所得税とは
所得税は、給料や商売の利益、あるいは土地・建物等の不動産を売って得た利益などに対して課される税金です。
所得税は、国に納める国税であり、納税者が直接納税する直接税に分類されます。
参考・住民税は地方自治体への納める地方税で、同様に直接税です。
・消費税は国税ですが、納税者(個人)が小売店等に支払い、小売店がまとめ税務署に納税する間接税となります。
所得税の特徴
- 暦年単位課税
税制上、1月1日から12月31日までの1年間を計算期間とし、その間に得た所得金額に対して課税されます。海外駐在等で出国する場合は、通常出国の日までの期間となります。
- 個人単位課税
各個人ごとの所得に対して課税されます。
- 所得の分類別に課税方法が異なる
金融資産から生じる所得、不動産賃貸から生じる所得、勤労から生じる所得 資産譲渡から生じる所得など、発生形態・発生源泉別に10種類の所得に区分し、それぞれの所得毎に所得の金額を計算します。(後述「所得の種類及び所得の金額の計算方法」参照)
- 申告納税制度
納税者の一人一人が、自ら税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付する制度です。
参考賦課課税制度:税務官庁が税額を確定して、納税者に納付の通知を行う制度。個人住民税・個人事業税・固定資産税・不動産取得税・自動車税・都市計画税など、地方税の分野で採用されています。
課税方法
原則として、公平の観点から総合課税(各種所得を合算して課税する)、及び超過累進課税率(所得が高くなれば税率も高くなるというルール)を採用しています。
ただし、一部の所得については、税負担を軽減、或いは重課するため、他の所得と合算しないで単独で課税されます。
① 源泉分離課税:他の所得とは関係なく、所得を受け取る時に一定の税額が源泉徴収され(差し引かれ)ます。これによりその所得に対しての課税関係は完結します。(一般公社債、預貯金の利子所得等)
② 申告分離課税:確定申告により、他の所得と分離して、税金を計算する制度(退職手当・土地や建物、株式等の譲渡所得)
③ 総合課税 :確定申告により、他の所得と合算して税金を計算する制度(源泉分離、申告分離、申告不要適用以外の所得)
④ 申告不要制度:一定の所得については確定申告を不要とすることができる制度(給与所得者の他の所得が20万円以下の場合)
(参照)超過累進課税率についての詳細は本稿「累進課税制度の仕組み」を参照下さい。
所得控除
個人的事情(例えば、障害者など)を考慮するために、所得金額から一定の金額を控除(差引き)して、調整を行う。
所得控除には15種類あり、会社員等の給与所得者の多くは年末調整で控除できますが、雑損控除、医療費控除、寄付金控除の3つは確定申告が必要となります。
(参照)
・本稿「所得控除の目的と分類」をご参照下さい
・所得控除の詳細は、別途詳細をご参照下さい(リンク)
・給与所得における年末調整・確定申告についての詳細は、本稿6(3)「給与所得者の申告と納付」をご参照下さい
所得の種類及び所得の金額の計算方法
所得の種類は以下の10種類に分類されています。それぞれの収入金額から必要経費、或いは給与所得控除、年金所得控除、或いは特別控除を差し引き、それぞれの所得の課税標準所得が算出されます。
種類 | 内容 | 計算方法 (課税標準所得) | 課税方式 | |
① | 利子所得 | 預貯金、公社債等の利子 | 収入金額=所得 | 源泉分離課税 |
② | 配当所得 | 株式、出資金の配当 | 収入―元本取得に要した負債利子 | 申告不要 総合課税 申告分離課税 |
③ | 不動産所得 | 不動産の貸付による所得 | 総収入―必要経費 | 総合課税 |
④ | 事業所得 | 各種事業から生じる所得 | 総収入―必要経費 | 総合課税 |
⑤ | 給与所得 | 給料、賞与などの所得 | 総収入―給与所得控除 | 総合課税 |
⑥ | 退職所得 | 退職手当金 | (収入―退職所得控除)×1/2 | 分離課税 |
⑦ | 山林所得 | 山林伐採、譲渡による所得 | 総収入―必要経費―特別控除 | 分離課税 |
⑧ | 譲渡所得 | 土地、建物等の資産売却による所得 | 総収入―取得費・譲渡費用-特別控除(総合課税のみ) | 総合課税(注) |
⑨ | 一時所得 | 福引当選金品、生命保険一時金等の一時的な所得 | 総収入―その収入を得るための支出額―特別控除 | 総合課税 |
⑩ | 雑所得 | 公的年金、その他所得 | 収入金額―公的年金控除(年金) 総収入―必要経費(その他) | 総合課税(注) |
(注)一部、分離課税として取り扱われるものがあります。(株式等の譲渡による所得、土地等の譲渡による所得、先物取引による所得など)
(参照)各所得の種類ごとの詳細については、順次投稿して参ります。
給与所得者の所得税額計算のフローチャート
- 給与収入(年間収入)~会社より発行される源泉徴収票から入手可能
- 給与所得の金額 = 給与収入 - 給与所得控除
- 課税所得の金額(課税標準)= 給与所得の金額 ― 所得控除(人的・物的)
- 税額 = 課税所得の金額 × 超過累進課税率
- 納付税額 = 税額 ― 税額控除
「もっと知りたい税のこと」(令和4年6月 財務省)より引用
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei0406_pdf/index.html
所得控除の目的と分類
所得控除は、納税者及びその扶養親族の世帯構成に対する配慮、その他納税者の個人的事情に適合した応能負担の実現を図る等の目的で設けられています。
物的控除と人的控除に大別できます
控除制度の目的 | 所得控除の種類 | |
物的控除 | 担税力への影響を考慮するため | ①雑損控除、②医療費控除 |
社会政策上の要請によるもの | ③社会保険省控除 ④小規模企業共済等掛金控除 ⑤生命保険料控除、⑥自身保険料控除 ⑦寄付金控除 | |
人的控除 | 個人的事情を考慮するため | ⑧障碍者控除、⑨寡婦控除 ⑩ひとり親控除、⑪勤労学生控除 |
課税最低限を保障するため | ⑫配偶者控除、⑬配偶者特別控除 ⑭扶養控除、⑮基礎控除 |
所得税の申告と納付
確定申告について
- 所得税の申告手続の原則は、確定申告です。
- 給与所得者のように年末調整で所得税の清算が終了している場合は確定申告不要です。
- 確定申告の申告期限は、その年の翌年2月16日から3月15日です。
- 還付申告の場合は、申告期限は定まっていませんが、還付を受けることができる年から5年を過ぎると時効になります。
- 納税は翌年3月15日までに金融機関の窓口で納付しなければなりません。その他、銀行口座振替やクレジットカードによる納付も可能です
確定申告をしなければならない人
- 給与所得者以外の人
納付すべき税額がある(所得控除、税額控除後の課税所得金額がプラス)の人は、原則確定申告をしなければなりません。
注意点・居住用財産を譲渡した場合の特別控除を受けて納付税がゼロとなった場合は、たとえゼロでも確定申告が必要です。
・公的年金の収入金額が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下の人は確定申告不要です。但し、源泉徴収対象外の公的年金(外国公的年金等)がある場合は、確定申告が必要です。
- 給与所得者で確定申告が必要な人
- 1年間に支払いを受ける給与等の金額が2,000万円を超える人
- 1ヶ所から給与を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得合計額(源泉分離課税、申告不要を選択したものを除く)が20万円を超える場合
- 2ヶ所以上から給与の支払いを受けている方で、主たる給与以外の収入が20万円以上の人
- 同族会社の役員等で、給与の他に、その同族会社から貸付金の利子や賃貸料を受け取っている人
給与所得者の申告と納付
源泉徴収義務
日本国内の居住者に給与等の支払いをする人(源泉徴収義務者)は、給与の支払いの際、所得税を徴収し、徴収月の翌月10日までに国に納付しなくてはなりません。
所得税を徴収する際に、源泉徴収義務者は、給与所得者の個人的事情等を把握する必要がある。そのため、給与所得者は、源泉徴収義務者を経由して、次の各申告書を所轄税務署長に提出しなければなりません。
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
- 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
- 「給与所得者の保険料控除申請書」
年末調整
年末調整とは、1給与等の支払者が、その年最後に給与を支払う際に正しい所得税を計算して、源泉徴収税額との差額を調整することを言います。
年末調整により、給与所得者は給与所得以外の所得が無い場合は、源泉徴収税額のみで納税を終わらせることができます。
但し、以下の給与所得者については年末調整を行いません。
① 「給与所得者の扶養申告書」を提出していない人
② その年の給与支払い総額が2,000万円を超える人
累進課税制度の仕組み
累進課税制度とは所得が高くなればその超過累進税率も高くなるというルールです。
課税所得金額 | 税率 |
1,000円以上1,950,000未満 | 5% |
1,950,000円以上3,300,000円未満 | 10% |
3,300,000円以上6,950,000円未満 | 20% |
6,950,000円以上9,000,000円未満 | 23% |
9,000,000円以上18,000,000円未満 | 33% |
1,800,000円以上40,000,000円未満 | 40% |
40,000,000円以上 | 45% |
以下のようなケースを考えてみましょう。
(例題)Aさんの所得が900万円、Bさんの所得が901万円のときの各々の所得税額は?
単純累進税率方式・Aさんの所得税額:900(万円)×0.23=207(万円)
・Bさんの所得税額:901(万円)×0.33=297.33(万円)
表の通りに素直に計算すると少し不自然な点があることに気が付きます。それは、AさんとBさんの所得は1万円しか変わらないのに、税額がおよそ90万円も違うという点です。このような所得税額の計算方式を単純累進税率方式といって、日本ではこの方式を採用していません。
超過累進税率方式日本が採用している方式は超過累進税率方式といいます。
Aさんの所得税額:税率5%→195(万円)×0.05=9.75(万円)
Aさんの所得税額:税率10%→135(万円)×0.1=13.5(万円)
Aさんの所得税額:税率20%→365(万円)×0.2=73(万円)
Aさんの所得税額:税率23%→205(万円)×0.23=47.15(万円)
よって、Aさんの所得税額は各税率での金額を足し合わせることで143.4(万円)と求めることが出来ます。
またBさんの場合は、900万円まではAさんと同様の計算をした後、残った1万円に税率33%を掛けることになり、AさんとBさんの所得税額の違いは3,300円の違いになります。
このように、超過累進税率方式では単純累進税率方式と比べて公平性は確保されていると言えます。
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