銀貨は銀(silver)を素材にした貨幣のことであり、金貨よりも一般的に流通してきた歴史があります。
金よりも希少価値が劣るため、その価格差は歴然ではありますが、金よりも少額で投資できるために銀に出資をする投資家も一定数存在します。
投資用銀貨への投資も金貨に比べると活発ではありませんが、アンティークコインの世界では収集価値のある希少性のある銀貨は金貨と並ぶほど主流な投資先です。
この記事では、銀貨に投資する方法や、その価値の推移、投資できる銀貨を一覧形式で紹介します。
銀貨の種類と価値について
銀貨には地金型銀貨(投資用銀貨)と収集型銀貨の2種類があります。
また、銀貨のなかには洋銀(洋白)でできている銀貨もあり、通常の銀と洋銀の銀貨では価値が大きく変わります。
銀貨の種類と価値について一つずつ確認していきましょう。
地金型銀貨(投資用銀貨)
地金型銀貨は投資用銀貨といわれており、政府によって価値が保証された銀貨です。
そのため、銀価格に連動し、銀価格が上昇するほど銀貨の価値も上がるという性質があります。
銀は工業において大きな需要があることから無価値になることが考えにくく、また工業とのつながりが深いことから工業需要にも価格が連動する性質を持つのも特徴です。
100年以内に発行された銀貨であることから希少性のあるものはほとんどなく、銀価格に基づいて取引されます。
収集型銀貨
収集型銀貨は、100年以上前に発行された希少性の高い銀貨や、発行枚数に少ない収集価値のある銀貨でプレミア価値が付きやすい銀貨を指します。
プレミア価値で取引されることから、通常は価値が逆転することが考えられない金貨よりも高い価格で売買されることもあります。
収集型銀貨は種類によっては、プレミア価値による上昇幅が非常に大きくなることあるので、アンティークコイン投資の投資先としてもメジャーです。
洋銀に価値はあるのか?
銀貨のなかには洋銀でできた銀貨もありますが、このような銀貨に価値はあるのでしょうか?
洋銀は銅と亜鉛とニッケルから構成される合金であり、銀に似た色をしていることから代用銀として使用されますが、銀(Ag)の成分は一切含まれていません。
金属としては鉄くず扱いになるため、1キロあっても100円に満たない価値になります。
よって、洋銀でできた銀貨に値がつくことは基本的になく、投資用銀貨・収集型銀貨共において洋銀でできた銀貨を銀貨と表記することもありません。
銀貨に投資する方法
ここまで紹介した銀貨に対して具体的に投資する方法を解説します。
- 銀価格に連動する地金型銀貨の購入
- 希少性のある収集型金貨の保有
それぞれ詳しく見ていきましょう。
銀価格に連動する地金型銀貨の購入
投資用銀貨である地金型銀貨は、貴金属店などで購入できます。
地金型銀貨は投資用の貨幣として金貨よりもメジャーではないため、貴金属店によっては取り扱っていない場合もあるので、取り扱いがあるかどうか確認するようにしましょう。
地金型銀貨を購入する場合は、銀価格にプレミア価値を上乗せした価格で購入し、銀価格が大きく上昇した局面で買取を依頼するのが一般的です。
希少性のある収集型銀貨の保有
収集型銀貨を保有するなら、希少性の高いアンティークコインを取り扱うコイン業者から購入するのがおすすめです。
高い希少価値を持つ銀貨は、年々その価値を増し、高い資産価値を持つ資産になります。
希少性の高い銀貨を取り扱うコイン業者には「コインライブラリー・プリンシパル」があり、世界各国のアンティークコインを購入できます。
銀貨の価値の推移について
銀貨の価値の推移を過去・現在・未来について考えていきます。
- 中世の銀貨の価値
- 現代の銀貨の価値の推移とグラフ
- 今後の銀貨の価値は上がる?
それぞれ詳しく解説します。
中世の銀貨の価値
中世における銀貨は、現在よりも1枚当たりの価値が高かったことが予想されますが、一般市民の間で小型銀貨も大型銀貨も流通していました。
銀貨における銀の含有率は、時代や国の政策によって左右され、銀の含有量を減らすと銀貨の価値が大きく下がったこともありました。
具体的な例を挙げると、ヘンリー8世の大悪改鋳では銀の純度を減らして銀貨を大量生産する政策を取ったことから、エリザベス1世の時代まで影響を及ぼした貨幣の価値を下げる要因となっています。
また、ヘンリ―8世の銀貨は、尖っていて真っ先に削れやすいヘンリー8世の肖像の鼻が銅色になってしまうことからOld Coppernose(古びた銅の鼻)と呼ばれることとなりました。
このような悪鋳は当時としては価値が低く、貨幣の信用に関わることから後の君主により回収されるケースが大半です。
しかし、ヘンリー8世のケースでは悪鋳として回収され溶解された銀貨は、現代に残りにくく希少性が高いことから収集型銀貨として価値を持つようになりました。
当時の価値がそのまま現代につながるわけではないというところが、収集型銀貨の奥深さといえるでしょう。
現代の銀貨の価値の推移とグラフ
現代の銀貨の価値は毎日算出される銀価格から計ることができます。
画像引用:三菱マテリアル
こちらの表は1984年~2024年までの国内と海外の銀価格の推移を表したものです。
2011年に銀価格は高騰していましたが、シルバーショックにより暴落したことから、2010年~2014年にかけて乱高下するグラフとなっています。
2014年以降は価格上昇に波はあるものの、長期的には少しずつ右肩上がりの上昇を続けていることがわかります。
このような価格変動を警戒して、銀は金よりも少額で投資できるもののリスクの高い資産といわれることがあるので、銀に投資するのは必ずしも安全ではないことが分かるでしょう。
最高値を更新してから10年以上更新できていないことから、購入のタイミングによっては、10年以上保有していたとしてもマイナスになることも考えられるため、タイミングを分散して購入することが求められる資産です。
今後の銀貨の価値は上がる?
長期的な価格推移を考えると、乱高下する場面はあるものの少しずつ価格は上昇する傾向にあることが分かります。
また、銀貨は実物資産であるため、インフレに強い資産です。
今後インフレが進んでいくことを予測するなら、銀貨の価値の上昇も期待できます。
工業需要が大きいことから、銀の価格を予測するなら工業の動きについても調べることが重要です。
インフレは長期的に進んでいくことが社会における常識であるため、その他の要因で銀の価値が大きく下がることがなければ、銀貨の価値は長期的に上昇することが予測されます。
また、収集型銀貨の場合は、年々希少性を増していくため、銀価格の変動に影響されず長期的な価値の上昇が期待できることでしょう。
銀投資の将来性についてはこちらの記事をチェックしてください。
銀投資の将来性は? 価格が上昇する理由やおすすめの方法を解説
投資価値のある銀貨一覧表
投資価値のある世界の銀貨は下記の通りです。
国 | 銀貨 |
アメリカ | イーグル銀貨 |
カナダ | メイプルリーフ銀貨 |
オーストリア | ウィーン銀貨 |
イギリス | クラウン銀貨 |
ブリタニア銀貨 | |
フランス | ナポレオン銀貨 |
スペイン | エスクード銀貨 |
レアル銀貨 | |
スイス | 射撃祭銀貨 |
ポルトガル | レイス銀貨 |
中国 | パンダ銀貨 |
それぞれの国について代表的な銀貨を詳しく紹介していきます。
銀貨の購入先についてはこちらの記事をチェックしてください。
銀貨のおすすめの購入先は? 種類に合わせてどこで買うべきか解説
イーグル銀貨【アメリカ】
イーグル銀貨は、1986年にアメリカで初めて鋳造された地金型銀貨です。
盾を持ったアメリカの国章であるイーグル(白頭鷲)と13個の星が特徴になります。
総量は重さにして2023年時点で92.38トンであり、一部の希少の高い未流通コインを除いてプレミア価値はほとんどありません。
アメリカではイーグル金貨・バッファロー金貨・インディアン金貨などの地金型金貨も毎年発行しています。
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メイプルリーフ銀貨【カナダ】
メイプルリーフ銀貨は、カナダの象徴的なカエデの葉が描かれた銀貨です。
裏側にはエリザベス2世の肖像が描かれています。
投資用銀貨として人気が高いことから年々生産量を増やしている銀貨になります。
エリザベス2世の肖像が描かれたコインを他にも知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
エリザベス2世の記念コインを5つ紹介! 誕生から60年以上に渡る治世について
ウィーン銀貨【オーストリア】
ウィーン銀貨は、オーストリアで発行される地金型銀貨であり、そのデザインも音楽の都と呼ばれるウィーンらしいデザインとなっています。
バイオリンをはじめとする複数の楽器が描かれ、パイプオルガンはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会場にあるものです。
法定通貨としても使用できるこちらのウィーン銀貨は、イーグル銀貨、メイプルリーフ銀貨に並ぶ地金型銀貨として知名度と人気を持っています。
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イギリス王室シリーズの銀貨【イギリス】
ジョージ5世のハーフクラウン銀貨
イギリス王室の王族が描かれた銀貨は、収集型銀貨として価値を有しています。
クラウン銀貨は大型で見栄えがよいことから、コレクターの間でも収集対象になっているコインです。
また、イギリスの地銀型銀貨にはブリタニア銀貨があり、投資用銀貨としてはトップクラスに人気が高く価値を持っています。
女神ブリタニアとエリザベス2世の肖像が描かれた完成度の高い銀貨です。
イギリス王室シリーズのコインは金貨・銀貨を問わずアンティークコイン収集において人気の高いテーマとなっているので、購入する銀貨を選ぶならおすすめになります。
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ナポレオン銀貨【フランス】
ナポレオン1世の5フラン銀貨
ナポレオンがフランス皇帝となった時代に発行されたナポレオン銀貨も、その知名度と人気の高さから銀貨における代表的な収集対象となっています。
ナポレオン銀貨はフランスを中心に発行されていますが、ナポレオンの一族も周辺諸国を統治していた期間があり、ナポレオンの兄スペイン王ジョゼフをはじめとする銀貨もナポレオン銀貨に含まれます。
また、ナポレオン2世や、ナポレオン4世など実質的に皇帝として国を統治していた期間がないナポレオン一族に関しても、銀貨であれば枚数は少ないですが発行されているため、高い希少性を持つコインです。
フランスではフランス皇帝ルイの銀貨や、共和政時代の銀貨もあり、バリエーション豊かで希少性のあるコインが多く存在します。
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エスクード・レアル銀貨【スペイン】
フェリペ5世のレアル銀貨
スペインを中心に欧州で発行されていたレアル銀貨と、スペインの国章である盾を意味するエスクード銀貨です。
スペインの銀貨は君主の肖像が描かれていないものと、描かれているものの2種類がありますが、上記の銀貨のように君主が描かれていない銀貨は需要が少ないため、希少性が高くなければ安価で購入しやすいです。
一方で、君主の肖像が描かれているコインは希少性が高いコインが多く、長期的な価値の上昇が期待しやすいです。
射撃祭銀貨【スイス】
スイス 50フラン銀貨 ルツェルン 2021年 現代射撃祭記念
スイスの伝統行事である射撃祭では、1842年から開催を記念した銀貨が製造されてきました。
1939年から政治的な理由で製造されなくなり、1984年に再開され現在も銀貨が発行され続けています。
このような歴史的経緯から、1939年以前に発行された銀貨と1984年以降に発行された銀貨を区別するために、新しい射撃祭の銀貨は現代射撃祭銀貨と呼ばれています。
射撃祭銀貨は発行枚数が少なく希少性が高いため高い収集価値を持ち、現代射撃祭銀貨は近年に発行されていることもあり希少性は劣りますが、デザインの美しいコインが多いことからコレクターからの評価は高いです。
レイス銀貨【ポルトガル】
カルロス1世 1000レイス銀貨 インド航路発見400年記念
ポルトガルではスペインと隣接していることもあり、コインの特徴が似通っているレイス銀貨が収集の対象となっています。
レイスは、ポルトガル・レアルの複数形であり、1レアル以上の額面を持つ銀貨は、レイスと表記されることからレイス銀貨と呼ばれます。
ポルトガルも君主の顔が描かれる銀貨の数は少なく、君主の肖像が描かれたコインでは、カルロス1世のインド航路発見400年記念銀貨などが有名です。
100年以上前に発行された銀貨でも比較的安価で購入できるコインも多いので、少額から希少性のある銀貨を購入したい方におすすめになります。
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パンダ銀貨【中国】
パンダ銀貨は、中華人民共和国が発行する地金型銀貨であり、世界的に人気の動物のパンダが描かれていることから人気の高い銀貨です。
発行年によって図柄が変わるため、レアな図柄は高値で取引されることもあり、収集型銀貨の性質も持ちます。
あまりの人気の高さから偽物が報告されることも多い銀貨であり、購入には注意が必要です。
銀貨への投資に関するよくある質問
最後に、銀貨への投資に関するよくある質問をまとめました。
- 銀貨の投資目的を教えてください
- 銀投資に将来性はありますか?
- 投資するなら金貨と銀貨のどちらがいい?
- 銀貨を購入するおすすめの販売元は?
それぞれ詳しく解説します。
銀貨の投資目的を教えてください
銀貨に投資する目的は、地金型銀貨(投資用銀貨)であれば将来的な銀価格の上昇、アンティークコインなどの収集型銀貨であればプレミア価値の向上になります。
金などの希少な金属と比較すると価値が低いことから、少額から投資できるメリットがあり、資金面のハードルが低い投資対象といえるでしょう。
金貨に付随する形の値動きをすることから、株式・投資信託などの金融資産とは反対の値動きをすることも多く、リスク分散に優れます。
銀投資に将来性はありますか?
銀投資の将来性を見きわめるには、工業需要の増減について考える必要があります。
また、銀自体の希少性に関して、近年ではメキシコなど世界でも有数の銀の生産国において生産量が減少している状態です
さらに、工業需要が高まっていることから、供給が減り需要が高まり続ければ、価格が上昇する可能性があります。
金価格も近年は右肩上がりに上昇していることから、付随する形で銀価格も上昇している状況です。
現状では、銀投資の将来性は高く、長期的な価格上昇が期待できます。
投資するなら金貨と銀貨のどちらがいい?
コインや貴金属への投資を考えたとき、金貨と銀貨のどちらがいいのか迷う方も多いです。
地金型コインの購入は貴金属に対する投資の側面が強くなってきます。
この場合、金・銀それぞれの価格変動が重要であり、一般的に金は価格変動が銀と比較して安定しやすくローリスクであるため投資対象として優秀であると判断する投資家も多いです。
ただし、アンティークコインなどの収集型コインの場合は、必ずしも金貨が銀貨よりも優秀であるとは限りません。
貴金属の価格ではなくプレミア価値によって価格が変動するため、希少性のある銀貨は金貨よりも高い価値を持つことがあります。
アンティークコインに投資する場合は、金貨・銀貨にこだわるのではなく、自分の予算に合った長期的な価格の上昇が期待できるコインを選ぶことが重要です。
金貨への投資について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
銀貨を購入するおすすめの販売元は?
収集型銀貨を中心に銀貨が購入できるおすすめの販売元には「コインライブラリー・プリンシパル」があります。
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少額から購入できる銀貨から、希少性の高い銀貨まで銀貨への投資に適したコインを数多く取り扱っていますので利用を検討しましょう。
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まとめ
銀貨への投資を実践するなら地金型銀貨よりも、収集型銀貨への投資のほうがおすすめです。
数万円ほどの少額から購入できる銀貨から、数十万円から数百万円以上の希少性のある銀貨も存在しますので自身の資産に合わせて銀貨を選びましょう。
アンティークコイン投資について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。