スイスのコインの歴史はけっして長くはありませんが、射撃祭をはじめとするコレクターから根強い人気を誇るシリーズも存在します。
スイスの代表的なコインシリーズである射撃祭は、1842年~1939年まで発行されていたコインと1984年から現代まで発行されているコインの2種類に分類可能で、それぞれ価値が異なります。
この記事ではスイスの代表的な金貨・銀貨を9種類紹介し、スイスのコインの歴史と種類についても解説します。
スイス コインの歴史
スイス(スイス連邦)は、1848年に成立し、各地域の通貨を統一するために作られたのがスイスフランです。
1850年代~現代に至るまでのコインが対象となっているため、その歴史はけっして長いものではありません。
しかし、美しいデザインのコインが多いことと、種類が少なくコンプリートしやすいことから一部のコレクターから根強い人気があります。
その中でも射撃祭の記念硬貨は希少価値が非常に高く、スイスを代表するコインといってもよいでしょう。
それでは、まずスイスのコインのはじまりを見ていきましょう。
スイス コインのはじまり
1850年に正式にスイスフランが制定され、当時フランスの貨幣であったフランスフランを模倣して、1スイスフラン銀貨が作られました。
スイスフランは基本的にベルン造幣廠(現在のスイス連邦造幣局)で作られてきましたが、初期の貨幣に関してはパリ、ストラスブール、ブリュッセルで製造されたものもあったようです。
また、1スイスフラン銀貨は当初、品位.900、重量5gであり、純粋な銀の含有量は4.5gでした。
しかし、1874年から品位を.835まで落としており、5スイスフラン銀貨に関しても1900年代前半には同様の品位に落ちています。
現在、スイスフランの元になったフランスフランは廃止されましたが、スイスフランは現在も使用されている通貨です。
日本円と同様に安全通貨とされており、金融市場に不安が広がると買われやすい通貨として知られています。
スイス コイン種類
スイスの通常硬貨の種類は下記のとおりです。
- 1ラッペン
- 2ラッペン
- 5ラッペン
- 10ラッペン
- 20ラッペン
- 1/2フラン
- 1フラン
- 2フラン
- 5フラン
- 10フラン
- 20フラン
- 100フラン
現行で一般的に使用されている通貨は、5・10・20ラッペン、1/2・1・2・5フランの7種類で、100ラッペンが1フランにあたります。
また、スイスのコインは1875年から現在に至るまで図案の変更がないため、バリエーションは非常に少ないです。
スイスの伝統行事 射撃祭とコインの関係
射撃祭とは、スイス、オランダ、ドイツで14世紀から開催されてきたお祭りのことで、実銃を使った射撃大会になります。
その規模はさまざまで、村などの小さな単位で行われることもあれば、スイス全土から参加者を集う全国大会もありました。
1842年にスイスで射撃祭を記念したコインが初めて作られています。
スイスフランが制定されたのが1850年であることから、射撃祭の記念コインはそれよりも前に発行されたコインです。
発行元は国ではなくカントンという日本では県にあたる規模の地域ではありましたが、含有している銀の量が基準を満たしていたため、当時通貨として一部流通したといわれています。
しかし、記念コインかつ小規模の地域で製造されたことから発行枚数が元々少なく、流通したコインは摩耗していることから状態のいいコインが減っており、現存する美品の希少価値が高まっているのです。
政治的な理由で1939年に製造が中止され、1984年に再開されたため、射撃祭記念コインには1842年~1939年に発行されたコインと1984年から現代まで発行されているコインの2種類があり、基本的には前者のほうが希少価値は高いです。
スイスの金貨・金メダル6選
スイスの人気金貨は先ほども説明した通り、射撃祭関連に集中しています。
今回は、射撃祭のコインを中心に金貨・金メダルを6つ紹介します。
- アルプスの少女ブレネリ 100フラン金貨 1925年
- フリーブルク 射撃祭 100フラン金貨 1934年
- グラウビュンデン 現代射撃祭 500フラン金貨 2012年
- グラルス 現代射撃祭 500フラン金貨 2017年
- スターンス 現代射撃祭 500フラン金貨 2018年
- トゥールガウ 射撃祭 金メダル 1890年
アルプスの少女ブレネリ 100フラン金貨 1925年
発行国 | スイス |
発行年 | 1925年 |
額面 | 100フラン |
グレード | MS64 |
直径 | 36mm |
重量 | 32.25g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 5,000枚 |
状態 | UNC |
ブレネリはスイスの代表的な民謡「おおブレネリ」にも登場していますが、スイスにおける一般的な女性の名前です。
世界で最も美しいコインの1枚に挙げられる描かれた女性のモデルは、このコインの彫刻師でデザイナーのフリッツ・ユーリス・ランドリの隣人、フランソワ・クレイマー・エグリと言われています。
コイン表面のデザインはこの女性をモデルとした女性像が描かれ胸元にスイスの国花であるエーデルワイスの花葉飾りを付けており、背景にはアルプス山脈が描かれています。
射撃祭以外でスイスの代表的な金貨を挙げるならブレネリ金貨を選ぶ人が多いほど人気の金貨です。
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フリーブルク 射撃祭 100フラン金貨 1934年
発行国 | スイス |
発行年 | 1934年 |
額面 | 100フラン |
グレード | MS64 |
直径 | 31mm |
重量 | - |
品位 | - |
発行枚数 | 2,000枚 |
状態 | Proof FDC(完全未使用) |
スイスの州フリーブルクで行われた射撃祭を記念して作られた100フラン金貨です。
フリーブルクは、スイスのサリーヌ川沿いにに位置し、工業や食品産業が発展している中世都市になります。
こちらの金貨は、完全未使用品の中でもヘアラインが非常に少なく、大変保存状態の良いコインです。
グラウビュンデン 現代射撃祭 500フラン金貨 2012年
発行国 | スイス |
発行年 | 1925年 |
額面 | 100フラン |
直径 | 33mm |
品位 | .900 |
発行枚数 | 180枚 |
状態 | Proof FDC |
射撃祭記念コインには大きく分けて2種類あり、現代射撃祭記念コインは、1984年にチューリヒ州の田舎町オーバーハスリ射撃祭から新たに発行され現在まで発行を続けられているコインのことを指します。
こちらの金貨は「CONVERTIBILE ALLA FESTA DEL TRIO」と刻印されていますが、正しくは「CONVERTIBILE ALLA FESTA DEL TIRO」であり、銘文にスペルミスがあることが特徴の発行枚数の少ない希少な金貨です。
TRIOと表記されているのはこの年のコインのみであり、後に発行される射撃祭の金貨は修正されています。
グラルス 現代射撃祭 500フラン金貨 2017年
発行国 | スイス |
発行年 | 2017年 |
額面 | 500フラン |
グレード | PF70 Ultra Cameo |
直径 | 31mm |
重量 | 15.55g |
品位 | .999 |
発行枚数 | 220枚 |
状態 | Proof FDC(完全未使用) |
こちらの500フラン金貨は、毎年継続して記念貨の発行が続けられており、今年で37枚目の長期シリーズです。
グラルス州はスイスのカントンの中でも最も歴史が古く、ビジネス拠点として発展を遂げた地域になります。
コインには、スイスのグラルス州の守護聖人ゼッキンゲンの聖フリドリンが彫られており、背景にはアルプスの山岳地帯が描かれています。
スターンス 現代射撃祭 500フラン金貨 2018年
発行国 | スイス |
発行年 | 2018年 |
額面 | 500フラン |
グレード | PF69 Ultra Cameo |
直径 | 33mm |
重量 | 15.55g |
品位 | .999 |
発行枚数 | 275枚 |
状態 | Proof FDC(完全未使用) |
こちらも現代射撃祭を記念して作られた500フラン金貨です。
現代射撃祭のコインは子供が生まれた年に記念して買われることも多く、また金貨だけでなく銀貨や厚手型のピエフォーコインなど色々なバリエーションがあり長年愛されているシリーズになります。
スターンス町は、スイスのニドワルデン州にある町のことです。
500フラン金貨は発行枚数が非常に少ないことから現代射撃祭のコインでも高い希少価値を持ちます。
トゥールガウ 射撃祭 金メダル 1890年
発行国 | スイス |
発行年 | 1890年 |
額面 | - |
グレード | EF+/UNC |
直径 | 45.2mm |
重量 | 69.68g |
品位 | - |
発行枚数 | 119枚 |
状態 | 極美品/未使用 |
1890年の7月に首都フラウエンフェルトで射撃祭が行われたときに発行された大型の金メダルです。
盾と剣を携えたヘルヴェティアが表面に描かれ、裏面にはライオンと女性が描かれた首都フラウエンフェルトの紋章が彫られています。
射撃祭の記念コインの中でもデザインの完成度が高く、1842年~1939年の射撃祭で発行された記念メダルであり、発行枚数が100枚程度と非常に少なく、価値が高まる要素を網羅したコインです。
スイスの代表的な3種類の銀貨
次に、スイスの代表的な銀貨を2種類紹介します。
- グラウビュンデン 射撃祭 4フランケン銀貨 1842年
- オーバーハスリ 現代射撃祭 50フラン銀貨 1984年
- ルッツェルン 現代射撃祭 50フラン銀貨 2021年
グラウビュンデン 射撃祭 4フランケン銀貨 1842年
発行国 | スイス |
発行年 | 1842年 |
額面 | 4フランケン |
グレード | - |
直径 | 40mm |
重量 | 29.5g |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 4,256枚 |
状態 | - |
射撃祭の初年になる1842年にグラウビュンデンで発行された4フランケン銀貨です。
かつてのグラウビュンデン自由国は灰色同盟、神の家同盟、十裁判区同盟の3つの同盟から成っており、この3つの同盟を象徴する3つの盾が描かれています。
射撃祭のコインの中でも最も古く、入手困難であることからコレクター需要の高い銀貨です。
オーバーハスリ 現代射撃祭 50フラン銀貨 1984年
発行国 | スイス |
発行年 | 1984年 |
額面 | 50フラン |
グレード | Proof FDC |
直径 | 37mm |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 300枚 |
状態 | 完全未使用 |
スイス現代射撃祭シリーズ最初の一枚目に当たるコインであり、オーバーハスリという小さな村から射撃祭コインシリーズは現代に復興されました。
デザインはスイスの英雄、ウィリアム・テルが描かれ、肖像面はフロストで仕上げて重厚感を感じさせます。
コインショーのような即売会でも最近では見かける事がとても少なくなりました。
ルッツェルン 現代射撃祭 50フラン銀貨 2021年
発行国 | スイス |
発行年 | 2021年 |
額面 | 50フラン |
グレード | PF70 ULTRA CAMEO |
直径 | 38mm |
発行枚数 | 1,000枚 |
状態 | Proof FDC |
連邦射撃祭の2020年は新型コロナウイルスの影響で延期となったことから、2020年と2021年の二つの年が刻印されています。
延期の翌年の2021年のルツェルンにおける射撃祭で発行された銀貨は、完成度の高さからコインコレクターから注目されました。
表面に描かれる女神の肖像と、裏面に描かれた横たわるライオンは嘆きのライオンと呼ばれるデザインであり、ブルボン朝の紋章である盾を抱えながら背中を刺されている姿です。
ライオンの横にはスイスの紋章を確認できます。
近年に発行された現代射撃祭の銀貨の中でも人気の高い一枚となっています。
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スイスのアンティークコインでよくある質問
それでは、スイスのアンティークコインでよくある質問をまとめました。
- スイスの金貨の値段はいくら?
- スイスの金貨・銀貨の買取を依頼するなら?
それぞれ詳しく解説します。
スイスの金貨の値段はいくら?
同じスイスの金貨であっても、発行年、発行枚数などの希少性によって左右されるので、一概にいくらが相場とはいえません。
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」で過去に取り扱った金貨では、30万円~50万円ほどのコインから、数百万円以上の価値を持つコインもありました。
スイスの金貨を相場よりも高値で購入しないためには、信頼できる業者からコインを購入することが重要です。
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まとめ
スイスのコインは他の国のコインと比較するとデザインの種類が少ないためコンプリ―トしやすいといわれています。
ただし、1842年~1939年までの射撃祭のコインは一部入手困難なものが存在し、同じデザインのコインであっても年代別に分けて収集するならこの限りではありません。
スイスのコインで希少価値や美しいデザインを求めるなら、射撃祭のコインから欲しい商品を探すとよいでしょう。