ウナとライオンは、ヴィクトリア女王の時代に彫刻師のウィリアム・ワイオンが生んだ、世界で最も美しい金貨といわれる傑作です。
エドマンド・スペンサーの叙事詩にある『妖精の女王』のウナとライオンの物語から、ウナをヴィクトリア女王、ライオンを国家に見立てて導く様子が描かれています。
1839年に発行されて以来、アンティークコインコレクターから熱狂的な人気を持つこちらの金貨は、2019年に復刻版が作られたことも話題になりました。
この記事では、アンティークコインの中心的な存在であるウナとライオンについて歴史と価値を中心に紹介していきます。
この記事のポイント
・ウナとライオンの金貨の種類と価値について解説
ヴィクトリア女王のウナとライオン 5ポンド金貨の概要
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1839年 |
額面 | 5ポンド |
デザイナー(表面) | ウィリアム・ワイオン(William Wyon) |
表面 | ヤングヘッドのヴィクトリア女王の肖像 |
刻印(表面) | VICTORIA D:G: BRITANNIARUM REGINA F:D: |
裏面 | ウナがライオンを導く様子 |
刻印(裏面) | DIRIGE DEUS GRESSUS MEOS. MDCCCXXXIX W. WYON R.A. |
直径 | 38mm |
重量 | 39.94g |
発行枚数 | 400枚 |
品位 | 916/1000金 |
状態 | Proof EF+/AU |
ウナとライオンは、1839年に発行されたヴィクトリア女王の5ポンド金貨であり、当時の主任彫刻師であるウィリアム・ワイオンによって作られました。
表面のヴィクトリア女王の肖像はヤングヘッドと呼ばれ、若き日のヴィクトリア女王を描いていることから肖像の中でも人気の高いデザインです。
そして、裏面に描かれているデザインがこの金貨がウナとライオンと呼ばれる理由となっている、ヴィクトリア女王がライオンを導く様子を描いたデザインになります。
エドマンド・スペンサーの叙事詩の『妖精の女王』にあるウナとライオンの物語の一場面を切り取りました。
国の象徴である女王がウナ、イギリスの力強さを表現するライオンを国家に見立て、女王が国家を導く様子を描いています。
ウナとライオンにはラテン語で「DIRIGE DEUS GRESSUS MEOS」と刻まれていますが、日本語に訳すと「神が私の歩みを導いてくださいますように」と書かれています。
アンティークコインコレクターの間では伝説的な人気を誇り、世界で最も美しい金貨と称されるほどの完成度を誇るコインです。
2019年にはコレクターが待望するウナとライオンの復刻版が発行され、発行枚数の少なさと需要の高さから発行されて間もないタイミングであるにもかかわらず大きく値上がりしたことで知られています。
ウナとライオンの値上がり事例によって、世界中でアンティークコインを資産とするアンティークコイン投資にも注目が集まるほど、コレクター以外の人々にとっても衝撃的な出来事でした。
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ウナとライオン金貨の歴史
ウナとライオン金貨に関する歴史や豆知識を紹介していきます。
- ウナとライオンの由来である『妖精の女王』
- デザインを手掛けた主任彫刻師のウィリアム・ワイオン
- 大英帝国の最盛期を作り上げたヴィクトリア女王
- 2019年に待望の復刻版が発売
ウナとライオンの由来である『妖精の女王』
まずは、ウナとライオンのデザインの由来となった『妖精の女王』について見ていきましょう。
『妖精の女王』は16世紀に登場した長編叙事詩であり、イングランドの詩人であるエドマンド・スペンサーがエリザベス1世に捧げました。
ブリテンの王と円卓の騎士が登場するアーサー王伝説を題材にしており、神聖、節制、貞節、友情、正義、礼節の6つの徳をテーマに複数の物語が描かれています。
『妖精の女王』に登場する一つのエピソードがウナとライオンです。
純真な女性であるウナは聖ジョージと共に旅をしていましたが、ジョージと離れ離れになったところに荒々しいライオンと出会います。
しかし、ライオンは純真で徳のあるウナの美しさに感銘を受けたことで、守護者として付き従うことを決めます。
ウナとライオンは旅を続けますが、ライオンは害ある者からウナを守り続けました。
「徳の高さは力の象徴である獰猛なライオンをも感化して従わせる」騎士道的精神やキリスト教による宗教的な価値観を教訓とする物語といえるでしょう。
『妖精の女王』ではウナとライオンをはじめ、人間の徳の探求をテーマに様々エピソードを描いています。
デザインを手掛けた主任彫刻師のウィリアム・ワイオン
画像引用:https://www.royalmint.com/great-engravers/three-graces/william-wyon-ras-early-career-masterpiece/
ウナとライオンのデザインを手掛けたウィリアム・ワイオンは、由緒正しき彫刻を生業とする一族に生まれ、王立造幣局(ロイヤルミント)の公式主任彫刻師を務めました。
世界初の切手である「ペニー・ブラック」のデザインを手掛けたことも有名であり、アンティークコインではトップクラスに知名度の高いデザイナーです。
ウィリアム・ワイオンの初期の作品には「スリーグレイセス」がありますが、試鋳貨幣のみが製造され、実際に流通することがなかった幻のコインです。
スリーグレイセスでは、ゼウスの娘のアグライア、タレイア、エウプロシュネの3人をイングランド、スコットランド、アイルランドの連合国にあてはめイギリスの結束を表現しました。
デザインの美しさはもちろんのこと、題材と発想力にも素晴らしいところがあり、ウナとライオンにも引き継がれています。
1839年の年は、ヴィクトリア女王が即位してから2年後の年であり、ウィリアム・ワイオンは前年度にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの学会員に任命された公式主任彫刻師として功績が認められた時期です。
先ほど解説したウナとライオンのエピソードを題材に、ウナを新しく即位したヴィクトリア女王、国家をライオンに見立て、イギリスという国が女王によって導かれることによって国が発展することを祈る意図が込められています。
実際にヴィクトリア女王の治世は長く続き、イギリスは近代化によって国力を大きくした時代でした。
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大英帝国の最盛期を作り上げたヴィクトリア女王
ヴィクトリア女王は、1837年から1901年までの約63年に渡り、大英帝国の女王として君臨しており、エリザベス2世に続いて2番目に長い在位期間です。
即位の年齢は18歳であり、1840年にアルバート公と結婚して9人の子どもを設けており、アルバート公の死により精神的な問題から公務を離れていた時期もありましたが、最期まで女王として国を導きました。
ヴィクトリア女王の在位した時代のイギリスは、近代化、領土拡大によって大きく発展しており、太陽の沈まぬ国とも評されたことがあります。
ヴィクトリア女王が描かれたコインは、コレクターの間でも高い人気を誇っており、希少性の高いコインであれば高額で取引されやすいです。
両面にヴィクトリア女王が描かれるウナとライオンは需要が高まる要素を満たしており、発行枚数が400枚と限定されていることから、コレクターの間では憧れのコインとなっています。
2019年に待望の復刻版が発売
2019年、ロイヤルミントから待望のウナとライオンの復刻金貨が発行されました。
ウナとライオンのデザインに発行当時の女王であるエリザベス2世の肖像が描かれています。
発売されたコイン瞬く前に売り切れ、発行して間もなく販売価格の4倍以上で取引されました。
短期かつ驚異的な値上がりはアンティークコインコレクターだけでなく、様々な人々から注目を集めます。
ロイヤルミントでは翌年に同じウィリアム・ワイオン作の幻のコインであるスリーグレイセスを復刻しており、ウナとライオンと同様に復刻が待ち望まれていました。
待ち望まれた伝説の金貨であるウナとライオンの復刻は、アンティークコイン市場に大きな衝撃を与えた出来事であったといえるでしょう。
ウナとライオン 金貨の種類
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」で取り扱ったことがあるウナとライオンの金貨の種類を紹介します。
- ウナとライオン 500ポンド金貨 2019年
- ウナとライオン 2000ポンド・2キロ金貨 2019年
- ヴィクトリア女王生誕200周年記念 限定200セット(ウナとライオン含む)
ウナとライオン 500ポンド金貨 2019年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 2019年 |
額面 | 500ポンド |
直径 | 50mm |
重量 | 156,29g |
発行枚数 | 65枚 |
品位 | 999/1000金 |
状態 | Proof |
グレード | PF70UCAM |
2019年にわずか65枚のみ発行されたウナとライオンの500ポンド金貨です。
最高の状態である「PF70 Ultra Cameo」のグレードが認定されており、復刻版のウナとライオンのコインの中でも非常に高い価値を持ちます。
ウナとライオン 2000ポンド・2キロ金貨 2019年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 2019年 |
額面 | 2000ポンド |
直径 | 150mm |
重量 | 2,010g |
発行枚数 | 4枚 |
品位 | 999/1000金 |
状態 | Proof FDC |
2019年に復刻されたウナとライオンの金貨は、5,000ポンド、2,000ポンド、1,000ポンド、500ポンド、200ポンド、5ポンドの6種類でそれぞれ限られた枚数が発行されています。
その中でも世界に4枚しか存在しない2キロの重さがある大型金貨が2,000ポンド金貨です。
VIPなど限られた人へしか渡らなかったとされる逸品であり、今回の復刻においても存在が疑われるほどでした。
ヴィクトリア女王生誕200周年記念 限定200セット(ウナとライオン含む)
概要 | 内容 |
発行国 | セントヘレナ |
発行年 | 2019年 |
直径 | 36mm 他 |
発行セット数 | 200セット |
グレード | Proof FDC |
セントヘレナで発行された金貨であり、こちらでもウナとライオンのデザインのコインが発行されています。
ヴィクトリア女王生誕200周年記念した限定200セットのコインであることから、プレミア価格で取引されていますが、取引価格の桁が一つ下がるほど価値に差があります。
高額で取引されるのはオリジナル以外ではロイヤルミントから発行された2019年製の金貨であり、他で発行されているウナとライオンに同様の高値が付くとは限りません。
ウナとライオンの価値
ウナとライオンは、復刻版の500ポンド金貨(5オンス金貨)はロイヤルミントからは225万円で販売されていましたが、「PF70 Ultra Cameo」の最高グレードであれば現在の相場は1,000万円を超えます。
半年で約4倍の価格上昇が発生しており、現在もウナとライオンの復刻版の金貨の価値は上昇しています。
オリジナルの1839年のウナとライオンの金貨に関しては状態の良い金貨であれば、1億円を超える価格で落札された事例もあり、まさにコレクターの憧れとも呼べるコインです。
ウナとライオンオリジナル・復刻版を問わず人気が非常に高く、非常に価値が高いにもかかわらず、当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」で入荷してもすぐに売り切れてしまいます。
どうしてもウナとライオンの金貨が欲しい方は、入荷経験のある当サイトの情報を定期的にチェックするようにしましょう。
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まとめ
ウナとライオン金貨は、ヴィクトリア女王の治世初期にウィリアム・ワイオンによって制作された、世界でも特に美しいと称される金貨です。
発行当初からアンティークコインコレクターに熱狂的に支持され、2019年には復刻版が待望の形で発行されると、短期間で大幅な値上がりを記録するなど、その希少性と歴史的・芸術的価値が改めて評価されました。
金貨に込められた女王の導きによる国家の発展を願うメッセージは、ウィリアム・ワイオンの卓越したデザインセンスと、当時のイギリスが迎えた近代化・国力発展の象徴として、コレクターのみならず高い評価を得ています。