エルサルバドルは、中央アメリカの中部に位置する共和制国家であり、国土が狭く人口密度の高い国です。
米ドル(USD)とビットコイン(BTC)が法定通貨として使用されている国であり、自国の通貨であったサルバドール・コロンはすでに使用されなくなっています。
スペインの植民地であったことから、過去にはスペインの通貨であるレアルが発行されており、独立当初はサルバドール・ペソが流通しました。
この記事では、エルサルバドルがどんな国であるかを解説し、過去の通貨の種類とおすすめのアンティークコインを紹介します。
エルサルバドルはどんな国?~人口密度が高く自然災害の危機に晒されやすい~
面積(総計) | 21,040㎢ |
通貨 | アメリカ・ドル(USD)、ビットコイン(BTC) |
首都 | サンサルバドル |
言語 | スペイン語 |
主な宗教 | カトリック、プロテスタント |
主な民族 | スペイン系白人と先住民の混血(8割以上) |
隣接している国 | グアテマラ、ホンジュラス |
独立 | 1821年9月5日 |
エルサルバドル共和国は、中央アメリカ中部に位置し、北西にグアテマラ、北東にホンジュラスと国境を接しており、南西は太平洋に面しています。
エルサルバドル(El Salvador)は、スペイン語で救世主を意味する言葉であり、救世主国とも呼ばれています。
国土面積は日本の九州の約半分と狭く、人口密度の高い国であり、30歳以下の若者や子供が人口の大半を占めていることが特徴です。
コーヒーを主要な輸出品としており、日本企業を含めて工業の誘致を進めています。
しかし、政治や経済が非常に不安定であり、貧困に苦しむ人が多い国となっています。
また、火山国として有名であり、地震も多いため、自然災害の危機に晒されやすい国です。
主要言語はスペイン語で、民族もスペイン系の白人と先住民の混血であり、歴史的な背景からスペインの影響が現在も強いことがわかります。
また、この国はアメリカドル(USD)を法定通貨としていますが、ビットコインを世界で初めて法定通貨に採用した国でもあります。
歴史的にも救世主という国名でありながら救世主と呼べるような人物が表れず、苦境に立たされ続けてきました。
エルサルバドルの歴史 ~独立後はコーヒーを主要産業とするものの厳しい時代が続く~
年号 | 内容 |
1821年 | スペインからの独立を宣言、2年後に中米連邦共和国が成立 |
1841年 | 中米連邦共和国が解体、正式に共和国として独立する |
1870年頃 | コーヒーの生産によって寡頭支配層を生み出す |
1931年 | クーデターにより、軍事的な独裁が開始される |
1979年 | エルサルバドル革命政府フンタが権力を得たことで内戦が始まる |
1992年 | 内戦の終結 |
2001年 | 通貨統合法により米ドルが法定通貨として導入 |
2021年 | 世界で初めてビットコインを法定通貨に採用 |
1821年、スペインから独立を宣言し、中米連邦共和国に吸収された後に、1841年に連邦が解体されて正式に共和国として独立します。
エルサルバドルは歴史的にもコーヒーが主要産業であった国であり、独立からの国作りとともに勧められたコーヒーの生産は寡頭支配層を生み出しました。
土地をコーヒーのプランテーションに組み込むために、地主達は人々を土地から追い出し、一部の支配層のみが土地を独占することで裕福になっていきます。
1931年、マクシミリアーノ・エルナンデス・マルティネス将軍のクーデターによって開始した軍事的な独裁は国民の意識を大きく変えていくことになりました。
1979年まで就任した大統領がすべて軍人であり、暴力による鎮圧や虐殺を繰り返し、度重なる大統領選の不正を目の当たりにした国民は武装暴動のみが現状を変える方法であるという意識が生まれ、内戦の時代へと向かっていきます。
1979年、エルサルバドル革命政府フンタが権力を奪取したことにより、内戦へと発展し、組織的な反乱が1992年の終結まで行われました。
現在も国内では貧困と暴力が蔓延していますが、海外からの投資は再開し、民主化への道を歩んでいます。
2001年に通貨統合法により米ドルが法定通貨として導入されますが、現在も自国通貨であるサルバドール・コロンは使用されていない状況であっても、正式に廃止されていないようです。
また、2021年にエルサルバドルのGDPがアメリカなどの海外の送金で2割を占めていることから、送金コストを削減することを期待してビットコインを法定通貨にしています。
エルサルバドルの過去の通貨の種類
エルサルバドルでは、アメリカ・ドル(USD)とビットコイン(BTC)を法定通貨としており、サルバドール・コロンは2001年まで使用されていました。
センターボを補助通貨として、100センターボ=1サルバドール・コロンのレートで交換されています。
エルサルバドルで使用されていたサルバドール・コロンを見ていきましょう。
硬貨
- 1センターボ
- 25センターボ
- 1サルバドール・コロン
紙幣
- 5サルバドール・コロン
1センターボ
中央アメリカ連邦共和国の大統領であるフランシスコ・モラサンの肖像が描かれています。2センターボ、3センターボ、5センターボ、10センターボの硬貨まで裏面の数字を除いてデザインは同様です。
25センターボ
独立運動の指導者であったホセ・マティアス・デルガドの肖像が描かれています。50センターボも同一人物の肖像です。
1サルバドール・コロン
大航海時代の探検家であり、新大陸を発見したクリストファー・コロンブスの肖像が描かれています。
5サルバドール・コロン
表面にクリストファー・コロンブス、裏面にエルサルバドル中央準備銀行を描いています。紙幣には10, 25, 50, 100, 200サルバドール・コロンがありますが、1990年代頃にはすべてクリストファー・コロンブスの肖像で統一されていました。
エルサルバドルのアンティークコイン~おすすめの金貨・銀貨を紹介~
エルサルバドルのアンティークコインを紹介します。
- エルサルバドル 20ペソ金貨 1892年
- エルサルバドル サンサルバドル400周年 20サルバドール・コロン金貨 1925年
- エルサルバドル 独立150周年 50サルバドール・コロン金貨 1971年
- エルサルバドル チャプルテペック平和協定 150サルバドール・コロン銀貨 1992年
- エルサルバドル ジェラルド・バリオス 1ペソ銀貨 1861年
- エルサルバドル 8レアル銀貨 1862-1863年
エルサルバドル 20ペソ金貨 1892年
概要 | 内容 |
発行国 | エルサルバドル |
発行年 | 1892年 |
額面 | 20ペソ |
直径 | 33mm |
重量 | 32.258g |
発行枚数 | 300枚 |
品位 | 900/1000金 |
エルサルバドルで過去に発行された20ペソ金貨であり、発行枚数は300枚程度と想定されます。
ラテン通貨同盟の仕様に合わせて中央アメリカ造幣局で鋳造されました。
そのため、数万ドル以上の高値で取引されることもあり、エルサルバドルの中でも大変希少なアンティークコインです。
エルサルバドル サンサルバドル400周年 20サルバドール・コロン金貨 1925年
概要 | 内容 |
発行国 | エルサルバドル |
発行年 | 1925年 |
額面 | 20サルバドール・コロン |
直径 | 27mm |
重量 | 16.67g |
発行枚数 | 200枚 |
品位 | 900/1000金 |
エルサルバドルの首都であるサンサルバドルの400周年を記念して発行された20サルバドール・コロン金貨です。
2人の男が左向きに並ぶ肖像と、エルサルバドルの国章が描かれています。
エルサルバドル 独立150周年 50サルバドール・コロン金貨 1971年
概要 | 内容 |
発行国 | エルサルバドル |
発行年 | 1971年 |
額面 | 50サルバドール・コロン |
直径 | 23mm |
重量 | 5.9g |
発行枚数 | 3,530枚 |
品位 | 900/1000金 |
エルサルバドルの独立150周年を記念して発行された50サルバドール・コロン金貨です。
エルサルバドルの歴史的なシンボルを描いており、直径23mmで重量わずか5.9gの小型の金貨となっています。
アンティークコインとして広く取引されており、発行枚数がここまで紹介した金貨よりも多いことから入手しやすくなっています。
エルサルバドル チャプルテペック平和協定 150サルバドール・コロン銀貨 1992年
概要 | 内容 |
発行国 | エルサルバドル |
発行年 | 1971年 |
額面 | 150サルバドール・コロン |
直径 | 37mm |
重量 | 25g |
発行枚数 | 15,000枚 |
品位 | 900/1000銀 |
チャプルテペック平和協定は、アメリカ合衆国および中南米の国で結ばれた条約であり、これを記念して発行された銀貨です。
4つの手がお互いに握り合い、円になる様子が描かれており、裏面に描かれる14の星は14の共和国を示しています。
エルサルバドル ジェラルド・バリオス 1ペソ銀貨 1861年
概要 | 内容 |
発行国 | エルサルバドル |
発行年 | 1861年 |
額面 | 1ペソ |
直径 | 37mm |
大将でもあり、船長でもあり、大統領でもあったジェラルド・バリオスは、サンサルバドルで現在でも像が立てられています。
ジェラルド・バリオスの右向き肖像が描かれており、オークションに流通することも少ない希少性の高い銀貨です。
エルサルバドル 8レアル銀貨 1862-1863年
概要 | 内容 |
発行国 | エルサルバドル |
発行年 | 1862-1863年 |
額面 | 8レアル |
直径 | 38mm |
重量 | 25g |
品位 | 903/1000銀 |
こちらの8レアル銀貨はグアテマラで発行されたものとなっていますが、エルサルバドルで流通させるために再検証を示すRと書かれたカウンターマークを使用しています。
この時代のエルサルバドルではこちらの銀貨に限らず、カンターマーク付きのレアルが流通していました。
まとめ
エルサルバドルは、南アメリカの中でも国土が狭く、天然資源も少ないことからコーヒー以外の輸出産業が伸びず、独立してから現在まで苦しい立場に立たされています。
ビットコインを法定通貨にしてビットコインシティーを建設するなど、新しい試みを行ってはいるものの、実現は険しい道のりといえるでしょう。
一方で、記念コインの発行枚数が少なく、希少性の高いアンティークコインも存在するため、コインの収集先として注目できます。