1841年に英領インドで発行されたヴィクトリア女王の1モハール金貨は、イギリスの東インド会社で発行されていました。
ヴィクトリア女王の肖像、裏面にはライオン、そしてデザイナーがウィリアム・ワイオンであることから、あの有名な人気金貨のウナとライオンと同じ要素を持っています。
イギリスで発行された金貨でないことから、他のウィリアム・ワイオンの作品と比較すると知名度は高くありませんが、注目されていないからこそ今後注目されることがあれば入手が難しくなり、価値が上昇する可能性があるコインです。
この記事では、英領インドで発行されたモハール金貨の魅力をご紹介していきます。
この記事のポイント
・肖像に違いがあるモハール金貨の種類とその価値について解説
英領インド発行のヴィクトリア女王のモハール金貨の概要
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1841年 |
額面 | 1モハール |
デザイナー(表面) | ウィリアム・ワイオン(William Wyon) |
表面 | ヴィクトリア女王のヤングタイプの肖像 |
刻印(表面) | VICTORIA QUEEN 1841. |
裏面 | 手前にライオン、奥にヤシの木 |
刻印(裏面) | EAST INDIA COMPANY ONE MOHUR |
直径 | 26mm |
重量 | 11.66g |
発行枚数 | 442,000枚 |
品位 | 917/1000金 |
グレード | MS63 |
状態 | UNC |
1841年のインドはイギリスの植民地となっており、アジアとの貿易や植民地支配を行う東インド会社がインドの通貨システムを金によって構築するために発行された金貨です。
モハールとは、16世紀に成立して2世紀に渡って栄えたムガル帝国で使われていた通貨の名前です。
17世紀後半からムガル帝国侵略した東インド会社は、19世紀の半ばまでインドにおける通貨システムを支配しました。
インド大反乱により、東インド会社はインドを統治することが難しくなり、植民地権限をイギリス王室に譲渡したことで東インド会社は解散しました。
こちらの1モハール金貨は、東インド会社の支配下にあったインドで使用されていた金貨となっています。
発行枚数は442,000枚と金貨としては多いですが、流通がインドに限られていたことから、実際に流通している金貨の枚数は少ない状況です。
また、モハール金貨は流通用に発行されていた金貨であることから、現存している金貨で状態の良いものが少なく、状態によっては高額で取引される場合もあります。
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ヴィクトリア女王のモハール金貨の魅力
ヴィクトリア女王のモハール金貨の魅力を3つ紹介します。
- ヴィクトリア女王、ライオン、ウィリアム・ワイオンなど人気の要素が揃う
- アンティークコインではメジャーではないインドにおける流通
- 同じ金貨であっても様々な違いや種類が存在する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ヴィクトリア女王、ライオン、ウィリアム・ワイオンなど人気の要素が揃う
「ヴィクトリア女王、ライオン、ウィリアム・ワイオン」この3つのキーワードから連想される知名度の高いコインは一つしかありません。
1839年のウナとライオンの金貨は、表面にヴィクトリア女王の肖像を描き、裏面にはエドマンド・スペンサーの叙事詩『妖精の女王』をもとにウナをヴィクトリア女王、ライオンをイギリスに見立ててデザインしています。
世界で一番美しい金貨といわれるウナとライオンをデザインしたデザイナーは、アンティークコインの中でもトップクラスの知名度を持つデザイナーであるウィリアム・ワイオンです。
しかし、発行国がイギリスと英領インドで異なることを除けば、ほとんど同じ要素を持つ金貨があります。
それがヴィクトリア女王のモハール金貨であり、ヴィクトリア女王を表面に、ライオンを裏面に描き、ウィリアム・ワイオンがデザインした作品となっています。
アンティークコインのトップに君臨する金貨とまったく同じ要素を持ち、デザインも優れていることがモハール金貨の最大の魅力です。
アンティークコインではメジャーではないインドにおける流通
アンティークコインがメジャーで広く収集されている国はイギリスであり、ウナとライオンを含めてイギリスのコインが世界中のコレクターの間で収集されています。
しかし、イギリスのコインは世界中のコレクターが収集していることから、価格が高まりやすくなっており、購入が難しいコインが多い状況です。
モハール金貨は、ウィリアム・ワイオンの作品であることから近年に知名度が伸び始めています。
しかし、イギリス本国のウィリアム・ワイオンのコインと比較するとインドはアンティークコイン市場においてメジャーではない国であるため、まだ広く高騰しているわけではありません。
また、モハール金貨は現在もインドからの輸出が禁止されているため、市場に流通するモハール金貨はさらに限定されています。
イギリスで発行されたウィリアム・ワイオンの他の人気のアンティークコインと比較すれば、その価値は過小評価されていると考えられます。
人気の要素を揃えており、より需要が広がる可能性を持ったモハール金貨は、価格が高騰していない今の段階で購入したい金貨となっています。
同じ金貨であっても様々な違いや種類が存在する
モハール金貨には、同じ金貨であっても様々な違いや種類が存在する金貨であり、コレクション需要もあります。
製造場所は全部で3つあり、鋳造所によって微妙なデザインの差異があったことから、同じ種類の金貨であっても違いが生まれました。
- ボンベイミント
- カルカッタミント
- マドラスミント
鋳造所の違いによって、モハール金貨にいくつかの違いが生まれました。
例えば、モハール金貨のヴィクトリア女王が描かれる表の刻印はコインの左右に描かれるパターンと、上部に描かれるパターンの2種類があります。
また、通常のヴィクトリア女王の肖像ではなく、顔全体を尖ったラインで描くフォックスフェイスと呼ばれる肖像の金貨も流通しています。
その他にも数字や細かい刻印の有無など、製造場所の異なるモハール金貨を見比べることでいくつかの違いを確認可能です。
ヴィクトリア女王のモハール金貨の種類
肖像の違いを中心にヴィクトリア女王のモハール金貨の種類を紹介していきます。
ヴィクトリア女王 1モハール 金貨 1841年(通常タイプ)
通常タイプのヴィクトリア女王の肖像が描かれる1モハール金貨です。
輪郭に丸い印象が残るデザインが特徴であるため、この丸さを覚えた上でフォックスフェイスタイプの肖像と見比べてみてください。
ヴィクトリア女王 1モハール 金貨 1841年(フォックスフェイスタイプ)
通常タイプの1モハール金貨と比較すると、フォックスフェイスタイプのヴィクトリア女王の肖像の違いがわかると思います。
顔の輪郭が全体に角ばった印象に感じられ、髪の描かれ方も異なることがわかります。
細かい部分ではありますが年号である「1841」の数字も、フォックスフェイスタイプでは4の右側が上に跳ね上がっています。
通常タイプよりもフォックスフェイスタイプのモハール金貨のほうが希少性は高いです。
ヴィクトリア女王のモハール金貨の価値
モハール金貨は、コインの状態、ヴィクトリア女王の肖像タイプ(通常タイプ、フォックスフェイスタイプ)によって価値が変化します。
安い場合は数十万円程度で取引されることもありますが、高いタイプであれば数百万円で取引されます。
安いタイプであれば購入しやすく、高いタイプは他のウィリアム・ワイオンのアンティークコインと同様に資産として保有しやすいでしょう。
流通数の少なさから入手難易度が高い問題はありますが、当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」ではモハール金貨を通常タイプ、フォックスフェイスタイプ、それぞれを入荷した経験があります。
今後もモハール金貨を入荷する可能性がありますが、人気が高くすぐ売り切れとなってしまうことから、定期的に入荷状況をチェックすることをおすすめします。
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まとめ
モハール金貨は、イギリスではなくインドで発行されたウィリアム・ワイオンがデザインするヴィクトリア女王の金貨です。
現在もインドにおける輸出が不可能であり、状態の良い金貨がほとんど現存していないことから、魅力の高さを含めて今後の価値の上昇に注目したいアンティークコインとなっています。
アンティークコインの購入方法はこちらの記事で紹介しています。