「社員の資産運用に関する意識及び実態調査報告」( by CLP)
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【ラボ掲載】資産運用に関する意識及び実態調査報告.pdf
ライフマネーラボの運営母体である株式会社クレア・ライフ・パートナーズ(以下“CLP”)は、金融教育や資産形成並びに資産運用に関する意識及び実態を明らかにすることを目的として、2022年12月に全国の一般企業・団体の20代から50代の男女の正規社員・正規職員を対象としインターネットによるアンケート調査を実施し、1,111名から有効な回答を得ました。CLPは株式会社マクロミル社の協力を得て、アンケート結果の集計及分析を行い、2023年1月に報告書として纏め公表いたしました。
アンケート結果から見えてくる社員のお金に関する悩み
現在の生活に対する不満は、健康よりもお金に関すること!
- 所得・収入、家計バランス、保有資産、投資知識や運用資産情報等、お金に関する生活不満度が上位を占め、社員の悩みの中心課題となっています。
現在の生活に対する不満度(不満或いはやや不満と回答した割合) ベスト8 ※<P25>
※「社員の資産運用に関する意識及び実態調査報告」内の参照ページを示しています。
将来についても、健康よりお金に関することへの不安度が高い!
- 将来について不安を感じている者は全体の8 割を超えています。
- 現在の生活に関する不満度と同様に、将来についての不安度は、自分の収入、老後の生活資金、家計等お金に関する不安が上位を占め、健康に関する不安を上まわる結果となりました。
将来に対する不安度 ベスト7 <P29,30>
老後の生活費が不安!だから、資産運用に関心を持つ
- 年金足りない2,000万円問題もあり、老後の生活不安が資産運用の動機となっています。
- 超低金利下で、銀行預金でお金が増えるどころか、実質目減りしていく現実に危機感を持ち、他の資産運用手段に関心をもつのは極めて合理的で自然です。
資産運用に関心を持つ理由 ベスト3 <P35>
フィナンシャルプランナーなどの専門家からの情報を利用したいと思っています。
- 現在の利用情報源、役立った情報源はSNS、Webサイトの情報の割合が高く、特に若年層に顕著です。
- 今後利用したい情報源は、Webサイトの情報に続く第2位にフィナンシャルプランナー等の専門家がランクイン。
資産運用の情報源として現在利用している情報、役に立った情報、今後利用したい情報 <P38~P40>
資産形成や運用についての悩み
- “どのように資産形成・資産運用してよいのかよくわからない”、“どのような投資商品・サービスを選べばよいのかよくわからない”などの資産形成に関するごく基本的な知識の欠如による悩みが上位にならんでいます。
- また、投資に対する漠然とした恐怖も大きな悩みの要因のひとつとなっています。
資産運用・運用についての不安・不満 ベスト5 <P51>
投資や運用の専門機関・専門家への相談意向 <P42,P43>
- 3人中2人は投資や運用の専門機関・専門家へ相談する意向を持っています。
- 相談しない、或はできない理由はなにか?
・“都合のよい商品・サービスを薦められそう” ~資産運用経験者
・“相談先がよくわからない” ~資産運用未経験者&興味者
社内に“お金に関する相談窓口”の設置が期待されています
ほとんどの会社には健康に関する相談窓口(産業医の選任義務)が設置されています。
健康管理やメンタルケア―のため、常時50人以上の従業員を持つ企業においては、産業医を選任し、面談の窓口(相談窓口)を設置することが労働安全衛生法で定められています。
こういった相談窓口は、日々の多忙な業務を遂行する上での健康問題や、会社内で発生する人間関係や各種ハラスメント等に心悩ませる社員の駆け込み寺的な役割をになっています。
専門家によるカウンセリングにより、未然に、問題が深刻化することを予防するうえで大きな成果を果たしています。
お金に関する社員の悩みへの対応
~福利厚生制度において専門家によるカウンセリングを受ける機会の提供
上述のアンケート結果の通り、今では、健康問題以上にお金に関する問題が、社員にとっての最大の悩み事となっています。
お金に関する心配ごとのうち、個々の社員の所得や給与の水準(収入)については、会社と従業員の雇用関係(契約関係)での問題であり、会社の業績、人事政策や人事評価等の会社経営の根幹にかかわることであることから、本稿での議論は控えます。
主に、お金の使い方(支出面)にフォーカスし、ライフプランの立案や家計のやり繰りのノウハウ、老後の生活の不安や資産形成の方法等についての悩みについて、専門家によるカウンセリングの機会を社員に提供することで、多くのことを解決できる可能性があります。
近年、金融リテラシー向上を目的とした学校教育が始まっていますが、現役で働いている社員の方々の多くが、金融経済や資産形成といった分野での教育を受けた経験がありません。
一方で、年金問題を筆頭に、老後の生活についての漠然とした不安が重なり、何とかしたいと思う気持ちはあるが、何をどう始めてよいかわからないという現実が、上述のアンケート結果としても炙り出されています。
とくに、相談するきっかけがつかめない、また、投資や資産運用に対する恐怖心などが理由で、なかなか行動に移せないのが実情ではないでしょうか。
このような状況において、健康面での相談窓口のように、お金に関する相談窓口を企業内で設置してほしいというニーズが出てくるのも自然の流れと思われます。
会社の福利厚生制度の一つとして、気軽にそして、安心できる専門家にアクセスできる仕組みさえあれば、相談してみようと思う社員が大勢いると推測されます。
現に、上述のアンケート結果では、66%の社員の方々が専門家に相談してみたいと思っています。
政府の取組み方針
政府も、資産所得倍増計画において「貯蓄から投資へ」のスローガンを再び掲げ、その実現のための金融教育は国家戦略であると明言し、官民挙げて推進すべき重要課題としています。
(金融庁2022事務年度金融行政方針)
何れは産業医の選定義務といったように、家計や資産形成に関する専門家を選定し、企業内に窓口として設置することが義務化されることもあるかもしれません。
(参考)ライフマネーラボ/COLUMN/2022年9~12月/【コラム-2】金融教育は国家戦略!
福利厚生制度の充実は、社員のエンゲージメント(※)を高める(企業側のメリット)
(※) 社員のエンゲージメントとは?
社員が会社との双方向での信頼関係のもとで、会社に対する愛着を持ち、会社が目指す姿の実現に向け、自ら成長し貢献しようとする意欲
日本の福利厚生制度の潮流
- 社員の価値感多様化への対応
- 社員の自助努力への支援
- 自社コスト負担は抑制傾向
- 運営は自社外の専門組織への依存
福利厚生制度の充実、特に資産形成支援の充実が従業員エンゲージメントを向上させる
(MUFG調査レポート 調査結果サマリーより抜粋)
- 企業が金融教育の機会を提供している場合、従業員のエンゲージメントが高い傾向が確認できた。
- 金融教育を受けた人は金融リテラシーが高い傾向があり、企業からの研修機会の提供を重要視し、企業への愛着や貢献意欲が高まると回答している。
- 企業が金融教育機会を提供することにより、エンゲージメントが高まる可能性があるといえる。
出所:MUFG調査レポート(2020/11):金融リテラシー1万人調査 「従業員エンゲージメントと金融リテラシーの関係性について」
お金に関する相談窓口の設置のポイント
カウンセラー(専門家)は信頼できる外部の専門家に委託
- お金に関する話は、社員のプライバシーに関わることになるので、信頼のおける外部の専門家(フィナンシャルプランナー(FP)等)を選定すべきです。
専門家の選定が、会社及びその社員にとって重要なポイントとなります。 - 一般的な社会保障制度関係、税金関係も重や金融経済の知識・知見だけでなく、家計のやり繰り等のノウハウや、社員が活用できる会社の福利厚生制度等を熟知し、社員の立場に立ったきめ細かなアドバイスができる専門家或いは専門家集団を選定すべきです。
- 社員の資産形成については、特定の限られた資産運用商品だけでなく、金融商品に限らず多様な資産運用商品をカバーできる専門家を選定すべきです。
一般的に大手の銀行、証券、保険会社系の専門家は限られた自社提供商品に偏る傾向があり、長い目で見た場合、社員にとっての最適で、効率的かつ合理的な資産形成を実現できない可能性があります。
社員がいつでも気軽に会社公認の専門家にアクセスできる体制
- まずは、会社の正式な福利厚生制度の一つとして採用し、制度内容や運用ルール等の手続きを社員に周知し、いつでも気楽にそして安心して専門家に直接アクセスできる体制を構築しましょう。
- 会社の役割としては、仕組み作りと環境整備に徹し、カウンセリングの運用は専門家に任せ、社員の自主性を尊重し、過度に干渉し過ぎないことが重要です。
- 自社の社内ポータル等のインフラがある場合は、そのトップ画面から、いつでも気軽に専門家へアクセスできるようなしくみを作っておきましょう。
- 情報セキュリティとプライバシー確保はしっかりと対応する半面、なるべくシンプルにし、運用に多大なコストがかからないよう気をつけましょう。
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