ポーランドは、ボレスワフ1世による王国の誕生からさまざまなコインが発行されてきましたが、そのなかでも有名な貨幣が消滅と復活を繰り返したズロッチ(ズウォティ)とグロシュです。
また、歴史的にロシアの支配下にあったポーランド立憲王国時代の影響から、ロシア・ルーブルに近いズロッチ硬貨が発行されてきました。
この記事では、ポーランドのズロッチ硬貨を中心とした6つのコインを紹介し、ポーランドの貨幣の歴史を解説します。
ポーランド コインの歴史
ポーランドの中央都市ウッチ
ポーランドのズロッチ(ズロチ)硬貨は、ポーランドではズウォティと呼ばれ、金(ゴールド)を意味します。
また、通貨表記はzł ですがポーランド国内ではPLNと表記されることも増えているようです。
ポーランドのズロチ硬貨とその補助通貨のグロシュ硬貨についても歴史を解説していきます。
グロシュ硬貨はイタリアが発祥
古代ローマ帝国の皇帝トラヤヌスが描かれたデナリウス銀貨
古代ローマ帝国時代から使われており、聖書にも記載がある有名なデナリウスは、ポーランドを含む複数の国がそのまま使用し続けていました。
しかし、各国で使用され続けたデナリウスは作っている人が異なるため、時が経つにつれて含有する銀の量とコインの厚さなどにずれが生じ価値を落としていきます。
1271年、価値が落ちたデナリウスの代わりにイタリアで誕生したのがデナリウス・グロスス(厚いデナリウス)であり、グロススがグロシュ硬貨の語源です。
1300年頃からグロシュ銀貨が、ポーランドでも使用されるようになります。
イタリアのアンティークコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
イタリア アンティークコインの価値と歴史【10種類の金貨・銀貨】
ハンガリーから金貨が流入しズロッチが誕生
カジミェシュ3世の50ズロッチ紙幣
1333年~1370年、ポーランド王カジミェシュ3世の時代に金鉱山を持つハンガリーの金とポーランドで取れる塩を取引したことで、ポーランドに銀貨だけでなく金貨が流通するようになります。
このとき流通した金貨をチェルヴォヌィ・ズロッチ(赤金)と呼んだことが、後に発行されるズロッチ金貨の語源になったといわれています。
ズロッチが実際にポーランドの通貨単位として認められたのは、ヤン1世の治世下でありますが、このとき1ズロッチという単位が30グロシュと制定されただけで、実際に1ズロッチ硬貨は流通しませんでした。
分かりやすく説明すれば、1億円札や1兆円札という紙幣は存在しませんが、1万円を規定の枚数集めれば1億円にも1兆円にもなるという概念と同様に、グロシュを30枚集めることで1ズロッチになるという概念がポーランドに誕生したということです。
1ズロッチと同じ価値を持つ30グロシュ銀貨が誕生しますが、実際には13グロシュ分の銀しか含有していないことが明らかになり悪貨の烙印を押されます。
その後、ズロッチは1794年に初めて紙幣として発行されますが、数ヶ月しか出回ることはありませんでした。
消滅と復活を繰り返したズロッチの歴史
現在のポーランド共和国は、ナポレオン1世による統治下にあったワルシャワ公国時代、ロシア帝国の支配下にあったポーランド立憲王国時代、ドイツ帝国とオーストリアによるポーランド摂政王国など統治する国が変わっており。ズロッチ・グロシュという貨幣単位も消滅と復活を繰り返してきました。
ポーランドはEUに属しながらユーロを導入しておらず、ズロッチとグロシュが今でも流通しています。
ポーランドがユーロを導入しない理由は、ユーロを導入するために満たす必要があるマーストリヒト基準を満たしていないことと、ポーランド自体がユーロの導入に積極的ではないことが挙げられます。
EUに加盟した時点でポーランドはユーロを導入する義務がありますが、ギリシャ危機により大幅なユーロ安が発生したこともあり、EUもまたユーロの導入国を増やすことに慎重となっているため、将来的に導入されるかどうかも不透明です。
消滅と復活を繰り返してきたズロッチとグロシュが継続していくのか、今度こそ消滅してしまうのか今後とも注目されます。
ポーランドの希少性のあるズロッチ金貨3選
それでは、ポーランドの希少性のあるズロッチ金貨を3つ紹介します。
- ボレスワフ1世 (崩御900年記念)10ズロッチ金貨 1925年
- アレクサンドル1世 50ズロッチ金貨 1818年
- オジロワシ 50ズロッチ金貨 2011年
ボレスワフ1世 (崩御900年記念)10ズロッチ金貨 1925年
発行国 | ポーランド |
発行年 | 1925年 |
額面 | 10ズロッチ |
グレード | - |
直径 | 19mm |
重量 | 3.23g |
品位 | .900 |
発行枚数 | 27240 |
状態 | - |
ボレスワフ1世は、ポーランド公国を王国に昇格させた初代国王であり、後世ではその武勲を称えて勇敢王と呼ばれたポーランドが誇る王様です。
1025年に崩御してから900年を記念して、10ズロッチ金貨が発行されました。
ポーランドにおけるコインの収集対象としては代表的な1枚となっています。
アレクサンドル1世 50ズロッチ金貨 1818年
発行国 | ポーランド |
発行年 | 1818年 |
額面 | 50ズロッチ |
グレード | - |
直径 | 不明 |
重量 | 9.78g |
品位 | .917 |
発行枚数 | 50,040 |
状態 | - |
アレクサンドル1世は、ロシア帝国の支配下にあった初代ポーランド立憲王国の国王です。
ポーランドに憲法を与え、国会の開会を勅許しましたが、貨幣はロシア・ルーブルに統一することなくズロッチのままでした。
アレクサンドル1世の右向き肖像に、ロシアの象徴である双頭のイーグルが描かれるロシア帝国時代のルーブルと同じ特徴を持っています。
ロシアのアンティークコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
オジロワシ 50ズロッチ金貨 2011年
発行国 | ポーランド |
発行年 | 2011年 |
額面 | 50ズロッチ |
グレード | - |
直径 | 18mm |
重量 | 3.1g |
品位 | .999 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
こちらの金貨はポーランド造幣局が1995年から発行しているオジロワシを描いた地金型金貨です。
オジロワシはポーランドを象徴する動物であり、ポーランドで発行された金貨の裏面にもオジロワシの紋章が描かれています。
投資用金貨であるため、性質上、金の価格に価値が依存しやすい性質を持っています。
ポーランドのバラエティ豊かなおすすめコイン・メダル
ポーランドでは、ズロッチ硬貨の他にもバラエティ豊かなコインが発行されています。
造幣局では記念メダルも発行しているので、ズロッチ硬貨を含めたメダルについても紹介します。
- ニコライ1世 1ズロッチ銀貨(15コペイカ)1832年
- 聖ヨハネパウロ2世 銀メダル 2014年
- スウプスク市 銀メダル 2014年
ニコライ1世 1ズロッチ銀貨(15コペイカ)1832年
発行国 | ポーランド |
発行年 | 1832年 |
額面 | 1ズロッチ(15コペイカ) |
グレード | - |
直径 | 不明 |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
ニコライ1世の時代に発行された1ズロッチ銀貨であり、1ズロッチはルーブルの補助通貨であるコペイカで換算して15コペイカというレートが定められていました。
ポーランド立憲王国時代には、ロシア・ルーブルの影響を色濃く受けたズロッチ銀貨がいくつも発行されています。
聖ヨハネパウロ2世 銀メダル 2014年
発行国 | ポーランド |
発行年 | 2014年 |
額面 | - |
グレード | - |
直径 | 不明 |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
聖ヨハネパウロ2世は史上初であるポーランド出身のローマ教皇であり、1978年~2005年まで在位していました。
こちらの記念メダルは、ポーランド造幣局が発行したものであり、裏面の碑文は「愛する神にあなたの地球とそのすべての住民を祝福させてください」と書かれています。
スウプスク市 銀メダル 2014年
発行国 | ポーランド |
発行年 | 2014年 |
額面 | - |
グレード | - |
直径 | 不明 |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 200 |
状態 | - |
スウプスク市はポーランドの都市であり、ドイツ帝国の領土であったことからドイツ語読みでシュトルプと呼ばれることもあります。
こちらの市の記念銀メダルには、表面に男と「NUM-QUAMRETRORSUS」と書かれた碑文、裏面にはスウプスク市の市庁舎とポーランド国章が描かれています。
ポーランドのアンティークコインに関するよくある質問
最後に、ポーランドのアンティークコインに関するよくある質問をまとめました。
- ポーランドのズロッチ金貨・銀貨はどのように購入するべきか?
- 希少品であるポーランドのズロッチ金貨・銀貨を売却するおすすめの方法は?
ポーランドのズロッチ金貨・銀貨はどのように購入するべきか?
ポーランドのアンティークコインは、ほとんど現存しておらず市場に流通するのも稀です。
流通しているズロッチは時を重ねるにつれて小型化していった経緯もあり、見栄えが悪くなることから収集家の間でも現在のズロッチは収集の対象になりにくかったことも挙げられます。
また、歴史的な背景から市場に流通するアンティークコインの多くがポーランド立憲王国時代のロシア・ルーブルに近いデザインを持つズロッチ金貨・銀貨が大半を占めています。
非常にマニアックな収集テーマとなっているので、個人が出品できるオークションサイトで購入する場合は、正確な価値を算出して販売しているケースは少ないです。
よって、ポーランドのコインを購入するなら信頼できるコイン業者を見つけて、取り扱っているかどうか確認することが重要になります。
希少品であるポーランドのズロッチ金貨・銀貨を売却するおすすめの方法は?
希少品であるポーランドのコインを売りたいと考えている方は、コインの取り扱い幅が広い当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」を利用することをおすすめします。
コインの鑑定から現金化までサポートするので、ポーランドのズロッチ硬貨に限らずロシア・ルーブルなども含めた世界中のコインで売却したいコインをお持ち込みください。
また、当サイトにコインを出品することもできますので、詳しくはこちらのページをチェックしてください。
まとめ
ポーランドのコインとその歴史について紹介しました。
アンティークコイン収集のテーマとしてはメジャーではありませんが、オジロワシのコインなどデザイン性のいいコインもありますので、気になった方は集めてもいいかもしれません。
当サイトでおすすめする投資にも用いられる価値のあるアンティークコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。