【第7章】経済の状況 ~景気について

はじめに、第6章のクイズの回答です。

第6章クイズ資本主義経済では、自由主義及び市場主義経済体制を土台としています。特に、企業間での自由な競争が、より良い商品やサービスを生み、適正な価格形成を担保することになります。市場が独占や寡占状態に陥ってしまわないように、政府は、独占禁止法を制定し、常時、監視の目を光らせています。
さて、この独占禁止法を所管し、常に監視をしている日本の組織は次のうちどれでしょう
1.証券等監視委員会
2.公正取引委員会
3.国家公安委員会

回答2.の公正取引委員会です。
公正取引委員会は,国の行政委員会と呼ばれる合議制の機関です。委員長と4名の委員で構成されており,他から指揮監督を受けることなく独立して職務を行うことに特色があります。また,国の行政組織上は内閣府の外局として位置づけられています。

好景気と不景気

好景気の状況

社会全体の消費や生産活動が活発に行われ、お金の循環が良い状態を「好景気」或は「好況」と呼びます。
街角は多くの人出でにぎわい、デパートやショッピングモール、そして、商店街の売上げは大きく伸びていきます。
生産が追い付かないくらいたくさんの注文が生産者に入り(モノの需要の増加)、工場の操業時間の延長や、従業員の残業で対応しますが、それでも追い付かない場合は、工場の設備を増やし、また、従業員を増員して生産を増やす(モノの供給を拡大する)ことになります。
家計を支えている従業員の収入が増え、このような好景気がまだ続くと確信できれば、今まで我慢してきた嗜好品の購入を増やし、消費活動がさらに活発化していきます。

家計の消費増(需要の増加)→ 企業の生産増(供給の増加)→ 賃金上昇(分配の増加)→ 家計の収入増→ 家計の消費増・・・・・
このように、好景気が好景気を生み、経済活動が拡大していく状況を「景気拡大期」と呼びます。

不景気の状況

好景気と反対に、社会全体の消費や生産活動が停滞し、お金の循環が鈍化している状態を「不景気」と呼びます。
街角の人出もまばらになり、商店街ではシャッタ―が下りたままのお店が目立ち、デパートの売上げも落ち込んでいきます。
当然、生産者への注文も減り、工場の操業時間が減少し、従業員の残業もなくなり、新規従業員の採用も減ってきます。
家計を支える従業員の収入が減り、このような不景気が続くと思うと、生活費を切り詰めざるを得なくなり、消費はさらに減少していくことになります。

家計の消費減(需要の減少)→ 企業の生産減(供給の減少)→ 賃金下落(分配の減少)→ 家計の収入減→ 家計の消費減・・・・・
このように、不景気が不景気を生み、経済活動が縮小していく状況を「景気後退期」と呼びます。

景気の山と谷~「景気循環」

現実の私たちが経験してきた経済は、好景気と不景気の波が絶えず発生し、まるで生き物のように変動を繰り返し、循環しています。この現象を「景気循環」と呼びます。
好景拡大が続けば、やがてそのピーク(景気の山)が訪れ、その後、「景気後退期」がやってきて不景気に陥り、景気の底(景気の谷)に行きつきます。やがて時間の経過とともに、消費や生産活動に明るい兆しが見え始め、再び景気が回復し「景気拡大期」が訪れます。
景気循環は、自由主義と市場主義に立脚する資本主義経済の原理において、避けられない現象として捉えられていいます。
現在では、この景気循環の波の変動を、いかに小さく抑え、できる限り適度な好景気の状況をキープしていくかが、政府の役割(財政・金融政策)となっています。
(ご参照)第6章 経済のしくみ~経済の基本構

 景気を動かす要因を探る

日本の景気を測る指標 ~GDP(国内総生産)

GDP(Gross Domestic Product)とは、国内で生産される財やサービスの総額(生産による付加価値の合計)を表す代表的な経済指標で、四半期ごとに内閣府から公表されます。

日本を含め世界の経済先進諸国のGDPは毎年増加する上昇トレンドが基本です。
好景気時(景気拡大期)にはGDPの増加額が加速し、一方、不景気時(景気後退期)には、GDPの増加額が減速し、特に大不況となると、GDPが前年比減少するということもあります。

お金の循環が景気を動かす

お金の流れは、人間の血液の流れに例えられます。
血液が絶えず体中の隅々までスムーズに流れ、循環していくことで、人間の生命活動は常に正常に維持されています。
世の中に出回るお金の流れが経済全体にスムーズに流れ、循環するようになると、消費行動や生産活動が活発になり、景気の健康状態は良好に回復していきます。
一方、なんらかの理由で、お金の流れが滞留し、スムーズな循環が阻害されてくると、経済活動が停滞し不景気に陥ることになります。

このお金の循環をスムーズするしくみが「金融」であり、その機能を担う中心となるのが銀行となります。そして、金融が正常に機能することを常に監視し、経済全体のお金の循環を調整する役目が政府及び中央銀行(日本銀行)になります。
(ご参照)第2章 「金融(きんゆう)」って何だ?

家計の行動の変化が景気を動かす

第6章でご説明した通り、家計消費と貯蓄(投資)の経済主体です。

また、上述でご説明した日本のGDPのうち、消費支出が6割を占めています。したがって、家計の消費動向がGDPに大きく影響を及ぼします。
要するに、消費が増えれば、景気が良くなり、消費が減れば、景気は悪くなります。
逆に、景気が悪い時に消費を増やすためには、以下がポイントとなると言われています。

  • 家計の消費マインドを好転させる
    政府は消費者の先行きの不安を取り除き、財布のひもを緩めるような施策により、より多くの消費を促し、需要を喚起することにより、景気を好転させます。
  • 家計がお金を借りやすい環境を作る
    マイホーム購入のための住宅ローンを借りやすくするために、金利を下げ、また、税金面の優遇をします。
  • 家計の貯蓄(投資)資産の価値を上げる
    家計が保有する土地や株の値段があがり、資産価値が増えると、財布のひもが緩み消費が増える傾向があります。(資産効果)
    政府は、土地や株価が上がる政策を実施することにより、消費を増やすことができ
    ます。

 

企業の行動が景気を動かす

第6章でご説明した通り、企業は、生産と分配(賃金や配当)の経済主体です。

消費行動が活発化すると、企業は生産を増やす行動に出ます。
結果、GDPの増加が加速し、景気は浮上することになります。

  •  生産力向上のため、工場等の設備を増強します。(設備投資)
  • 生産の増加と設備増設に必要な人材を増やします。(雇用拡大)
  • 収益増加にともない、賃金を上げ、株主への配当を増やします(分配の増加)

一方、消費が落ち込むと、企業は生産を減らす行動に出ますので、結果GDPの増加が減速し、不景気へと向かいます。

では、最後に第7章のクイズです。

第7章クイズ景気が後退しているとき、世の中の経済の状況として、一般的に、最も起こり難い現象は次のうちどれでしょうか?
1. 債券価格が上がる(金利が下がる)
2. 物価が下がる
3. 株価が上がる

 

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