<実用>【税金-4】所得税の配偶者・配偶者特別控除及び扶養控除

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【税金-2】所得税の基本的しくみ【税金-5】給与所得者(会社員)の所得税
【税金-3】所得税の控除のしくみ【税金-6】アルバイトやパートにかかる所得税
【税金-7】専業主婦(夫)が仕事を始める際の注意点

所得税の扶養対象者の要件と控除の種類

扶養対象が配偶者の場合

① 納税者に適用される所得税控除の種類

POINT・配偶者控除
・配偶者特別控除(税法上の扶養からは外れます)

② 配偶者・配偶者特別控除の対象となる配偶者の要件

  • 民法の規定による配偶者であること。従って、内縁関係にある人、あるいは、離婚後は対象外となります。
  • 生計を一にしている。別居中でも、夫婦間の相互扶養義務は継続しますので、控除対象にすることは可能です。
  • 配偶者の給料が一定以下であること。
  • 配偶者控除の対象になるための条件:

合計所得金額(※1)が48万円(給与所得者の場合:年収103万円)以下の場合

  • 配偶者特別控除の対象となるための条件

合計所得金額(※1)が48万円超133万円以下(給与所得者の場合:年間収入(年収)103万円超201.5万円以下)

合計所得金額とは、給与所得控除後の給与所得、必要経費控除後の不動産、事業、利子、配当所得等の所得金額の合計金額を指します。給与所得だけの方は、給与収入から給与所得控除額を引いた金額が合計所得金額に該当します。 

③ 納税者の所得の水準により、納税者に適用される配偶者控除額、或いは配偶者特別控除額が決められています。

詳細は、後述 「2.納税者に適用される配偶者控除額」及び 「3.納税者に適用される配偶者特別控除額」を参照下さい。

扶養対象が配偶者以外の親族の場合

① 納税者の受ける所得税控除の種類

POINT・扶養控除

② 扶養控除の対象となる親族の要件

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます)であること。すなわち、自分の兄弟や叔父叔母、祖父母の兄弟やいとこの孫、配偶者の兄弟の子どもが含まれます。
  • 16歳以上であること。
  • 例外的に親族でなくても、以下の場合、扶養控除が受けられます。

POINT・都道府県知事から養育を委託された児童、つまり里子
・市町村から養護を委託された高齢者など

  • 生計を一にしている。同居している場合は、ほぼ同一生計として扱われ対象になる可能性が高いです。一方、独り暮らしや留学中の学生、療養上の都合で別居している場合であっても、帰省を習慣としている場合や、生活費、学費、療養費等のためお金を送金している事実がある場合は対象となります。また、長期出張や、単身赴任の場合も、生活の援助の実態があれば該当します。
  • 青色申告の事業専従者としてその年1年間給与を受け取っていないこと、あるいは白色申告の専従者でないこと

※ 事業所得や不動産所得がある人の確定申告には、大きく分けて「青色申告」と「白色申告」の2種類の申告方法があります。両者には、税制上の優遇措置や申告に必要な書類・事前の承認手続きなどに違いがあります。「青色申告」は、日々の取引を所定の帳簿に記帳し、その記帳に基づいて正しく確定申告することにより税金の面で色々と有利な特典を受けることができます。

扶養と判断される時期

その年の12月31日の現況で判断します。

ただし、扶養する方・扶養される方が年の中途で死亡したときはそれぞれその死亡時の現況で判断します。

納税者に適用される配偶者控除額

配偶者控除額38万円が適用される条件

控除対象配偶者の要件は、上述1(1)②の通りです。

納税者が適用を受けることができる配偶者控除額は、納税者本人の年間所得金額、及び控除対象配偶者の合計所得金額と年齢により決定されます。

以下の条件をすべて満たした場合の配偶者控除額は最高額の38万円となります。

POINT1.納税者本人の年間所得金額が900万円(納税者が給与所得者の場合:年収が1,120万円)以下
2.配偶者の年間所得金額が48万円(配偶者が給与所得者の場合:年収が103万円)以下
3.配偶者の年齢が70歳未満の場合

配偶者控除額の決定条件テーブル

配偶者控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額や控除対象の配偶者の年齢により以下の通り分類されています。

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額
納税者に適用される配偶者控除額
一般の控除対象配偶者70歳以上の控除対象配偶者
900万円以下
(1,120万円以下)
38万円48万円
900万円超950万円以下
(1,120万円超1,170万円以下)
26万円32万円
950万円超1,000万円以下
(1,170万円超1,220万円以下)
13万円16万円

注意点控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円(給与所得者の場合は年収1,220万円)を超える場合、配偶者控除を受けることができません。

納税者に適用される配偶者特別控除額

 配偶者特別控除について

納税者の配偶者が合計所得金額48万円(給与所得者の場合年収103万円)を超えてしまうと、税法上その配偶者は納税者の扶養から外れ、配偶者控除を受けることができなくなります。これがいわゆる103万円の壁といわれているものです。

2003年の改正以前、配偶者特別控除額は配偶者控除額に上乗せされていましたが、これがパート労働者の就労を抑制しているとの批判があり、その後、何度かの見直しがなされ現行の形となりました。納税者の合計所得金額の制限はつきますが、配偶者の年収

が201.5万円までなら、配偶者特別控除の対象となります。但し、その金額は配偶者の年収が150万円を超えると、その金額は低減します。

配偶者特別控除額

控除対象配偶者の要件は、上述1.(1)②通りです。

納税者が適用を受けることができる配偶者特別控除額は、納税者本人の合計所得金額、及び控除対象配偶者の合計金額により決定されます。

納税者本人の合計所得金額が900万円(納税者が給与所得者の場合:年収が1,120万円)以下の場合、配偶者特別控除額は最大38万円から配偶者の年間所得に応じ低減していきます

配偶者特別控除額の決定条件テーブル

配偶者の合計所得金額

(下段:年収)

控除を受ける納税者本人の合計所得金額

(下段:年収)

900万円以下
(1,120 万円以下)
900万円超950万円以下
(1,120万円超1,170万円以下)
950万円超1,000万円以下
(1,170万円超1,220万円以下)
48万円超95万円以下
(103万円超150万円以下)
38万円26万円13万円
95万円超100万円以下
(150万円超155万円以下)
36万円24万円12万円
100万円超105万円以下
(155万円超160万円以下)
31万円21万円11万円
105万円超110万円以下
(160万円超166.6万円以下)
26万円18万円9万円
110万円超115万円以下
(166.6万円超175万円以下)
21万円14万円7万円
115万円超120万円以下
(175万円超182.9万円以下)
16万円11万円6万円
120万円超125万円以下
(182.9万円超190万円以下)
11万円8万円4万円
125万円超130万円以下
(190万円超197.1万円以下)
6万円4万円2万円
130万円超133万円以下
(197.1万円超201.4万円以下)
3万円2万円1万円

注意点配偶者特別控除も配偶者控除同様に控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円(給与所得者の場合は年収1,220万円)を超えてしまうと控除を受けることができません。
また、配偶者特別控除を夫婦間で受けることもできません。

よく、配偶者控除や配偶者特別控除と絡めて103万円の壁、「150万円の壁」といった話が引き合いに出されます。

(関連記事:【税金-7】専業主婦(夫)が仕事を始める際の注意点

納税者に適用される扶養控除額

扶養控除額について

控除対象扶養親族の要件については上述1(2)②をご参照ください

納税者が適用を受けることができる扶養控除額は、控除対象となる扶養親族の合計所得金額が48万円(扶養親族が給与所得者の場合:年収103万円)以下の場合に、38万円となります。

扶養控除額テーブル

14種類ある所得控除のうちの1つで、納税者に控除対象扶養親族と認められる人がいる場合、その扶養の区分や人数に応じて扶養控除額が受けられます。

扶養控除を受けることによって、課税所得が減り、所得税が減ります。

区  分控除額
一般控除対象扶養親族380,000円
特定扶養親族(※1)630,000円
老人扶養親族(※2)のうち同居老親等(※3)以外480,000円
老人扶養親族(※2)のうち同居老親等(※3)580,000円
  • ※1 控除対象扶養親族のうちその年12月31日時点において19歳以上23歳未満の人が対象
  • ※2 控除対象扶養親族のうちその年12月31日時点において70歳以上の人が対象
  • ※3 同居老親等とは、納税者又はその配偶者の直系尊属(父母や祖父母など)で、納税者または納税者の配偶者と普段同居している人を指します。「同居」については、入院による別居は、結果として1年以上の長期にわたる場合でも同居に該当します。一方、老人ホームへの入居は同居として扱えません。

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