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公開日 2022.7.20更新日 2022.7.20

パナマパシフィック金貨特集! 特徴とその価値の変動について

1915年にサンフランシスコで開催された、パナマ・太平洋万国博覧会(サンフランシスコ万博博覧会)ではパナマパシフィック金貨をはじめとする5種類の記念コインが発行されました。

こちらのコインは丸形ではなく、非常に珍しくアメリカコインでは唯一無二の八角形であることが特徴であり、知恵の神ミネルヴァは万博の趣旨ともマッチしたデザインであるといえるでしょう。

アメリカで発行されたコインのなかでもコレクターからの人気が高いことから高い価値を持つパナマパシフィック金貨の特徴とコインが発行された背景を紹介し、魅力を余すことなくお伝えした上で発行当時から現在までの価値の変動についても解説します。

パナマパシフィック博覧会 50ドル金貨 八角形タイプ 1915年の概要

パナマパシフィック博覧会 八角形タイプ 50ドル金貨 1915年

パナマパシフィック博覧会 八角形タイプ 50ドル金貨 1915年

概要 内容
発行国 アメリカ合衆国
発行年 1915年
額面 50ドル
デザイナー Robert Aitken
表面 女神ミネルヴァの左向き肖像
刻印(表面) IN GOD WE TRUST(我々は神を信じる)
裏面 松の枝に止まったフクロウ
刻印(裏面) E PLURIBUS UNUM(多州から成る統一国家)
グレード MS63
直径 45mm
重量 83.59g
品位 金90% 銅10%
発行枚数 645枚
状態 UNC+(未使用)

パナマパシフィック 50ドル金貨 八角形タイプの概要は上記の通りとなっています。

こちらのコインは、アメリカで発行されたコインの特集ページや、アンティークコイン投資のおすすめコインでも紹介していますので興味のある方はチェックしてください。

パナマパシフィック金貨の特徴

ミネルヴァ フクロウ

パナマパシフィック金貨がアメリカのコインのなかでも注目される理由はその特徴にあります。

金貨に対する理解を深めてパナマパシフィック金貨の魅力を確認していきましょう。

こちらの金貨の特徴は大きく分けて3つあります。

  • アメリカでは唯一である八角形のデザイン
  • 女神ミネルヴァとフクロウが描かれる
  • 丸形と八角形の最大の違いはイルカの絵

それぞれ詳しく解説します。

アメリカでは唯一である八角形のデザイン

こちらの50ドル金貨を見て一番の特徴を挙げるなら、通常の丸型のコインではなく、八角形の形をしていることではないでしょうか?

この八角形の金貨はアメリカ合衆国で発行された金貨のなかで、現時点で唯一無二の八角形タイプの金貨です

パナマパシフィック金貨は丸形と八角形の2種類が発行されましたが、1915年当時から八角形タイプの金貨のほうが高い人気を集めていました。

写真では伝わりにくいかもしれませんが、こちらのコインの大きさは45mmあり、非常に大型の金貨であることから、実際に手に取ったときの見栄えも抜群です。

女神ミネルヴァとフクロウが描かれる

パナマパシフィック金貨には、表面に女神ミネルヴァ、裏面にフクロウが描かれています。

ミネルヴァ(Minerva)は知恵をつかさどるギリシャ神話の女神であり、ユピテルユーノーと共にローマのカピトリーノ三柱神として知られています。

フクロウはミネルヴァともに描かれる聖なる動物であり、知恵の象徴として知られています。

アメリカの金貨であれば、国獣であるイーグル(白頭鷲)が描かれることが多いため、フクロウは珍しいと思った方もいるかもしれませんが、フクロウが描かれた理由はミネルヴァをコインのデザインに採用したからです。

一方で、ミネルヴァがコインのデザインに採用された理由は、パナマ・太平洋万国博覧会は芸術・工業など人類の知恵を結集させた展示会であったことが挙げられます。

Robert Aitken氏のよるパナマ・太平洋万国博覧会に合わせたオリジナリティの高いデザインであり、アメリカで類似したコインが存在しないことも人気を集めている理由の一つといえるでしょう

丸形と八角形の違いはイルカの絵

パナマパシフィック金貨には丸形と八角形の2種類がありますが、実はコインの形によってデザインに違いがあります。

八角形のコインはエッジに沿ってイルカの絵が刻印されていますが、丸形のコインにはイルカの絵がありません。

八角形と丸形のコインを比較すると、八角形のミネルヴァとフクロウのデザインが縮小しています。

これは八角形のコインにイルカの絵を入れたからです。

イルカには、博覧会の開催趣旨であるパナマ運河の開通に対する思いが込められており、当時、丸形と八角形で人気に差が出た理由もイルカの絵の有無によるものであると考えられています

パナマパシフィック金貨の発行の歴史

パナマパシフィック

1915年にサンフランシスコで開催されたパナマ・太平洋万国博覧会は、日本ではサンフランシスコ万博博覧会とも呼ばれており、こちらの博覧会の開催を記念してパナマパシフィック金貨は発行されました。

その歴史と背景についても理解を深め、コインが発行された当時の情報についても把握しておきましょう。

万博の開催経緯から、コインの発行目的、同じ目的で発行された記念コインの種類について解説していきます。

パナマ・太平洋万国博覧会の開催経緯

パナマ・太平洋万国博覧会は、パナマ運河の開通と太平洋の発見から400年を記念して開催された万博です。

1906年、サンフランシスコ地震により震災の被害を受けたことから、サンフランシスコの復興を示す目的もありました。

会場はサンフランシスコの北海岸沿いの一帯で、敷地は東西で約2.7キロ、南北約1キロの広がりをもっていました。

当時の会場は、海辺のパステル・シティと呼ばれるほどカラフルで魅力あふれる場所であったといわれています。

また、万博では工業や科学だけでなく、芸術やスポーツなどの文化色を強くしており、万博において初めてPR映画を作成したことから注目を集めていました

資金調達を目的としていた

パナマパシフィック金貨は、パナマ・太平洋万国博覧会の開催に伴い、当時の新聞広告で購入者を募集しました。

記念コインの発行目的は万博開催に向けた資金調達であり、50ドル以外にも複数の額面で支援者を募っていました。

サンフランシスコ震災の影響もあり、博覧会の成功は復興にもつながることからコインの購入は一番低い50セント銀貨では 27,134枚発行されましたが、50ドルの額面を持つ金貨には合計で1,000枚ほどしか集まりませんでした

 パナマパシフィックの記念コインは5種類

パナマ・太平洋万国博覧会では記念コインが全部で5種類発行されました。

それぞれの記念コインにおける発行枚数について下記の表にまとめました。

種類 枚数
50セント銀貨 27,134枚
1ドル金貨 15,000枚
2.5ドル金貨 6,749枚
50ドル金貨(丸形) 483枚
50ドル金貨(八角形) 645枚

50セント銀貨、1ドル金貨、2.5ドル金貨に関しては数多くの枚数が発行されましたが、50ドル金貨の発行枚数はごく少数にとどまっています。

この発行枚数の水準はアメリカの記念金貨としては非常に低く希少性が高いです

発行枚数が多いほうが購入の申し込みも多かったことを示しているので、丸形と比較して八角形の発行枚数のほうが多いのは当時の人気の高さを表しています。

パナマパシフィック金貨の価値の変動について

パナマパシフィック金貨の価値の変動

50ドルという額面で発行されたパナマパシフィック金貨は、1915年の発行からすでに100年以上の時が過ぎたアンティークコインです。

現在の価値基準では当然ながら50ドルで購入することはできず、その価値は大きく変動しています。

100年の時を経てパナマパシフィック金貨の価値がどのように変動したのかを紹介していきます。

50ドル金貨は1,500枚あったが半数以上が溶解されている

パナマパシフィック金貨は受注生産の形を取らず、あらかじめ丸形と八角形の2種類をそれぞれ1,500枚ずつ製造していたといわれています。

しかし、実際に発行された枚数は八角形で645枚であるため、残りの金貨はどうなったのか気になる方もいることでしょう。

残念ながら売れなかった50ドル金貨は金貨の形を問わず、すべて溶解されました。

つまり、八角形の50ドル金貨は発行枚数を上回る855枚がすでに溶解され、この世に存在しないことになります。

現存する記念金貨のうち半数以上が発行されて間もなく溶解されたという事実は金貨の希少価値を高めました

オークションでは額面の数千倍の価値で取引された

パナマパシフィック金貨は、上記のような経緯で希少性が高まり、デザインも優れていたことから注目されコレクターから人気を集めました。

50ドルで募集されたこちらの金貨は、2010年以降のオークションでは額面の数千倍の価値で取引されています。

溶解された金貨を除けば発行枚数は645枚となっていますが、100年経った現在ではさらに枚数を減らし、状態のいいコインの希少性は非常に高まっているのです。

しかし、高い価値で取引されていたのは2015年以前までであり、近年のオークションではパナマパシフィック金貨が出品されること自体がほとんどなくなりました

現在の時点でオークションから姿を消してしまったパナマパシフィック金貨が再び出品されることがあれば、より高い価格が付けられることが予測されます。

100年という期間でその価格を大きく成長させたパナマパシフィック金貨は、今後も長期的にはさらなる価値の上昇が期待できることでしょう。

パナマパシフィック金貨に関するよくある質問

パナマパシフィック金貨に関するよくある質問をまとめました。

  • 丸形と八角形ではどちらのほうがおすすめ?
  • パナマパシフィック金貨はどこで購入できる?

それぞれ詳しく解説します。

丸形と八角形ではどちらのほうがおすすめ?

八角形は、丸形にはないエッジにイルカが刻まれており、当時から丸形よりも人気の高かったコインです。

一方で、丸形は八角形よりもメインとなるミネルヴァとフクロウのデザインの見栄えがよく、発行枚数は八角形よりも少ないのでどちらのほうがおすすめか気になるかもしれません。

コレクターの視点では、エッジに刻まれたイルカや八角形という珍しい形を重視するか、メインとなるデザインの見栄えを重視するかによって変わってくるので、どちらのほうがいいかは人それぞれといえます。

しかし、パシフィック金貨は丸形・八角形を問わずオークションでもほとんど見かけないコインとなっており、どちらの形でも価格が大きく変化することはありません。

丸形と八角形で大きなこだわりがなく、希少性を重視してコインを保有したい場合は、どちらの形でも販売・出品されていれば購入を検討したいほどレアなコインであるため、形を問わず出会ったパシフィック金貨を購入するのがよいでしょう

パナマパシフィック金貨はどこで購入できる?

八角形のパナマパシフィック金貨を販売しているコイン専門店は「コインライブラリー・プリンシパル」です。

こちらの商品に関する相談や、実際に店舗までお越しいただきコインを確認していただく下見申し込みもできますのでお気軽にお申し付けください。

また、こちらの商品は非常に人気と希少性が高いため、現品限りの早い者勝ちとなっていることから、記事を閲覧した時点でコインが売り切れている可能性もございます。

まとめ

パナマパシフィック金貨は、パナマ・太平洋万国博覧会を記念して発行されましたが、その発行の経緯から100年という期間で価値を大きく成長させました。

どのような目的でコインを保有する場合でも特徴や背景をより深く知ることは重要であり、そのコインの魅力を知ることだけでなく、なぜ価値を持つようになったかが分かるようになります。

コレクション・資産運用などの目的を問わず保有したい1枚となっていますので、オークションから姿を消した今では販売・出品されているコインを見かけたら購入を検討したいところです。

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紹介したコイン

  • その他

    アメリカ 50ドル金貨 1915S パナマパシフィック博覧会 八角形タイプ Fr189 KM139 PCGS MS63 (UNC+)

    SOLD OUT
    パナマパシフィック金貨

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この記事の著者

アンティークコイン ジャーナル編集部

英国王室シリーズから古代コインまで、幅広い年代のコインの紹介だけではなく、試鋳貨、造幣局による違い、彫刻家、リストライク、などアンティークコインの魅力や楽しめる知識をフラットに情報提供している。編集長は、英国王室コインと、動物コインシリーズが好き。

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