【外為_第3章】外国為替取引の基礎

外国為替市場

外国為替市場には、日本国内外の銀行や一部の証券会社等の金融機関(以下「銀行等」)の限られた参加者で構成される「インターバンクマーケット」と、個人、並びに、一般法人や機関投資家等が、銀行等の店頭(電話窓口やインターネットバンキングを含む)を通して、各種為替取引を行う「対顧客マーケット」があります。

銀行等が、「対顧客マーケット」において、その顧客との為替取引によって発生した売り取引金額と買い取引金額の片寄り(これを「為替ポジション」(※)といいます)の調整を、「インターバンクマーケット」で行います。
また、銀行等は、為替売買益を得ることを目的に、「インターバンクマーケット」での売買を通し、自発的にポジションを作ることも活発に行っています。
(※)為替ポジション:
外国為替取引によって生じた外貨建債権・債務の差額のことを言います。
外貨建ての債権が債務より多い場合は、外貨の買持ちポジション(ロングポジション)、少ない場合を売持ちポジション(ショートポジション)と呼びます。

インターバンクマーケットにおける為替取引の基本

外国為替インターバンクマーケット市場は、平日であれば、24時間、世界のどこかの市場が開いていいて、常に活発に取引がされ、外国為替の市場価格が形成され、そしてその価格は、時々刻々と変化しています。
現在では、各種ニュースメディアや、インターネットを通じて、主要な通貨については、その市場価格を常時観察することができます。

(参考)ライフマネーラボ/金融リテラシー入門/外国為替入門
【外為_第2章】外国為替相場(レート)について

インターバンクマーケットの参加者は、銀行の他、一部証券会社、中央銀行、為替ブローカー等に限定され、取引形態は標準化され、事前に取引の手順が決められているため、瞬時に大量の取引が可能となっています。

銀行間で取引を成立させるために必要な最低要件は、価格(為替レート)取引金額(ロット)です。

取引手段としては、今から20年ほど前までは、電話やダイレクトテレックスと呼ばれる通信手段が一般的でしたが、現在では、各銀行に設置された専用回線の繋がった端末から為替取引を約定する方法や、コンピューター接続による高速取引も可能となっています。

スポット為替

「スポット為替」(単に「スポット」とも呼びます)、とは、インターバンクマーケットにおける最も典型的で、以下の取引例に示す通り、標準化された取引形態です。
「直物(ジキモノ)為替」とも言います。

(取引例)A銀行がB銀行に、米ドル(対円)をスポットで売る取引

①  両銀行で価格(為替レート)金額(ロット)が合意されたとします。
・為替レート:1米ドル=145.15(基本1銭単位)
・ロット:1百万ドル(最低ロットが1百万米ドル)

② 取引の成立のことを約定、成立日を約定日といいます

③ 決済日(資金受渡日)約定日の2営業日後です。

④ 決済日に、それぞれの銀行は相手銀行へ約定に基づき資金を送金します。
A銀行:決済日に1百万米ドルをB銀行へ送金します。
B銀行:決済日に145.15百万円をA銀行へ送金します。

フォワード為替

「フォワード為替」(単に「フォワード」とも呼びます)とは、インターバンクマーケットにおいて、約定から決済日(資金受渡日)までの期間が3営業日以上ある為替取引のことを言います。
スポット為替を「直物為替」と呼ぶのに対し、フォワード為替「先渡為替」或は「先物為替」とも呼びます。

将来の特定日または一定期間後に約定時に設定した条件(金額、為替レート等)で受け渡しを行うものです。

フォーワード為替レートは、通常は受渡日までの期間に応じて、交換する異種通貨間の金利差が考慮され、スポット為替レートとの価格差(スプレッド)により調整されます。
なお、フォーワード為替レートがどのように決まるかについては、「【外為_第9章】外国為替相場と金利の関係」(投稿予定)にて詳しく説明いたします。

対顧客マーケットにおける為替取引の基本

個人や一般法人、そして機関投資家は、銀行の店頭(窓口)やインターネットバンキングにて、外国為替取引を行います。
これらの取引を行う場を総称して、「対顧客マーケット」と称します。

対顧客マーケットにおいては、それぞれ各銀行が、インターバンク市場で形成される為替レートを基本として、独自の裁量で、各種の為替レートをその顧客である個人や一般法人等に提供しています。

TTS/TTB

主として、個人や法人の小口(比較的少額の為替取引)に適用される為替レートです。
各銀行は、毎営業日の午前10時前後のインターバンクマーケット(東京)での取引状況を参考にして、その日1日の間(原則、午前10:00~午後3:00の窓口営業時間)に個人、法人の小口取引に適用する為替レートの基準となる「仲値」を決め、店頭に公表します。

仲値に銀行の一定の取扱い手数料を加減してTTS/TTBを決定します。
TTS/TTBは、原則1日中、変わることはありません。但し、インターバンクマーケットにおける為替レートが、日中に、著しく変動した場合は、第2次、第3次TTS/TTBとして出されることもあります。

市場連動為替レート

主として、対法人顧客や、個人でも大口の金額の取引は、取引時のインターバンクマーケットの為替レート(市場レート)に連動する為替レートに数銭の銀行手数料を加減した、市場連動為替レートが適用されます。

最近では、インターネットバンキングの普及やネット専門銀行の台頭により、個人向けの外貨預金作成や解約時に、市場連動為替レートを適用するケースも増えてきました。
米ドル/円の為替取引場合、銀行手数料は25銭以下に設定されているのが一般的になりつつあります。

対顧客マーケットの取引形態

一般的な個人や対法人取引の決済(資金受渡)は、インターバンクマーケットでのスポット取引のような標準的な取引と異なり、原則、取引約定と同時に行われます。
但し、大口法人取引の場合は、インターバンクマーケットと同じく、スポット取引と同様に2営業日後の資金受渡しとなる場合が多くなります。また、資金受渡日を3営業日以降に設定することも、顧客の信用状況に応じて可能です。但し、外貨と円の金利差に応じて、適用為替レートは調整されます。

先物予約取引

対顧客マーケットにおいて、先物予約取引とは、将来の為替レートを現時点で決めておく取引です。

インターバンクマーケットでは、時々刻々と市場為替レートは変化します。
例えば、輸入業者は、1ヶ月後に輸入品の決済日が決まっていて、その代金支払いが外貨建ての場合、その時に適用する為替レートが確定しないと、円ベースでの採算が立たなくなるリスクがあります。
それを回避するために、輸入業者は、銀行と、適用する為替レートの先物予約を締結しておけば、採算を確定することができます。

但し、先物予約の為替レートは、予約締結時点での当該外貨と円の金利差の状況により、その時点の市場為替レート(スポットレート)から調整されます。

先物予約の為替レート決定のメカニズムについては、「【外為_第9章】外国為替相場と金利の関係」(投稿予定)にて詳しく説明いたします。

 

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