政府税制調査会は、12月14日、「2024年度の税制改正大綱」を取り纏め公表しました。
(参考)「2024年税制改正大綱」の全文はこちら
https://partsa.nikkei.com/parts/ds/pdf/20231214/20231214.pdf
毎年、この時期に次年度の税制大綱(与党の素案)が発表されますが、この素案を基に来年早々に、法案が作成され国会に提出されます。
国会での審議を経て、可決すれば来年4月(2024年度)から、新しい税制が施行されることになります。
ただ、今回の目玉である、所得税減税は、防衛費の増税議論(2024年税制改正大綱では先送り)との整合性のなさを指摘する世論もあり、国会での可決は難航が予想されます。
来年初より重要な税制改正が施行されます(2023年度税制改正大綱事案)
昨年末発表された2023年度税制改正大綱では、「貯蓄から投資へ」と「次世代への早期資産移転及び再配分」をテーマとし、私たちのライフマネーに影響を及ぼす改正案が、今年3月に国会にて可決しました。
そのなかで、特に重要な以下の2つの制度改定が、来年(2024年)1月より具体的に始まります。
貯蓄から投資へ(新しいNISA)
新しいNISA(非課税枠の拡充と恒久化)が始まります
(参考)【コラム-3】NISAの抜本的拡充に期待する!
次世代への早期資産移転及び再配分(生前贈与・相続税制)
生前贈与・相続の税制が変わります(相続時精算課税と暦年課税の見直し)
(参考)<基礎>【贈相税-3】生前贈与と相続税
2024年度税制改正大綱のポイント
今月14日に発表となった、「2024年度税制改正大綱」では、昨年度の改正案と比べ、私たちのライフマネーに与える影響としては、物価・賃上げ対策や子育て・女性活躍支援としての対症療法的な内容が大勢を占め、社会保障や安全保障の分野での長期的な視野にたった税制改正は、先送りとなりました。
物価高を受けた家計支援~所得税・個人住民税減税
● 所得税・個人住民税の定額減税の実現により、今後の賃金上昇とともに目に見える形で可処分所得を伸ばす。
● 納税者と配偶者を含めた扶養家族1人につき、24年分の所得税3万円、24年度分の個人住民税1万円を減税する。
2024年6月以降の源泉徴収・特別徴収などで、実務上できる限り速やかに実施する。
● 所得税・個人住民税の定額減税は、基本的には税収増分の還元を名目とし、賃金の上昇が物価高に追いつくまでの一時的措置とする。
● 給与収入が2,000万円超の高額所得者については対象外とする。
● 個人住民税の減収額は全額国費で補塡する。
物価上昇を上まわる賃上げ
● 賃上げ促進税制を強化し、賃上げにチャレンジする企業の裾野を広げる。
● 前年度から7%以上の賃上げをした企業に増額分の25%を法人税から控除する仕組みを新たに設ける。
● 教育訓練費増額及び女性活躍・子育て支援増額に対する税額控除の上乗せを含め、大企業・中堅企業なら賃上げ分の最大35%を、中小企業なら45%をそれぞれ控除できるようにする。
● 賃上げしても赤字であれば税優遇を受けられない中小企業向けに、税額控除率を繰り越しできる制度を新たにつくる
● 賃上げや投資に消極的な企業に対しては、一定のディスインセンティブ措置
子育て・女性支援
● 子育て世帯や若者夫婦世帯における住宅ローン減税の借入限度額について、子育て支援の観点からの上乗せを行う。
● 既存住宅のリフォームにかかる特例措置について、子育て世帯や若者夫婦世帯が行う一定の子育て対応改修工事を対象に加える
● 児童手当では所得制限が撤廃されて、支給期間が高校生年代まで延長される。
● 16歳から18歳までの扶養控除について、現行の国税38万円、地方税33万円の一般部分に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、地方税12万円)を復元する。
高校生年代は子育て世帯において教育費などの支出がかさむ時期であることを考慮する。高校生年代に支給される児童手当と合わせ所得階層間の支援の平準化を図ることを目指す。
● 生命保険料控除における新生命保険料にかかる一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講じることとする。
● 女性活躍や子育て支援に熱心な企業への控除枠を新たに設けた。
厚生労働省が女性活躍企業に与える「えるぼし」と、子育て支援が手厚い企業に与える「くるみん」の認定企業が対象となる。企業の規模を問わず5%が上乗せされる
人材流動化推進
● リスキリング(学び直し)を実施する企業への税優遇策も継続する。
● 教育訓練費を前年度から10%増やした大企業・中堅企業には5%の控除を積み増す。中小企業は5%増やせば10%上乗せする。
● ストックオプション税制の年間の権利行使価額の上限を、スタートアップが発行したものについて、最大で現行の3倍となる年間3600万円への引き上げを実施する。
●(先送り)
退職金控除の見直し
~年金課税は世代間及び世代内の公平性の確保や、各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意し、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する
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