日本におけるアンティークコイン市場は整備されておらず、コインの価値が非常に高いことから詐欺の対象になりやすく被害を訴える報告も増えているようです。
アンティークコイン投資詐欺を断定するのが難しい理由は、偽物を販売した場合でも販売元が偽物と知らなければ詐欺として成立しない可能性が高いところにあります。
アンティークコインは美しいデザインのコインを手元に置いて鑑賞しながら、長期的に高い成長性が期待できる魅力的な投資対象であることは間違いありません。
投資詐欺の被害に遭う人を少しでも減らすためにもこの記事では、アンティークコイン投資詐欺の手口と回避する方法まで解説します。
アンティークコイン投資に関わる詐欺とは?
アンティークコインとは、一般的に100年以上前に発行されたコインのことを指します。
発行年が古く希少性の高いコインは、数百万円~数千万円、コインによっては億単位の価値を持つこともあります。
これだけの価値のある商品は詐欺の対象にもなりやすいので、これまでも一定数報告が存在しました。
しかし、近年、アンティークコインに関する詐欺の報告がより多く見られるようになった理由は、投資対象として富裕層の間で周知されたことが挙げられます。
アンティークコイン投資に興味を持った富裕層は、アンティークコインについて知識がない方も多いので、詐欺を企む人にとっては騙しやすい相手といえるでしょう。
アンティークコインで投資詐欺を行う人がいる理由は、コインが非常に高価であること、初心者が多く騙しやすいことが挙げられます。
アンティークコイン投資における詐欺の手口
詐欺師はあの手この手で騙そうとしてくるかもしれませんが、アンティークコイン投資に関わる詐欺における手口は基本的に下記の2つです。
- 偽物を本物と称して販売する
- 意図的に相場とかけ離れた価格でコインを販売する
それぞれ詳しく解説します。
偽物を本物と称して販売する
最も悪質な手口としては、偽物を本物と称して販売するケースです。
販売元が偽物であることを知っていて販売する場合や、さらに悪質なケースでは自ら贋作を作り販売することもあります。
より手の込んだ手口であれば、スラブを利用した詐欺の報告もありました。
代表的な鑑定会社であるNGC社やPCGS社でコインを鑑定してもらう場合は、コインの真贋と状態を保証するためにスラブと呼ばれるコインケースに保管されます。
このスラブのなかのコインは簡単に取り出すことはできず、基本的にはスラブ自体を破壊するしかないため、鑑定会社のお墨付きであることから長らく安全といわれてきました。
しかし、近年ではスラブが安全という思い込みを狙い、スラブ自体を偽造するか、なんらかの方法でスラブから本物のコインを取り出し、偽物のコインとすり替える手口もあります。
精巧な偽物を購入してしまえば、再び鑑定するまでコインが偽物と気づくことはありません。
アンティークコイン投資においては、保有しているコインの価値が高まり、売却を検討した瞬間に保有しているコインが無価値であることに気づくことになるので、必ず回避したい手口になります。
意図的に相場とかけ離れた価格でコインを販売する
コインは本物であっても、相場とはかけ離れた価格でコインを販売することで利益を得ようとしてくる場合があります。
例えば、本来20万円の価値のあるコインを150万円で購入すれば、130万円損することになります。
20万円のコインが150万円以上の価値になるためには、7倍以上の価格上昇が必要になるため、成長率の高いアンティークコイン投資であっても途方のない時間がかかる可能性が高いです。
多くの収集家、アンティークコイン投資家に信頼されるコイン業者であれば、外国貨幣評価書、オークションログ、カタログを用意し、相場に沿った価格で販売するのが基本になります。
ただし、個人も出品できるオークションサイトでは、相場とかけ離れた価格でコインを販売している出品者も多く、騙すつもりがなくても根拠のない価格で出品しているケースも含めて相場を大きく乱している場合も多いです。
一方で、コインの価値が分からないアンティークコイン投資に興味を持った富裕層を狙って、相場以上の価格で売りつける確信的な販売元もいるため注意が必要になります。
アンティークコイン投資詐欺は断定するのが難しい
万が一にも、自分がアンティークコイン投資詐欺の被害に遭ったとき、販売元を訴えようと考えても主張が通らないかもしれません。
例えば、偽物を本物と称して販売された場合は、販売元が偽物であることを知っていたことが認められた場合に詐欺と断定されます。
最初から偽物を販売するつもりの詐欺師は、長期的に続けるつもりがなく、コインが偽物と気づく頃にはすでに連絡のつかない状態になっていることもあるので、現実的は泣き寝入りするケースがほとんどです。
また、相場以上の価格でコインを売りつけられた場合についても、基本的に仕入れた商品を小売店が販売するのであれば、どれくらいの価格で販売するのかは販売元が自由に設定できます。
仮に、販売元が200万円の価値のあるものを50万円で販売したとき、顧客に150万円の請求ができないことと同じように、アンティークコインの価格は双方が納得した上で売買契約が成立した以上、どれだけ相場とはかけ離れていても後から請求できません。
ただし、10万円のコインを100万円で販売する際に、このコインは10年以内に1,000万円になるという勧誘を受けて購入した場合は、詐欺が成立する可能性があります。
上記のような顧客の信用を裏切る販売元が長期的にアンティークコインの販売を行なうことはできず、いずれ淘汰されるため、詐欺の意思がない場合も長く続けることはできないでしょう。
アンティークコイン投資詐欺を回避する方法
アンティークコイン投資詐欺は断定して訴えるのが難しいという性質上、最大の防御策は最初から詐欺に遭わないための方法を考えることです。
- 鑑定番号を確認する
- 保証制度の有無
- 信頼できる業者を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
鑑定番号を確認する
まず、アンティークコインが鑑定済みであることは購入する上で前提としたうえで、鑑定番号を確認することが重要です。
鑑定会社のNGC社とPCGS社では、鑑定したコインをすべて記録しており、鑑定番号で管理しているため存在しない鑑定番号を使用している場合は、この時点で詐欺であると分かります。
また、NGC社では鑑定番号を入力してコインを調べると画像が表示されるため、販売されたコインと鑑定されたコインを見比べることで贋作を見抜ける可能性があります。
鑑定番号を確認すれば、ある程度のレベルのアンティークコイン投資詐欺であれば見抜ける可能性があるので、購入するコインに関しては必ず確認するようにしましょう。
保証制度の有無
コインの購入先によっては、保証制度が存在することがあります。
具体的には、万が一コインが偽物であった場合は販売元が買取を保証する永久買戻し保証です。
このような保証制度を充実させている販売元は、最初から偽物を販売する意図はないと考えられるため、信頼しやすいといえるでしょう。
信頼できる業者を選ぶ
アンティークコイン投資における多くのトラブルは、素性の分からない個人も出品できるオークションサイトなどでコインを購入したことで発生します。
アンティークコインに関する知識に自信のない方は、先ほどの鑑定番号の確認や、保証制度の充実を確認した上で、信頼できる業者でコインを購入することをおすすめします。
コインに関する深い知識を身につけた上でアンティークコイン投資を始めるのが理想ではありますが、アンティークコインの世界は奥深く、少し知識を身につけただけでは詐欺に遭う危険性が高いです。
そのため、コインの知識を深めるよりも、アンティークコイン投資を行なう上で信頼できる業者を選んで投資を始めるほうが成功する確率が高くなります。
アンティークコイン投資の始め方についてはこちらの記事をチェックしてください。
アンティークコイン投資入門 グレード・希少性・人気などの選び方を解説
投資詐欺の対象にもなる資産防衛におけるアンティークコインの価値
アンティークコインが詐欺の対象になるのは、コインが非常に高額であるからです。
反面、適切な価格で本物のコインを入手できれば資産防衛にも役立つ資産になります。
詐欺などのトラブルの報告もあるアンティークコイン投資ですが、なぜ投資対象として魅力的なポイントを3つ解説します。
- 現存枚数が制限され希少性がある
- 世界中で取引され金融市場の影響を受けにくい
- いざという時に持ち運べる
現存枚数が制限され希少性がある
アンティークコインは、この世に存在する枚数が制限されており、かつて発行された枚数以上にコインは存在しません。
年を重ねるにつれて枚数が減ることはあっても増えることはないので希少性があり、今後も希少価値が高まることが予想されることから、長期的に安定して資産価値が成長することを期待できます。
人気のアンティークコインは、同じデザインのコインがリメイクされることもあります。
しかし、2022年に発行されたコインが増えても、1837年に発行されたコインは増えることはないので、1837年製のコインの価値が低くなることはないのです。
同じデザインのコインであっても近年に発行されたコインの価値は希少でないことからまだ低く、過去に発行された希少なコインのほうが価値が高いという状態になりやすいです。
また、金を含有しているコインは、金自体が埋蔵量が決まっている限られた資産であるため、金価格により価値が担保されている場合もあります。
具体的なアンティークコインのおすすめ銘柄について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
アンティークコイン投資のおすすめ銘柄と高額コインの値上がり事例
世界中で取引され金融市場の影響を受けにくい
アンティークコインには世界中にコレクターが存在しているため、世界中の人々がコインの買い手になる可能性があるので、実物資産の中でも売却しやすいといえます。
特にアンティークコインの歴史の長い国や、魅力的なコインが数多く発行されている国にはコレクターが多いと考えられます。
実物資産は購入よりも売却に困ることも多いですが、アンティークコインは古くから世界で収集されているため売却しやすく、唐突に需要がなくなり買い手がいなくなる心配はありません。
また、株や債券といった金融資産と価格が連動しにくいため、金融市場が暴落しても価格への影響が少ないことから、資産防衛にも利用できる資産といえます。
リーマンショックやコロナショックなどで金融商品の価格が暴落した経験を持つ富裕層は、より安全で成長性の高い投資先を求めるケースや、金融資産を保有する上でのリスクヘッジを考えた上でアンティークコインを選択する方が増えているのです。
いざという時に持ち運べる
不動産、絵画、スポーツカー、世の中にはさまざまな実物資産がありますが、災害などが発生したときに持ち運べるような投資対象はけっして多くはありません。
アンティークコインはスラブ込みでも数枚であれば、いざという時にはポケットに入れて持ち運びができるほどのサイズであるため、緊急時に失われる可能性は他の資産よりも低いです。
複数のコインを保有し、すべてのコインの持ち運びが不可能な場合は、利用するコイン業者によっては専用の金庫で購入したコインを管理するサービスを提供している場合もあるので、ある程度利用して信頼できると判断した場合はそちらを利用して物理的なリスクを防ぐのもよいでしょう。
よって、アンティークコインは災害などの影響で物理的に破損・消失するリスクは他の実物資産と比較しても非常に低いといえます。
アンティークコイン投資詐欺トラブルに巻き込まれる前に読みたいQ&A
それでは、最後にアンティークコイン投資詐欺のトラブルに巻き込まれる前に読んでおきたい質問をまとめました。
- アンティークコイン投資で失敗しないための方法は?
- 詐欺に遭わずに投資を成功させるための業者の選び方は?
それぞれ詳しく解説します。
アンティークコイン投資で失敗しないための方法は?
アンティークコイン投資における失敗は、偽物のコインを購入してしまうことや、相場以上の価格でコインを購入してしまうことで発生します。
よって、相場に沿った価格で本物のアンティークコインを購入することが、アンティークコイン投資で失敗しないためには重要です。
ただし、購入したコインがさまざまな問題で思ったように値上がりしないことも考えられます。
株式などの金融商品と同様に複数のコインを購入して分散を意識することも成功させる秘訣になります。
複数のコインを購入するなら信頼できるコイン業者を見つけて取引するのが最も効率がよいです。
アンティークコイン投資で失敗する人の特徴や共通点について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
アンティークコイン投資で失敗する人の共通点は? 成功するためのポイントも紹介
詐欺に遭わずに投資を成功させるための業者の選び方は?
アンティークコインを取り扱う業者は日本にもさまざまあります。
個人が簡単に出品できるオークションサイトを利用しないのはもちろんですが、すべてのコイン業者が信頼できるとは限らないので見きわめることが重要です。
見きわめるためのポイントの1つは、コインを購入するときのサービスの充実度になります。
鑑定会社によりコインの真贋保証をしており、コインが偽物であった場合に買戻しを行なう永久買戻し保証がついている業者は安心です。
2つめのポイントは、コイン価格をどのように決定しているかになります。
カタログやオークションログなどを参考に正確な価格を算出している業者を選ぶとコインを相場よりも高値掴みしにくくなります。
アンティークコイン投資で詐欺に遭わないためにも上記のポイントを意識してコイン業者を選びましょう。
まとめ
アンティークコイン投資における詐欺について手口と回避するためのポイントを解説しました。
資産防衛の手段にもなりやすいアンティークコインは、富裕層から現在注目されていることもあり、魅力的な投資対象であることは間違いありません。
しかし、購入の方法を間違えるとトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、今回の記事で紹介したポイントを踏まえて詐欺に遭わないための投資方法を考えていきましょう。
アンティークコイン投資についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もチェックしてください。