イギリスの貨幣にはポンドよりも下位の通貨単位にペンスがありますが、現在では発行されていない6ペンス銀貨をご存じでしょうか?
1971年に通貨は10進法に移行するため6ペンス銀貨は製造中止になりましたが、幸福の象徴と呼ばれたこちらの銀貨は多くの国民から愛され、その製造中止が惜しまれました。
現在でも結婚式で花嫁の左靴のなかに6ペンス銀貨を入れると幸せになると考えられており、幸福の象徴としてお守りやプレゼントで人気を集めています。
この記事では、6ペンス銀貨が幸福の象徴と呼ばれる理由と、6ペンス銀貨の種類を紹介します。
6ペンス銀貨が幸福の象徴である理由
6ペンス銀貨が幸福の象徴である理由は3つあります。
- 結婚式のジンクスとサムシング・フォー
- お守りや誕生日プレゼントにも人気に
- 1967年の発行終了時には反対運動が起こる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
結婚式のジンクスとサムシング・フォー
6ペンス銀貨は結婚式のジンクスとして有名であり、花嫁の左靴のなかに6ペンス銀貨を入れることで、「経済的にも精神的にも満たされ、豊かで幸せな人生をもたらす」と考えられており、イギリスでは幸福を呼ぶコインとして言い伝えられてきました。
ジンクスの由来は、マザーグースのサムシングフォーの歌の歌詞が由来となっています。
Something Four(サムシング・フォー)
(なにかひとつ新しいもの、なにかひとつ古いもの)
something borrowed , something blue
(なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの)
and a sixpence in her shoe
(そして靴の中には6ペンス銀貨を)
結婚式で花嫁が身に着けると幸せな生活が送れる4つのアイテムの特徴と最後に靴のなかに6ペンス銀貨を入れることを歌っています。
6ペンス銀貨が結婚のラッキーアイテムとして現在では世界でも知られるようになったのは、この歌が由来です。
お守りや誕生日プレゼントにも人気に
結婚式のジンクスに使用された6ペンス銀貨ですが、この歌からラッキーアイテムといわれるようになり、結婚式以外でも人気のコインとなりました。
6ペンス銀貨を利用したお守りやアクセサリーも販売されるようになり、誕生日プレゼントにも人気を集めています。
レプリカを使用した商品や、実際に6ペンス銀貨を加工してペンダントにしたものなど、ラッキーアイテムとして世界中で販売されています。
1967年の発行終了時には反対運動が起こる
結婚のジンクスにもなり、ラッキーアイテムとしてイギリス国民から愛されるようになった6ペンス銀貨ですが、1967年に10進法に通貨が移行することから、6ペンスコインは製造中止となりました。
現在のイギリスのペンスの貨幣は、2ペンス、5ペンス、10ペンス、20ペンス、50ペンスの硬貨が発行されており、6ペンスはありません。
また、6ペンスは10進法に移行するまで当時は利便性の高いコインとしても知られており、ラッキーアイテムでありながら、国民の生活に根強く結びついていた貨幣であったため、廃止が決まった際には反対運動も起こりました。
多くの車に6ペンスコインの廃止の反対を訴えたステッカーが貼られるようになり、その影響から完全に廃止されるのは1980年までかかりました。
特に駐車場料金の支払いにはなくてはならないコインであったため、製造が中止してからも使用されていたようです。
このエピソードからも6ペンス銀貨は、イギリス国民から根強く愛されたコインであったことが分かるでしょう。
6ペンス銀貨の種類
6ペンス銀貨が初めて発行されたのは1551年、テューダー朝で若くして死去した国王エドワード6世の時代であったといわれています。
しかし、一般的に使用されるようになったのはエリザベス1世の6ペンス銀貨であるため、最古の6ペンス銀貨はエリザベス1世と考えている方も多いです。
反対に最後の6ペンス銀貨はエリザベス2世であり、1970年にはプルーフコインでコイン収集家に向けた最後の6ペンス銀貨が発行されました。
今回は、代表的な6ペンス銀貨を3種類紹介します。
- ヴィクトリア女王 6ペンス銀貨 1890年
- ジョージ6世 6ペンス銀貨 1941年
- エリザベス2世 6ペンス銀貨(白銅貨) 1961年
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ヴィクトリア女王 6ペンス銀貨 1890年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1890年 |
額面 | 6ペンス |
直径 | 19mm |
重量 | 2.8g |
品位 | .925 Silver |
エリザベス2世の次に長い在位期間で知られるヴィクトリア女王の6ペンス銀貨であり、この時代の6ペンス銀貨は銀価格の高騰の影響を受けていないことから、銀含有率が92.5%と純度の高い銀貨となっています。
そのため、コインの見栄えもよく、入手難易度もそれほど高くないため、結婚式のお祝いなどを理由に現在も購入されることがある銀貨です。
銀の含有率に問題があるのは、1920年以降の銀貨であるため、純度や希少価値を考えるなら1920年以前の6ペンス銀貨を入手する必要があるでしょう。
ジョージ6世 6ペンス銀貨 1941年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1941年 |
額面 | 6ペンス |
直径 | 19mm |
重量 | 2.8g |
品位 | .500 Silver |
ジョージ6世(在位1936-1952)は、経済情勢の影響で、在位期間中に6ペンス銀貨が銀貨ではなくなってしまった時代の国王になります。
1920年のジョージ5世の時代に第一次世界大戦の影響で銀の含有率が変わり、銀含有率が50%のシルバー製の6ペンス銀貨となりました。
そして、1947年以降に発行されたジョージ6世の銀貨はコッパーニッケルとなり、厳密にいえば白銅貨の6ペンスコインです。
上記で紹介したコインは、1941年製であるため銀含有率が50%の銀貨となっており、同じジョージ6世の銀貨であっても厳密には白銅貨のコインもあるので注意が必要になります。
ジョージ6世のおすすめコイン4選! その歴史を5つの章に分けて解説
エリザベス2世 6ペンス銀貨(白銅貨) 1961年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1961年 |
額面 | 6ペンス |
直径 | 19mm |
材質 | コッパーニッケル |
エリザベス2世の6ペンス銀貨は、現在の時代から6ペンスコインを手に入れるなら最も入手しやすいコインではあるものの、この時代の6ペンスコインは厳密には銀貨ではありません。
1970年にコレクター用に発行されたプルーフも日本の100円玉と同じ材質のコッパーニッケルであるため、エリザベス2世の6ペンス銀貨は存在しません。
結婚式のジンクスの由来であるサムシングフォーでは6ペンス「銀貨」と明記されているため、厳密には白銅貨のコインを代用するべきかどうかは、個人のこだわりによっても異なると考えられます。
しかし、エリザベス2世の6ペンス銀貨は発行されておらず、販売サイトによってはSilverと表記されていることもありますが、銀色の貨幣という意味であり、材質のことではないため勘違いすることだけはないようにしましょう。
また、エリザベス2世のコインのなかにも希少性のある価値の高いコインは存在しますので、詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
エリザベス2世の記念コインを5つ紹介! 誕生から60年以上に渡る治世について
6ペンス銀貨に関するよくある質問
6ペンス銀貨に関するよくある質問をまとめました。
- 6ペンスは日本円でいくら?
- 6ペンス銀貨はどうやって手に入れる?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
6ペンスは日本円でいくら?
1ポンドが160円と仮定すれば、1ペンスが1.6円程度になるため、約9円です。
しかし、6ペンス銀貨はラッキーアイテムとして人気を集めているので付加価値が付くため、現在の貨幣価値で購入するなら数千円から高いものでは数万円の予算を用意しておいたほうがよいでしょう。
また、6ペンス銀貨その物を販売するお店だけでなく、アクセサリーに加工した商品を販売している場合や、コイン自体はレプリカであることを明記しているお店もあるので、商品概要を理解した上で購入することをおすすめします。
6ペンス銀貨はどうやって手に入れる?
すでに発行が終了していますが、ラッキーアイテムとして世界中で認知されるようになったことから広く販売されています。
アクセサリーショップ、インターネットオークションなど気軽に取引しやすい場所から、材質や発行年から一定の希少性が認められる場合は、アンティークコインを販売するコイン専門店などでも取り扱いがある場合もあります。
銀貨自体の材質や、希少性は気にせずにアクセサリーを含めた6ペンスコインに関連する商品が欲しい方は、アクセサリーショップやインターネットオークションを通じてプレゼント用に購入するのがよいでしょう。
一方で、プレゼントをする場合でも材質にこだわりたい方や、自身のコレクションのためにこだわって収集したい方はアンティークコインと同様にコイン専門店などを探してみるとお目当ての銀貨が見つかりやすいです。
アンティークコインの購入方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
まとめ
6ペンス銀貨は結婚式のジンクスとして知られるようになり、現在では世界中で認められるラッキーアイテムとなりました。
親族や友人の結婚式に6ペンス銀貨を贈りたいと考えている方や、誕生日プレゼントなどの機会にプレゼントしたいと考えている方も予算に合わせて幸運の象徴とも呼べる6ペンスコインを選択肢に入れることをおすすめします。
また、6ペンス銀貨は、プレゼントだけでなく歴代のイギリスの君主が描かれているため、お守りとコレクションを理由に自分で収集してみるのにも最適なテーマです。