特にアメリカ本国において圧倒的なシェアを誇り、日本の小判などの鑑定もできることから鑑定の対象となるコインの広さが強みです。

ただし、16世紀よりも前のアンティークコイン・古代コインについては鑑定を受け付けていません。

NGC(Numismatic Guaranty Corporation)

NGC(Numismatic Guaranty Corporation)は、アメリカのフロリダ州に拠点を置くアンティークコインの保証会社であり、コインの真贋の判別と格付けを行っています。

世界中の博物館に展示されるコインの鑑定を行ってきた実績のある鑑定機関であり、歴史的な価値を持つアンティークコインを保全する活動に取り組んでいます。

NGCの関連会社であるNCSはコインの修復を請け負っており、コインの鑑定にとどまらないサービスの広さが強みです。

NGCではPCGSでは鑑定できない16世紀よりも前のアンティークコイン・古代コインについても鑑定が可能となっています。

一方で、日本の小判など特殊なコインに関しては鑑定を受け付けていない場合もあるため、鑑定機関によって対応できるコインが異なることがわかります。

アンティークコインの鑑定におけるグレードの基準

アンティークコインの鑑定は、PCGSが定めたシェルドンスケールによって行われます。

シェルドンスケールとは、コインのグレードの基準を70段階に等級付けすることで、1を最低値、70を最高値とします。

よって、コインのグレードにおける数字は高ければ高いほど状態の良いコインといえるでしょう。

それでは数字とセットで表記されるアルファベットについては以下のような意味を持ちます。

アルファベット表記 内容
MS(Mint State) 未使用と認められる状態(流通用に造られている)
AU(Almost Uncirculated) 未使用に近い状態
PR・PF(Proof) コレクター用に作られたコイン
SP(Specimen) MS、PR・PFに該当しない特殊なコイン

例えば、MS63のコインであれば未使用と認められる良い状態のアンティークコインであることがアルファベットと数字でわかるのです。

AU58であれば、未使用とは認められないもののそれに近い良い状態のコインであることがわかります。

では、MSではなくPRまたはPFが付くケースに関しては、コインの種類がMS(Mint State)が流通用であるのに対して、PR・PF(Proof)がコレクター用に発行されたコインであることを示しています。

そのため、ProofであるコインのグレードはPR65またはPF65と表記され、PRとPFの違いはPRがPCGSでの鑑定、PFがNGCでの鑑定であることです。

SP(Specimen)はMS、PR・PFに該当しない特殊なコインとなります。

また、AU以下のグレードではXFを状態の良い極美品としていますが、多くのコイン専門店ではEF(Extremely Fine)またはEF+として表記することが多いです。

これ以上コインのランクが下がってしまうと、存在自体が幻である希少性の高いコインを除いて、価値がつかないことも多いため、美品であることを示すVF(Very Fine)までのグレードについて覚えておくと良いでしょう。

ここまでの内容を踏まえて、下記からコイン一覧を閲覧するとアンティークコインに付けられた数字とアルファベットの組み合わせについて意味がわかるようになっているはずです。

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鑑定済みでも安心とはいえない近年のアンティークコインの偽物事情

アンティークコイン

PCGS、NGCの鑑定を受けており、スラブケースに入っているアンティークコインであれば、知識がなくても個人間の取引で安全と考える方もいるかもしれません。

両鑑定機関ともに不正開封を防止するケースに収めており、ケース自体の偽造に関してもホログラム、バーコード、透かしを施すなどして対策をしています。

しかし、近年ではそれを上回る手口でスラブを含めたアンティークコインの偽造、痕跡を残さないスラブの開封によって中のアンティークコインを偽物に入れ替えるなどの手口が発生しています。

近年では鑑定済みのアンティークコインであっても必ずしも安心して取引できるとは言い難い状況です。

アンティークコインの購入では鑑定は前提として、保証にも目を向けたいところです。

例えば、信頼できるコイン専門店であれば、購入したアンティークコインが万が一にも偽物であった場合も買戻しを保証してくれます。

当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」では、万が一にもコインが偽物であった場合も永久買戻し保証が付いているため、安心してアンティークコインを取引できます。

まとめ

アンティークコインの鑑定に関する基礎知識を紹介しましたが、鑑定について理解することでアンティークコインに対する誤った理解を正すとともに、グレードからコインの状態を理解できるようになります。

鑑定は現在のアンティークコイン市場の相場の形成、価格の決定において重要な役割を果たしており、アンティークコインの相場を調べるのに役立つカタログにおいても鑑定機関のグレードに沿って参考となる市場価格を載せています。

また、古代コインなど一部のコインの種類においてはPCGS・NGCともに真贋を保証できない場合もあるため、その場合は専門業者を探して相談しましょう。

鑑定やグレードについて理解した上でアンティークコインの相場を調べたい方は以下の記事もチェックしてください。

アンティークコイン相場の調べ方は? 全体の価格推移も含めて解説

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この記事の著者

アンティークコイン ジャーナル編集部

英国王室シリーズから古代コインまで、幅広い年代のコインの紹介だけではなく、試鋳貨、造幣局による違い、彫刻家、リストライク、などアンティークコインの魅力や楽しめる知識をフラットに情報提供している。編集長は、英国王室コインと、動物コインシリーズが好き。

アンティークコイン ジャーナル編集部

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