金は化学的に安定している金属であることから、基本的に錆びることはありません。
お手持ちの純金コインが保管を続けるなかで、錆びてしまうのではないかという心配をする必要はありません。
アンティークコインに使用される金以外の銀・プラチナなどの貴金属も錆びにくい金属です。
しかし、すべての金製品が錆びないというわけではなく、例外的に錆びるケースも考えられます。
この記事では、金が錆びない金属である理由を紹介し、錆びる例外的なケースと錆びにくい貴金属の種類を紹介します。
また、純金が錆びないという事実に対して以下のポイントについても解説していくのでチェックしてください。
この記事のポイント
・錆びないという性質から金がアンティークコインの素材として優れている理由を紹介
金が錆びない金属である理由
金が錆びない金属である理由を3つ紹介します。
- 化学的に安定しているから
- 酸素や水に触れても溶け出さないから
- 保護膜を必要としないから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
化学的に安定しているから
金は化学的に非常に安定した金属であり、他の物質と反応しにくい性質を持っています。
これは、金の原子構造が非常に安定しており、外部からの影響を受けにくいためです。
例えば、金は酸やアルカリといった多くの化学物質に対しても反応しません。
このような化学的安定性により、金は長期間にわたってその輝きを保ち、変色や腐食の心配が少ない金属として知られています。
酸素や水に触れても溶け出さないから
多くの金属は、空気中の酸素や水分と反応して酸化し、錆びる原因となります。
しかし、金は酸素や水と反応しにくく、酸化されにくい性質を持っていることが特徴です。
これは、金のイオン化傾向が非常に小さいことに起因します。
イオン化傾向とは、金属が電子を失って陽イオンになる傾向のことで、これが小さいほど酸化されにくくなります。
金はこのイオン化傾向が極めて小さいため、酸素や水と反応して酸化することがほとんどありません。
そのため、金は空気中や水中でも安定して存在し、錆びることがないのです。
保護膜を必要としないから
多くの金属は、表面に酸化膜や保護膜を形成することで内部の腐食を防いでいます。
例えば、アルミニウムは表面に酸化アルミニウムの薄い膜を形成し、これが内部の腐食を防ぐ役割を果たしています。
しかし、金はそもそも酸化されにくいため、このような保護膜を必要としません。
金の表面は常にそのままの状態で安定しており、外部からの影響を受けにくいのです。
この特性により、金は加工や使用中に特別な保護処理を施す必要がなく、そのままの状態で長期間使用することができます。
金が錆びる例外的な理由
金が錆びる例外的な理由は以下のとおりです。
- 金メッキ製品による錯覚
- 純度の低い合金製の商品を使用している
- 王水による腐食
それぞれ詳しく解説します。
金メッキ製品による錯覚
金メッキ製品は、見た目は金そのものに見えますが、実際には薄い金の層が他の金属の上に施されています。
このメッキ層が摩耗や剥がれを起こすと、下地の金属が露出し、酸化や腐食が進行することも。
金メッキとは、銅やニッケルなどの金属の上に非常に薄い金の層を施すことです。
金の層は、装飾性や耐食性を向上させる目的で使用されますが、厚さが数ミクロン程度と非常に薄いため、摩擦や衝撃により容易に剥がれます。
日常使用や摩擦により、金の層が剥がれると、下地の金属が露出します。
この時点では実際に金属が錆びているわけではありませんが、金メッキの部分とメッキが剥がれた部分で色が変化するため、錆びたと錯覚する可能性はあるでしょう。
そして、露出した下地金属が空気中の酸素や水分と反応すれば、本格的に錆びることになります。
金が錆びたと錯覚するケースでは、金メッキ製品を使用している場合が考えられます。
純度の低い合金製の商品を使用している
金は通常、他の金属と合金化されて使用されることが多く、特にジュエリーや装飾品では、強度や加工性を向上させるために合金が用いられます。
しかし、金の純度が低い合金では、含まれる他の金属が酸化しやすく、結果として製品全体が錆びたように見えることがあります。
一般的な金合金には、以下の金属が含まれます。
- 銅(Cu):赤みを帯びた色合いを与え、金の強度を上げる
- ニッケル(Ni):白色系の合金に使用され、柔らかい金の硬度を上げる
上記の金属は、金よりも酸化しやすいため、空気中の酸素や水分と反応し、表面に酸化膜を形成します。
酸化膜が変色や錆びの原因となり、商品の美観を損なうかもしれません。
金の純度表示について
金製品はにどれくらい他の金属が混ざっているのか判断する指標には純度があります。
純度が低いほど、他の金属の割合が高くなり、酸化や変色のリスクが増加します。
具体的な金の純度を以下にまとめました。
純度 | 金の含有率 |
K24(純金) | 99.9%以上 |
K22 | 91.7% |
K18 | 75% |
K14 | 58.5% |
K10 | 41.7% |
K24が純金であり、純金であればほぼ不純物が含まれないため、錆びることはありません。
しかし、純度のグレードが下がり、金の含有率が低くなるほど錆びるリスクが高くなるでしょう。
金の純度については以下の記事で詳しく紹介しています。
金の純度とは? K24(24金)などの主な種類の一覧・調べる方法を紹介
王水による腐食
王水(おうすい)は、濃硝酸と濃塩酸を3:1の体積比で混合した非常に強力な酸性溶液で、金を溶解することができます。
通常の酸では溶けない金も、王水には溶解するため、金の精製などにも使用されています。
一般的な生活を送るなかで、王水に近づくリスクはほとんどないため、意図せずに王水で金を溶かしてしまうことは考えにくいです。
基本的に純金は、王水による溶解以外では金の化学的安定性が損なわれることはないといえるでしょう。
金以外の錆びにくい貴金属の種類
貴金属は、希少で加工性があり、化学的に安定している金属の総称です。
貴金属のなかでも代表的な種類が金ですが、金以外にも貴金属は存在します。
また、貴金属は共通してコインの素材になっており、特に金貨・銀貨がアンティークコインの主流です。
金以外の錆びにくい金属の種類を紹介します。
- 銀
- プラチナ
- パラジウム
それぞれ詳しく見ていきましょう。
銀
銀は、空気中の酸素や水分と反応して表面に酸化銀を形成しますが、この酸化膜は非常に薄く、内部の金属を保護する役割を果たします。
そのため、銀製品は長期間にわたって使用されても、内部まで腐食が進行することは少ないです。
一方で、銀は化学変化を起こしやすい性質があり、硫化・塩化・酸化などの反応により変色してしまうことも。
しかし、密閉された状態の適切な保管、または手入れをおこなうことで、美しい光沢を保ち続けることができるでしょう。
銀は、古代ギリシャのドラクマ銀貨や、ローマ帝国のデナリウス銀貨など、紀元前から貨幣の素材として広く使用されてきました。
特に、イギリスのスターリング・シルバーはアンティークコインのなかでも高品質な銀貨として知られています。
銀貨については以下の記事で紹介しています。
銀貨のおすすめの購入先は? 種類に合わせてどこで買うべきか、注意点を解説
プラチナ
プラチナは、非常に安定した化学的性質を持ち、酸素や水分、酸性・塩基性の環境下でも腐食しにくい特徴があります。
そのため、長期間にわたって光沢を保ち、変色や錆びの心配がほとんどありません。
高温にも耐性があり、産業用途でも重宝されています。
化学的に安定しているプラチナですが、貨幣素材として初めて使用されたのは、19世紀のロシア帝国です。
プラチナ貨は、耐久性と耐摩耗性に優れていました。
しかし、色合いから銀貨との識別が難しく、金にと比較して価値が低下したため、発行が中止されました。
現在においてプラチナ貨は、主に記念硬貨や投資用コインとして発行されています。
プラチナ貨(プラチナコイン)については以下の記事で詳しく紹介しています。
パラジウム
パラジウムは、プラチナと同様に酸化や腐食に強い金属であり、空気中や湿度の高い環境でも安定した性質を保ちます。
また、軽量で加工しやすく、宝飾品や工業用途にも適しています。
パラジウムが貨幣素材として初めて使用されたのは、1966年のシエラレオネです。
その後、トンガ、カナダ、ソ連(現在のロシア)、中国、オーストラリアなど、複数の国で記念硬貨や投資用コインとしてパラジウム貨が発行されました。
2017年、アメリカでアメリカン・パラジウム・イーグルが発行されたことで、パラジウムの投資用コインが購入できるようになりました。
しかし、投資コインとしては銀貨・プラチナ貨と比較するとマイナーであり、貨幣の素材としても一般的ではありません。
合金を錆びさせないために気をつけたいポイント
合金を錆びさせないために気をつけたい3つのポイントを以下にまとめました
- 汗や皮脂が付着した状態にしないようにする
- アクセサリーの場合は入浴や海水浴では外す
- コインの場合は密閉された状態で個別に保管
それぞれ詳しく解説します。
汗や皮脂が付着した状態にしないようにする
人の汗や皮脂には、酸性の成分や塩分が含まれており、これらが金属と反応することで酸化や腐食を引き起こします。
特に、金の合金製品は酸性の成分の影響を受けやすく、黒ずみや変色の原因となります。
コインの場合は、純金の金貨でない場合は状態を悪化させる可能性があるため、素手で触らないようにしましょう。
純金の場合も素手で触れることで指紋が残り、見栄えが悪くなるため、金属の純度にかかわらず触らないことをおすすめします。
日常的に使用する合金製のアクセサリーの場合は、アクセサリーを外した後は、すぐに柔らかい布や専用のクロスで汗や皮脂を拭き取りましょう。
汗や皮脂が付着した状態が続くことがなければ、金属表面の酸化を防止することができます。
普段使いするなかで気になる汚れが付いた場合は、中性洗剤を薄めた水で優しく洗浄し、しっかりと乾燥させてから保管してください。
アクセサリーの場合は入浴や海水浴では外す
水分や塩分は、金属の酸化を促進し、錆びや変色の原因となります。
特に、海水に含まれる塩分や温泉の硫黄成分は、合金にとって非常に有害です。
そのため、金のアクセサリーを身に着けて温泉・海水浴に行く人は注意が必要になります。
入浴、シャワー、海水浴、温泉などの際には、必ずアクセサリーを外すようにしましょう。
万が一、海水や温泉で濡れてしまった場合は、すぐに真水で洗い流し、柔らかい布で水分を拭き取り、完全に乾燥させてから保管してください。
コインの場合は密閉された状態で個別に保管
コインは、密閉できる容器や袋に個別に入れて保管しましょう。
空気や湿気との接触を最小限に抑えることで、金貨の劣化を防ぐことができます。
コイン専用のプラスチックケースであるスラブは、コインを傷から守る役割を果たしつつ、空気との接触がほとんどないため、劣化しにくい保管方法です
また、紫外線や温度変化も劣化の原因となるため、直射日光の当たらない冷暗所で、スラブなどを利用して個別に保管するようにしてください。
金貨のアンティークコインが優れている理由
金貨は化学的に安定していますが、安定している金を使用して作られたアンティークコインが優れている理由をまとめました。
- 化学的に安定しているため良質な状態を長期間保てる
- 摩耗や劣化に強く高い耐久性を持っている
- 高い希少性から価値に対する保存性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
化学的に安定しているため良質な状態を長期間保てる
金は、自然界に存在する金属の中でも特に化学的に安定しており、酸化や腐食に対して非常に強い性質を持っています。
よって、金で作られたアンティークコインは、数百年にわたって美しい状態を保ち続けることが可能です。
例えば、古代ローマ時代の金貨や中世ヨーロッパの金貨が、現代でも輝きを失わずに存在しているのは、金の特性によるものです。
ほかの金属は、時間の経過とともに酸化して変色や腐食を起こすことがありますが、金は影響をほとんど受けません。
金は多くの化学物質に対しても安定しており、酸やアルカリなどの化学薬品にも溶けにくい性質があります。
金貨は保管環境においても特別な処置を必要とせず、長期間にわたってその価値と美しさを維持することができます。
摩耗や劣化に強く高い耐久性を持っている
金は柔らかい金属である一方で、適切な合金化によって硬度を高めることができ、摩耗や劣化に対する耐久性を持たせることが可能です
多くのアンティークコインは、金に少量の銅や銀を加えることで硬度を増し、日常の使用や流通に耐えるように設計されてきました。
合金化された金貨は、長期間の流通や保管にも関わらず、デザインや刻印が鮮明に残っていることが多く、コレクターや投資家にとって高い価値を持ちます。
金は展延性や延性に優れているため、加工がしやすく、細かなデザインや彫刻を施すことができる点も、アンティークコインの魅力の一つです。
熱や電気をよく伝導する性質を持っており、環境の変化にも強いため、長期間にわたってその形状や美しさを保つことができます。
高い希少性から価値に対する保存性がある
金は地球における埋蔵量が限られていることから、一定の希少性を有していることが特徴です。
高い希少性が、金貨の価値を長期的に維持するため、貨幣のインフレに影響されない価値に対する保存性があります。
一方で、アンティークコインは、発行枚数が限られており、現在では新たに製造されることがないため、非常に高い希少性を持っています。
貴金属としての価値だけでなく、当時の歴史的背景やデザインの美しさから、コレクターの間で高いプレミア価値が付くことも。
保存状態が良好なものや、特定の年号や造幣所で製造されたものは、さらに高いプレミアムが付きます。
アンティークコイン市場は、世界中のコレクターや投資家によって支えられており、需要が供給を上回る状況が続いています。
そのため、金貨のアンティークコインは、インフレや経済の不確実性に対するヘッジ手段として注目されているのです。
インフレ対策にもなるアンティークコイン投資について以下の記事で紹介しています。
インフレ時代における資産運用の新常識【アンティークコインの価値を知る】
まとめ
金が化学的に安定した金属であるため本来錆びませんが、例外的に金メッキ製品や低純度合金においては錆びる可能性があります。
また、銀・プラチナ・パラジウムといった貴金属も同様に腐食に強く、コイン素材として長期保管に適しています。
大切な金製品やアンティークコインを美しい状態で末永く楽しめるのは、金という素材が優れていることが理由となっているのです。