アンティークコインにおいて豊穣の女神とは、イタリアでヴィットリオ・エマヌエレ3世の時代に発行された金貨を指します。
額面は10リレ、20リレ、50リレ、100リレの4種類が確認されており、どの額面であっても人気が高く需要のあるコインとなっています。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世はアンティークコインコレクターとして知られる統治者であり、コインのデザインにもこだわりぬいたことから豊穣の女神を含む秀逸なデザインのコインがイタリアで多く生まれました。
この記事では、イタリアを擬人化した女性像として高く評価されている豊穣の女神のアンティークコインの魅力を解説します。
この記事のポイント
・豊穣の女神の金貨の魅力とヴィットリオ・エマヌエレ3世について簡単に解説
イタリアで発行された「豊穣の女神」のアンティークコインの概要


| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イタリア |
| 発行年 | 1910年~1927年 |
| 額面 | 10リレ、20リレ、50リレ、100リレ |
| デザイナー | エジディオ・ボニンセーニャ(Egidio Boninsegna) |
| 表面 | 軍服を着たヴィットリオ・エマヌエレ3世の左向き肖像 |
| 刻印(表面) | VITTORIO EMANUELE III |
| 裏面 | 左手に小麦の束、右手に鋤を手にする女神 |
| 刻印(裏面) | REGNO D’ITALIA LIRE 100(額面) E. BONINSEGNA ML GIORGI INC R |
| エッジのタイプ | リーデッド |
| 品位 | 900/1000金 |
豊穣の女神とは、イタリアにおいて1910年~1927年にかけて10リレ、20リレ、50リレ、100リレの額面で発行された金貨のことです。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世の時代に発行されたイタリアの金貨であり、肖像は40代の姿をデザインしています。
複数の額面の金貨が20年以上の長い期間に渡って発行されていることから、正確な総発行枚数を把握できない金貨です。
金の含有量が高いことから、すでに溶解されて存在しない場合もあり、発行年によって希少性も異なります。
アンティークコイン市場においては、1912年に製造された金貨の流通がほとんどを占めている状況です。
額面は高くなるほど想定される現存枚数も増えることから価値も上昇しやすくなりますが、10リレ金貨に関してはほとんど発行されていないため、100リレ金貨以上に豊穣の女神の金貨の中でも大変希少です。
そのため、現存している豊穣の女神は大きく分けて、すべて1912年製で20リレ金貨・50リレ金貨・100リレ金貨の3タイプに分けられます。
反対に言えば上記以外の年度・額面を持つ金貨を所有していれば、豊穣の女神の中でも非常にレア度が高いといえるでしょう。
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ヴィットリオ・エマヌエレ3世 豊穣の女神 金貨の特徴
ヴィットリオ・エマヌエレ3世 雲上の女神 金貨の特徴を解説していきます。
- イタリアを象徴する豊かな女性像の女神を描く
- コインコレクターであったヴィットリオ・エマヌエレ3世
- イタリアの彫刻家であるエジディオ・ボニンセーニャの作品
それぞれ詳しく見ていきましょう
イタリアを象徴する豊かな女性像の女神を描く
豊穣の女神は、イタリアを擬人化した女神を描いており、イタリアの豊かさを象徴しています。
イタリアは土壌が豊かであり、農業が盛んな国として知られています。
豊穣の女神は英語で「Aratrice」と呼ばれており、農耕に勤しむ女性のことを指す言葉です。
女性が抱える小麦、手に持つ鋤、そして風になびくように描かれているドレープから、背景に何も描いていないにもかかわらず、具体的な情景が思い浮かんできます。
農業国であるイタリアを女性として擬人化した豊穣の女神の金貨は、その美しさからアンティークコインコレクターから大変人気の高い1枚です。
また、アンティークコインは豊穣の女神だけでなく、オーストリアの雲の上に座する女神を描いた雲上の女神や、それぞれグレートブリテンを構成する3か国を女神に擬人化したスリーグレイセスなど、美しい女神や女性が描かれたコインは人気が高くなっています。
コインコレクターであったヴィットリオ・エマヌエレ3世

豊穣の女神の表面に描かれるヴィットリオ・エマヌエレ3世は、サヴォイア朝の第3代イタリア国王です。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世はアンティークコインコレクターであったことが知られています。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世のコレクションは亡命の際に手放してしまいましたが、現在もローマの博物館でコレクションを見ることが可能です。
古代ギリシャの時代からコインをコレクションする君主や貴族は多く存在しており、アンティークコインの収集の歴史は非常に長いです。
アンティークコインコレクターの君主の中でも最も知名度が高いのがヴィットリオ・エマヌエレ3世であり、自身の肖像を描くコインについてデザインを非常にこだわっていました。
君主がコインコレクターであったことから、ヴィットリオ・エマヌエレ3世の時代のアンティークコインは豊穣の女神を含めて後世において高く評価されているのです。
コレクターでありながら、自身のコインが後世においても収集の対象になっているのは、コイン収集家にとって夢物語のようなロマンがあります。
ヴィットリオ・エマヌエレ3世がコインにこだわっていたことから、当時のイタリアでは優れたデザインのコインが発行されました。
イタリアの彫刻家であるエジディオ・ボニンセーニャの作品

豊穣の女神を制作したのは、イタリアの彫刻家のエジディオ・ボニンセーニャです。
生い立ちがパン屋でありながら芸術に関する勉強に励み、ブレラ・アカデミーに入学することが認められ、イタリアの著名な彫刻家であるエンリコ・ブッティから教えを受けました。
公立教育省が定めたコンクールで優勝した後に、イタリア王立アカデミーでさらに芸術を磨き、ミラノにスタジオを作り芸術家として活動を始めます。
努力家で活動的で疲れを知らない人物といわれており、ミラノ近代美術館の芸術委員会のメンバーを務めるなど高い実績を持った彫刻家です。
彼の名前はコインの裏面の刻印においても「E. BONINSEGNA ML GIORGI INC R」と刻まれています。
豊穣の女神 金貨の種類
豊穣の女神 金貨の主な種類を見ていきましょう。
20リレ金貨

| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イタリア |
| 発行年 | 1912年 |
| 額面 | 20リレ |
| 直径 | 21mm |
| 重量 | 6.45g |
| 発行枚数 | 約11,000枚 |
| 品位 | 900/1000金 |
豊穣の女神の中でも1912年の20リレ金貨は、発行枚数が6万枚近いと考えられていることから、価格も一番安く最も入手しやすいです。
当サイトでは20リレ金貨については取扱経験はありませんが、今後の入荷状況によって取り扱われる可能性があります。
50リレ金貨


| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イタリア |
| 発行年 | 1912年 |
| 額面 | 50リレ |
| 直径 | 28mm |
| 重量 | 16.12g |
| 発行枚数 | 約11,000枚 |
| 品位 | 900/1000金 |
豊穣の女神の1912年の50リレ金貨であり、発行枚数は約11,000枚まで減少することから、20リレ金貨よりも希少性が増します。
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」でも取扱経験があり、芸術性と希少性を兼ね揃えたおすすめの金貨です。
100リレ金貨


| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イタリア |
| 発行年 | 1912年 |
| 額面 | 100リレ |
| 直径 | 35mm |
| 重量 | 32.25g |
| 発行枚数 | 4,946枚 |
| 品位 | 900/1000金 |
1912年製の100リレ金貨であり、発行枚数はわずか5,000枚ほどの希少性の高い豊穣の女神となっています。
当サイトでは複数の取扱経験があり、コインのグレードはMS62~MS63でした。
多く流通している豊穣の女神の金貨の中でも希少性が高く、発行枚数が極端に少ない10リレ金貨を除けば、最高クラスの金貨です。
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豊穣の女神 金貨の価値

豊穣の女神 金貨の価値は、発行年・額面・状態に左右されるため、同じアンティークコインであっても価格の幅は広いです。
1912年製の20リレ金貨・50リレ金貨であれば数十万円の予算で購入できることが多いですが、100リレ金貨は100万円を超えます。
一方で、1912年製でない場合など、希少性が高いとされるタイプにおいてはこの限りではなく、さらに高いプレミアが付くことが予想されます。
人気が高く希少性もあるため、価格は緩やかに上昇していくと考えられます。
ご自身の予算に合わせて好きな豊穣の女神の金貨を選んでみましょう。
まとめ
豊穣の女神の金貨について紹介しましたが、人気の高いアンティークコインではありますが、額面が複数発行されていることから小型の金貨を選べば低価格で手元に置くことも可能です。
一方で、100リレ金貨のように希少性の高いコインに関しては、アンティークコインとして長期的な値上がりを期待できるコインといえるでしょう。
コレクター・投資家ともに満足できる美麗なデザインが魅力の豊穣の女神を知り、アンティークコインの知識の幅を広げていきましょう。