スリーグレイセスとは、1817年に制作されたウィリアム・ワイオンの初期の作品であり、コインの発行の経緯からコレクターの間で伝説的な作品として語られてきました。
オリジナルのスリーグレイセスはほとんど発行されていないことから入手は非常に難しいですが、比較して入手しやすいコインとして2020年にグレートエングレーバーシリーズとして発行された金貨・銀貨が注目されています。
リストライクされたコインではあるものの、発行枚数は非常に少なく、発売してすぐに売り切れたことからも希少性と人気を兼ね揃えており、コレクションにはもちろん、価値の成長を期待して保有するのにも適した金貨・銀貨です。
この記事では、スリーグレイセス金貨・銀貨特集として、その特徴と歴史、種類、希少性について解説し、ロイヤルミント（王立造幣局）が発行したコインの中でも傑作と言われる魅力に迫っていきます。
ロイヤルミントの傑作コイン「スリーグレイセス」の概要
| 概要 | 内容 |
| 発行国 | イギリス |
| 発行年 | 2020年 |
| 額面 | 500ポンド |
| デザイナー（表面） | Jody Clark（ジョディ・クラーク） |
| 表面 | エリザベス2世の右向き肖像 |
| 刻印（表面） | ELIZABETH II. D. G. REG. F. D. 500 POUNDS. 2020 |
| デザイナー（裏面） | William Wyon（ウィリアム・ワイオン） |
| 裏面 | ギリシャ神話の3美神 |
| 刻印（裏面） | FOEDUS INVIOLABILE |
| グレード | NGC PF70 Ultra Cameo |
| 直径 | 50mm |
| 重量 | 156.295g（5オンス） |
| 発行枚数 | 160枚 |
| 品位 | 金99.9% |
| 状態 | Proof FDC |
スリーグレイセスのコインにはさまざまな種類がありますが、こちらは2020年にリストライクされた5オンス金貨です。
オリジナルにはジョージ3世の肖像が描かれていますが、リストライク品はジョディ・クラーク氏が描くエリザベス2世の第5肖像が描かれています。
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」では主に2020年のスリーグレイセスの5オンス金貨を中心に入荷しており、コレクションにもアンティークコイン投資にも適した注目のコインとして紹介しています。
スリーグレイセスがコレクターの間で伝説的な存在となり、幻のコインといわれる理由を解説していきます。
スリーグレイセス金貨・銀貨の特徴
スリーグレイセス金貨・銀貨の特徴を3つ紹介します。
- ギリシャ神話の3美神がモデルになっている
- イギリスの連合3国の結束を象徴する
- 英国を代表するデザイナーウィリアム・ワイオンの傑作
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ギリシャ神話の三美神がモデルになっている
スリーグレイセスで描かれている3人の女性は、ギリシャ神話の三美神がモデルです。
三美神はゼウスの娘であり、アグライア、タレイア、エウプロシュネの3人は、それぞれ輝き、若さや美しさ、喜びを意味します。
1810年代の当時のイギリスではギリシャ神話の古典芸術に関心を持つ人が多かったことが、スリーグレイセスが描かれた背景だと考えられます。
デザイナーのウィリアム・ワイオンも古典の彫刻からインスピレーションを得ていました。
イギリスの連合3国の結束を象徴する
ウィリアム・ワイオンはギリシャ神話の三美神を描くことでイギリスの結束を表現しています。
イングランド、スコットランド、アイルランドの連合3国を三美神を通して擬人化しました。
女神たちの足元にはそれぞれの国家の表象を描くことにより、女性と国を紐づけて表現しています。
1801年、イギリスとアイルランド間の連合法が制定され、この時代は新たに三国が平等に道を歩むことが求められていました。
スリーグレイセスは古典的な美しいデザインというだけではなく、政治的なメッセージも含んだコインであるといえます。
英国を代表するデザイナーウィリアム・ワイオンの傑作
画像引用：https://www.royalmint.com/great-engravers/three-graces/william-wyon-ras-early-career-masterpiece/
スリーグレイセスをデザインしたのは、ウィリアム・ワイオンであり、1795年にバーミンガムで生まれたイギリスを代表するコインのデザイナーです。
代表作は世界で一番美しいコインとされるウナとライオン金貨、ヴィクトリア女王のクラウン銀貨（ゴシッククラウン銀貨）が挙げられます。
1828年に、主任原版彫刻師となったウィリアム・ワイオンは主にジョージ4世の時代からヴィクトリア女王の時代にかけてコインをデザインし、現在のイギリスのアンティークコイン人気を支える存在となりました。
スリーグレイセスは、彼が主任原版彫刻師となる前の作品であり、彼の作品は当時から高い評価を得ていました。
スリーグレイセス金貨・銀貨の歴史
スリーグレイセス金貨・銀貨の歴史を紹介します。
- 1817年に試鋳銀貨が製造される
- 実際に流通することはなくコインコレクターの間で伝説になる
- 2020年にグレートエングレーバーシリーズとして発行
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1817年に試鋳銀貨が製造される
【試鋳銀貨】
画像引用：HERITAGE AUCTION
1817年、ウィリアム・ワイオンはスリーグレイセスのデザインを完成させ、実際の流通の前の段階で造られる試鋳銀貨が製造されました。
この銀貨は約50枚程度しか発行されておらず、正確な現存枚数は不明であるといわれています。
また試鋳銀貨以上に数は少ないと推測されていますが、金貨や銅貨も存在するようです。
金貨は3枚が博物館に保管されており、4枚目が2018年にオークションに出品され、約1億円で落札されました。
スリーグレイセスのオリジナルの発行枚数が少ない理由は、試鋳にとどまり実際に流通することはなかったからです。
【試鋳金貨（オークションに出品された4枚目）】
画像引用：https://www.numisbids.com/n.php?p=lot&sid=2915&lot=420
実際に流通することはなくコインコレクターの間で伝説になる
スリーグレイセスが流通しなかった理由はさまざまな推測がありますが、この時点ではウィリアム・ワイオンはデザイナーとして名が売れていなかったため、影響力はけっして大きくはありませんでした。
仮に1828年以降に、デザイナーとして名前が知られるようになってからスリーグレイセスを出したのであれば、流通貨幣になった可能性もあるため、タイミングの問題もあります。
しかし、後にウナとライオン、ゴシッククラウン銀貨など優れたデザインを1851年に没するまで生み出し続けました。
そのため、ウィリアムワイオンを後世に評価したファンは、スリーグレイセスという日の目を見なかった作品にも注目するようになり、流通しなかった希少なコインとしてコレクターの間で伝説になります。
2020年にグレートエングレーバーシリーズとして発行
試鋳貨幣として製造されたスリーグレイセスが日の目を見ることになったのは、ロイヤルミントのグレートエングレーバーシリーズです。
2019年にはウナとライオン、2020年にはスリーグレイセスの金貨・銀貨が発行されました。
実際に販売を開始したのは2021年2月22日であり、世界中から注文が殺到し、わずか20分で売り切れました。
ウィリアム・ワイオンのスリーグレイセスがどれだけの人気を誇っていたのか証明された出来事です。
スリーグレイセス金貨・銀貨の種類
スリーグレイセス金貨・銀貨は正確な種類を把握するのが困難である試鋳のオリジナルを除くと複数の金貨・銀貨が発行されています。
2020年に発行されたスリーグレイセス金貨の種類は以下の通りです。
| 種類 | 直径 | 発行枚数 |
| 3キロ金貨 | 165mm | 3枚 |
| 2キロ金貨 | 150mm | 9枚 |
| 1キロ金貨 | 100mm | 21枚 |
| 5オンス金貨 | 50mm | 160枚 |
| 2オンス金貨 | 40mm | 335枚 |
| 2キロ銀貨 | 150mm | 50枚 |
| 5オンス銀貨 | 50mm | 510枚 |
| 2オンス銀貨 | 40mm | 3,510枚 |
重さ別に全部で8種類存在しており、金貨が5種類、銀貨が3種類となっています。
金貨は5オンスまたは2オンスが主流で流通しており、アンティークコインを専門に取り扱うコイン専門店で取り扱われるコインも多くの場合はこちらの金貨になります。
5オンス金貨の詳細は最初に紹介しましたが、銀貨でもその希少性から高値で取引される2キロ銀貨についても下記に詳細をまとめました。
| 概要 | 内容 |
| 発行 | イギリス |
| 発行年 | 2020年 |
| 額面 | 1,000ポンド |
| 直径 | 150mm |
| 重量 | 2kg |
| 発行枚数 | 50枚 |
| 品位 | 999/1000銀 |
引用：https://www.royalmint.com/shop/monarch/queen-elizabeth-ii/Three-Graces-2020-UK-Two-Kilo-Silver-Proof-Coin/
スリーグレイセスが購入できる場所はこちら
スリーグレイセス金貨・銀貨の希少性
スリーグレイセスは、オリジナル・リストライクともに高い希少性を持っていますが、その価値は大きく変わります。
スリーグレイセス（オリジナル）の希少性
1817年に発行された試鋳貨は高い希少性を持つ一方で、金貨に関しては博物館に保管されるほどの希少性があり、ディープなコインコレクターでも入手が困難です。
入手できればその価値は年々高まっていくことが期待できますが、ほとんどの人にとって入手できないほど高い希少性を持っていると考えたほうが良いです。
アンティークコインの購入に数千万円以上の資金をかけられる場合に、ようやく入手を検討してもいいレベルのコインといえるでしょう。
スリーグレイセス（リストライク）の希少性
2020年にリストライクされたスリーグレイセスも発行枚数が少ないことから、今後の価値の上昇が期待できると考えられます。
入手難易度もコイン専門店などで入荷することもあるため、オリジナルと比較すれば高くありません。
購入金額は数百万円から1,000万円程度の資金が必要になることから、ディープなコレクターのコレクションや、長期の資産運用を前提とするアンティークコイン投資用のコインとして検討できる予算となっています。
スリーグレイセス金貨・銀貨に関するよくある質問
スリーグレイスの金貨・銀貨に関するよくある質問をまとめました。
- 2020年発行のスリーグレイセス金貨・銀貨を購入する方法は？
- スリーグレイセス金貨・銀貨はどこで売却できますか？
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2020年発行のスリーグレイセス金貨・銀貨を購入する方法は？
2020年に発行されたスリーグレイセスの金貨・銀貨は、アンティークコインを専門に取り扱うコイン専門店で購入できます。
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」では記事執筆時点で、複数の希少なスリーグレイセス金貨を取り扱っています。
他のコイン専門店では仕入れが困難なコインも仕入れられる高い仕入れ能力を持つことから、これまでにもスリーグレイセスの入荷・販売の実績があり、当サイトでも人気の高いコインです。
スリーグレイセスのデザインに惹かれた方、アンティークコイン投資で興味を持った方、これまでもスリーグレイセスの金貨を求めていて見つけられなかった方は、当サイトでの購入を検討してください。
当サイトではコインの状態を確認できる下見のお申し込みもできるため、詳しくはこちらのページからお問い合わせお願いします。
スリーグレイセス金貨・銀貨はどこで売却できますか？
スリーグレイセスの金貨・銀貨をお持ちの方は、取扱実績もある「コインライブラリー・プリンシパル」で現金化可能です。
当サイトで購入したスリーグレイセスのコインはもちろん、他のコイン専門店で購入したコインも買取を受け付けています。
売却・買取査定申し込みに関してはこちらのページからお問い合わせお願いします。
まとめ
スリーグレイセス金貨・銀貨について紹介しましたが、ウィリアム・ワイオンの傑作としてデザインも高い人気を誇っており、オリジナル・リストライクともに高い希少性があります。
そのため、コレクション・投資ともに需要が高いことから、ウナとライオンに並んでアンティークコインで注目したいコインです。
高い魅力を持つスリーグレイセスのコインは手元に置けばその美しさで心を満たし、持ち続けることでその価値も高まることが期待されます。
