コブコイン(Cob coin)とは、16世紀から18世紀にかけてアメリカ大陸で採掘された金属を使用してスペインが発行したアンティークコインです。
スペイン語では、「Macuquinas(マクキーナ)」と呼ばれる製法で鋳造されるコブコインは、手作業で重量のみを重視していたことから形やデザインが不揃いであることが特徴です。
よって、古代コインと同様に形が全く同じコインが存在しない一点物であることから、アンティークコイン初心者からも人気を集めています。
この記事では、スペインで発行されたコブコインについて解説し、おすすめの金貨・銀貨を紹介していきます。
スペインのコブコインとは?
スペインのコブコインについて、製造された背景から具体的な製造方法まで詳しく解説していきます。
- 金・銀の産出量から主要な供給国となるスペイン帝国
- 重量の信頼性と効率を求めた製造方法
- コブコインが当時の世界に与えた影響
それぞれ詳しく見ていきましょう。
金・銀の産出量から主要な供給国となるスペイン帝国
スペイン帝国はかつて太陽の沈まない国と呼ばれ、16世紀~18世紀にかけて猛威を振るった強国でした。
1492年にクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見し、スペインは新大陸を征服し、支配していきます。
ポトシ銀山の発見は、スペインに大量の資源をもたらし、一時は世界最大の銀産出量を誇りました。
採掘を進めることでスペインは、金・銀の主要な供給国となりますが、採掘量が莫大であったため、コインに対して求められるものが見栄えではなく、正確な重量で効率的にコインを製造することになりました。
スペインのアンティークコインについてはこちらの記事で紹介しています。
重量の信頼性と効率を求めた製造方法
スペインは、コインの製造をできる限り簡略化させることとなります。
金銀を板状に伸ばし、定められた重さに切断し、ハンマーで両面に刻印することで製造されるため、コインが歪な形に仕上がります。
スペイン語で「Macuquinas(マクキーナ)」と呼ばれる製法で製造されたコインを「Cabo de Barra(棒の切れ端)」を意味する略称である「コブコイン(Cob coin)」と名付けられました。
表面に十字架、裏面に年号ごとに異なる国王の盾印のデザインが刻印されますが、手作業で行われることから打刻にずれが生じます。
切断されたコインの形状を含めて、大量に発行されているにもかかわらず、まったく同じコインが存在しない一点物です。
紀元前の古代コインを彷彿とさせる不揃いな通貨ではありますが、16世紀~18世紀にかけて製造されたものとなっています。
通貨として使用することから重量において信頼性が求められ、大量に採掘されている現状から製造をできる限り簡略化させる必要があったことから、綺麗な形状のコインを製造できる技術があるにもかかわらず効率を求めた製造方法となりました。
コブコインが当時の世界に与えた影響
コブコインが発行されたことで、ヨーロッパを中心に前例がないほどに金・銀を流通させました。
当時のヨーロッパの貨幣価値は3分の1まで減少したといわれており、これを価格革命と呼んでいます。
しかし、これがコブコインなど金・銀の流入によってもたらされたという説には諸説あり、現在では主にスペインが抱えていた戦争の戦費にあてがわれていたという説が有力です。
主流の説は、ヨーロッパの生産力を上回る過剰な人口増加が主な原因で価格革命が起きたと考えられています。
また、イングランドのヘンリー8世の大悪改鋳なども貨幣価値が大きく下落した理由です。
複雑に原因が絡み合っていることから、コブコインの流通が価格革命を引き起こしたとは言い難いかもしれませんが、当時の金・銀の価値に大きな影響を与えたことは間違いありません。
コブコインのおすすめ金貨・銀貨
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」で取り扱われたことがあるおすすめのコブコインを紹介します。
- スペイン フェリペ5世 8エスクード金貨 1723年
- スペイン フェリペ2世 8レアル銀貨 1556~1598年
それぞれ詳しく見ていきましょう。
スペイン フェリペ5世 8エスクード金貨 1723年
概要 | 内容 |
発行国 | スペイン |
発行年 | 1723年 |
額面 | 8エスクード |
直径 | 38mm |
重量 | 27g |
状態 | -EF |
スペイン・ブルボン朝の最初の国王であるフェリペ5世の時代に発行された8エスクード金貨のコブコインです。
アンダルシアのセビリア造幣局で発行されており、刻印が左にずれている部分もありますが、デザイン含めて綺麗な形で残っているコブコインといえるでしょう。
また、直径38mm、重量27gの大型金貨であり、見ごたえのある一点物の金貨となっています。
スペイン フェリペ2世 8レアル銀貨 1556~1598年
概要 | 内容 |
発行国 | スペイン |
発行年 | 1556~1598年 |
額面 | 8レアル |
直径 | 39mm |
重量 | 27.47g |
フェリペ2世は全盛期のスペイン帝国に君臨した国王であり、メアリー1世の夫として一時期はイングランドの共同統治者となっていました。
16世紀で発行初期のコブコインであり、重量の統一と効率化を目的に製造されたことからコインの形は歪であり、刻印が大きくずれていることがわかります。
しかし、発行初期のコブコインではコインの形が縁からはかけ離れている場合や、刻印がずれによって半分以上消えているものもあるため、他のコインと比較すると状態の良いものとなります。
コブコインの中でも銀貨であることから入手しやすいため、コブコインを手元に置いてみたい方におすすめです。
フェリペ2世の歴史やアンティークコインについては、こちらの記事で紹介しています。
コブコインに関するよくある質問
コブコインに関するよくある質問をまとめました。
- コブコインを購入できる場所はどこですか?
- コブコインの売却・買取をするには?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コブコインを購入できる場所はどこですか?
コブコインは、アンティークコインを専門に取り扱うコイン専門店で購入できます。
オークションサイトなどで出品されることもありますが、相手の信頼性を判断してから取引するようにしましょう。
コブコインに限らずアンティークコインの取引に慣れていない場合は、信頼できるコイン専門店から購入してください。
コブコインの売却・買取をするには?
コブコインは、当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」で売却できます。
スペインを含めた世界中のアンティークコインの買取をおこなっており、コブコインの現金化が可能です。
詳しくはこちらのページからお問い合わせください。
まとめ
コブコインは、古代コインのように形が不揃いで全く同じコインが存在せず、古代コインよりも形が整っているコインの入手難易度が低いことからアンティークコイン初心者からも人気です。
大量に発行されたことから現存している通貨も多く、中にはコブコインをアクセサリーに加工して販売している場合もあります。
アンティークコインの購入方法についてはこちらの記事で紹介しています。