イギリスではさまざまな銀貨が発行されており、なかには高い希少性が認められて、高値で取引されているコインもあります。
一般的に有名な銀貨は、結婚式のジンクスに用いられる6ペンス銀貨、銀の価値に連動する投資用銀貨であるブリタニア銀貨が有名です。
イギリス銀貨のなかでも人気のアンティークコインはゴシッククラウン銀貨であり、日本のコレクターの間ではゴシクラの愛称で親しまれています。
イギリスのコイン収集において対象になるのは人気の高い金貨ばかりではなく、近年では銀貨も人気を集めているのです。
この記事では、イギリスの代表的な銀貨を一覧形式で紹介し、おすすめのアンティークコインも紹介します。
この記事のポイント
・ゴシッククラウン銀貨など、イギリスのおすすめのアンティークコインをご紹介
イギリスの代表的な銀貨の種類一覧
イギリスの代表的な銀貨の種類を一覧形式で紹介します。
- 6ペンス銀貨
- フローリン銀貨(2シリング)
- クラウン銀貨(5シリング)
- ブリタニア銀貨
それぞれ詳しく見ていきましょう。
6ペンス銀貨
ペンスとは英ポンドの補助通貨単位であり、6ペンス銀貨は1551年のエドワード6世の時代に初めて発行された銀貨です。
イギリスの伝統的な童謡『マザー・グース』では、「何か古いもの、何か新しいもの、何か借りたもの、何か青いもの、そして靴の中には6ペンス銀貨を」の一節があります。
6ペンス銀貨は上記の一節により、花嫁の左の靴に忍ばせることで、結婚生活の幸福と繁栄を願うためのジンクスとなりました。
この伝統は現在でも続いており、6ペンス銀貨は結婚のラッキーアイテムとして知られています。
イギリスの銀貨のなかでもコイン収集をしていない方にも広く知られているため、人気・知名度が非常に高い銀貨といえるでしょう。
1967年、通貨が10進法に移行すると製造が中止され、現在では新たに製造されていません。
約400年に渡って発行されてきた6ペンス銀貨ですが、発行される時代によって銀の含有率が異なる特徴もあります。
年度 | 銀含有率 |
1551年~1920年 | 92.5% |
1920年~1946年 | 50% |
1947年以降 | 0%(コッパーニッケル) |
1920年までは、9割が銀で作られていた銀貨でしたが、経済情勢の影響で銀が使用されなくなりました。
また、銀の含有率が92.5%の銀合金のことをスターリングシルバーと呼び、過去の多くのイギリスの銀貨で採用されています。
6ペンス銀貨は、1947年から廃止されるまではコッパーニッケルで製造されているため、銀の性質を失っています。
すでに発行が終了されており、時代によっては厳密には銀貨とはいえない6ペンス銀貨ではありますが、現在でも非常に人気の高いイギリス銀貨です。
6ペンス銀貨について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
フローリン銀貨(2シリング)
フローリン銀貨は1849年のヴィクトリア女王の時代から1970年のエリザベス2世の時代まで発行されていた、2シリング(1/10ポンド)に相当する銀貨です。
正式に十進法通貨制度に移行したのは先の話ではありますが、フローリン銀貨の発行が開始された時代にも十進法通貨制度を模索した時期がありました。
そのため、フローリン銀貨は2シリングに相当しながら、ポンドと比較すると10分の1の価値になっています。
1849年に発行された最初のフローリン銀貨は、「DEI GRATIA(神の恩寵による)」の刻印が省略されていました。
そのため、最初のフローリン銀貨は「ゴッドレス・フローリン(神なきフローリン)」と呼ばれています。
また、この時代のゴシック様式の文字とヴィクトリア女王が描かれた銀貨であれば、ゴシッククラウン銀貨が有名ではあります。
フローリン銀貨で同様のデザインの銀貨は、ゴシッククラウンにならって、ゴシックフローリンと呼ぶこともあるようです。
発行枚数が非常に多いことからプレミア価値がつきにくいこともありますが、希少な年号かつ状態の良い銀貨は高値で取引されることも。
特に1848年に試作されたフローリン銀貨は、プレーンエッジでプルーフ仕様であるため、希少性が高く、高値で取引されています。
コアなコレクターの間では活発的に取引されているアンティークコインといえるでしょう。
クラウン銀貨(5シリング)
クラウン銀貨は、フローリン銀貨よりも額面が高い5シリングに相当する銀貨です。
銀貨の形態で初めて発行されたのは1551年のエドワード6世の時代でありますが、1526年のヘンリー8世の時代から金貨によるクラウンの通貨単位は存在しました。
また、発行当時はハンマーにより打たれたコインであり、正式な形で鋳造されるようになったのは1658年のオリバー・クロムウェルの肖像を描いた銀貨が最初とされています。
クラウン銀貨は、直径が38mmを超える大型の銀貨であり、見栄えが非常に良いことからコレクターの間で高い人気を誇っています。
代表的なクラウン銀貨が1847年に発行されたゴシック様式の美しいデザインが特徴のゴシッククラウン銀貨です。
現在ではすでに製造が終了しているクラウン銀貨ではありますが、25ポンドの額面で同じ仕様の記念銀貨が発行されています。
また、旧通貨制度において2シリング6ペンスに相当するコインはクラウン銀貨の半分の価値であることから、ハーフクラウンと呼ばれていました。
近年に発行されている記念銀貨を含めて多くのコレクターを中心に収集されている人気の銀貨です。
ブリタニア銀貨
ブリタニア銀貨は、イギリスで発行される純銀製の投資用コインであり、1987年から発行が開始されました。
イギリスを象徴する女神であるブリタニアが描かれていることが特徴であり、古代ローマから続く伝統的なデザインです。
古代コリント式のヘルメットをかぶり、海洋を守護するための三叉の槍トライデントを持ち、盾にはイギリスの国旗であるユニオンジャックが描かれています。
イギリスが価値を保証する投資用銀貨であることから、銀への投資をおこなう投資家からも人気の高い銀貨です。
また、近年のブリタニア銀貨には、偽造防止のための高度なセキュリティ機能が導入されています。
例えば、見る角度によってトライデント(三叉槍)と南京錠の絵柄が切り替わる「潜像」、微細な文字を刻む「マイクロテキスト」などがセキュリティ機能に採用されています。
コレクター・投資家、さまざまな層からの需要が厚く、日本でも販売されていることから入手しやすいイギリスの銀貨です。
イギリス銀貨のおすすめアンティークコイン
イギリス銀貨のおすすめアンティークコインを紹介します。
- ヴィクトリア女王 ゴシッククラウン銀貨 1847年
- ヴィクトリア女王 ジュビリーヘッド クラウン銀貨 1889年
- ヴィクトリア女王 クラウン試鋳銀貨 1887年
- ジョージ5世 在位25周年記念クラウン銀貨 1935年
- エリザベス2世 シャーロット王女洗礼記念 10ポンド銀貨 2015年
- エリザベス2世 ウナとライオン 5ポンド銀貨 2019年
- エリザベス2世 ジェームズ・ボンド #1 5ポンド銀貨 2020年
- チャールズ3世 ペティションクラウン 5ポンド銀貨 2023年
ヴィクトリア女王 ゴシッククラウン銀貨 1847年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1847年 |
額面 | 5シリング |
直径 | 38mm |
重量 | 28g |
発行枚数 | 8,000枚 |
品位 | 925/1000銀 |
ゴシッククラウン銀貨は、イギリスのアンティークコインを代表する銀貨であり、日本ではゴシクラの愛称で親しまれています。
ヴィクトリア女王は、1837年から1901年までイギリスを統治し、その在位期間は「ヴィクトリア時代」と呼ばれました。
イギリスが「世界の工場」として繁栄し、パクス=ブリタニカと称される国際的な平和と安定を享受した時代を築きます。
ゴシック調の文字の刻印と若き日のヴィクトリア女王の肖像が刻まれる人気の銀貨です。
ゴシッククラウン銀貨の価値が注目される理由は、希少性の高さにあり、1847年製の発行枚数は8,000枚程度とされています。
美しいデザインから人気を獲得しているゴシッククラウン銀貨は、希少性の高さにより、コイン市場は高値で取引されている銀貨です。
スターリングシルバーによる高い銀の含有率、38mmを超える見栄えのいい大型コインであることが魅力です。
イギリスのアンティークコインのなかでも金貨ではなく、銀貨で人気のコインを挙げるなら真っ先に挙げられるコインがゴシッククラウン銀貨です。
ゴシッククラウン銀貨とは? 世界のコレクターが愛するコインの魅力をご紹介
ヴィクトリア女王 ジュビリーヘッド クラウン銀貨 1889年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1889年 |
額面 | 5シリング |
直径 | 38mm |
重量 | 28g |
発行枚数 | 1,807,000枚 |
品位 | 925/1000銀 |
状態 | AU/UNC |
グレード | MS61 |
ゴシッククラウンが発行された後のデザインのクラウン銀貨であり、1887年にヴィクトリア女王の在位50周年を記念してデザインされたコインです。
在位50周年はゴールデン・ジュビリーを祝う節目であるため、ゴールデン・ジュビリーを記念にデザインされた頭像であることからジュビリーヘッドと呼ばれました。
ジュビリーヘッドは在位50周年記念のデザインでしたが、人気の高い肖像であったことから1888年~1892年まで継続して作られています。
裏面には、ベネデット・ピストルッチ作の聖ジョージの竜退治のデザインが描かれています。
1887年に1,084枚限定で発行されたプルーフ銀貨は、希少性が高く、コレクターから評価の高いコインです。
以降に発行された流通用の貨幣は、状態にもよりますが、数万円程度で購入できるため、初心者も購入しやすいアンティークコインといえるでしょう。
同じデザインで一定の希少性が認められているジュビリーヘッド金貨は以下の記事で紹介しています。
即位50周年の輝き! ヴィクトリア女王のジュビリーヘッド金貨の歴史と魅力!
ヴィクトリア女王 クラウン試鋳銀貨 1887年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1887年 |
額面 | 5シリング |
直径 | 38mm |
重量 | 28g |
発行枚数 | 32枚 |
1887年に発行されたヴィクトリア女王のクラウン試鋳銀貨であり、発行枚数はわずか32枚の希少なコインです。
この銀貨はヴィクトリア女王の最晩年のデザインであるオールドヘッドのクラウン銀貨の試作品です。
ヴィクトリア女王の銀貨のなかでも試鋳銀貨は希少性が非常に高いことから、大きな価値を有します。
ヴィクトリア女王のおすすめ金貨・銀貨8選 ウナとライオンを含むコインを紹介
ジョージ5世 在位25周年記念クラウン銀貨 1935年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 1935年 |
額面 | 5シリング |
直径 | 38mm |
重量 | 28g |
発行枚数 | 2,500枚 |
ジョージ5世は、1910年から1936年までイギリス国王を務め、第一次世界大戦など多難な時期に立憲君主として国民の敬愛を集めました。
クラウン銀貨をはじめ、イギリスのアンティークコインのデザインとして採用されている聖ジョージの竜退治。
ベネデット・ピストルッチがデザインする有名なデザインですが、ジョージ5世の在位25周年を記念して発行された銀貨では、パーシー・メットカルフェが当時のモダンスタイルにアレンジしました。
裏面に描かれた騎士の顔はジョージ5世ではなく、デザイナーのパーシー・メットカルフェがモデルになっているようです。
発行枚数がわずか2,500枚と限られていることから、20世紀に発行されたイギリス銀貨のなかでも高い価値を有しています。
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エリザベス2世 シャーロット王女洗礼記念 10ポンド銀貨 2015年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 2015年 |
額面 | 10ポンド |
直径 | 65mm |
重量 | 156g |
発行枚数 | 500枚 |
品位 | 999/1000銀 |
2015年にウィリアム王子とキャサリン妃の間に生まれた第二子のシャーロット王女、ロイヤルミントはこの記念すべき日を祝して公式記念コインを発行しました。
コインのデザインである百合をあしらった伝統的なバロック様式の装飾モチーフは、王室の子供の洗礼式で使われる、リリーフォント(百合の洗礼盤)からインスピレーションを得ています。
「To celebrate the Christening of PRINCESS CHARLOTTE ELIZABETH DIANA of CAMBRIDGE 2015(2015年、王女シャーロット・エリザベス・ダイアナ・オブ・ケンブリッジの洗礼を祝うために)」と刻印されています。
イギリスの記念コインは金貨だけでなく、銀貨も発行されており、同様のデザインでもリーズナブルな価格で購入することが可能です。
【イギリス王室】シャーロット王女のおすすめ記念コインをご紹介
エリザベス2世 ウナとライオン 5ポンド銀貨 2019年
概要 | 内容 |
発行国 | イギリス |
発行年 | 2019年 |
額面 | 5ポンド |
直径 | 40mm |
重量 | 62g |
発行枚数 | 3,002枚 |
品位 | 999/1000銀 |
世界で最も美しい金貨といわれるウナとライオン、2019年にリストライクされた際には様々な額面で発行されていますが、金貨だけでなく銀貨も製造されました。
オリジナルのウナとライオンが金貨であることから、ロイヤルミントからイギリスで公式に発行された最初のウナとライオンの銀貨です。
500ポンド金貨のウナとライオンは発行から半年も経たずに数倍以上の価格上昇をした金貨として知られています。
しかし、5ポンド銀貨のウナとライオンは、元の販売価格が金貨と比較して安いことから、発売から1年で数十倍以上の価格上昇が起きました。
銀貨でここまでの価格上昇が短期的に起きた例は珍しいため、金貨と並んで注目したアンティークコインといえるでしょう。
世界で最も美しい金貨「ウナとライオン」の歴史と価値についてご紹介!
エリザベス2世 ジェームズ・ボンド #1 5ポンド銀貨 2020年
概要 | 内容 |
発行 | イギリス |
発行年 | 2020年 |
額面 | 2ポンド |
直径 | 38.61mm |
発行枚数 | 8,517枚 |
品位 | 999/1000銀 |
状態 | Proof FDC |
007コインシリーズとして知られるジェームズ・ボンド 公式記念コインは、イギリスの国民的人気作品をテーマにしています。
各時代の最新の秘密兵器を駆使して、カーチェイスや銃撃戦など迫力満点なアクションシーンが見られる人気映画です。
デザインもジェームズ・ボンドに関連するものであり、こちらの銀貨では、映画007/ゴールドフィンガーで使用された名車アストンマーティン・DB5を描いています。
全部で合わせて3つのデザインが発行されており、潜水艦ウィット・ネリー、タキシード姿のジェームズ・ボンドが描かれた銀貨も存在します。
ジェームズ・ボンドが好きな方であれば収集したいコレクション用の銀貨といえるでしょう。
ジェームズ・ボンドの銀貨の他のデザインに関してはこちらの記事をチェックしてください。
チャールズ3世 ペティションクラウン 5ポンド銀貨 2023年
概要 | 内容 |
発行 | イギリス |
発行年 | 2023年 |
額面 | 5ポンド |
直径 | 40.6mm |
重量 | 62.86g |
発行枚数 | 3,260枚 |
品位 | 999/1000銀 |
チャールズ3世は、エリザベス2世とエディンバラ公フィリップの長男で、エリザベス2世が崩御したのちに2022年にイギリス国王に即位しました。
17世紀のイギリスを代表するデザインである「ペティションクラウン」を復刻しています。
イングランド、スコットランド、フランス、アイルランドの4国の国章を刻む十字の盾形の紋章が描かれています。
ペティションクラウンが発行されてから350周年の節目となる2023年に発行され、肖像もエリザベス2世からチャールズ3世の肖像が採用されるようになりました。
チャールズ3世のおすすめコインは? 戴冠式記念金貨を含めた最新の種類をご紹介!
まとめ
イギリスでは、歴史的背景と美しいデザインを兼ね備えた様々な銀貨が発行され、中には希少性の高さから高額で取引されるものも存在します。
そのため、金貨だけでなく銀貨も多く収集対象となっており、近年は投資需要も高まっています。
イギリスのアンティークコインに限らず、銀貨よりも銀貨に目を向けられることが多いですが、銀貨にも注目してみましょう。
イギリスの銀貨を含むアンティークコインの購入方法はこちらの記事で紹介しています。