オーストリアはウィーン金貨をはじめとする投資用地金型金貨が有名ですが、バラエティに富んださまざまなコインが発行されているのも特徴です。
650年にも及ぶ統治が続いたハプスブルク家の君主の肖像を描いたコインや、スイスで有名な射撃祭も開催されており、記念コインが発行されています。
この記事ではオーストリアのコインの歴史と価値について解説し、金貨・銀貨・銅貨を含めたバラエティ豊かな記念コインを7つ紹介します。
この記事のポイント
・オーストリアのアンティークコインを金貨・銀貨・記念コインに分けて紹介
オーストリア コインの歴史
オーストリアはヨーロッパの中心に位置する国であり、先史時代から人の行き来が多くありました。
首都ウィーンにあるオーストリア造幣局は、800年以上コインを製造してきました。
オーストリアのコインの歴史と価値について下記の流れで振り返ります。
- オーストリア コインのはじまり
- オーストリア コインの種類
- オーストリアのウィーン金貨について
オーストリア コインのはじまり
オーストリアでコインの製造が始まったのは、ハーベンベルク家の公爵であったレオポルト5世が投獄され、1194年にイギリスのリチャード1世に保釈金を支払ったのが始まりといわれています。
リチャード1世により侮辱罪で投獄されていたレオポルト5世は、銀からコインを打って保釈金を支払うことを決定し、ウィーン造幣局で銀貨の製造が始まりました。
献上した銀貨は15トンにも及んだといわれており、このことはしばらくの間、ウィーン造幣局では隠匿されていたそうです。
その後、ウィーン造幣局は移転を繰り返し、現在ではウィーン中心部のヒューマルクトにあります。
オーストリアには他の地域にも造幣局が設立された過去がありますが、1919年のオーストリア共和国の設立時にはウィーン以外に造幣局はなくなっています。
オーストリア コインの種類
オーストリアでは、2002年からユーロ/セント(ドイツ語読み:オイロ/ツェント)が導入されています。
それまで、オーストリアではシリングと補助通貨のグロッシェンが流通していました。
- 1グロッシェン
- 2グロッシェン
- 5グロッシェン
- 10グロッシェン
- 50グロッシェン
- 1シリング
- 2シリング
- 5シリング
シリングの前はクローネ、クローネの前はヘラー、オーストリアのコインの種類は時代によって変化します。
ハプスブルク家の統治下では、マキシミリアン一世の時代でイタリアのヴェネツィアで誕生したダカットが発行されています。
オーストリアはその歴史的背景からコインの種類が非常に豊富です。
オーストリアのウィーン金貨について
ウィーン金貨とは、オーストリア造幣局が発行する地金型金貨であり、1989年から毎年発行しています。
地金型金貨とは投資用に発行されている金貨であり、発行から時間が経ち希少性が高くコレクターからの需要が高い金貨のことを収集型金貨といいます。
収集型金貨は実際の金の価値の数倍から数十倍の価値が付くこともありますが、地金型金貨はプレミア価値の上昇は期待しにくい反面、金価格の上昇による価値の向上が期待できるのが特徴です。
地金型のウィーン金貨は、99.99パーセントの純金製で、オーストリア政府が品質を保証しています。
表面にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会場にあるパイプオルガン、裏面にはホルン、ハープ、ビオラ、バイオリン、ファゴットなどの楽器が並ぶデザインです。
ウィーン金貨は日本では、1オンス、1/2オンス、1/4オンス、1/10オンス、1/25オンスの4種類が一般的に販売されています。
それぞれのサイズ、重量、販売価格、について下記の表にまとめました。
直径 | 重量 | 価格※ | |
1オンス | 37mm | 31.1g | 約42万円 |
1/2オンス | 28mm | 15.5g | 約21万円 |
1/4オンス | 22mm | 7.7g | 約11万円 |
1/10オンス | 16mm | 3.1g | 約4万円 |
※2024年9月13日時点の購入価格
オーストリアのコインを利用したアンティークコイン投資を検討するなら、地金型金貨の購入も選択肢になります。
ウィーン金貨 ハーモニーとは? 価格を決めるポイントを解説!
オーストリアの代表的な3種類の金貨
それでは、オーストリアの代表的な3種類の金貨を見ていきましょう。
- フランツ・ヨーゼフ1世 4ダカット金貨 1915年
- フランツ・ヨーゼフ1世 100コロナ金貨 1915年(リストライク)
- マリアテレジア 10ダカット金貨 1753年
フランツ・ヨーゼフ1世 4ダカット金貨 1915年
発行国 | オーストリア |
発行年 | 1915年(20世紀にリストライク) |
額面 | 4ダカット |
グレード | MS65 |
直径 | 39mm |
品位 | 986/1000金 |
発行枚数 | 496,501枚 |
状態 | UNC |
こちらもフランツ・ヨーゼフ1世のリストライク金貨であり、1920年から1936年までに約50万枚製造されています。
フランツ・ヨーゼフ1世は650年続いたハプスブルク家の最後の皇帝であり、祖父は神聖ローマ帝国皇帝フランツ2世、父親はカール大公です。
100コロナ金貨と裏面はほとんど共通していますが、表面の右向き肖像のデザインが大きく異なっています。
986ゴールド(純度98.6%)で造られており純金に近いことから、金価格と連動する地金型金貨としての魅力もあります。
アンティークコインの歴史的な価値が付く性質と地金型金貨の性質も合わせ持つ特別な金貨です。
フランツ・ヨーゼフ1世 100コロナ金貨 1915年(リストライク)
発行国 | オーストリア |
発行年 | 1915年(20世紀にリストライク) |
額面 | 100コロナ |
グレード | UNC |
直径 | 37mm |
重量 | 33.8g |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | 未使用 |
フランツ・ヨーゼフ1世は、わずか18歳でオーストリア帝国皇帝に即位してから68年在位し、国民からも人気が高く敬愛された君主でもあります。
こちらは、1909年から1914年まで流通貨として発行されたコインのリストライクコイン(再鋳貨)です。
年号は1915年銘ですが、当時のオーストリアの時代背景やコインの情報から考察すると1960年代から1970年代までに作られたと考えられます。
実際に1970年代にはこのリストライクコインは、地金型金貨として絶大な人気を獲得しました。
表面にはフランツ・ヨーゼフ1世の右向き肖像画描かれ、裏面にはオーストリアの紋章であり神聖ローマ帝国を継承する双頭の鷲が描かれているとても美しいコインです。
マリアテレジア 10ダカット金貨 1753年
発行国 | オーストリア |
発行年 | 1753年 |
額面 | 10ダカット |
グレード | EF/UNC |
直径 | 48mm |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | 極美品/未使用 |
マリア・テレジアはハプスブルク家カール6世の娘、神聖ローマ帝国皇帝にしてロートリンゲン家のフランツ・シュテファン(フランツ1世)の皇后です。
即位後、間もなくオーストリア継承戦争が起こり、その後も領土であったシレジアを奪回すべくプロイセンとの戦いによる7年戦争と戦続きでした。
その最中にこのコインは製造され、状態も素晴らしく、裏面においては刻印が鮮明で未使用の状態を保った最高のコンディションになります。
カタログにも収録されておらず、世界中のオークションにも出回ることが無かったため、オーストリアの金貨の中でも大変希少価値が高いです。
表面にはマリアテレジア右向き肖像が描かれ、裏面には神聖ローマ帝国の象徴である双頭の鷲が描かれ、10ダカットを意味するXも刻印されています。
オーストリアの代表的な銀貨2選
次に、オーストリアの銀貨についても見ていきます。
- オーストリア射撃祭 フランツ・ヨーゼフ1世 2フローリン銀貨 1873年
- ザルツブルク 1100年記念 ターラー銀貨 1682年
オーストリア射撃祭 フランツ・ヨーゼフ1世 2フローリン銀貨 1873年
発行国 | オーストリア |
発行年 | 1873年 |
額面 | 2フローリン |
グレード | - |
直径 | 36mm |
重量 | 22g |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
射撃祭は実銃を使った射撃能力を競う競技形式のお祭りであり、開催を記念して19世紀からコインが作られたことからアンティークコインの収集テーマとして有名です。
射撃祭の記念コインで知名度が高く希少価値が高まりやすいのは、スイスで発行されたコインですが、ドイツやオーストリアでも射撃祭は開催されており、オーストリアの記念銀貨がこちらになります。
フランツヨーゼフ1世の肖像と囲むように盾の紋章が描かれています。
射撃祭のコインで有名なスイスのアンティークコインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
ザルツブルク 1100年記念 ターラー銀貨 1682年
発行国 | オーストリア |
発行年 | 1682年 |
額面 | ターラー |
グレード | - |
直径 | 不明 |
重量 | 不明 |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
オーストリアの代表的な都市ザルツブルクは、大司教が統治していた歴史を持つ地域です。
コインには2人の大司教が描かれており、間にはザルツブルクの紋章が刻印されています。
また、大司教のうち1人が持つ箱には塩が入っています。
ザルツブルクの特産品が岩塩であることや、「ザルツ」がドイツ語で塩という意味であることから、塩に縁のある地域であることから、塩はザルツブルクにとって力の源泉であると考えられていたようです。
オーストリアのバラエティ豊かな記念コイン
それでは、アンティークコインジャーナル編集部が選ぶオーストリアのバラエティ豊かな記念コインを紹介します。
- モーツァルト 生誕100周年記念 銀メダル 1856年
- スーパーサウルスシリーズ デイノニクス 3ユーロ白銅貨 2021年
モーツァルト 生誕100周年記念 銀メダル 1856年
発行国 | オーストリア |
発行年 | 1856年 |
額面 | - |
グレード | - |
直径 | 47.76mm |
重量 | 43.83g |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 不明 |
状態 | - |
オーストリアの偉人を1人挙げるとすれば、多くの人が想像するのは世界史において最高レベルの知名度を持つ音楽家モーツァルトではないでしょうか?
ザルツブルクで誕生し、首都ウィーンで活動したモーツァルトはさまざまな名曲を生み出しました。
伝説的なアーティストであるモーツァルトの生誕100周年を記念して作られたこちらの銀メダルは、表面にはモーツァルトの右向き肖像、裏面にはハープを弾く天使が描かれています。
裏面には音符も描かれており、音符の周りにレインボートーンが入った鑑賞して楽しめる非常に美しいコインです。
スーパーサウルスシリーズ デイノニクス 3ユーロ白銅貨 2021年
発行国 | オーストリア |
発行年 | 2021年 |
額面 | 3ユーロ |
グレード | - |
直径 | 34mm |
重量 | 16g |
品位 | 不明 |
発行枚数 | 65,000枚 |
状態 | - |
オーストリアでは、先史時代の巨大恐竜を全12枚の銅貨で再現するスーパーサウルスシリーズが発行されており、その第7弾となるのがデイノニクス(Deinonychus)です。
デイノニクスは恐ろしい鉤爪という名前の由来の通り、その鋭利な四肢の爪で獲物を引き裂き、狩りをおこなうことで知られた恐竜でした。
こちらのコインの材質は白銅で、描かれたデイノニクスが塗料により暗闇で光るように加工されています。
オーストリアのアンティークコインでよくある質問
オーストリアのアンティークコインでよくある質問をまとめました。
- オーストリアの金貨・銀貨を購入する方法は?
- オーストリアの金貨・銀貨の買取を依頼するなら?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
オーストリアの金貨・銀貨を購入する方法は?
オーストリアの金貨・銀貨は、ウィーン金貨であれば貴金属業者、希少価値の高いコインであればオークションサイトやコイン業者から購入できます。
購入方法に特に気をつける必要があるのは、希少価値が高く収集の対象になるアンティークコインです。
金価格で値段が決まる地金型金貨とは異なり、コイン初心者には相場が分かりにくいため、特に個人が出品できるオークションサイトなどで相場より高い価格でコインを売りつけられるトラブルが後を絶ちません。
希少価値が高いコインを取引するなら信頼できる業者を通して購入することをおすすめします。
当サイト「コインライブラリー・プリンシパル」では、カタログや外国紙幣評価書に基づいた適切な値段設定でコインを提供します。
オーストリアの金貨・銀貨の買取を依頼するなら?
オーストリアの金貨・銀貨の買取を依頼する場合も、当サイトを利用して売却することをおすすめします。
当サイトで購入したコインは、厳重な保管状況で保全することも可能であり、保管したコインは売却したいタイミングで迅速に現金化に対応します。
当サイト以外で購入したオーストリアのコインの買取もおこなっており、鑑定から売却まで丁寧にサポートいたします。
また、コインを当サイトに出品することもできるので、買取や出品についてはこちらのページをチェックしてください。
まとめ
オーストリアの歴史とコインについて紹介しましたが、気になったコインは見つかったでしょうか?
コインのバリエーションが多いということは、コレクションや投資といったアンティークコイン収集におけるそれぞれの目的に適したコインが見つかりやすいということです。
オーストリアのコインの中から自分に合ったお気に入りの一枚を探してみましょう。