エクアドルは、南アメリカ大陸にある太平洋に面する国であり、その名の通り赤道を意味するスペイン語が名前の由来である赤道直下の国です。
標高の高い場所に首都であるキトがあることから平均気温が低く、暑さをしのぎやすいことから、気候を理由に移住したい人が増えている国として知られています。
2000年に自国の通貨であるスクレを放棄したことで、現在ではアメリカ・ドルが法定通貨として採用されているのが現状です。
この記事では、エクアドルはどんな国であるか、歴史を含めて解説し、過去に流通した通貨であるスクレと希少性の高いアンティークコインを紹介します。
エクアドルはどんな国? ~アメリカを中心に移住しやすい国として知られる~
面積(総計) | 283,560㎢ |
通貨 | アメリカ・ドル(USD) |
首都 | キト |
言語 | スペイン語 |
主な宗教 | イスラム教(8割以上) |
主な民族 | 欧州系、先住民(混血の割合が7割以上) |
隣接している国 | コロンビア、ペルー |
独立 | 1822年5月24日 |
エクアドル共和国は、南アメリカ大陸の北西部に位置し、西部に太平洋、北部にコロンビア、東部と南部でペルーに接する国です。
エクアドル(Ecuador)はスペイン語で赤道を意味する言葉であり、公用語もスペイン語となっています。
赤道直下に位置するエクアドルでは、南アメリカにある世界最大の山脈であるアンデス山脈が連なり、海に面することから海岸もあり、熱帯雨林の地帯が存在するなど、豊富な自然環境があることが特徴です。
特に首都のキトは、標高2,800mの位置に存在することから、平均気温は14度程度と低くなっており、避暑地にもなる過ごしやすい気候となっています。
エクアドルは法定通貨にはアメリカ・ドルが使用されており、アメリカと関係が深い国であることから、リタイア後にアメリカから移住する人が多い国としても知られています。
価値に対する信用性が低い自国の通貨を廃止したことで、アメリカ・ドルで給与が貰えるのは同様の発展状況で自国の通貨を使用する国と比較すると安定性が高いといえるでしょう。
鉱工業、農業、水産業が主な産業となっており、バナナ、コーヒー、カカオなどが広く輸出されています。
通貨の優位性だけでなく、欧州系の民族・先住民・その混血の割合が最も多く、多様な民族が暮らしているため、多文化共生社会となっていることから移住しやすい環境であることも理由といえるでしょう。
エクアドルは自然豊かで首都を中心に標高が高いことから暑さをしのぎやすく、アメリカを中心に他の国から移住しやすい国といえます。
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エクアドルの歴史~ハイパーインフレで自国の通貨の価値が失われる~
年号 | 内容 |
1822年 | ピチンチャの戦いでスクレ将軍がスペインを破り、現在のエクアドルの地域が解放される |
1830年 | コロンビアに併合された後に、フアン・ホセ・フローレス大統領の下で独立を宣言 |
1859年 | 1回目のエクアドル・ペルー戦争の勃発 |
1941年 | アマゾン地域の領土問題が再び過熱し、2回目のエクアドル・ペルー戦争の勃発 |
1998年 | 数度の戦争と緊張状態を経てエクアドルがアマゾン地域の領土の失陥を認める |
2000年 | ハイパーインフレの影響で自国通貨のスクレの価値が暴落し、法定通貨にアメリカ・ドルを正式採用 |
1822年、コロンビア共和国とリオ・デ・ラ・プラタ連合州(現在のアルゼンチン)によって南米大陸の解法が進む中で、ピチンチャの戦いでスクレ将軍がスペインを破ったことで、現在のエクアドルの地域が解放されます。
解放された地域はシモン・ボリーバルによってコロンビアに併合されますが、内乱や混乱が多く、ベネズエラの独立に続く形でフアン・ホセ・フローレス大統領の下でエクアドル共和国として独立を宣言します。
独立後は隣国であるペルーとの争いが絶えず、1859年に1度目の戦争を開始した後に、1941年にアマゾン地域の領土問題が過熱し、エクアドル・ペルー戦争が何度も勃発しました。
最終的に1998年にエクアドルがアマゾン地域の領土の失陥を認める形で決着がついていますが、現在でも関係の悪い状態が続いています。
内政も順調とはいえない20世紀でしたが、21世紀に到達した最初の年、25,000スクレが1アメリカ・ドルに相当する為替レートとなるハイパーインフレが発生します。
ハミル・マワ大統領は経済恐慌を防ぐために、法定通貨にアメリカ・ドルを正式に採用し、それまで使用されていたスクレは使用されなくなりました。
エクアドルで過去に流通していた通貨の種類
エクアドルで現在使用される通貨はアメリカ・ドル(USD)であり、コインはアメリカのものとエクアドルのものが混在していますが、どちらも使用できます。
今回は2000年以前にエクアドルに流通していたスクレ(ECS)の種類を紹介していきます。
硬貨(1990年以降に流通)
- 1スクレ
- 5スクレ
- 10スクレ
- 20スクレ
- 50スクレ
紙幣(1990年以降に流通)
- 100スクレ
- 5,000スクレ
- 10,000スクレ
- 20,000スクレ
- 50,000スクレ
1スクレ(1988年~1990年)
表面は共通して描かれる盾の上に止まるコンドルが特徴的なエクアドル共和国の国章、裏面はスペインから南アメリカを独立に導いた軍人であるアントニオ・ホセ・デ・スクレの左向き肖像です。
5スクレ(1988年~1991年)
「5SUCRES」の文字の裏に描かれているのは大量のバナナです。
10スクレ 1991年
額面である10の数字の左側にはバルディビアのヴィーナスが描かれています。
20スクレ(1988年~1991年)
裏面に描かれているのは、キト近郊の赤道線にある世界の真ん中を示す記念碑です。
50スクレ(1988年~1991年)
額面を示す50の右側に描かれているのは、ラ・トリタ文化の太陽神の仮面です。
100スクレ(1988年~1997年)
南アメリカを独立に導き、統一したコロンビア共和国を打ち立てようとしたシモン・ボリバルの肖像が描かれている紙幣です。
5,000スクレ(1991年~1999年)
表面にはエクアドルの作家であるフアン・モンタルボ、裏面には鵜、ペンギン、ガラパゴスゾウガメが描かれています。
10,000スクレ(1991年~1999年)
ビセンテ・ロカフェルテの肖像、裏面にはキトの独立記念碑が描かれています。
20,000スクレ(1995年~1999年)
エクアドル共和国の大統領を務めたガブリエル・ガルシア・モレノ博士の肖像が描かれた20,000スクレの紙幣です。
50,000スクレ(1995年~1999年)
エクアドルの政治家であるエロイ・アルファロの肖像が描かれています。ハイパーインフレ時には25,000スクレが1ドルであったことから、この紙幣の価値は2ドルでした。
エクアドルのアンティークコイン~おすすめの金貨・銀貨を紹介~
エクアドルのアンティークコインを紹介します。
- エクアドル アントニオ・ホセ・デ・スクレ 10スクレ金貨 1900年
- エクアドル シモン・ボリバル 1コンドル金貨 1928年
- エクアドル 8エスクード金貨 1839年
- エクアドル ガラパゴスペンギン 5,000スクレ銀貨 1994年
- エクアドル FIFA World Cup 2006 25,000スクレ銀貨 2006年
- エクアドル 8レアル銀貨 1846年
エクアドル アントニオ・ホセ・デ・スクレ 10スクレ金貨 1900年
概要 | 内容 |
発行 | エクアドル |
発行年 | 1900年 |
額面 | 10スクレ |
直径 | 22mm |
重量 | 8.136g |
発行枚数 | 50,000 枚 |
品位 | 900/1000金 |
エクアドルで発行されたアントニオ・ホセ・デ・スクレの肖像を描く10スクレ金貨です。
シモン・ボリバルが名目的な立場であったことから、ボリビアの事実上の初代大統領であり、エクアドル戦線でも戦果を挙げた人物です。
スクレがエクアドルの通貨単位になったのもこの人物に由来し、流通通貨に多く肖像が描かれました。
エクアドルを代表するアンティークコインであり、流通枚数も多いことから大きな価値を持つことは多くないものの、広く取引できる金貨となっています。
エクアドル シモン・ボリバル 1コンドル金貨 1928年
概要 | 内容 |
発行 | エクアドル |
発行年 | 1928年 |
額面 | 1コンドル(25スクレ) |
直径 | 22mm |
重量 | 8.359g |
発行枚数 | 20,000 枚 |
品位 | 900/1000金 |
1928年にエクアドルで発行されたシモン・ボリバルが描かれた1コンドル金貨です。
1コンドルは、25スクレに相当します。
発行された通貨は20,000枚でしたが、実際に流通している通貨は推定で5,000枚以下とされており、ほとんどがエクアドル中央銀行で保管されたといわれています。
そのため、人物の知名度の高さと希少性からエクアドルの金貨の中でも高い価格で取引されているアンティークコインです。
エクアドル 8エスクード金貨 1839年
概要 | 内容 |
発行 | エクアドル |
発行年 | 1839年 |
額面 | 8エスクード |
直径 | 35mm |
重量 | 27.064g |
品位 | 875/1000金 |
エクアドルの独立当初にはスペインのエスクード金貨が発行されています。
表面は2つの山の間に太陽が昇っており、裏面には女性の左向き肖像が描かれています。
古くに発行された金貨であることから状態の良いものであれば、落札価格が数万ドルを超えるほどの高い価値があり、希少性が認められたコインです。
エクアドル ガラパゴスペンギン 5,000スクレ銀貨 1994年
概要 | 内容 |
発行 | エクアドル |
発行年 | 1994年 |
額面 | 5,000スクレ |
直径 | 40mm |
重量 | 27.07g |
発行枚数 | 20,300 枚 |
品位 | 925/1000銀 |
イベロアメリカシリーズのコインで、絶滅危惧野生生物を描くテーマで発行されたガラパゴスペンギンの銀貨です。
表面にはエクアドルの国章を中心にイベロアメリカの国章があり、2羽のペンギンが身を寄せ合う様子が描かれています。
自然豊かなエクアドルに相応しい動物コインとなっています。
エクアドル FIFA World Cup 2006 25,000スクレ銀貨 2006年
概要 | 内容 |
発行 | エクアドル |
発行年 | 2006年 |
額面 | 25,000スクレ |
直径 | 40mm |
重量 | 27.20g |
発行枚数 | 50,000 枚 |
品位 | 925/1000銀 |
2000年9月11日をもってスクレはエクアドルの法定通貨ではなくなりましたが、コイン収集家のために記念コインの発行は続けられました。
2006年のFIFA World Cupを記念して発行され、右手を胸の上に置き、左手にサッカーボールを持つ選手の様子が描かれています。
エクアドルのコインの中でも近年に発行されていることから一定の流通数はありますが、希少性は認められておらず、入手しやすいコインです。
エクアドル 8レアル銀貨 1846年
概要 | 内容 |
発行 | エクアドル |
発行年 | 1846年 |
額面 | 8レアル |
直径 | 37.5mm |
重量 | 25g |
品位 | 900/1000銀 |
スペインの通貨単位であるレアルで発行されたエクアドルの8レアル銀貨です。
この時代では先ほどの8エスクード金貨のデザインとは異なり、エクアドル共和国の国章が通貨に描かれていることがわかります。
数千ドルで落札されることもある銀貨であり、エクアドルの銀貨の中でも希少性が認められています。
まとめ
エクアドルは、バナナ、コーヒー、カカオなどを輸出する産業がメインであり、アメリカから移住する人も増えている気候的に過ごしやすい国です。
2000年を機会に独自通貨のスクレは流通しなくなりましたが、記念コインをはじめ、アンティークコインも取引されています。
国の背景を理解しながらアンティークコインを収集すると楽しみが広がります。