【第12章】国際金融と為替相場

国際金融について

国際金融とは?

国際金融とは、国と国との間の資金移動に関する様々な仕組み、制度や機能のことを意味します。
国際金融取引には、商品の輸出入貿易のような非金融的取引に基づくものと,純粋の資本取引のような金融取引に基づくものとが含まれています。
その特色は,国境を越えた資金取引が、異種の通貨間の外国為替の売買を伴い、それぞれの国の通貨によって資金決済が行われます。
その結果は、国際収支統計(後述)で観察することができます。

国際金融の機能を果たすために重要な役割を担っているのが、国際金融市場になります。ニューヨーク、ロンドン、東京、シンガポール等が代表的な国際金融市場として相互に連携・依存しあい、24時間休むことなく、様々な種類の金融商品の取引がおこなわれています。

国際収支とは?

ある一国において、1年間に行った対外経済取引における、支払いと受け取りの記録国際収支といいます。
いわば、一国の家計簿のようなものです。
国際収支の「収支」というのは、国境を越えた資金の受取と支払いの差額です。
すなわち、「収支」は損益ではなく「お金の流れ」を表すものです。

国際収支統計

国際収支統計は4項目で構成されています。

経常収支

貿易収支(輸出-輸入)
サービス収支(サービスの授受による金銭の受取りと支払い)
第一次所得収支(対外投資による利息や配当金の受取りと海外からの国内投資に伴う利息や配当金の支払い)
第二次所得収支(寄付や贈与、援助など対価を伴わない資金の授受)

資本移転等収支

固定資産の取得・処分に伴う資金移転、債務免除、その他資産の動き

金融収支

直接投資収支:経営を目的に海外の会社の株式投資の収支。取得元本、売却元本の収支
証券投資収支:クロスボーダーの有価証券投資の収支。取得元本、売却元本の収支
金融派生商品収支:デリバティブ(金融派生商品)契約に基づくクロスボーダーの資金の受け払いの収支
外貨準備増減:日銀や政府が保有する外貨残高。政府の為替介入による増減、政府が保有する外債に関連した資金移動、為替レート変動に資産価値の増減

誤差脱漏

集計上の誤差

為替相場について

米国ドルは基軸通貨

海外との取引を行う際、その代金決済を自国通貨にするか、相手国通貨にするか、大変重要な問題です。
相手国通貨で代金決済をする場合は、相手国通貨を保有していない場合は、その通貨を購入して決済に充てる必要があります。
この場合に、自国通貨と相手通貨の交換比率はその時の為替相場によって決まります。

例えば、日本の商社が米国から牛肉を輸入する場合、原則、米国ドル建ての決済となりますので、日本の商社は、米国ドルを準備する必要があります。
米国ドルを保有していない場合は、銀行で円を米国ドルと交換し、それを輸入代金に充てます。
米国ドルは、その経済力(世界GDPの四分の一を占めている)を背景に、国際金融市場において、基軸通貨と呼ばれ、他通貨に比べ圧倒的な流通量を占めていることから、貿易取引において決済通貨になることが普通となっています。

自国通貨の価値は相手国通貨の価値との相対的な関係

現在、欧米先進国の多くの国は変動相場制を採用していることから、為替相場は市場での需要と供給の関係で決まり、時々刻々と変動しています。
為替相場を変動させる要因は様々です。
短期的には投機的な思惑や、地政学的要因から変動することもありますが、長期的(理論的)には、当該2国間の経済の基礎的条件(ファンダメンタル)の相対的な要因により変動します。
要因としては、経済成長率インフレ率金利差当局の金融政策、あるいは、貿易収支資本収支等国際収支などが挙げられます。

(参考)外国為替相場の決定要因については、以下ご参照下さい
ライフマネーラボ/マーケットトレンド/外国為替/「為替相場」を動かす要因を探るⅠ~Ⅳ

「円高」「円安」とは

為替相場の表示

相手通貨1単位と交換できる円貨を表します。
例えば、
1米ドル=140円
1ユーロ=158円

円高 :相手国通貨より円の価値が相対的に上がること

例えば、1米ドル=140円が、1米ドル=130円になるケース

円安 :相手国通貨より円の価値が相対的下がること

例えば、1米ドル=140円が、1米ドル=150円になるケース

例 1円を自国通貨とするAさんが、ハワイに旅行した場合を想定します。
ホテル代が1泊200米ドルであったと仮定します。

現在: 1米ドル=140円。円に換算すると28,000円

<円高のケース>
1米ドル=130円になった。円に換算すると26,000円
円の価値が上がる→ Aさんにとってホテル代は安くなり、有利になる

<円安のケース>
1米ドル=150円になった。円に換算すると30,000円
円の価値が下がる→ Aさんにとってホテル代は高くなり、不利になる

例 2日本の自動車メーカーBがアメリカに輸出する場合を想定します
アメリカでの販売価格は2万ドルとします。(自動車の製造原価は200万円)

現在:1米ドル=140円。販売価格を円に換算すると280万円。収益は80万円。

<円高のケース>
1米ドル=130円になった。
販売価格を円に換算すると260万円。収益は60万円。
円の価値が上がる→ Bにとって売上げは減少、収益も減少し、不利になる

<円安のケース>
1米ドル=150円になった。
販売価格を円に換算すると300万円。収益は100万円。
円の価値が下がる→ Bにとって売上げは増加、収益も増加し、有利になる

 

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