ドイツのアンティークコインは、統一がなされたのが1871年であるためコインの歴史から考えればけっして長いわけではありませんが種類が非常に豊富であることが特徴です。
統一と同時に発行されたマルクは、裏面のドイツ紋章は共通ですが帝国の各構成国によって表面のデザインが異なることから収集家の間でもコンプリート難易度が高いテーマとなっています。
この記事ではドイツの金貨・銀貨を7種類紹介し、コインの歴史や種類についても解説します。
ドイツ コインの歴史
現在のドイツ・オーストリア・チェコを中心とする神聖ローマ帝国はナポレオンにより滅ぼされ、その後、今のドイツに統一されたのは1871年のことでした。
ドイツのコインは広義的に考えれば神聖ローマ帝国の時代のアンティークコインとドイツ統一後に発行されたコインが挙げられますが、今回はドイツ統一後のコインと歴史を中心に解説します。
下記の流れでドイツのコインの歴史を振り返っていきましょう。
- ドイツ コインのはじまり
- ドイツ コインの種類
- ドイツのマルク・ペニヒの種類が多い理由
ドイツ コインのはじまり
1871年にドイツ帝国に統一された際に使用された通貨がドイツマルクであり、1876年にドイツにおける唯一の法定通貨となります。
ドイツマルクにはさまざまな種類がありますが、初期に発行されたドイツマルクのことを金マルクと呼びます。
金マルクの次に発行されたドイツマルクがパピエルマルクであり、この通貨はドイツ帝国がヴェルサイユ条約の賠償金を支払うために紙幣を大量に印刷したことで、ハイパーインフレーションを引き起こした通貨です。
パピエルは紙くずという意味であり、インフレ率は1兆%となりましたが、1923年にレンテンマルクが作られたことで安定します。
パピエルマルクとレンテンマルクの交換レートは、1兆パピエルマルクと1レンテンマルクとなり、翌年には新法定通貨となるライヒスマルクも発行されました。
1948年にライヒスマルクに代わって新たに登場したのが、ドイツで発行された最後のドイツマルクです。
1948年~1998年まで発行が続けられたこちらの通貨は、ドイツマルクまたは、マルクと呼ばれるのが一般的になります。
ドイツ コインの種類
現在ドイツで流通している硬貨や紙幣は、ユーロとセントであり、ドイツ語読みではオイロとツェントになります。
1998年以前まで流通していたドイツの通貨であるマルクは補助通貨としてペニヒが流通しており、1マルク=100ペニヒのレートでした。
ドイツマルクには、マルク、ライヒスマルク、レンテンマルク、パピエルマルク、金マルクの5種類がありましたが、その中でも硬貨の種類が豊富であったのは金マルクです。
一般的に流通していた豊富な金マルクの種類とその材質は下記の通りになります。
- 1 ペニヒ(銅)
- 2ペニヒ(銅)
- 5ペニヒ(白銅)
- 10 ペニヒ(白銅)
- 20 ペニヒ(白銅・銀)
- 25 ペニヒ(ニッケル)
- 50 ペニヒ(アルミニウム・銀)
- 1 マルク(銀)
- 2マルク(銀)
- 3マルク(銀)
- 5マルク(金・銀)
- 10マルク(金)
- 20マルク(金)
ドイツのマルク(ペニヒ)の種類が多い理由
自由都市ハンブルクの街並み
金マルク(ペニヒ)は帝国の各構成国によって異なるデザインの通貨を発行したことにより、その種類は非常に豊富です。
基本的には各国の君主の肖像が描かれるのがスタンダードでしたが、ブレーメン、ハンブルク、リューベックなどの自由都市では市章が用いられました。
同じ金マルクでもデザインが異なり、希少価値も変わってくるので、ドイツの金マルクはアンティークコインの収集テーマとしても集めがいのあるテーマでもあります。
ドイツの代表的な金貨5選
それでは、アンティークコインジャーナル編集部が選んだドイツの代表的な金貨を5つ紹介します。
- ハンブルク 20マルク金貨 1913年
- ブレーメン 20マルク金貨 1906年
- ヴィルヘルム2世 プロイセン 20マルク金貨 1914年
- ハンブルク ポルトガレッサー 市民憲章300周年 10ダカット金貨 1828年
- ハンブルク 1/2ポルトガレッサー 5ダカット金貨 1753年
ハンブルク 20マルク金貨 1913年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1913年 |
額面 | 20マルク |
グレード | - |
直径 | 22mm |
重量 | 7.97g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
ドイツの北部にある自由都市ハンブルクで発行されたコインであり、都市を象徴する3つの塔と1つの門の城塞の紋章が描かれた小型金貨になります。
盾を持った2匹のライオンが表に描かれ、裏面にはドイツ紋章であるイーグルと王冠が細かく彫られています。
非常にデザインが美しく完成度の高いコインであり、ドイツ金貨の中でも人気の商品です。
ブレーメン 20マルク金貨 1906年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1906年 |
額面 | 20マルク |
グレード | - |
直径 | 22mm |
重量 | 7.97g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
ドイツの自由都市ブレーメンの紋章は時代と共に変化しており12世紀後半のコインには鍵を持つペテロと当時大司教配下であったブレーメンは円曲杖を持った大司教が描かれた都市紋章でした。
やがて鍵を持ったペテロの像が都市紋章となり、1369年に大司教の貨幣鋳造権をブレーメン都市自体が得てからは、コインにペテロの鍵だけが描かれるようになりました。
一見すると先ほど紹介したハンブルクと同じコインに見えるかもしれませんが、ライオンが掲げる盾の中の紋章がブレーメンの紋章になっていることが分かります。
ヴィルヘルム2世 プロイセン 20マルク金貨 1914年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1914年 |
額面 | 20マルク |
グレード | - |
直径 | 22mm |
重量 | 7.97g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
プロイセンで発行された第9代プロイセン王国国王、第3代ドイツ帝国国王であるヴィルヘルム2世の金貨です。
ヴィルヘルム2世はイギリスのヴィクトリア女王の孫にあたる人物ですが、第一次世界大戦でドイツとイギリスは敵対することとなります。
先ほども説明した通り、自由都市では市章が描かれていますが、基本的に発行された金マルクには君主が描かれています。
軍服を着たヴィルヘルム2世の右向き肖像が描かれ、裏面のイーグルのドイツ紋章に関しては各地で共通です。
ハンブルク ポルトガレッサー 市民憲章300周年 10ダカット金貨 1828年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1914年 |
額面 | 10ダカット |
グレード | MS63+ |
直径 | 41.50mm |
重量 | 34.73g |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 260枚 |
状態 | UNC(未使用) |
こちらの10ダガット金貨は、市民憲法制定300周年を記念して発行されたコインです。
10ダカットは元々ポルトガルの10クルザドをモデルに製造されておりポルトガレッサーとは北アフリカ産の金をポルトガル経由にて原料としたことが由来と言われています。(※諸説あり)
元々ポルトガルで作られた10ダカット金貨を真似て、ハンブルク銀行が利益が出た年に株主に配当金として渡した物であり、ほとんど発行されていない希少な金貨です。
デザインも素晴らしく人気のコインシリーズでありながら、発行年度によっては数枚程度しか発行されていないコインもあり、近年入手が難しくなってきている稀少な1枚となります。
表面は、市会議員と福音ルター派教区教会の聖職者4人(聖カタリーネン、聖ニコライ、聖ヤコビ、聖ペトリ)が神の箱と呼ばれる献金箱の前に立っている様子が描かれており、裏面にはハンブルクの紋章が彫られています。
ハンブルク 1/2ポルトガレッサー 5ダカット金貨 1753年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1914年 |
額面 | 5ダカット |
グレード | EF+ |
直径 | 39mm |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | 極美品 |
こちらも同様の経緯によりハンブルクで発行されたポルトガロッサーの5ダガット金貨です。
デザインの美しさはどのポルトガロッサーも素晴らしく傑出したものばかりで、こちらの金貨はハンブルクの都市景観を描いたものです。
ドイツのアンティークコインはこちら
ドイツの代表的な3種類の銀貨
次にドイツの銀貨を3つ選んで紹介します。
- アルベルト ザクセン王国 5マルク銀貨 1875年
- ブラウンシュヴァイク・リューネブルク ゲオルク3世 2/3ターレル銀貨 1802年
- ドイツ領ニューギニア 5マルク銀貨 1894年
アルベルト ザクセン王国 5マルク銀貨 1875年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1875年 |
額面 | 5マルク |
グレード | - |
直径 | 38mm |
重量 | 27.78g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 494,000枚 |
状態 | - |
ザクセン王国の君主アルベルトは、神聖ローマ皇帝、バイエルン王マクシミリアン1世の王女アマーリエの子にあたります。
また、イタリアのアンティークコインを集めているなら大半の人が知っている国王でありながらコイン研究家でもあったフランツ・ヨーゼフ1世の従弟にあたります。
アルベルトは1873年に即位するものの政治にまったく関心がなかったため、君臨すれども統治せずの姿勢を貫きました。
こちらのコインはアルベルトの右向き肖像が描かれ、裏面にはドイツの紋章が入った5マルク銀貨です。
ブラウンシュヴァイク・リューネブルク ゲオルク3世 2/3ターレル銀貨 1802年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1802年 |
額面 | 2/3ターレル |
直径 | 38mm |
重量 | 27.78g |
発行枚数 | 不明 |
状態 | EF+ |
ブラウンシュヴァイク・リューネブルク ゲオルク3世は、神聖ローマ帝国のハノーファー選帝侯であり、イギリスのジョージ3世と同一人物です。
ただし、ハノーファーへは一度も訪れたことがありません。
ジョージ3世はイギリス国王として、アメリカ独立戦争、フランス革命、ナポレオン戦争などイギリス外交において困難な時代において治世を行いました、
ドイツのアンティークコイン以外にイギリスのアンティークコインにも興味がある方は、入手を検討したいところです。
ドイツ領ニューギニア 5マルク銀貨 1894年
概要 | 内容 |
発行国 | ドイツ |
発行年 | 1875年 |
額面 | 5マルク |
グレード | AU58 |
直径 | 38mm |
重量 | 27.78g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 19,000枚 |
状態 | EF(極美品) |
当時ドイツ領であったニューギニアで発行された5マルク銀貨です。
1894年の単年度のみの発行となっており、美しい極楽鳥のデザインで10ペニヒ、1/2マルク、1マルク、2マルク、5マルクが発行されました。
極楽鳥は富と幸福と親善のシンボルとしてニューギニアの国鳥に指定されています。
ヴィルヘルム2世の肖像とドイツの紋章をデザインに使う案もありましたが、ドイツ本国の鷲の紋章を使う許可が得られなかったため、ニューギニアの国鳥である極楽鳥を基にデザインされました。
単年度発行、9種類の貨幣となっておりますので、コンプリートしやすい1枚です。
ドイツのアンティークコインに関するよくある質問
最後に、ドイツのアンティークコインに関するよくある質問をまとめました。
- ドイツのコインはどこで購入するのがおすすめ?
- ドイツの金貨・銀貨の買取を依頼するなら?
それぞれ詳しく解説します。
ドイツのコインはどこで購入するのがおすすめ?
ドイツのコインの種類は豊富で希少価値の高い金貨から比較的入手しやすいコインまでさまざまな商品が市場に流通しています。
どのコインを購入する場合でも相場より高い価格で購入したり、贋作を売りつけられることは避けたいところです。
アンティークコイン初心者でも上記のリスクを避ける方法には、コインの見分けに関して知識を身につけるよりも信頼できるコイン業者を探して購入するのが有効になります。
例えば、当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」では、外国貨幣評価書、カタログ、オークションログを基に適切な価格でのコイン販売にこだわります。
鑑定には力を入れていますが、万が一コインが贋作であった場合は永久買戻し保証が付いているので安心してコインを購入可能です。
ドイツの金貨・銀貨の買取を依頼するなら?
今回紹介したコイン以外でもドイツの金貨・銀貨をお持ちで買取を依頼したい方も当サイトで受付いたします。
当サイトで購入したコインはもちろん、他の場所で購入したコインも鑑定から現金化まで対応可能です。
また、当サイトにコインを出品することもできるので、買取・出品に興味のある方はこちらのページからお願いします。
まとめ
ドイツの通貨はパピエルマルクなど紙屑同然といわれた時代もあるため、コインの種類は豊富であっても価値のあるコインが発行された年代は集中しているのが特徴です。
金貨を収集するなら金マルクで状態がよく希少価値の高いコインを探すか、より高価で美しいコインを求めるならハンブルクのポルトガレッサーもおすすめになります。
ドイツのコインは希少価値の高いものと低いものとの差が他の国よりも激しいですが、最高レベルのアンティークコインであれば保有しながら価値の上昇を期待できる優秀なコインも揃っています。