金貨とは金を含む貨幣のことであり、紀元前643年頃から存在したといわれており、その歴史は非常に長いものとなっています。
現代の現金は、安い金属で作られた硬貨と紙幣が一般的であることから、金をお金として使用することは馴染みがないかもしれません。
しかし、200年以上前は金貨が一般的に使用されてきた時代があり、現在も金価格に基づいて取引される地金型金貨が流通しています。
この記事では、金貨の歴史について世界と日本のお金の歩みを古代から現代まで詳しく解説していきます。
この記事のポイント
・日本では戦国時代から金貨が一般的に使用されるようになった
世界の金貨の歴史
金貨とは、金を素材として作られた貨幣のことであり、その価値と希少性の高さからお金として信頼性が高いものでした。
偽造が難しく、柔らかく加工しやすい性質から、古くから貨幣の材料に用いられています。
また、科学的に安定していることから劣化しにくく、光沢が美しく見栄えも良いことから、この美しさに惹かれて多くのコインコレクターが誕生しました。
金貨はいつから発行されるようになり、なぜ一般的に貨幣として使用されなくなったのか、金貨とお金の歩みを詳しく解説していきます。
年号 | 内容 |
紀元前 643 年 | リディア人が最初のエレクトラムの金貨を製造した |
1489年 | ヘンリー7世の最初のソブリン金貨が誕生する |
1816年 | 国際通貨制度の基礎となる金本位制が施行される |
1914年~1933年 | 第一次世界大戦、世界恐慌により金本位制が廃止されていく |
1967年 | 最初の地金型金貨であるクルーガーランド金貨が発行される |
金貨が最初に製造されたのは古代
画像引用:https://coinweek.com/ancient-coins-first-official-coin/
金貨が最初に製造されたのは、紀元前 643 年であり、こちらの金貨はリディア人の手によって最初に作られたと言われています。
金貨は柔らかく加工しやすい反面、通貨として使用するには柔らか過ぎることから、強度を上げるために銀や銅などの他の金属との合金を使用しました。
この合金をエレクトラムと呼び、古代に作られた金貨はエレクトラム金貨とも呼ばれます。
古代では金を主要な貨幣とするか、銀を主要な貨幣とするかは地域や時代によっても分かれていましたが、一般的に銀よりも金のほうが希少性が高いことから金貨が重要視されることが多かったようです。
一部地域のギリシャ人、初期のローマ人には銀が貨幣として主要であるべきだという考えが広まったこともありました。
以上のことから、古代から一定数の金貨が世界中において流通してきました。
中世のヨーロッパでは純金に近い品位で金貨が製造される
中世のヨーロッパでは、ほぼ純金の金貨が造られるようになり、1489年にはヘンリー7世の最初のソブリン金貨が誕生しました。
直径40mmを超える大型の金貨であり、一般的に流通することはなく王室の間や貿易などに使用されました。
また、金貨はお金としての価値よりも金そのものの価値が上回ると溶かされてしまうことが多かったといわれています。
これを防ぐために金貨には美麗かつ複雑なデザインが描かれるようになり、個人による溶解を対策しました。
中世から近代にかけて、美麗なアンティークコインが現存しており、そのコインに惹かれて多くのコレクターがコレクションをするようになったのは、金をお金として使用してもらうための対策の結果でもあったのです。
金本位制が施行され金がお金として最も流通した近代
ナポレオンの20フラン金貨も金本位制の先駆けといわれることが多い
1816年、イギリスで金を通貨の価値基準とする金本位制が施行され、20世紀初頭まで国際通貨制度の基礎でした。
イギリスのソブリン金貨を中心に世界で最も金のお金が流通していました。
カリフォルニア、オーストラリアで同時に起こったゴールドラッシュがあり、金の供給量が増加したことから鋳造の困らなかったため、19世紀から20世紀は金貨の流通が多くなる背景もありました。
日本においても1871年から実質的に金本位制となり、これにより通貨単位が円となり、金貨が発行されるようになりました。
以上のことから金貨が世界中で広く発行されるようになったため、アンティークコインにおいて金貨が収集される時代も、基本的に19世紀前後から20世紀となっています。
金本位制の廃止により金貨がお金として流通しなくなる
画像引用:https://www.pcgsasia.com/valueview/index?cid=941&specno=407404
第一次世界大戦や世界恐慌など20世紀初頭の出来事により、金のインフレが止まらなくなり、金本位制は廃止されていき、現在の管理通貨制度に移行していくことになります。
これまでの金の価値を元にお金の価値を決めていた時代から、経済の動きに応じて通貨の価値が決まる時代へと各国が移り変わっていく時代でした。
1933年のアメリカでは金の私的所有が禁止される事態に発展し、発行されていたイーグル金貨も発行されなくなりました。
そのため、1933年にはイーグル金貨はほとんど発行されなかったことから、現存している1933年製のイーグル金貨が約6億円で落札されたことがあります。
現在も管理通貨制度に時代にあることから、金が一般的にお金として流通する時代は20世紀初頭に幕を閉じたことになります。
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現代では金価格と連動する地金型金貨が発行されるようになる
金貨がお金と流通しなくなった後は、世界中でこれまで通り記念金貨の発行が続けられ、新たに地金型金貨が発行されるようになります。
地金型金貨は地金の価値と連動する純金の金貨であり、金価格に基づいて現在も取引されています。
1967年、世界初の地金型金貨であるクルーガーランド金貨が南アフリカで発行されました。
クルーガーランド金貨は地金型金貨の市場を実質的に独占していましたが、アパルトヘイト政策により輸入が自粛され、以降は複数の国から地金型金貨が流通するようになっています。
国が金の価値を保証していることから信頼性が高く、一般的にお金として流通することはないものの、金貨は現在も広く取引されているのです。
地金型金貨は金投資の手段の一つにもなっており、今後の長期的な金価格の上昇に期待する場合に魅力的な投資方法です。
日本の金貨の歴史
日本初の金貨は、760年に恵美押勝の命で作られた「開基勝寳」といわれていますが、実際に流通するに至っていません。
戦国時代になると戦国武将や商人の間で金貨が用いられるようになり、中でも武田信玄の「甲州金」は有名です。
豊臣秀吉は全国の鉱山を接収したことで、金によって支配力を高めていました。
江戸時代には、三代将軍家光によって金銭が流通することになりましたが、金品位が50%を下回るものも存在しており、このような貨幣は海外の貨幣市場では銀貨として扱われています。
1871年に日本は金本位制に移行したため、10円金貨、20円金貨が発行されるようになりました。
以降は海外にならい金本位制を廃止しており、地金型金貨も存在しないことから日本において金貨が発行されるのは記念金貨のみとなっています。
まとめ
金貨の歴史について解説しましたが、金貨は古代から現在に至るまで希少性と価値が認められていることがわかります。
経済の変化によりお金として使用されることはなくなったものの、価値を持たない時期は存在しないことから、資産としての信頼性は非常に高いといえるでしょう。
地金型金貨やアンティークコインの金貨など、現代で購入できる金貨の価値が唐突になくならないことは歴史が保証しています。
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