【外為_第8章】外国為替相場の変動要因とは

外国為替相場について

外国為替相場の形成

  • 時々刻々と変動する外国為替相場は、外国為替市場のインターバンクマーケットにおいて形成されます。
  • インターバンクマーケットは世界の主要外国為替市場において活発な取引がなされ、原則、平日は24時間取引が途切れることなく各為替市場に引き継がれていきます。
  •  為替相場は、米ドルと円米ドルとユーロ米ドルと英ポンドというように、必ず2つの通貨(ペア通貨)で構成されます。

各国通貨の為替相場は対米ドル相場が取引の中心

今日、米ドルは、基軸通貨として、国際通貨の中で最も中心的な地位を占めています。
通貨の異なる国際間での為替取引資金決済手段において米ドルを基準とする場合が圧倒的シェアーを占めています。
貿易金融取引もドル建てが多く、各国の外貨準備もドル建てが最大となっています。

世界の主要為替市場において、各国通貨は、米ドルをペア通貨とする外国為替相場が、取引の中心となります。
例えば、
「米ドル/円」は、東京外国為替市場
「米ドル/ユーロ」は、フランクフルト市場、及び、ロンドン市場
「英ポンド/米ドル」ロンドン市場
「米ドル/豪ドル」シドニー市場

クロス為替レートとは

  • 円が関係する外国為替相場は、基本的に円/米ドルレートが基準となります。
  • 東京インターバンクマーケットの取引高の内訳は
    円/米ドル為替取引:全体の約85%
    ・ユーロ/米ドル為替取引:全体の約15%
  •  ユーロ/円、ポンド/円など対米ドル以外のペア通貨との為替相場は、クロス為替レートと呼ばれ、円/米ドルレートユーロ/米ドルレートが基準となり算出されます。

(参考)
本章に関連する基礎事項の詳細は、ライフマネーラボ/金融リテラシー向上/外国為替入門の以下の各章をご参照下さい。

【外為_第2章】外国為替相場(レート)について

【外為_第3章】外国為替取引の基礎

外国為替相場変動のメカニズム

外国為替相場は、上述の通り、日々、外国為替市場での取引により、上がり下がりします。
先進国通貨については、原則として取引制限がない自由な市場で、様々の取引動機を持っている多くの市場参加者(プレイヤー)が、自らの利益の追求のために行動し、活発な売買取引を行っています。

そして、それぞれの取引の価格(相場)の決定には、市場の原理が働きます。
例えば、米ドル/円相場であれば、最も取引が活発となる東京マーケットにおいて、円を対価として、米ドルを買いたい人の買い圧力(米ドル需要)米ドルを売りたい人の売り圧力(米ドルの供給)が均衡する点で、米ドル/円相場が決定されます。

したがって、これらの米ドルの需給関係に影響を与える要因を押さえておくことが、東京マーケットにおける米ドル/円為替相場の変動のメカニズムを理解する上で、重要になってきます。

外国為替相場の変動要因

外国為替相場の変動要因は、大変多岐にわたります。
本章では、以下、便宜的に、超長期的、中長期的、短期的な観点に分けて整理してみました。

超長期的な観点での変動要因

金本位制が廃止され、変動相場制に移行した先進各国の通貨は、それぞれの国家によって、その価値が担保されています。
すなわち、総合的な国力(※1)が強度な国の通貨は信用力が高いため、相対的に強くなります。

※1 総合的な国力とは・ 政治力、軍事力、及び、経済力の強度
・利用可能な資源の保有(天然資源、及び、人的資源)の状況
・自然災害リスクの発生確率

中長期的な観点での変動要因

経済ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)

中長期的なペア通貨の外国為替の変動要因として、市場が最も注目するのは、経済ファンダメンタルズ(※2)(経済の基礎的諸条件)相対的な変化です。
米ドル/円為替相場
においては、米国と日本の経済ファンダメンタルズの比較や変化が、重要な要因となります。
これらを分析することにより、中長期的な日米間のお金の流れ両通貨に対する需要の大きさなどのの構造的な変化を読み取ります。

※2 経済ファンダメンタルズとは国や企業などの経済状況を示す指標のことを意味します。
・ 国や地域では、以下のような指標マクロ経済指標)の時系列分析等により、為替相場の中長期トレンドを判断します。
   景気動向(生産、消費、在庫等のサイクル)
          経済成長(国内総生産(GDP)成長率など)
          物価上昇(消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)など)
           雇用状況(雇用者数の伸び、失業率など)
           輸出入等の国際収支の状況
・経済の基礎的条件を分析する投資手法をファンダメンタルズ分析と呼びます。

中央銀行の政策スタンス(主に金融政策)と金利差

各国の中央銀行は、国内の経済の安定的成長と安定的物価水準の維持を目的として、政策金利を定め、主に短期の資金需給を調節しています。
各国の中央銀行の政策スタンス(※3)の違いは、各国間の金利差などを反映し、為替相場に影響を及ぼします。

※3 政策スタンス金融緩和:政策金利を低くして、市場へ資金を豊富に供給
      → 通貨の相対的な価値を弱める
金融引締め:政策金利を高くして、市場から資金を吸収
      → 通貨の相対的な価値を高める

短期的な視点での変動要因

経済指標の発表

経済ファンダメンタル等を示す経済指標の発表に起因た短期的な相場変動が、マーケットでよく観察されます
特に、アメリカ(基軸通貨米ドルの発行国)における経済指標の発表は、世界中から注目され、市場予想値と実績値が乖離する場合には、大きな為替相場の変動を引き起こすことがあります。

マーケットを変動させるアメリカの主要経済指標雇用統計(非農業部門雇用者数、失業率、賃金上昇率)
・物価統計(CPI、PPI、米国個人消費支出(PCE))
・景気指数(景気先行指数、購買担当者景気指数(PMI)
・全米供給管理協会(IMS)製造業景況感指数)

市場参加者のポジションの動向

以下の市場参加者は、短期的な通貨に対する需要と供給にダイレクトに影響を及ぼします。

輸出入業者

輸出業者:輸出による外貨収入が見込まれる場合
→ 外貨の売り圧力
輸入業者:輸入による外貨支払いが見込まれる場合
→ 外貨の買い圧力

機関投資家

豊富な自国通貨での投資資金を、外貨で運用する場合
→ 外貨の買い圧力
既に保有している外貨資産の価値を防衛する場合(ヘッジ取引)
→ 外貨の売り圧力

投機筋

投機筋が価値が上がると考える通貨に対する買い圧力
投機筋が価値が下がると考える通貨に対する売り圧力

チャートに基づき売買するプレーヤー

過去の相場の動きから、将来の相場の動きを予想するためのツールで、以下のようなものがあります。
これらは、前述のファンダメンタル分析に対しテクニカル分析と呼びます
テクニカル分析による売買は、共通のチャートを信望するプレーヤーが、機械的に売買を行うため、時に、短期的な大きな相場変動要因となります。

主なチャートの種類・移動平均チャート
・ローソク足チャート
・ 一目均等法チャート
など

政府による為替介入

投機筋等の思惑や、一時的な需給の偏在により、為替相場が一方方向に激しく変動し、一般経済に悪影響を及ぼすと判断された場合、政府は、中央銀行を経由し、外国為替市場に介入することがあります。
日本の場合、財務大臣の判断で、日本銀行の名前で外国為替市場に介入します。
直近では、2022年9月~10月にかけて、過度な円安の進行に対し、円買いドル売りの為替介入を実行しました。

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事