金の純度は、対象物に占める金の割合を表したものであり、代表的な表し方には「K(カラット)」の単位での表記が挙げられます。
例えば、K24(24金)は金の含有率が約99.99%以上の理論上の純金であり、この表記ではK24を基準として純度が低いほど数字が減少する仕組みです。
ただし、純度は必ずしも高いほうが良いわけではなく、実用方法によっては他の金属を含む合金化した純度の低い金を使用したほうがいい場合があります。
金の純度の概念は、アンティークコインを含む貴金属を収集するうえで知っておきたいことであるため、必ず理解しておきましょう。
この記事では、金の純度について、表記方法、金に他の金属を混ぜる理由、主な純度の種類一覧、金の純度を調べる方法を紹介します。
合わせて、金貨(アンティークコイン)における金の純度も解説するため、コイン収集における純度の重要性を把握してくださいね。
この記事のポイント
・金の純度を調べる方法と金貨(アンティークコイン)における純度の重要性を紹介
金の純度とは?
金(Au)は、古来よりその美しさ、希少性、化学的安定性から金貨などの貨幣、アクセサリーなどの装飾品、現在では投資対象として高い評価を受けてきました。
金貨、インゴットなど、この世界には人工的に造られた純金が存在しています。
しかし、通常、自然界に存在する金塊は他の金属と混じり合っている合金です。
同じ人工的に造られた金製品であっても、金と他の金属の割合は必ずしも一定ではないため、金の純度を一定の基準において区別する必要があります。
そのため、同じ金製品であっても、金の含有状況を単位や割合で表し、比較する必要があるということです。
単純な区別であれば、純金であるか、合金であるか、合金であるなら金の含有率がどれくらいであるのか、比較するために金には純度という概念があります。
金の純度の表記方法
金の純度の表記方法の基本は以下のとおりです。
- 単位のKによる表記
- 24分率による表記
それぞれ詳しく見ていきましょう。
単位のKによる表記
K(カラット)は金属の純度の割合を示す単位であり、特定の割合で分割して何等分が純金であるかを表します。
理論上の純金が24金であるため、K24であれば等分したすべての金属が金であるという考え方です。
全体の75%が純金であるなら、「24×75%=18」であることからK18と表記され、24分割した18等分が純金であり、残りの6等分は他の金属を含有していると計算できます。
「カラット(karat)」という言葉は、古代に穀物の種(カルナス)を単位として用いたことに由来し、後に金属の純度や宝石の重量の単位として発展しました。
16世紀~18世紀頃からヨーロッパを中心に広まり、現在でも世界各地で使用されている表記方法です。
また、ダイヤモンドの「カラット(carat)」は重さを表すため、カタカナ表記では同一ですが、金のカラットとは異なります。
24分率による表記
金は24分率で表記する仕組みであり、24を100%として考えて、K24、24金と表記されます。
しかし、24分率はあくまで金のみのルールであり、銀・プラチナは1000分率で表記します。
1000分率は、銀の純度が90%であるならSilver900、プラチナの純度が92.5%であればPt900と表記する仕組みです。
1000分率のほうが視覚的に純度がわかりやすいですが、金の24分率は昔ながらの表記方法が継続して使用されています。
金の純度の表記は歴史が長いことから、伝統的に使用が続けられている概念といえるでしょう。
しかし、現在ではわかりにくいため、金の純度に関しても必ずしも24分率で表記するのではなく、1000分率で表記する場合もあります。
金貨(アンティークコイン)の場合は、必ずしも24分率で表記されておらず、1000分率で表記されていることもあります。
金に他の金属を混ぜる理由
なぜ金属製品を作る際に純金を使用せずに他の金属を混ぜるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
金に他の金属を混ぜる理由は以下のとおりです。
- 硬度や耐久性を向上させるため
- コストの削減
- 加工・実用による都合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
硬度や耐久性を向上させるため
純金(24K)は非常に柔らかく、傷や変形を起こしやすいです。
そのため、アクセサリーや装飾品、貨幣など、日常での使用や長期の耐久性が求められる用途には適していません。
銅、銀、パラジウムなど、他の金属を混ぜることで、金の柔らかさが調整され、耐摩耗性や耐久性が向上します。
日常的な衝撃や摩耗に耐えやすくなるため、金製品は長期間美しさを保つことが可能です。
純金では耐久性に不安がある場合に、他の金属との合金が使用されてきた経緯があります。
コストの削減
金は希少性の高い資源であり、現在では1gあたり1万円を超える価格で取引されています。
純金は非常に高価であるため、金そのものが投資対象になることもあります。
他の金属を添加することで、金そのものの使用量を減らし、総合的な製造コストを下げることが可能です。
必ずしも金の含有量が重要ではない製品であれば、見た目の輝きを保つように加工すれば、価格を抑えて満足のいく商品を消費者に提供できるようになります。
また、金や銀が貨幣として使用されていた時代では国の経済状況によって、貨幣に使用する金・銀の使用量を減らすなどの政策がとられたこともありました。
加工・実用による都合
金は他の金属を混ぜることにより、以下の性質を得ることができます。
- 適度な硬さと延性を持たせることで加工しやすくなる
- 合金にすることで接点や端子に適した特性を持たせて電気・電子用途に適用する
金は、加工の際に望む形状や機能性を持たせるためには、性質の調整が必要です。
他の金属を混合することで、金の加工性が向上し、細かいデザインや複雑な形状への加工がしやすくなります。
合金にすることで、金の融点や熱伝導性、耐食性などの特性も調整できるため、工業的用途や特定の実用目的に合わせた製品作りが可能です。
加工・実用の都合で合金を作って使用している場合があります。
主な金の純度一覧
主な金の純度一覧は以下のとおりです。
- K24・24金(純金99.99%~100%)
- K22・22金(純金91.7%)
- K18・18金(純金75%)
- K14・14金(純金58.5%)
- K10・10金(純金42%)
それぞれ用途などを含めて詳しく見ていきましょう。
K24・24金(純金99.99%~100%)
K24(24金)は金の含有率が99.99%~100%である理論上の純金であり、純金は豊かな金色の輝きを放ちます。
金は酸化や変色に強い性質から安定しており、長期的な保存にも適しています。
よって、純金は以下の用途で使用されることが多いです。
実用方法 | 内容 |
インゴット・金貨 | 金をインゴットや金貨に換えて資産として保有する |
金箔 | 高級な金箔や一部の伝統工芸品に利用して輝きを最大限に活かす |
純金は特に投資用として使用されることが多く、金そのものの価値に投資するため、混ざり物がない状態のほうが都合が良いと判断されます。
コレクション用の純金金貨は長期保存に適していますが、傷つけないように厳重に保管することが前提となるでしょう。
一方で、柔らかく傷つきやすいことから、それ以外の実用面における加工や日常使用には向かない場合もあります。
K22・22金(純金91.7%)
K22(22金)は金の含有率91.7%程度と高く、銅などが混ぜられています。
K24と比較すると柔軟性と耐久性が向上していることが特徴です。
K22の金は以下の用途に使用されることが多くなっています。
実用方法 | 内容 |
ジュエリー | 結婚指輪、ネックレス、イヤリングなど、日常的な装飾品に加工される |
昔の貨幣 | 過去に流通していた金貨は22金で製造されることもあった |
特にアジアでは、伝統的なジュエリーや装飾品に広く使われています。
また、K22は昔の金貨にも採用されており、ウナとライオンのオリジナルはK22で作られています。
純度が高い分、金としての美しさを残しつつ、実用的な強度も得られることが魅力です。
K18・18金(純金75%)
K18は金の含有率が75%であり、金の美しさと耐久性、加工性のバランスが取れており、非常に人気の高い合金です。
他の金属が混じることで深みのある色合いになることから、純金とは異なる鑑賞性があるといえるでしょう。
K18の主な使用例は以下のとおりです。
実用方法 | 内容 |
ジュエリー | 指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアスなど、上質なジュエリーに多く採用される |
時計 | 高級時計ではケースや装飾パーツに使われる |
日常使用にも耐えうる硬度がありながら、金の輝きを維持できるため、高級ジュエリー・アクセサリーに使用されます。
高級時計などでは、ケースや装飾パーツに採用されることもあり、多様な用途で使用されることが特徴です。
K14・14金(純金58.5%)
K14は金の含有率が58.5%であるため、合金に使用される金属によって色合いも異なります。
硬度が増し、傷や摩耗に対する耐性が向上しており、金属の配合によっては高級感と実用性を両立できます。
K14の主な実用方法は以下のとおりです。
実用方法 | 内容 |
ジュエリー | アクセサリー、ペンダントなど、日常的に使用されるジュエリー |
楽器 | ホルン、トランペット、フルートなどの部品 |
文房具 | 万年筆などの部品 |
高い耐久性と加工のしやすさから、リーズナブルなジュエリー、楽器、文房具など、さまざまな用途でK14の金は使用されています。
耐久性が高い一方で、他の金属の影響で金であっても変色しやすいデメリットがあります。
K10・10金(純金42%)
K10は金の含有率が5割を切っている、合金成分の割合が非常に高い金です。
金の含有量が低いため、価格が手頃であり、コストを重視する場合には有利といえるでしょう。
K10の実用方法は以下のとおりです。
実用方法 | 内容 |
ジュエリー | チェーン、ブレスレット、ピアスなど、カジュアルなアクセサリーに使用 |
大量生産品 | 手頃な価格で大量生産される商品の部品として適している |
K10の金はコストを抑えて大量生産する商品に使用されることが多く、高い実用性を持ちます。
合金成分の割合が高いことから、耐久性は非常に高く、摩耗や衝撃に対しても強いです。
以上が金の純度の一覧になりますが、純度はどうやって調べれば良いのか気になるかもしれません。
商品に表記されていればわかりやすいかもしれませんが、純度の高い金製品ほど純度を偽って販売されるケースも。
インゴット・金貨など純度の高い金貨を保有する方には重要であるため、次は金の純度を調べる方法をまとめていきます。
金の純度を調べる方法
金の純度を調べる方法を以下にまとめました。
- 刻印を確認する
- 比重を測定する
- 磁石を使って確認する
- 試金石を用いて検査する
- 専門の鑑定士に依頼する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
刻印を確認する
金製品が本物であることを前提にするなら、金製品に刻まれている刻印を確認すれば調べられます。
純金であれば、24分率でK24と表記されているか、1000分率で999などの表記がされているはずです。
目視で簡単に確認できるため、金製品の純度が気になった場合は刻印を確認してみましょう。
ただし、偽物であるなら、刻印が偽造されているケースも考えられます。
金製品の劣化が激しい場合は、摩耗で刻印が消えてしまうこともあるため、状況次第では刻印を信頼できない可能性があります。
比重を測定する
金の純度は金が比重約19.3の非常に高い密度を持っていることから、重量と体積の関係から純度を推定できます。
金の比重の測定方法は以下のとおりです。
- 精密なはかりで重量を測定
- 水中に沈めたときの排水量から体積を算出(アルキメデスの原理)
- 重量÷体積で比重を計算し、純金の値(約19.32)と比較する
各純度における比重の目安が以下のとおりであるため、重量÷体積で計算した比重と比較してみましょう。
純度 | 比重 |
K24 | 19.32 |
K22 | 17.45~18.24 |
K18 | 16.03~17.11 |
K14 | 12.91~14.44 |
K10 | 11.42~13.09 |
仮にK18の刻印があるにもかかわらず、「16.03~17.11」とかけ離れた値になった場合は、純度が間違っている可能性が高いということです。
金製品によっては水に沈められないものもあるため、すべてに適応できるわけではありませんが、金の純度を自宅で調べる有力な方法といえます。
磁石を使って確認する
金は磁性を持たないため、磁石に反応しません。
製品に磁石を近づけ、引き寄せる反応を確認すれば、他の金属が使用されているかどうかがわかります。
手軽検査方法ではありますが、非磁性金属のみを使用した合金、正確な純度の判定はできません。
初歩的な検査として、金製品の中に磁性金属が混入していないかの簡易チェックに利用できる方法です。
試金石を用いて検査する
試金石テストは、金を試金石に擦り付けた跡に、特定の酸(通常は硝酸)を垂らして、反応を観察する伝統的な純度の測定方法です。
- 金製品を試金石に擦り付けて金の跡を作る
- その跡に硝酸を加える
- 反応を、既知の純度の標準サンプルと比較する
伝統的な方法ではありますが、理論上は非常に正確な純度評価が可能であるため、個人による測定では正確に純度を計れる方法です。
ただし、金製品に微小な傷をつける可能性があるため、希少性が高く、傷がつくことで価値が下がるアンティークコインなどには使用できません。
専門の鑑定士に依頼する
金製品の純度や真贋を判断するために最も確実な方法は、専門知識を持つ鑑定士に依頼することです。
特に金貨などのアンティークコインは、純度の判定によってコインに傷をつけやすいため、個人で判別するよりもプロに任せるほうが安全といえます。
検査費用がかかるため、高価な製品や疑わしい場合に限定されますが、正確な情報が必要な場合は専門の鑑定士への依頼も検討しましょう。
金貨(アンティークコイン)においても金の純度は重要です。
次の項目では、アンティークコインと純度の関係をまとめていきます。
金貨(アンティークコイン)における金の純度の重要性
金貨(アンティークコイン)における金の純度の重要性を以下にまとめました。
- 真贋判定の基準になる
- 純度が高いほど地金価値は評価されやすい
- 純度が低くても希少性が高い場合は高い価値を持つことがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
真贋判定の基準になる
金貨の真贋を判断する場合は、発行当時の純度基準や刻印、規格情報が重要な判断材料となります。
つまり、当時の純度基準と実際のアンティークコインの純度に大きな違いがあれば、その金貨は偽物です。
例えば、純金であるはずが、実は金メッキを塗った金を含まない安い合金、純度の低い金で作られているなどの贋作が考えられます。
真贋を判定する基準は他にもありますが、金の純度は大きな判断材料となるでしょう。
アンティークコインの偽物の見分け方は以下の記事で紹介しています。
アンティークコインの偽物の見分け方は? 購入のリスクと対策方法
純度が高いほど地金価値は評価されやすい
金の地金価値は、その含有量に大きく依存します。
純度が高い金貨は、金そのものの市場価格と連動し、資産としての価値が高く評価されます。
例えば、メイプルリーフ金貨などの投資用金貨は純金で発行されており、高い地金価値を有していることが特徴です。
アンティークコインも純度が高いほど地金価値は評価されやすく、金価格が上昇するほど価値が高くなります。
特にK24、K22の高純度の金貨は地金価値において優位性があるといえるでしょう。
純度が低くても希少性が高い場合は高い価値を持つことがある
金の純度は重要な評価軸の一つではありますが、アンティークコインの場合、歴史的背景や希少性、保存状態など、他の要素が加味されます。
そのため、純度が低い場合も、希少性が高い場合は高い価値を有することがあります。
発行枚数が非常に限られている金貨、金貨の保存状態と美術的な価値から、アンティークコイン市場において高値で取引されることも。
当時の製造技術や経済状況を反映した低純度の金貨であっても、流通枚数が極端に少ない場合や、歴史的なエピソードを持つコインは、収集家の間で高額で取引されるケースがあります。
気になる代表的なアンティークコインの純度
最後に、気になる代表的なアンティークコインの純度を見ていきましょう。
- ウナとライオン 5ポンド金貨 1839年(K22)
- スリーグレイセス 500ポンド金貨 2020年(K24)
ウナとライオン 5ポンド金貨 1839年(K22)
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1839年 |
額面 | 5ポンド |
直径 | 38mm |
重量 | 39.94g |
発行枚数 | 400枚 |
金の純度 | K22(917/1000) |
状態 | Proof EF+/AU |
アンティークコインを代表するウナとライオンのオリジナルである1839年発行の金貨は、純度がK22と高い水準です。
金の純度に関係なく、発行枚数が400枚で希少性が高く価値のある金貨ではあります。
高い純度を有していることもウナとライオンの特徴であり、金の光沢の美しさも魅力といえるでしょう。
世界で最も美しい金貨「ウナとライオン」の歴史と価値についてご紹介!
スリーグレイセス 500ポンド金貨 2020年(K24)
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 2020年 |
額面 | 500ポンド |
グレード | NGC PF70 Ultra Cameo |
直径 | 50mm |
重量 | 156.295g(5オンス) |
発行枚数 | 160枚 |
品位 | K24(999/1000) |
状態 | Proof FDC |
近年に発行されたコレクション用の金貨であり、ウナとライオンと同じ作者であるウィリアム・ワイオンの初期の傑作です。
オリジナルは試鋳貨幣以外は現存していないことから、幻のコインといわれています。
K24の純金で製造されており、156gの重量であることから、地金としても高い価値を有している金貨です。
スリーグレイセス金貨・銀貨とは? ロイヤルミントの傑作コインに迫る!
まとめ
金の純度とは、対象物中に占める金の割合を示す指標であり、24分率であることからK24(24金)を基準として、数字が小さくなるほど金の含有率が少なくなります。
必ずしも純度が高い金が優れているわけではなく、用途に応じて耐久性や加工性を考慮し、銅や銀、パラジウムなどの他の金属との合金として用いることがあります。
また、金の純度は、アンティークコインなどの貴金属で作られた貨幣の収集においても重要な要素です。
金の純度は、製品の物理的特性、経済的価値、さらには歴史的・文化的背景に基づく評価基準として、さまざまな観点から重要視されています。