【第1章】経済成長の尺度~GDP

GDPの基本

最も重要な経済指標 GDP(Gross Domestic Product)

GDPは、Gross Domestic Productの略称で、「国内総生産」のことを指します。

一国の経済の規模や、その変化(動き)をつかむうえで、経済指標としては最も基本的でかつ重要な指標です。
GDPは世界各国でも同様に経済指標として採用され、毎年、IMF(国際通貨基金)が各国のGDPを公表しています。
GDPは国の経済力、いわゆる経済の豊かさを表す尺度として、また、その増加率は経済成長の尺度として、世界経済を知るうえでも、最重要指標です。
日本においては四半期ごとに内閣府から公表されています。

GDPの定義

GDPとは一定期間内に、国内で生み出された、財やサービスの付加価値を合計したものと定義されています。

付加価値とは、生産によって新たに加えられた価値のことで、総生産額(売上)から、その生産に要した原材料費などのコストを差し引いた額をいいます。

 

GDPとGNP

GDPと大変よく似た経済指標にGNPがあります。
GNPとはGoss National Productの略称で、国民総生産を指します。
日本のGDPであれば、日本国民が生み出した財やサービスの付加価値を合計したものと定義されています。
従って、日本企業の海外支店が生み出した付加価値(収益)が含まれる一方、日本で活動する海外企業の支店が生み出す付加価値は含まれません。

1980年代までは、経済の規模を表す指標としてGNPが使われていました。
しかし、日本をはじめ、世界各国がグローバル化するにつれて、純粋に国内の経済の規模を表すGDPを使用する方が合理的であるとの理由で、現在では世界標準としてGDPを採用するようになりました。

三面等価の原則(経済学での考え方の基本)

経済学において、家計主体(消費)企業主体(生産・分配)及び政府主体(所得の再分配等、2次的な役割)と、経済における機能を担う3つの主体に大きく括り、経済のしくみの説明をしています。

(参考)
金融リテラシー向上/金融と経済入門編/【第6章】経済のしくみ ~経済の基本構造

経済学理論上GDPは企業が生産によって作り出す付加価値の合計と定義されます。
これらの付加価値はすべて賃金、配当に分配されて家計の所得として計上され、また、家計や企業が、最終的に消費する商品やサービス(最終財)への支出の合計は、企業が生み出す付加価値の合計に等しいとという前提を置きます。

これを、経済学では、生産、支出、分配の三面等価の原則と呼びます。

すなわち、以下の等式が成り立ちます。

GDP(生産)=GDE(支出)=GDI(分配/所得)
 GDE:Gross Domestic Expenditure(国内総支出)
 GDI:Gross Domestic Income(国内総所得)

 

日本のGDPと経済成長率

名目GDPと実質GDP

GDPは、その期間の実際に観測された売上げの金額等のデータを利用して計算されますので、前年と比べる際に、前年からの物価上昇分が上乗せされています

純粋に経済活動が活発化し、経済の豊かささがどれだけ増えたかを見るためには、物価上昇分を廃除する必要があります。

物価上昇分を調整する前のGDPを名目GDPと呼び、また、調整後を実質GDPとよび、以下の計算式により算出します。

実質GDP=名目GDP/GDPデフレーター
 実質GDP:ある基準時点の物価水準で評価したGDP
 名目GDP:そのときどきの物価水準で評価したGDP
 GDPデフレーター:実質GDPを算出するための物価指数(※)

(※)GDPデフレーターは、GDPに計上される全ての財・サービスを含むため、企業物価指数消費者物価指数よりも包括的な物価指標といえます。
ただし、企業物価指数や消費者物価指数が輸入品価格も含んでいるのに対し、GDPデフレーターは国内生産品だけを対象にしています。

日本の実質/名目GDP推移(1994~2022年)

名目経済成長率と実質経済成長率

ある期間(1年or四半期)の前年の期間のGDPと比べどれだけ伸びているか、その増加率のことを経済成長率といいます。
経済成長率にも名目と実質があり、名目経済成長率は物価上昇分によるGDPの増加分が加味されています。
一方、実質経済成長率は物価上昇分を廃除したものです。
以下の算式により計算されます。

 名目経済成長率=(当期名目GDP-前期名目GDP)/前期名目GDP×100
 実質経済成長率=(当期実質GDP-前期実質GDP)/前期実質GDP×100

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