鉱工業生産指数の概要
鉱工業生産指数とは
ある一定期間内における鉱工業部門の生産量の変動を示す指数です。
具体的には、ある基準期の生産量を100として、その後の期間の生産量をその基準期に対する相対値で表した指数です。
その他、鉱工業部門の出荷量の変動を示す出荷指数、および、在庫量の変動を示す在庫指数も含め、一般的に鉱工業生産指数と呼ばれています。
鉱工業生産指数の目的
鉱業や製造業などの生産活動の動向を把握するために用いられます。
生産・出荷・在庫というモノの動きから、景気動向を判断し予測するうえで、重要な役割を果たす経済指標の一つです。
鉱工業生産指数の集計と公表
経済産業省が品目別に集計して毎月公表しています。
速報:集計月の翌月 ~ 金融市場の注目度が高い
確報:集計の翌々月
具体的集計、算出方法
鉱工業製品412品目(在庫は292品目)を「生産量」「出荷量」「在庫量」に分けて集計し、基準時点(2015年)を100として指数化したものが、鉱工業生産・出荷・在庫指数と呼ばれています。
業種別のウエイト付けと季節調整
鉱工業全体に対する品目や業種などの重要度の度合いに応じて合理的なウエイト付けを施します。
また、一年を周期として毎年同じように繰り返される季節変動を取り除いたものを「季節調整済指数」として公表しています。
例えば、1,5,8月は生産量が少なくなるため、この影響を調整します。
基調判断
経済産業省は、指数の集計、公表と同時に、指数の推移等を分析し、公表時の景気に関する経済産業省の基調判断を公表します。
マーケット(金融・証券・為替市場)での注目度が高い
鉱工業生産指数は、マーケットでの注目度は、以下の理由により非常に高く、指標発表後、マーケットが大きく反応し、動くことがあります。
日本の経済活動に占める割合が大きい
日本の経済活動全体(国内総生産、GDP)に占める鉱工業の割合は約2割程度となりますが、卸売業、小売業、運輸業などの一部は鉱工業製品の流通という経済活動を行っており、鉱工業生産活動と密接な関連をもっています。
このため、これらの関連産業も考慮すると、国内総生産に占めるウェイトは約4割の大きさになります。
従って、日本全体の景気動向を判断、予測するうえで重要性が高くなります。
景気の動きに敏感
鉱工業生産は、景気の状況に応じて大きな変動を示します。
景気が悪くなって在庫が積み上がれば生産を縮小して在庫調整を行い、逆に景気が良くなれば将来の需要の拡大を見越して在庫を積み増すなど、景気に対する反応が大きいのが特徴です。
在庫循環などの景気変動は鉱工業指数から読み取ることができます。
一方、サービス業などの第3次産業は、製造業などの第2次産業に比べそれほど大きな変動は示しません。
このため、GDPの変化は鉱工業部門で生ずる場合が多く、鉱工業生産指数の動きからGDPの変化方向を読み取ることができます。
速報性がある
生産、出荷、在庫などの指数は翌月の下旬には速報が公表されます。
経済活動の実態面の動きを表す統計としては、公表が最も早いものの一つです。
また、製造工業予測生産指数(生産予測指数)は、生産指数の2か月先の見込まで公表します。
経済政策、企業活動などにおいては、足下の経済の現状を機敏に判断することが極めて重要であり、鉱工業指数はこのために広く利用されています。
鉱工業生産指数 実例(2023年2月(2023年3月31日発表))
<経済産業省 2023年2月鉱工業生産指数 解説 >
基調判断:「弱含み」に据え置き
2月生産は2か月ぶりの前月比上昇
2023年2月の鉱工業生産は、季節調整済指数94.8、前月比4.5%と、2か月ぶりの上昇となりました。
これまでの生産の動向については、2022年9月と10月は、中国でのロックダウン等の解除や部材供給不足の影響緩和等を受けたそれまでの上昇の反動などから低下していました。
その後、11月と12月は、化学工業(除.無機・有機化学工業)や食料品・たばこ工業などが堅調であったことから上昇していましたが、1月は、自動車工業や生産用機械工業を始めとした多くの業種での低下などを受けて、全体として低下していました。
そうした中、2月は、部材供給不足の影響が緩和されたことなどを受けて、自動車工業を中心に上昇したことなどから、全体として上昇しました。
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