ガーナは、西アフリカのギニア湾に面する赤道直下の国であり、美しい自然と豊かな文化遺産を持つ観光地としても注目されている国です。
チョコレートの原料で知られるカカオの主要生産国でもあり、ITなどのデジタルインフラの整備が進み、アフリカの国の中では経済的にも政治的にも安定しています。
ガーナの独自通貨はセディとなっていますが、現地の言葉でタカラガイを意味し、かつてタカラガイが通貨として使用されていたことが由来です。
この記事では、ガーナはどんな国であるかを解説し、独自通貨の種類と金貨・銀貨を中心に価値のあるアンティークコインを紹介します。
この記事のポイント
・ガーナで発行される独自通貨の種類、金貨・銀貨のアンティークコインを紹介
ガーナはどんな国? ~情熱と多様性に満ちたアフリカでも安定した国家~
面積(総計) | 238,537km2 |
通貨(通貨コード) | セディ(GHS) |
首都 | アクラ |
言語 | 英語 チュイ語、ガ語、エウェ語など全部で約70の現地言語がある |
主な宗教 | キリスト教(約70%)、イスラム教(約17%)、その他伝統的宗教など |
主な民族 | アカン族、ガ族、エウェ族、ダゴンバ族、マンプルシ族など |
隣接する国 | トーゴ、ブルキナファソ、コートジボワール |
建国年月日 | 1957年3月6日 |
ガーナ共和国は、西アフリカにある東にトーゴ、北にブルキナファソ、西にコートジボワール、南はギニア湾に面する共和制国家です。
熱帯性の気候であるため、1年を通して高温多湿であり、雨季(4月~10月)と乾季(11月~3月)に分かれます。
手つかずの城塞や要塞などの歴史的建造物、国立公園や美しいビーチがあることから、観光において人気が高いです。
カカオの主要生産国として知られるガーナでは、カカオをチョコレートだけでなく、パンやビスケット、リキュールや石鹸、スキンクリームなどの製品に加工して販売しています。
経済面においては、金・石油の天然資源の輸出、IT分野の発展によるデジタルインフラ整備が進んでおり、多角的に成長しています。
また、多様な民族が暮らしており、工芸品、音楽やダンスなどの伝統文化が守られていることが特徴です。
ガーナは情熱と多様性に満ちており、アフリカの中でも経済面・政治面において安定した国といえるでしょう。
ガーナの歴史 ~自由の旗を掲げアフリカ新時代を切り拓いた~
年代 | 出来事 |
---|---|
11世紀頃 | 北方からの移民が現在のガーナ地域に定住を始める |
13世紀頃 | 小国家群が形成される |
1471年 | ポルトガル人がエルミナに上陸し、金や象牙の交易を開始 |
17世紀 | アシャンティ王国が成立 |
1821年 | イギリスが「英領ゴールド・コースト」を設置 |
1823年 | 第一次英アシャンティ戦争が勃発 |
1901年 | アシャンティ王国が英領ゴールド・コーストに併合される |
1957年 | 英国から独立し、初代首相にクワメ・エンクルマが就任 |
1960年 | 共和制に移行し、エンクルマが初代大統領に就任 |
1965年 | 独自通貨として「ガーナ・セディ(Ghana Cedi)」を導入 |
1966年 | 軍・警察によるクーデターでエンクルマ政権が崩壊 |
1969年 | 文民政権が発足 |
1972年 | 軍部クーデターによりアチャンポン将軍が政権を掌握 |
1979年 | ジェリー・ローリングス空軍大尉による軍事クーデターが発生 |
1979年 | 民政移管が行われ、リマン大統領が就任 |
1981年 | ローリングス元空軍大尉による再度の軍事クーデターが発生 |
1992年 | 大統領選挙が実施され、ローリングスが大統領に選出 |
1993年 | 民政移管が行われ、ローリングス大統領が正式に就任 |
1996年 | 大統領選挙でローリングスが再選、同時に議会選挙も実施 |
2007年 | インフレ対策として「新ガーナ・セディ(GHS)」を導入 |
11世紀頃、北方からの移民が現在のガーナ地域に定住を始めており、当時は西アフリカでも交易ネットワークが発展していました。
13世紀には小国家群が形成され、ガーナの地にはアカン族を中心とする社会が成り立ちます。
1471年、ポルトガル人がエルミナに上陸し、金や象牙をはじめとするヨーロッパ諸国との交易が始まりました。
17世紀には交易をもとに発展したアシャンティ王国が成立し、中央集権国家として強力な基盤を持つ国に成長しました。
1821年には、イギリスが植民地支配を進めるべく英領ゴールド・コーストを設置、1823年から第一次英アシャンティ戦争を開始します。
1901年にアシャンティ王国がゴールド・コーストに併合され、ガーナ地域の植民地統治が確立しました。
イギリスからの独立は1957年3月6日のことであり、初代首相にはクワメ・エンクルマが就任、サハラより南のアフリカ地域では最初に独立した国となります。
1960年には共和制に移行し、エンクルマ氏が大統領に就任してから社会主義的政策を推進します。
西アフリカポンドをこれまで使用してきたガーナでしたが、独立を機会に1965年にガーナ・セディ(Ghana Cedi)導入しました。
1966年に社会主義的であったエンクルマ政権が軍事クーデターにより崩壊、軍事政権が成立するものの1969年には文民政権が発足、再び軍事クーデターによりアチャンポン将軍が政権を掌握、1979年に民政移管が行われ、リマン大統領が就任しました。
ガーナは、数多くの政権交代を経験しており、現在の民主主義による安定した政治に至るまでに時間がかかりました。
2007年には、インフレ対策として新たに独自通貨の「新ガーナ・セディ(GHS)」を導入しています。
ガーナの独自通貨の種類
ガーナの独自通貨は、「ガーナ・セディ(Ghana cedi)」であり、通貨コードは「GHS」です。
補助通貨単位は「ペセワ(Pesewa)」であり、100ペセワ=1セディのレートです。
セディは1965年に導入され、現地のアカン語でタカラガイの意味を持ち、かつてタカラガイが通貨として使用されていたことに由来します。
現在のセディは2007年に導入された新ガーナ・セディであり、インフレ対策として導入されました。
硬貨の種類
- 1ペセワ
- 5ペセワ
- 10ペセワ
- 20ペセワ
- 50ペセワ
- 1セディ
紙幣の種類
- 1セディ
- 5セディ
- 10セディ
- 20セディ
- 50セディ
- 100セディ
- 200セディ
硬貨の種類
額面 | デザイン |
1ペセワ![]() ![]() |
表:ガーナの国章 裏:アドミ橋 |
5ペセワ![]() ![]() |
表:ガーナの国章 裏:ホルンを吹く先住民の男性 |
10ペセワ![]() ![]() |
表:ガーナの国章 裏:開いた本とペン |
20ペセワ![]() ![]() |
表:ガーナの国章 裏:カカオポッド |
50ペセワ![]() ![]() |
表:ガーナの国章 裏:ガーナの女性の正面像 |
1セディ![]() ![]() |
表:ガーナの国章 裏:天秤 |
共通して描かれるガーナの国章は、二羽の金の鷲が黒の五芒星を両側から支えており、中央の盾にはイギリスとの密接な関係を示すライオン、農業を示すカカオの木、天然資源を示す金鉱が描かれています。
過去に発行された古いセディはガーナを象徴するカカオポッド、セディの由来であるタカラガイを描くなど、よりシンプルなデザインの通貨でした。
紙幣の種類
額面 | デザイン |
1セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:アコソンボダム |
5セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:ガーナ大学 |
10セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:ガーナ銀行 |
20セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:最高裁判所 |
50セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:クリスチャンボー城 |
100セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:ガーナ議会 |
200セディ![]() ![]() |
表:ガーナの6大指導者 裏:ジュビリーハウス |
ガーナの紙幣は、2019年から新たに100セディ、200セディの額面が追加されて刷新されました。
紙幣の表面に描かれるのは、ガーナの6大指導者であり、以下の人物達です。
- クワメ・エンクルマ
- エベネゼル・アコ・アジェイ
- エドワード・アクフォ・アド
- ジョセフ・ボアキエ・ダンクア
- エマニュエル・オベツェビ・ランプティ
- ウィリアム・オフォリ・アッタ
また、1セディはインフレにより現在は発行されていない紙幣となりましたが、使用可能な通貨です。
ガーナのアンティークコイン ~おすすめの金貨・銀貨~
ガーナのアンティークコインを希少性のある金貨・銀貨に絞って紹介します。
- クワメ・エンクルマ 共和国記念日 2ポンド金貨 1960年
- エイリアン 50セディ金貨 2023年
- エリザベス2世 アフリカヒョウ 20セディ金貨 2020年
- クワメ・エンクルマ ガーナ独立記念 10シリング銀貨 1958年
- 世界漁業会議 50セディ銀貨 1984年
- トナカイ 5セディ銀貨 2022年
クワメ・エンクルマ 共和国記念日 2ポンド金貨 1960年
概要 | 内容 |
発行国 | ガーナ |
発行年 | 1960年 |
額面 | 2ポンド |
直径 | 28.4mm |
重量 | 15.98g |
発行枚数 | 15,200枚 |
品位 | 917/1000金 |
1960年、ガーナが共和国として始動し、クワメ・エンクルマ氏が大統領に就任した年に発行された2ポンド金貨です。
ロイヤルミントが発行しており、メダルタイプのゴールドコインとなっています。
エンクルマ氏の右向き肖像、現行の通貨とはタイプが異なるガーナの国章が描かれています。
ガーナの金貨の中でも一定数の流通が確認されている金貨であり、オークションでも出品が確認されました。
エイリアン 50セディ金貨 2023年
概要 | 内容 |
発行国 | ガーナ |
発行年 | 2023年 |
額面 | 50セディ |
直径 | 16.5mm |
重量 | 3.11g |
発行枚数 | 1,000枚 |
品位 | 999/1000金 |
ガーナでは、エイリアンシリーズの小型金貨が複数枚発行されています。
2体のエイリアンと宇宙船が描かれており、表面のデザインは国章を囲むように描かれるミステリーサークルを意識しています。
ガーナではエイリアン映画が流行していることから、このようなコンセプトの金貨シリーズが発行されたと考えられます。
エリザベス2世 アフリカヒョウ 20セディ金貨 2020年
概要 | 内容 |
発行国 | ガーナ |
発行年 | 2020年 |
額面 | 20セディ |
直径 | 32mm |
重量 | 31.1g |
発行枚数 | 100枚 |
品位 | 999/1000金 |
ガーナはイギリスの植民地であった歴史から、イギリスとは密接な関係にあり、当時のイギリスの君主の肖像が描かれた金貨も発行されています。
アフリカヒョウをテーマにしたコインであり、ヒョウ柄模様の上にエリザベス2世の肖像が描かれています。
裏面にはアフリカヒョウが獲物を食べる様子が描かれたコインです。
発行枚数はわずか100枚、純金で31.1gと重量があることから、様々な理由において価値が高い金貨といえるでしょう。
エリザベスコインの価値は? 記念コインと投資用コインでそれぞれ紹介
クワメ・エンクルマ ガーナ独立記念 10シリング銀貨 1958年
概要 | 内容 |
発行国 | ガーナ |
発行年 | 1958年 |
額面 | 10シリング |
直径 | 38mm |
重量 | 28.28g |
発行枚数 | 11,000枚 |
品位 | 925/1000銀 |
ガーナ自治領は、イギリス領のトーゴランド、ゴールドコーストの独立により1957年に設立された共和国になる前のガーナです。
表面には共和国時代とは異なるクワメ・エンクルマの肖像、裏面にはGHANAの文字と星が描かれています。
独立して間もない時代に発行された銀貨は少なく、こちらのコインを中心に市場に流通しています。
世界漁業会議 50セディ銀貨 1984年
概要 | 内容 |
発行国 | ガーナ |
発行年 | 1984年 |
額面 | 50セディ |
発行枚数 | 520枚 |
品位 | 925/1000銀 |
世界漁業会議(World Fisheries Congress)を記念して発行された50セディ銀貨です。
表面にはガーナの伝統的な太鼓、裏面には水上ボートに乗った複数の漁師が描かれています。
表面のデザインは当時の通常流通貨幣にも採用されていました。
トナカイ 5セディ銀貨 2022年
概要 | 内容 |
発行国 | ガーナ |
発行年 | 2022年 |
額面 | 5セディ |
直径 | 38.6mm |
重量 | 31.135g |
発行枚数 | 15,000枚 |
品位 | 999/1000銀 |
ガーナで発行された氷河期の巨人と呼ばれるシリーズで発行されたトナカイを描いた5セディ銀貨です。
上を向くトナカイと氷河期の巨人の各動物のシルエットが彫られており、トナカイの部分のみが縁取られています。
2024年にイギリスでも同様のシリーズの銀貨の発行が開始されました。
イギリスのアンティークコイン特集 おすすめの金貨・銀貨を紹介
まとめ
ガーナは、西アフリカの赤道直下に位置し、美しい自然や歴史的建造物、豊かな文化に彩られた国です。
1957年の独立以降、クワメ・エンクルマをはじめとする数々の政権交代を経て、現在は経済と政治の安定を実現しました。
独自通貨セルディとアンティークコインはコレクション分野において注目されています。