個別銘柄への株式投資
個別銘柄への株式投資意義
特定企業の株式への投資をすることの意義は、3つあります。
① 議決権等の取得によりその会社の経営に関与することを目的とした投資
② 当該株式の配当金や株主優待などを目的とした投資
③ 株価上昇によるキャピタルゲインを得ることを目的とした投資。
個人の資産形成における個別株式への投資は、一義的には、上記の②と③になります。
長期的な資産形成としては、②の配当金の再投資により複利効果を狙い、また、最終的には③のキャピタルゲインを得ることで当初投入した投資元本を増やすことにあります。
個別銘柄への株式投資のリスク
個別銘柄の株価は、その企業の業績や評判およびその企業が属する業種の成長性に大きく依存します。
従って、銘柄選定にあたっては、その企業の財務データなどの公開情報の分析のみならず、業界全体の分析やその企業に関するネット上での口コミや評判等の情報を広く収集し、分析しておくが必要です。
また、発行されている株式固有の特性にも注意が必要で、例えば、市場で売買される株(浮動株と呼びます)数が少ない銘柄は、需給バランスが崩れやすく、株価が乱高下する傾向にあります。
さらに、個別銘柄の株式も市場全体の動きからも大きく影響を受けます。従って、景気や物価動向、そして金利・為替の動き、そして、世界経済や地政学上の状況変化などの社会全体の動きに対しても、敏感に反応する場合があります。
すなわち、個別銘柄への株式投資は、価格を変動させるリスク要因が無数に存在し、さらに、その変動幅が大きい(いわゆる「価格変動リスク」が大きい)ことを意味します。これらの株式に投資する場合、大きく儲かる可能性もありますが、大きな損失を覚悟する必要もあります。最悪選定した銘柄の企業が倒産となれば、当初の投資元本はゼロとなります。
従って、個人の資産形成目的の投資としては、刹那的な利益の追求ではなく、少しでも価格変動リスクを減らし長期的により安定性のある運用方法をとることが重要となります。そこで、個別特定銘柄への一点集中型投資手法ではなく、業種を跨いだ(値動きの特性が異なる)複数銘柄への小口分散投資手法が有力な手法となります。
(参考)
資産形成ナレッジBK/資産形成と投資/【資形-3】ポートフォリオリスクを減らす分散投資
株価インデックス運用
株価指数(インデックス)とは
個別銘柄の株価は、基本的にバラバラな動きをします。
ある日の株式市場で、大きく上昇する銘柄もある一方大きく下落する株もあります。
また、ほとんど変わらない銘柄もあります。
したがって、ある特定の銘柄の株価の動きだけを見ていても、相場全体としての方向性として上昇傾向(強気)なのか下降傾向(弱気)なのか、なかなか判断がつきません。
そこで、登場するのが株価指数(株価インデックス)です。
株式市場が全体的には上がったのか下がったのかを一目で判断できるようにするために、市場を構成する多数の株価を一定の計算ルールに基づいて一つの数字に指数化したものです。
日本の代表的株価指数とその特徴
日経平均株価指数(日経225)
日本経済新聞社が、東京証券取引所プライム市場上場銘柄から選定した225銘柄から構成される平均株価のことで、日本の株式市場の全体的な動きを把握する際の代表的な指標です。
連続性を保つために株式分割があった場合や、銘柄の定期的な見直し及び入れ替えが行われ、その都度、一定の修正が施されます。
<問題点>
・225銘柄だけで、市場全体の相場の動きを反映させることができるのか
・株価水準が高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい
東証株価指数(TOPIX)
東京証券取引所に上場している銘柄を対象として算出、公表されている株価指数です。
旧東証1部上場銘柄の全銘柄の時価総額指数(1968年1月4日を100とする)です。
2022年4月の市場区分の変更(「プライム」「スタンダード」「グロース」)により、現在、指数の再編をおこなっているところです。
<問題点>
・時価総額の大きな銘柄(例えばトヨタ自動車など)の株価の動きに影響される
JPX日経インデックス400
日本の株式を対象とする時価総額加重平均型の株価指数です。
東京証券取引所、日本取引所グループ及び日本経済新聞社が算出・公表しています。
東京証券取引所に上場する全ての普通株式等のうち、時価総額、営業利益、ROE等で一定の基準を満たした原則400銘柄を構成銘柄としています。
2013年8月30日の時価総額を10,000ポイントとして指数化し、2014年1月6日から公表が開始されました。
個人の資産形成の第一歩は、株価インデックス運用から
株式投資の運用手法として、パッシブ運用とアクティブ運用があります。
パッシブ運用とは、市場全体の値動き、すなわち、上述のTOPIXのようなインデックスの値動きと同様の投資成果を目指す運用です。
それに対して、アクティブ運用は、株価の上昇が期待される銘柄を厳選して投資し、パッシブ運用以上の投資成果を目指す運用手法です。
これから資産形成を始めようという人、特に株式投資初心者には、パッシブ運用、すなわち株価インデックス運用から入ることをお勧めします。
具体的には、TOPIXや日経225株価指数をベンチマークとする株式投資信託やETF(上場株式投資信託)を買うことになります。
これらの金融商品の詳細については、ライフマネーラボにて別途解説を予定していますが、初心者でも、気軽にそして少額から株価インデックス運用(パッシブ運用)を行うことができる商品です。
さらに、NISA・積立てNISAやiDeCo等の税制優遇制度の利用も可能です。
株式に関わる税金
配当に対する課税
株式の配当は、配当所得として、原則、他の所得として合算して総合課税されます。
但し、上場株式については、確定申告不要制度があり、配当金の20%(所得税15%、住民税5%)及び、復興特別所得税(所得税額に対し2.1%、2038年まで)が源泉徴収され(合計すると配当金額の20.315%)、課税関係は終了します。
一方、総合課税を選択した場合は、一定の条件を満たす場合、配当控除の適用を受けることができます。
売却益(キャピタルゲイン)に対する課税
① 申告分離課税
「上場株式」の場合とその他の「一般の株式」の場合に分ける必要があります。
原則として、それぞれ譲渡所得として他の所得と区分して計算する申告分離課税となります。
両者とも、次の算式が適用されますが、両者間の損益通算はできません。
すなわち、例えば上場株式で発生した売却益を一般株式で発生した売却損で相殺した額を譲渡所得とすることはできません。
株式の譲渡所得×税率=売却額合計 ―(取得額合計+委託手数料)
税率は、20%(所得税15%、住民税5%)が課税されることになります。
② 特定口座制度/源泉徴収ありでの上場株式の譲渡税
特定口座制度とは、煩雑な売買損益の計算を顧客に代わって証券会社が行う制度です。この制度を利用し、かつ源泉徴収ありを選択しておけば、特定口座内で上場株式の譲渡損益計算は年間を通じて、証券会社が管理計算し、源泉徴収され、確定申告対象から外れることになります。
但し、特定口座を複数の証券会社で設定している場合において、それらを合算することにより、譲渡所得の合計金額を減らすことができる場合は、確定申告することにより、当該源泉徴収額の還付を受けることは可能です。
③ 上場株式の譲渡所得は他所得と損益通算が可能
確定申告が必要となりますが、以下の所得は合算して課税所得額を計算することができます。
例えば、国債の利子(益)を、上場株式で発生した譲渡損と相殺することができます。これを損益通算といいます。
・上場株式の配当・分配金
・上場株式の譲渡損益
・特定公社債等(国債など)の利子・分配金
・特定公社債等(国債など)の譲渡・償還差損益
④ 上場株式の繰越控除
損益通算をしてもなお上場株式の売却の損失が残る場合は、確定申告を行う必要がありますが、翌年以降3年間にわたり、その損失を繰り越すことができます。但し、上場株式の売却は証券会社を通じて執行された場合に限ります。
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