【コラム-5】「人への投資」~リスキリング、リカレント、そして、金融リテラシー教育

企業の人材投資や個人の社会学習等の国際比較

以下は、本年2月「経済産業省の取組」と題したペーパーからの抜粋資料です。
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000894640.pdf

まずは、以下の統計データをご覧ください。

日本企業のOJT以外の人材投資(GDP比)は、諸外国と比較して最も低く、低下傾向です

 

 

社外学習・自己啓発を行っていない個人の割合は半数近くで、諸外国と比較しても不十分となっています

かつての日本(昭和の時代)は、勤勉な国民性終身雇用を前提位とした企業内教育の充実が、日本的経営の成功の秘訣と世界から注目され、「Japan as No.1」とまで揶揄されていました。

米国有名ビジネススクールには日本人留学生枠に上限が付されるほど、たくさんの企業派遣留学生がいました。
製造業では、世界のソニー、トヨタ、ホンダ等を生み、貿易の面ではグローバル企業の先駆けとなった巨大総合商社を生み、金融界では、豊富な資金量を背景に銀行、証券、生保が世界の金融市場を席捲し、東京はニューヨーク、ロンドンと並ぶ3大金融マーケットの一角でした。

当時、世界でビジネス戦士として生きた者にとっては、上記の統計データはたいへん衝撃的なものです。
現在の日本経済の衰退の根本原因は、失われた30年ともいわれる時代に、官民とも「人への投資」を怠ってきた結果であると改めて認識いたしました。

ここ数年間、「人への投資」について、政府、企業、個々人の間で盛んに議論がされています。
大雑把にまとめると、リスキリング教育(スキルの再構築)リカレント教育(繰り返し教育)、そして金融リテラシー教育に大別されます。

政府各省庁がそれぞれの領域で、様々な施策を打ち出しているところです。

以下、簡単に総括してみました。

リスキリング教育について(主として経済産業省の領域)

岸田首相は、10月3日、第210臨時国会の所信表明演説で、人への投資として、5年で1兆円の予算を投じることを表明しました。今年春の政府の骨太の政策において打ち出された3年で4,000億円の予算規模からさらにスケールアップされたことになります。

特に、成長産業への労働移動を促すリスキリング(新時代に必要なスキルの再教育)支援を強調し、就職後に改めてスキルを高めた人材が成長分野に移り、生産性を高めて賃上げにつなげる好循環を狙うもので、「賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という3つの課題の一体的改革に取り組む」と説明しています。

狭義として捉えられるリスキリングは、新しい事業展開に必要な人材を育てる取り組みであり、主としてこれからの時代ほとんどの企業にとって欠かすことのできないDX、ITテクノロジー、AIといった分野の人材育成が中心課題となっています。

政府としての具体策はこれからですが、同時に、企業経営陣及び従業員それぞれの意識改革がなにより重要であることは言うまでもありません。

経営の立場から、企業が主体となってリスキリングを進めるためには、コストの問題及び人材の流出リスクなどの課題があります。従業員のエンゲージメントの向上にも注力しながら、従業員と経営・組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係を築きあげていく必要があります。

リカレント教育について(主として厚生労働省、文部科学省の領域)

日本でもベストセラーとなった、「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン/アンドリュースコット著)において、人生100年時代の生き方として、「リカレント(再教育)」の必要性が強調されました。

人生は、教育→仕事→引退3つのステージがありますが、これからの長い人生を生き抜くためには、このサイクルをマルチ化する必要性を説いています。

すなわち、 教育→仕事→(引退)→教育→仕事→(引退)→教育・・・・と。

そのためには、労働市場のより一層の流動化繰返し教育(リカレント)の機会がポイントとなると指摘しています。

さらに、マルチステージを成功させるためのリカレントには、単なる既存の知識の詰込みやスキルの向上だけでなく、次のステージを切り開くため様々な力を養う必要性を強調しています。

金融リテラシー教育について(主として金融庁の領域)

9月末に2022年事務度金融庁行政方針において、「貯蓄から投資へ」の実現のめざし、その基本となる金融リテラシー教育国家戦略と位置づけ、官民共同して取り組む姿勢を明確にしました。

本内容は「コラム2:金融教育は国家戦略!」にてお伝えした通りです。

金融庁がここまで言うからには、これから具体化する各種推進施策も、ある程度期待できるものと思います。

この分野は、CLPがカバーする領域そのものであり、今後、さらに皆様の金融リテラシー向上と投資の実践においてお役に立てるものと確信しています。

既に、CLPでは、社内体制を構築し、皆さまのご用命をお待ちしております。

どのようなことでもご相談いただければ幸いです。

 

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事