金価格は2023年8月に10,000円(1gあたり)に到達する上昇を記録しましたが、2025年時点では17,000円に到達しており、上がりすぎではないかと心配する声もあります。
金価格が上がっているタイミングで金を購入することは後々に下がる可能性を考えるとリスクと感じている方もいることでしょう。
今後の情勢によっては一時的に大きく下落するリスクは存在しており、反対に現時点の価格から大きな下落を経験しないまま2倍以上に上昇する可能性もあります。
暴落前のタイミングで購入することがあれば大損するかもしれません。しかし、大きな下落を経験しないシナリオであれば機会損失になってしまうことも。
そのため、金を売買するならどちらのシナリオであっても問題がないように適切な方法で投資する必要があるでしょう。
この記事では、金価格は上がりすぎではないかという疑問に対して、下落のリスクと必ずしも上がりすぎとはいえない理由を解説します。
この記事のポイント
・金はどのように売買するべきなのか解説
金価格が上昇している理由
金価格が上がり過ぎであるかどうかを判断する前に、そもそも金価格がなぜ上昇しているのかを詳しく解説していきます。
- インフレ対策として強く意識されているから
- 世界の中央銀行が大量に購入しているから
- ETFを通じて気軽に購入できるようになったから
- 不安定な国際情勢のなかで安全需要が高まっているから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
インフレ対策として強く意識されているから
実質金利(名目金利-消費者物価上昇率)が低下またはマイナス圏に入ると、金の魅力が高まります。
金は物価上昇に対する備えとして長年にわたり評価されており、特にインフレ連動債の利回りがマイナスとなる局面では、その効果が顕著です。
例えば、米インフレ連動10年国債の実質利回りがマイナス圏に転落した2020年以降、金価格は一貫して大きく上昇してきました。
さらに、世界金協議会のレポートでも、名目金利よりもインフレを差し引いた実質金利の変動が金価格を最もよく説明する要因と結論付けられています。
以上のことから金はインフレ局面においてインフレ対策として強く意識されている資産であることから、価格が上昇しやすい状況にあるといえるでしょう。
金がインフレに強い理由はこちらの記事で紹介しています。
世界の中央銀行が大量に購入しているから
近年では各国中央銀行は外貨準備の多様化を目的に、金を大量に購入している状況が続いています。
金価格が急速に上昇している背景には、各中央銀行が過去に事例がないほどのペースで金を購入していることが挙げられます。
世界金協議会の調査では、調査に回答した中央銀行の95%が今後12か月で金準備をさらに増やすとし、43%が自国の金保有量を大幅に増やす計画を示しているようです。
中央銀行が主導して長期的な金価格の下支えとなり、市場の需給を引き締めています。
ETFを通じて気軽に購入できるようになったから
現物の金の購入は保管場所やコストの問題から個人投資家を中心に売買のハードルが高く投資が難しい状況にありました。
しかし、ETF(上場投資信託)の普及によって、リアルタイムで金へ投資できる環境が整いました。
実際に近年の金価格の上昇において金ETFへの資金流入は無視できない要素になっています。
ETFは金の売買コスト低減と取引スピード向上が実現し、市場参加者をさらに拡大する結果を生みました。
ほかにも金を裏付け資産とする仮想通貨も登場しており、金の購入方法はさらに増えています。
金の購入方法が多様化したことで、市場が開拓されたことが金価格の上昇につながっていると分析できます。
不安定な国際情勢のなかで安全需要が高まっているから
戦争による地政学リスクの高まり、大国同士の貿易摩擦など、国際的に不安定な状況が続いています。
不安定な国際情勢のなかで安全需要が高まると、投資家は株などのリスク資産から金へ資金をシフトします。
金は企業業績や信用リスクに左右されず、有事の金として危機対応資産とみなされているためです。
金価格は国際情勢に不安を与えるニュースが発信されると上昇する傾向にあります。
安全資産への需要が高まる動きは、金価格をさらに押し上げる一因となるでしょう。
金価格の上がり過ぎによる下落リスク
金価格が上がり過ぎたことによる反動で大きな下落が発生するリスクを紹介します。
- ほかの資産の魅力が相対的に高まる状況
- 機関投資家による金ETFの資金流出
- 金そのものの需要が低下する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ほかの資産の魅力が相対的に高まる状況
経済指標の好転によって株式市場や債券市場が堅調に推移すると、投資家のリスク選好が高まり、金の相対的魅力が低下します。
好景気でリスクを取れる状況にあれば、株価指数が大きく上昇し、投資家が株式に資金をシフトしやすくなるでしょう。
ドル高・長期金利上昇の局面では、利息を享受できる債券や預金商品への振り替えが加速し、金価格に下押し圧力がかかります。
金は保有していても利息を生まない資産であるため、ほかの資産の魅力が相対的に高まる状況では売られやすくなります。
現在の情勢が変化することがあれば、価格が上昇した金は利益確定を生みやすく、下落する懸念があるでしょう。
機関投資家による金ETFの資金流出
金連動ETFは物理的な裏付けを持つ投資商品であるため、機関投資家の大規模な資金流出は市場からの需要を直接的に削減し、価格下落要因となります。
機関投資家はポートフォリオのリバランスや利益確定のタイミングで流動性の高いETFを売却しやすく、大規模な売りが発生する可能性があります。
金の流動性が高まりETFが広く買われる状況にあるということは、広く売られることによって急激な資金流出による暴落のリスクがあるということです。
今後の金価格は大口の投資家が買いに回るか、売って利益を確定させるかによって上昇・下落どちらにも大きく価格が動く可能性があります。
金そのものの需要が低下する
宝飾用の需要、工業用途の需要にかかわらず金そのものの需要が低下することがあれば金価格が下落する原因になる可能性が考えられます。
実際に金のジュエリー需要は金価格が高騰したことにより大きく減少している状況にあります。
金の需要は金価格を支える重要な要素であるため、需要の低下が金価格の下落を招く危険性もあるでしょう。
金価格が上がり過ぎとはいえない理由
一方で、金価格は下落リスクがあっても必ずしも上がり過ぎとはいえない理由を以下にまとめました。
- 埋蔵量が限られているから
- 歴史的にも底堅い需要があるから
- 金投資市場が成熟した結果といえるから
それぞれ詳しく解説します。
埋蔵量が限られているから
地金としての金は、地球上に埋蔵された量が推定約200,000トンと限られており、その大半が既に採掘されています。
年間の鉱山生産量は約3,200トン前後で推移しており、新規鉱床の発見や開発には莫大なコストと長い時間が必要です。
供給の増加が構造的に制約されるため、たとえ価格が高値圏にあっても需給の引き締まりが続くと考えられます。
埋蔵量が限定されていることは、価格の上がり過ぎを理由とした下落を抑える働きを果たしやすいでしょう。
歴史的にも底堅い需要があるから
金はジュエリーやコイン・インゴット、中央銀行による外貨準備や工業用途、歯科材料など多様な需要を抱えています。
歴史的にも長きにわたって価値のある金属として取引されてきました。
よって、唐突に無価値になることがほかの安全資産と比較しても考えにくい安定性が保有することに安心感を生んでいるといえるでしょう。
経済環境が変動しても基礎的な実需が底堅く存在することが、金価格の下落による大きな調整を回避させる可能性があります。
金投資市場が成熟した結果といえるから
金ETFやデジタル取引プラットフォームが世界中に普及し、個人・機関を問わずリアルタイムで金に投資できる環境が整備されました。
現在の金の取引環境の充実は過去にはなかったものであり、人類の歴史でもここまでの高い流動性で金投資がおこなわれてきた歴史はありません。
よって、現在の金価格は金市場が成熟した結果として、これまでの常識と比較して大きく上昇したと考えることもできます。
成熟した取引環境と多様な参加者層が、需給調整をスムーズにして、長期的な下落を防ぐ働きをすることが考えられます。
結論をいえば、金価格は一時的な調整によって大きく下落することはあっても、長期的には上昇する可能性が高く、暴落を経験することなく継続して上昇を続けるシナリオも考えられるでしょう。
よって、価格を判断材料にしては、明確に今が買い時・売り時と判断することは難しく、取引方法によっては機会損失を招くかもしれません。
金を売買する適切なタイミング
金価格が上がり過ぎているかどうかにかかわらず、金を売買する適切なタイミングを紹介します。
- ポートフォリオのリバランス
- 毎月決まった日を指定した積立投資
- 資金が必要になったとき
- 購入してから5年以上経過している
それぞれ詳しく解説します。
ポートフォリオのリバランス
金の購入・売却は投資ポートフォリオに基づいておこなうことが合理的です。
例えば、保有する金の総量をポートフォリオ全体の10%にしたと仮定します。
仮に株式や債券の上昇によって金の比率が目標の10%を大きく下回った場合は、10%に戻るように買い増すことでリスク分散が可能です。
一方で、金価格の上昇で金の比率が大きく上昇した場合は、超過分を売却して利益を確定します。
定期的なポートフォリオのリバランスは、市場の行き過ぎた動きによるリスクを抑制しながら、長期的な資産成長を支える有効な手法です。
売買によって当初設定した資産配分に戻すリバランスのタイミングが、金の明確な買い時・売り時を決定できます。
金の買い時・売り時について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
毎月決まった日を指定した積立投資
金を長期的に保有する際は、純金積立や投資信託・ETFを利用した毎月決まった日に同額を積み立てる方法が効果的です。
将来の金価格の値動きを完全に予想できないのであれば、高い時も安い時も同額を積み立て続けることで金の購入価格を平均化できます。
一括購入をする場合は購入タイミングによってはリスクもありますが、積立投資であればリスクを軽減できます。
売却も同様に毎月決まった日に同額を取り崩し続ければ、安定した価格で現金化しやすくなるでしょう。
金に投資を開始するなら積立投資は効果的な方法といえます。
資金が必要になったとき
予期せぬ出費や大きな資金需要が発生した際には、金を売却して現金化するのが適切なタイミングです。
住宅購入や教育費、医療費などの重要なライフイベントに備えて、金の一部を売却することで、必要に応じた資金を確保できます。
株や債券などが下落しているタイミングで、金価格が上昇しているなら金を現金化するのに適したタイミングといえるでしょう。
急に資金が必要になった場合もポートフォリオを分散していれば対応しやすいことがメリットです。
購入してから5年以上経過している
金の売却タイミングを考えるにあたって基準になるのは、購入してから5年以上経過していることです。
なぜなら、金の課税は譲渡所得税・住民税の対象であり、保有期間によって課される税金が変わるからです。
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年以上の場合は長期譲渡所得に該当します。
所得区分 | 控除後の譲渡所得 | 所得の減額 |
短期譲渡所得 | 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)-50万円 | そのまま計算 |
長期譲渡所得 | 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)-50万円 | 控除後の譲渡所得 × 1/2 |
長期保有であれば税制上の優遇措置を受けられるため、税負担を最適化しながら利益を確定できます。
ただし、金を対象にした投資信託・ETFの場合は課税は証券として扱われるため、この限りではありません。
純金積立を含む現物で金を保有する方法で投資した場合は、5年という節目を理解しておくといいでしょう。
金価格が上がり過ぎていてもアンティークコインを保有しやすい理由
金価格が上がり過ぎている状態であっても、金に代わる資産を保有したいと考えている場合はアンティークコインが適しています。
最後に金貨のアンティークコインを保有する3つのメリットを以下にまとめました。
- 金の地金価値に加えてプレミア価値による安定性がある
- 株式市場とは連動せず右肩上がりに上昇しやすい
- 金に代わるオルタナティブ投資になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
金の地金価値に加えてプレミア価値による安定性がある
アンティークコインは、金そのものの地金価値に加えてプレミア価値が上乗せされます。
そのため、金貨であっても単純な地金価格の変動に左右されにくい特性を備えています。
歴史的に希少な金貨は金価格以上の価値を持ち、高額で取引されることも多いです。
価値の基準が金価格とプレミア価値の2つがあるため、金価格がどのような局面にあっても安定性が高いといえるでしょう。
ただし、プレミア価値は金貨の希少性・状態・需要によって決まり、ほとんど付加価値を持たず金価格で取引されるアンティークコインも多いです。
そのため、価値を持つアンティークコインを専門店から選定して購入する必要があります。
株式市場とは連動せず右肩上がりに上昇しやすい
アンティークコインの値動きと主要な株価指数である日経平均とS&P500で比較してみましょう。
アンティークコインは株とは異なる値動きをしており、連動していないことがわかります。
そのうえで、リーマンショックなど株価が大きく下落した局面でも影響がほとんどなく、右肩上がりの成長を見せています。
希少コインの価格は株価とは弱い相関性しか持たず、世界経済の不透明感が増す局面ではむしろ買い需要が高まりやすいです。
非連動性と安定した上昇性は、適切な投資ポートフォリオを構築し、分散投資効果を狙う上で大きな魅力となります。
金に代わるオルタナティブ投資になる
アンティークコインは、伝統的な株や債券などの投資方法に加えて、投資家ポートフォリオの柱となるオルタナティブ投資として機能します。
株式への集中投資リスクを軽減するほか、コイン固有の希少性を通じてインフレに対する保険効果を発揮します。
実際に世界中の富裕層の間でアンティークコインを資産に組み入れる動きが進んでいる状況です。
長期的な資産運用ではアセット分散が基本であり、複数の種類の資産を保有することで安定した成果を期待できます。
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まとめ
金価格は価格上昇において複数の根拠を持っていますが、経済情勢の行方によっては下落リスクをあわせ持っている状況です。
一方で、長期的に考えれば上昇余地を残しているため、単純に上がり過ぎと断じるのは適切ではないかもしれません。
自身のリスク許容度や運用目的に合った手法で金投資を行うことで、機会損失や急落リスクを最小限に抑えながら、資産防衛と成長を両立できるでしょう。
アンティークコインのようなプレミアム価値を持つ資産を保有することで、地金だけでは得られない分散効果や安定性を高めることが可能です。
アンティークコインの購入方法はこちらの記事で紹介しています。