金を購入して長期保有する場合に悩むことは売り時であり、どのタイミングで売却するべきかは買う前にも考えておきたいところです。
金価格は毎日変動するため、売却に適したタイミングを見きわめることが難しい資産といえます。
資産運用や投資であるならば、できる限り高値で売却したいところではありますが、高値での売却を求めるあまり売り時を逃してしまうことも。
この記事を読むことで、金を売るのに適したタイミングと金の売り時は今であるか判断するポイントを解説することで、金の売り時はいつであるかわかるようになります。
また、売却時にかかる税金、金を購入する前であれば知っておきたい出口戦略や理想的な投資先も紹介します。
この記事のポイント
・金を購入する前であれば知っておきたい出口戦略や理想的な投資先を紹介
金を売るのに適したタイミング
金を売るのに適したタイミングを以下にまとめました。
- 市場価格が高値圏にある
- ポートフォリオをリバランスする
- ライフイベントなどの資金需要がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
市場価格が高値圏にある
市場で金価格が過去の高値付近や明らかに上昇トレンドを示している場合は、売却を検討するタイミングです。
金を投資対象にした金融商品への短期投資であれば、チャート上で直近のピークを上回る動きが続いたり、テクニカル指標で主要な移動平均線を大きく超えたりした場合は、利益確定の機会になります。
金現物の長期投資の場合もできる限り高値で売却したいところです。
地金価格を調べて直近の価格と比較して高い水準にある場合や、最高値を記録したときは絶好のタイミングになるでしょう。
ポートフォリオをリバランスする
金は単体に投資するのではなく、株式などの金融商品とあわせて保有する投資対象といえます。
株式がリスク資産であれば、金は安全資産として世界中の投資家が認識しているため、どちらもバランスよく保有することで全体の運用成果が安定しやすくなります。
価格上昇によりポートフォリオにおける金の割合が増加した場合は、売却して本来の比率に戻すとリスクを分散しやすくなるでしょう。
金価格が上昇しているときには、ほかの資産が割安になりやすいため、金を売却した資金で他の資産を購入すれば効率よく投資できます。
ポートフォリオのリバランスは金を売るのに適したタイミングの一つになります。
ライフイベントなどの資金需要がある
住宅購入や教育資金、医療費など大きな支出予定があるときは、手元の金を売却して資金を確保するタイミングになります。
例えば、数カ月後に住宅頭金が必要になる場合や、急な医療費が発生しそうなときは、金を売却する計画を立てておくと安心です。
売却して得たキャッシュは、ライフイベントの支払いに充てやすく、必要資金をあらかじめ準備することで、急な相場変動に慌てずに対処できます。
ただし、売却益には税金がかかるため、売却益のすべてを支出に回してしまった場合も、税金の納付時期に納められるようにしましょう。
金の売り時は今であるか判断するポイント
金の売り時は今であるか判断するポイントを3つまとめました。
- 直近の金価格を調べる
- 現在が円高・円安であるか
- 金融資産と比較した金の保有量を考える
それぞれ詳しく見ていきましょう。
直近の金価格を調べる
直近の金価格を把握することで、売却価格の高低感を判断できます。
過去数か月や過去1〜2年の推移と比較し、価格が過去の高値近辺にあるかを確認します。
高値にある場合や最高値を更新している場合は、金の短期的な売り時は今といえるでしょう。
ただし、長期的にはさらに上昇する可能性もあるため、価格相場のみを判断材料に売り時を考えるのは難しいかもしれません。
現在が円高・円安であるか
金価格はドル建てで動くことが多く、円換算価格にも為替が大きく影響します。
一般に、円安(ドル高)が進むと、ドル建て金価格が同水準でも円換算価格は上昇しやすいため、国内で売る際の円受取額は増えやすいです。
円高(ドル安)局面では円受取額は減りやすいことから、売却のメリットが相対的に低下することも。
現在の為替市場が円高であるか、円安であるかを意識しておくと金の売り時を判断する重要な指標になります。
金融資産と比較した金の保有量を考える
ポートフォリオのバランスを取るために金を保有しているなら、金の保有比率が、想定比率を大きく上回っていないか確認します。
一般的には全資産の10%~15%程度を目安に金を保有することが理想的とされる場合が多いです。
価格上昇で金保有比率が想定を超えて高まっているなら、一部を売って本来の比率に戻すことで、リスク分散を保ちやすくなります。
具体的には、金が全資産の20%以上の保有率に上昇している場合は、売却をおこなうと本来のリスク配分に戻せます。
リバランスを検討する際には資産全体の保有率を確認して適切な割合で保有するようにしましょう。
金の売却では税金がかかる
金の売却で利益を得た場合には税金がかかるため、売却するなら税金の納め方も理解しておきましょう。
金の購入方法によってかかる税金も異なり、確定申告の有無も変わってきます。
金の売却でかかる税金について内容を以下にまとめました。
譲渡所得または申告分離課税で課税される
金地金やコインなどの現物金を売却して利益が生じた場合、原則として譲渡所得に区分され、給与所得など他の所得と合算して総合課税の対象となります。
ただし、頻繁に購入・売却を繰り返し営利目的と見なされる場合は、譲渡所得ではなく雑所得に区分される可能性も。
一方で、現物の金ではなく金の投資信託・ETFの投資で得た売却益は、申告分離課税(税率20.315%)が適用されます。
現物の金を売却した場合の譲渡所得にかかる税金は、短期譲渡所得・長期譲渡所得に分類されるかどうかで税率が変わります。
金の保有期間が5年未満の場合は短期譲渡所得、金の保有期間が5年以上の場合は長期譲渡所得です。
具体的な計算方法は下記のとおりです。
- 短期譲渡所得=売却価額–(購入代金–譲渡費用)–50万円
- 長期譲渡所得=売却価額–(購入代金–譲渡費用)–50万円×1/2
上記の計算で50万円を差し引いて所得が0になった場合は、税金がかかりません。
つまり、購入代金と手数料などの譲渡費用を差し引いた利益が50万円以下の場合は税金はかからないことになります。
譲渡所得で利益が50万円以上の場合は、税金を納める必要があるでしょう。
譲渡所得は給与所得などの他の所得と合算されるため、所得合計が高いほど高い税率が適用されます。
譲渡所得がある場合は確定申告をおこなって納める
金の売却で確定申告が必要なケースは譲渡所得があるケースであり、利益が発生した年の翌年2月16日~3月15日に申告・納税します。
金の現物を売却した際に確定申告に必要な書類は以下のとおりです。
必要書類 | 税率 |
購入時の領収書や契約書 | 取得価格を証明する |
売却時の契約書・買取証明書 | 売却価格を証明する |
譲渡費用(手数料、鑑定料、送料等)の領収書 | 譲渡費用として差し引く |
確定申告のために上記の必要書類は必ず保管するようにしましょう。
確定申告書を作成して期間内に申告したあとは、計算した所得税額を納税します。
住民税は6月に請求された金額に従って、6月・8月・10月・1月の4期にわけて納税するか、給与所得から差し引く形で納税します。
金の売却にかかる税金をさらに詳しく知りたい方は以下の記事をチェックしてください。
金の代表的な売却先一覧
金の代表的な売却先を一覧形式にまとめました。
- 貴金属店(インゴットなどの地金)
- 証券会社(投資信託・CFDなどの金融商品)
- コイン専門店(アンティーク金貨)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
貴金属店(インゴットなどの地金)
貴金属店では、純度の高いインゴットや地金を買い取ってもらえます。
多くの貴金属店は店頭またはオンラインでの買取受付をおこなっており、店舗によっては宅配買取や出張買取にも対応しています。
売却価格は、国際的な金相場を円換算した国内店頭買取価格を基に設定され、日々変動する仕組みです。
買取時には、金の純度や重量を正確に測定し、その上で手数料が差し引かれます。
手数料設定は業者ごとに異なり、売却総額の1~3割程度が相場とされるケースが多いです。
証券会社(投資信託・CFDなどの金融商品)
証券会社は金価格に連動する金融商品を取引できる代表的な取引先です。
具体的には金を対象とする投資信託・ETF、短期取引向けの商品であるCFD(差金決済取引)が挙げられます。
どちらもサービスを提供する証券会社などに売り注文を出せば売却が完結します。
金融商品の売却手続きは時間がかからず、最短で翌営業日に売却代金が口座に入金されるでしょう。
コイン専門店(アンティーク金貨)
コイン専門店では、希少性の高いアンティーク金貨を鑑定・評価したうえで買い取ってもらえます。
希少性の高い金貨は、単純に金地金としての価値を超えるプレミアム価値が付くことがあります。
適切に鑑定してもらうことで高価売却が見込めるでしょう。
古い金貨は、歴史的背景や発行枚数などによって大きく価値が変動します。
そのため、アンティーク金貨は貴金属店ではなく専門店への売却が必要です。
アンティークコインの買取をおこなっている専門店には「コインライブラリー・プリンシパル」が挙げられます。
金を購入する前に考えたい売却を含めた出口戦略
金の売り時を考えるにあたって、金を購入する前の段階で出口戦略を考えておきたいところです。
短期投資と長期投資、それぞれにおける出口戦略を以下にまとめました。
短期投資では目標価格や損切ラインを決める
短期投資では、購入前に明確に目標価格と損切ラインを決めておくことで計画的な売却が可能になります。
あらかじめ設定した水準に達したら自動的に利確し、逆に想定外の下落があったら自動的に損切りする体制を築くことが重要です。
売却タイミングを具体的に決めることで、相場が想定どおりに動いた際に確実に利益を確定しやすくなります。
損切ラインは投資資金に対する許容できる損失をもとに決めることで、リスク管理しやすくなるでしょう。
短期投資では購入前に出口戦略を具体的に数値化し、計画的に実行することが成果を左右します。
長期投資では売却する時期を決めておく
長期投資では購入前に大まかな売却時期を想定しておくことで、売り時に困ることがなくなります。
例えば、ライフイベントに備えて必要資金が生じる時期を想定し、その前後で売却する計画を立てておくことが挙げられます。
ただし、長期投資でもポートフォリオをリバランスしたい場合は、保有している金の一部を途中で売却しても問題ありません。
大切なことは理由なく長期保有を続けるのではなく、目的をもって保有し、売却時期を明確にすることです。
売り時を気にせず出口戦略を立てやすいアンティーク金貨の魅力
アンティーク金貨は希少性や歴史的背景、コレクター市場での需要によって評価されます。
よって、金地金の短期的な相場変動に左右されにくく、特定の売り時を厳密に狙わなくても段階的に出口戦略を組み立てやすいことが魅力です。
アンティーク金貨には100年以上前に発行されたコインも多く、市場価格は安定して推移しやすく、短期では大きく変動しにくいことが特徴です。
専門店のネットワークを活用すれば、時期を問わず安定した流動性を確保しやすいため、出口戦略を立てやすいでしょう。
売り時を気にせず出口戦略を立てやすいアンティーク金貨の魅力は以下のとおりです。
- 金価格に大きく左右されずに右肩上がりで価値が高まりやすい
- ポートフォリオのインフレに強い資産として安定性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
金価格に大きく左右されずに右肩上がりで価値が高まりやすい
アンティーク金貨は、金地金価格との連動性が限定的です。
プレミア価値を基準に価格が決定することから、地金価格が横ばいや下落局面でも成長を期待できる資産になります。
具体的には以下のような成長が期待できます。
株価指数の日経平均、S&P500と比較しても高い成長率を期待可能であり、右肩上がりに上昇していることがわかります。
歴史的には、希少コイン市場の価格上昇率が同期間の金地金価格上昇率を上回る事例も多く報告されています。
例えば、ある期間では希少コイン市場が20%程度成長する一方、地金価格は10%程度の上昇に留まるケースもありました。
金価格が短期的に下落しても、アンティーク金貨固有の需要が維持されます。
市場全体の地金価格に左右されずに底堅さを示すことがあり、プレミアム部分の成長が続くことで総合的な価値向上が見込まれます。
プレミアムの上昇は金地金価値の上昇と相まって進むため、「実物資産としての金+コレクタブル部分のプレミアム」という二重の成長が期待できます。
結果として金地金のみと比べて高いトータルリターンを実現しやすい点も、右肩上がりで価値が高まりやすい要因です。
ポートフォリオのインフレに強い資産として安定性がある
アンティーク金貨は希少資産として流通量が限られるため、インフレ局面で通貨価値が下落するときに相対的に価値が上がりやすく、購買力低下を抑える手段として機能しやすいです。
歴史的に、インフレや市場混乱時にも希少コイン市場は比較的安定して取引が続きました。
金地金以上の底堅さを示す局面が見られるとの分析があり、アンティーク金貨がインフレヘッジとして有効であることが示唆されています。
リーマンショックやパンデミックなど大きな市場変動時でも、保存状態が良好で希少性が高いコインは投資家・コレクターの避難先となりました。
ポートフォリオ全体に占めるアンティーク金貨の割合を適度に組み込むことで、インフレや通貨不安によるポートフォリオ全体の下振れリスクを抑え、安定的な資産防衛効果が期待できます。
まとめ
金の売り時は、市場価格が高値圏にあるかどうか、ポートフォリオ内の金比率が想定を超えていないかなど、複数の観点から判断できます。
ただし、いざ売却するタイミングで売り時に悩むのではなく、購入時点で出口戦略を考えて購入することが適切な売り時をみきわめることにつながります。
また、売却益には税金がかかるため、取得価格や譲渡費用の証明書類を整理し、確定申告に備えておくことも忘れないようにしましょう。