金貨はその名の通り金で作られた貨幣のことであり、その歴史は古代ローマに遡るといわれています。
金という貴金属はその物に価値があり、光沢があり見栄えがいいことから、現代では通貨だけでなく、投資用の金貨や、発行枚数を絞ったコレクション用のコインが発行されることもあります。
中世からその価値は推移してきましたが、金が無価値にならなかったことは歴史が証明しており、金貨は安定性のある資産として現代まで受け継がれてきました。
この記事では、アンティークコイン投資においても主流である金貨の種類とその投資価値について詳しく解説します。
銀貨への投資方法についてはこちらの記事をご参照ください。
銀貨の投資方法は? 価値の推移と投資できる銀貨を一覧形式で紹介
金貨の代表的な3つの種類
現代において金貨は、大きく分けて3つの種類に分類されます。
特に金貨を投資の手段として保有しようと考えている方は、種類ごとの金貨の性質を理解することが必須ですので確認するようにしてください。
- 通貨型金貨
- 地金型金貨
- 収集型金貨
それぞれ詳しく解説します。
通貨型金貨
通貨型金貨とは、設定された額面に応じて実際に決済で使用したり、金融機関で両替ができる金貨のことです。
発行される際は額面を金価格よりも高く設定していますが、通貨型金貨を通貨以外の用途で使用する行為は違法になるため、金として売却することはできません。
金を現代でも決済通貨として価値を持たせる例は珍しいですが、こちらの金貨は金価格の上昇では恩恵を得ることができない通貨であるといえます。
ただし、現代で発行される通貨型金貨が希少であることから、一部はプレミアが付き、コレクターの間では額面以上で取引されることもあります。
地金型金貨
地金型金貨は投資用に発行される金貨のことであり、その歴史は1967年に南アフリカ共和国で発行されたクルーガーランド金貨から始まったため、古代ローマから始まる金貨の歴史のなかでは浅いです。
しかし、19世紀の金本位制により発行されたイギリスのソブリン金貨や、フランスのナポレオン金貨などは現在はコレクション用の金貨として集められていますが、発行した目的を考えれば地金型金貨の一種ともいえます。
含有する地金にプレミア価値を上乗せする形で販売され、金価格に連動して取引されるため金投資の手段の一つとして知られています。
地金型金貨は、クルーガーランド金貨を含めて発行されてから100年以上経っていないモダン金貨です。
そのため、プレミア価値が付かないものが多く、あくまで金価格の上昇を期待して保有する金貨となっています。
地金型金貨が投資初心者にはおすすめできない理由についてはこちらの記事をチェックしてください。
金投資をおすすめしない3つの理由とは? 初心者に適した投資方法を紹介
収集型金貨
収集型金貨は、アンティークコイン投資の対象になる希少性によるプレミア価値が付きやすく、貨幣商や、コレクターによる取引の対象になる金貨です。
発行枚数が制限されている記念金貨や、100年以上前に発行され、現存数が少ない金貨はその希少性に応じた高い価格が付きます。
収集型金貨に関しては厳密な定義をするのは難しいですが、地金以外の価値や、地金に加えて大きなプレミア価値のある金貨は収集型金貨に分類できます。
よって、通貨型金貨・地金型金貨の性質を持ちながら、希少性があることから収集型金貨の性質も持ち合わせる場合もあるということです。
アンティークコイン投資用の金貨を探すなら、収集型金貨から探すのが基本になります。
金貨の投資価値はどのように決まる?
金貨の価値を決めるポイントは大きく分けて金そのものの価値とプレミア価値になります。
- 日本における金貨の価値は1gあたりの金価格により決まる
- 希少性が認められるとプレミア価値が付くことがある
それぞれ詳しく確認していきましょう。
日本における金貨の価値は1gあたりの金価格により決まる
日本における金貨の価値は、含有する金の量に対して、毎日発表される1gあたりの金価格に基づいて決まります。
仮に30gの金を含有した金貨があり、1gあたりの金価格が5,000円の場合、金貨の価値は15万円です。
地金型金貨を貴金属業者などで売却する場合は、早朝に発表された金価格に基づいた価格、購入する場合は売却価格より割高な価格で購入するのが一般的です。
希少性が認められるとプレミア価値が付くことがある
金貨の価値は基本的に含有している金の量で判断されますが、希少性が認められると加えてプレミア価値が付く仕組みとなっています。
希少性を判断する基準は、発行枚数と現存数であり、モダン金貨でも発行枚数が極端に少ない場合はプレミア価値がつきやすいです。
一方で、アンティークコインは、発行枚数自体は多いと考えられていても、100年以上前に発行されたコインである以上、失われたコインや状態の悪いコインが多く存在しているため、現存数が重要になってきます。
例えば、発行枚数自体は多くても、歴史的な経緯からほとんどが溶解されたことが分かっていれば、現存数は非常に少ないと考えられるので希少性が増します。
希少性が高く入手困難であるコインは、コレクター需要が高いため、非常に高い価格で取引されやすいのです。
金貨の価値の推移について
金貨の価値は時代によっても大きく異なりますが、ゴールドラッシュと呼ばれる一攫千金を夢見る採掘者が新たに金が取れた地域に多く詰めかけてきた歴史があることから無価値といわれる時代はありませんでした。
中世における価値と現代における価値の推移について確認していきましょう。
中世における価値
中世における金貨は、大型金貨と小型金貨に分けられ、大型金貨のほうがデザインの見栄えがよいことから現代では収集対象として選ばれやすいのは大型金貨です。
当時の大型金貨は、庶民が入手できるようなものではありませんでした。
王族の間でのみ使用されたり、貿易の決済など大きなお金が動くときに使用されています。
よって、王族や貿易に関わる商人でもなければ、当時の人々も大型金貨を見たことがなかったため、一般的に入手できるものはありませんでした。
小型金貨に関しては、気軽に入手できるものではなかったものの、中世であっても地域によってはある程度流通していたといわれています。
中世で発行された大型金貨は現代でも、非常に高い価格で取引されるため、その価値が失墜することはありません。
現代における価値
現代では1gあたりの金価格が定義され、含有している金量に応じて価格を定めた金貨を購入できるようになったため、その価値の推移を計ることは容易です。
画像引用:https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_longspan
1978年~2022年までの海外と国内の金価格の推移は上記の通りであり、下落した時代はあるものの堅調に上昇を続けてきました。
金貨のサイズは1オンスが直径30mm程度の大型の金貨、1/10オンスが直径16mmほどの小型金貨です。
金価格が7,000円と仮定すると、1オンスの金貨が約21万円、1/10オンスの金貨が約2万円で購入できます。
現代の感覚でいえば大型金貨を気軽に購入できるかは人によって分かれるかもしれませんが、手が届かない程価値が高いわけではないといえるでしょう。
代表的な金貨一覧表
それでは、代表的な金貨を紹介していきましょう。国ごとに一覧表の形式でまとめました。
国 | 金貨 |
アメリカ | イーグル金貨 |
バッファロー金貨 | |
インディアン金貨 | |
カナダ | メイプルリーフ金貨 |
イギリス | ソブリン金貨 |
ブリタニア金貨 | |
フランス | ナポレオン金貨 |
オーストリア | ウィーン金貨 |
スイス | 射撃祭金貨 |
オーストラリア | カンガルー金貨 |
コアラ金貨 | |
南アフリカ共和国 | クルーガーランド金貨 |
中国 | パンダ金貨 |
日本 | 天皇陛下の記念金貨 |
それぞれの国について代表的な金貨を紹介します。
上記の金貨を購入するための方法はこちらの記事をチェックしてください。
イーグル金貨・バッファロー金貨【アメリカ】
アメリカでは主にイーグル金貨とバッファロー金貨の2種類の地金型金貨が発行されています。
イーグル金貨は、アメリカ合衆国の象徴である国章に使われるイーグル(白頭鷲)と自由の女神が描かれた非常に有名な金貨です。
アメリカの先住民が描かれたインディアン金貨は、裏面に鷲が描かれていることからイーグル金貨の種類の1つですが、知名度が高いことからインディアン金貨という名称で広く知られるようになりました。
オバマ大統領によりアメリカの国獣に指定されたバッファロー金貨にもインディアンが描かれていることから、インディアンヘッド金貨とも呼ばれています。
基本的にアメリカの金貨は、イーグル金貨、バッファロー金貨、インディアン金貨が主流となっており、デザインの完成度が高いことからコレクターの間でも収集対象になっており、地金型金貨であっても種類によってはプレミア価値が付くこともあります。
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メイプルリーフ金貨【カナダ】
メイプルリーフ金貨は、カナダを象徴するカエデの葉が描かれた地金型金貨です。
表面には、エリザベス2世の肖像が描かれており、地金型金貨のなかでも高い人気を誇り、世界三大金貨に数えられます。
地金型金貨の市場は、一時期はクルーガーランド金貨に独占されていた時代もあり、メイプルリーフ金貨は対抗馬として発行された金貨でしたが、市場の独占を阻止しそのまま流通量1位となりました。
広く流通していることから、地金型金貨を購入する場合に選択肢に上がりやすい金貨といえます。
イギリス王室シリーズの金貨【イギリス】
イギリス王室では古くから金貨が発行されており、収集型金貨の人気テーマとして知られています。
エリザベス2世やヴィクトリア女王をはじめとするイギリスの国王が描かれており、人気コインであるウナとライオンもイギリス王室シリーズの金貨です。
ジョージ5世の時代から表面の各君主の肖像に加えて、裏面に聖ジョージの竜退治が描かれることが一般的になりました。
イギリスでは、ノーブル、ギニー、クラウン、ユナイト、リアル、エンゼル、ローレルなどの数多くの金貨が発行されてきましたが、代表的な金貨がソブリン金貨です。
また、イギリスの地金型金貨には、ブリタニア金貨があります。
イギリス王室シリーズの金貨は人気が高く希少価値があるコインも多いことから、アンティークコイン投資の対象としても最適といわれます。
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ナポレオン金貨【フランス】
ナポレオン金貨とは、フランスの金本位制時代に発行されたナポレオン・ボナパルトとその一族が描かれた金貨のことを指します。
フランスの英雄ナポレオンが描かれた金貨であることから、トップクラスの人気を誇るアンティークコインの収集テーマです。
コインの種類によって、ナポレオンが月桂冠をしている肖像としていない肖像があり、年度によって肖像が異なり価値も変わってきます。
その人気の高さからコイン業者の間では、高い希少性持たない種類でも入荷するとすぐに売り切れてしまう商品としてナポレオン金貨は知られています。
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ウィーン金貨【オーストリア】
ウィーン金貨は、オーストリアで発行された世界三大金貨の1つに数えられる地金型金貨です。
音楽の都ウィーンに関連したパイプオルガンとホルン、ハープ、ビオラ、バイオリン、ファゴットなどの楽器がデザインされているのが特徴になります。
2004年には15枚限定で1,000オンスの金貨も発行されており、直径37cm、重さ31kgで、当時としては世界最大の金貨でした。
額面が設定されている通貨型金貨であるため金価格による価値の上昇は見込めませんが、15枚という希少価値の高さからプレミア価値もつきやすいといえるでしょう。
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射撃祭金貨【スイス】
射撃祭とは14世紀から欧州の各地で開催された射撃大会のことであり、1842年から射撃祭を記念したコインがスイスで作られるようになりました。
1939年、政治的な理由で射撃祭金貨は発行されなくなりますが、1984年に再開され現代まで記念コインが発行されています。
このことから1984年以降に発行された射撃祭金貨は、現代射撃祭金貨と呼び区別することがあります。
現代射撃祭金貨よりも、1939年以前に発行された射撃祭金貨であり、近年では収集型金貨の収集テーマとしての知名度も高まっているようです。
カンガルー金貨【オーストラリア】
オーストラリアでは、現地に生息している固有の動物であるカンガルーがデザインされた地金型金貨であるカンガルー金貨を発行しています。
オーストラリアはイギリスに統治されていた経緯があることから、地金型金貨にはエリザベス2世の肖像が描かれており、過去にはイギリスのソブリン金貨が発行されていました。
他にもコアラを彫刻したコアラ金貨もありますが、発行が限定的で希少性があることから地金型金貨と収集型金貨の性質を兼ねているものもあります。
オーストラリアの動物金貨は男女問わず人気が高いですが、一部の金貨を除いて地金型金貨には収集型金貨の性質はないのでアンティークコイン投資の対象にはなりにくいです。
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クルーガーランド金貨【南アフリカ共和国】
南アフリカ共和国で発行されるクルーガーランド金貨は、実質的な当時の地金型金貨であったソブリン金貨とナポレオン金貨を除けば初めて発行された地金型金貨になります。
南アフリカに位置するトランスヴァール共和国の大統領ポール・クリューガーの肖像が描かれ、裏面にはスプリングボックと呼ばれる動物が描かれています。
かつては地金型金貨の市場を独占していましたが、世界三大金貨の地位に位置するのはメイプルリーフ金貨、ウィーン金貨、カンガルー金貨であり、現在では製造数が極端に少なくなりました。
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パンダ金貨【中国】
パンダ金貨(熊猫金幣)は、中国が発行する地金型金貨であり、人気動物であるパンダがデザインされていることから一部のコレクターの間では活発に取引されています。
発行年度によって異なるジャイアントパンダのデザインと、世界遺産の北京天壇が描かれているのが特徴です。
100%純金製ではないことから地金価格では不利ですが、コレクター需要が高いことから地金型金貨でありながらプレミア価値は付きやすい商品になります。
天皇陛下の記念金貨【日本】
日本でも天皇陛下の記念金貨などを中心にいくつかの希少性の高いコインが発行されてきました。
こちらのコインは昭和天皇の在位60年を記念する金貨です。
また、10万円金貨のように額面を定めた通貨型金貨の発行が多いのも日本の金貨特有の特徴になります。
海外の金貨と比較するとアンティークコインの投資対象としては注目度が低いですが、一部のコインは額面よりも高い価格で取引されることがあります。
金貨への投資に関するよくある質問
最後に、金貨に関するよくある質問をまとめました。
- インフレ対策に最適な金貨の種類は?
- 金貨を購入するおすすめの販売元は?
それぞれ詳しく解説します。
インフレ対策に最適な金貨の種類は?
近年では、経済において長期的にはインフレが進むという常識や、経済不安によるインフレの加速を懸念してインフレ対策が求められています。
インフレ対策にはお金を物に換えることが効果的とされており、金貨のような実物資産を保有することが重要です。
地金型金貨は、インフレに強いとされる金価格と連動する性質がありますが、金という投資対象は経済不安によって急激に需要が高まると高騰する性質があるため、状況によっては購入のタイミングが難しい資産になります。
初心者でも購入のタイミングを気にせず好きなときに始めやすい投資対象は収集型金貨であり、年々高まる希少性によって長期的な価値の成長が期待され、資産をインフレから守ってくれます。
これをアンティークコイン投資と呼び、富裕層の間ではインフレ対策の新たな常識と呼ばれている資産運用の方法です。
インフレ対策で金貨を保有するなら収集型金貨から選びましょう。
インフレ対策としてのアンティークコインの価値について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
インフレ時代における資産運用の新常識【アンティークコインの価値を知る】
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まとめ
金貨はアンティークコイン投資において主流となる投資対象であり、さまざまな種類が発行されてきました。
しかし、すべての金貨がプレミア価値を持つわけではないので、金貨の特徴を理解して希少性を持つ金貨を見つけるようにしてください。
アンティークコイン投資について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。