【外為_第5章】外国為替取引~投機取引

投機取引とは(概要)

  •  投機取引とは外国為替相場の価格変動リスクを積極的にとって、その値上がり益を得ることを目的とする外国為替取引をいいます。
  • 反対売買を行うことを前提とした取引(売ることを前提にした買いや、買い戻すことを前提にした売り取引)により、その利ザヤを得ることを目的とする外国為替取引で、海外のヘッジファンド等が主体となっています。
  • また、外国為替証拠金取引(FX)などの外国為替に派生する取引を行う個人なども、投機取引の主体となっています。

投機取引を行う「投機筋」とは

  •  為替相場が上下に変動することを利用して、為替取引そのものから利益を得ようとする組織や個人のことを、「投機筋」と呼んでいます。
  • 投機筋としては、ヘッジファンドが代表格として挙げられます。
  •  また、銀行などの金融機関も、自身の外貨資産や顧客取引を背景に、追加的な外国為替益を得るために積極的に為替売買を行うこともあります。
  •  個人もまた、為替先物取引やFX取引を通し、積極的に為替差益を上げることを目的に為替売買を行う場合、「投機筋」に分類されます。

為替ポジション

外国為替取引によって生じた外貨建ての債権と債務の差額が「為替ポジション」です。
為替ポジションの状況により、市場の為替相場の変動(円安や円高)に対する為替評価損益の動きは以下の通りです。

  • 外貨建債権>外貨建て債務の場合:「ロングポジション」或いは「買い持ち」
    円安(円に対し外貨が高くなる)の場合、為替評価益が増える
  • 外貨建債権<外貨建て債務 の場合を「ショートポジション」或いは「売り持ち」
    円高(円に対し外貨が安くなる)の場合、為替評価益が増える
  • 外貨建債権=外貨建て債務 の場合を「スクウェアポジション」
    円安でも円高でも、為替評価益は不変

以下、具体的な事例を挙げて、ご説明します。

日本に拠点を置くファンド会社のX社は、為替相場が米ドルに対して円高になることを予想して、某日Day1に、1週間後Day3を決済日とするフォワード為替(先渡為替)を日本の銀行Yと以下の通り約定したとします。
・為替取引:X社の米ドル売り/円買いのフォワード為替
・約定日(契約日):Day1
・決済日(資金受渡日):Day3(Day1の1週間後)
・為替レート:1米ドル=140.00円(フォワードレート)
・取引金額:1百万米ドル

X社は、約定と同時に、1週間後にドル資金を日本の銀行Yに1百万ドルを支払いう義務が生じます。X社は米ドル債務を1百万ドル負うことになります。
すなわちX社は、1百万米ドルの「ショートポジション」となります。

X社は、フォワード為替の済日の2営業日前(Day2)に、円高予想が的中し、1米ドル=130円(スポットレート)で日本の銀行Zに米ドル買い/円売りの約定をしました。
すなわち、X社は、Day2に1百万米ドルの「ショートポジション」を解消して、「スクウェアポジション」となり、1百万円の為替評価益を確定しました。
Day3に、無事資金受渡しが終了すれば、1百万円の実現益を手にいれることができます。

以上の例でご理解いただけたかと思いますが、為替ポジションと為替レートと為替差損益の関係は、以下の通りに整理できます。

米ドル/円の場合

投機筋の為替ポジション

上述の例は、フォワード為替スポット為替を利用して、決済日に、米ドル資金と円資金の受け払いを、それぞれ同時に行うことで、為替ショートポジションを造成し、為替差益を狙う方法を紹介しました。
X社は、米ドルショートポジションを造成し、自ら外国為替変動リスクをとり、結果、思惑通り為替相場が円高になり収益を生むことができました。当然、思惑通りにならず、円安になってしまったら、為替差損となります。
投機筋は、常に自らの意思で為替の価格変動リスクと向き合い、為替操作を繰り返しながら、収益を追い求めています。

先物市場に上場されている為替先物や、FX取引等のような差金決済(元本の資金決済を相殺し売り買いの差額分だけ決済するしくみ)の為替取引派生商品を利用すると、より簡単に為替のロングポジションやショートポジションを造成することができます。
これらの、為替派生商品についての詳細は、別途章を設けて解説する予定です。

世界中の多くのヘッジファンドは、これらの商品を駆使し、大量かつ様々なポジションを造成しています。
時には、マーケットを動かす力もあり、マーケットの健全な動きを阻害するとして批判的な見方をされる場合もありますが、一方で、マーケットに流動性を供給し、また、マーケットの一時的な歪みを解消するといった機能も担っており、一般のマーケット参加者がいつでも市場価格で取引ができる環境を作り出すといった重要な役割を担っている一面もあります。

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